「記録を書くために介護士になったんじゃない」
「残業して書き終えるのが当たり前になっていて、それが普通だと思い込んでいたんです。ある日、新卒のスタッフが『記録の時間が多すぎて、入居者さんとゆっくり話せない』と泣きながら話してくれて、初めてハッとしました」
こう語るのは、通所介護(デイサービス)の管理者。紙ベースの記録業務が常態化していたこの事業所では、ベテランスタッフほど「これが当たり前」と疑問を持てずにいました。しかし現実は、毎日の記録業務が直接ケアの時間を削り続けていたのです。
導入前の課題:1日2時間の”記録残業”が続く日々
定員40名のデイサービスでスタッフ数は常勤換算12名。サービス提供時間が終わった後、スタッフは連日1〜2時間の記録業務をこなしていました。
課題の実態(導入前の計測データより)
・1人あたりの記録業務時間:1日平均110分(うち残業分が約45分)
・記録の転記作業(紙→PCへの月次集計)に月間約20時間を費やしていた
・申し送りノートへの転記ミス・読み間違いによるヒヤリハットが月3〜4件発生
・介護報酬請求のための集計作業に毎月2名×丸2日が必要で、その間はケアが手薄になっていた
・LIFEへのデータ登録が手作業で、加算取得の機会損失が年間約85万円と試算されていた
「記録に追われて、入居者さんの変化に気づけないことがあった。それが一番つらかった」とスタッフの一人は言います。紙の記録は情報共有の遅れも招き、家族への報告が後手に回ることも少なくありませんでした。
補助金の活用内容:職員12名規模で160万円の補助を獲得
この事業所が活用したのは、地域医療介護総合確保基金「介護テクノロジー導入支援事業(ICT導入支援)」です。職員数11〜20名の区分に該当し、補助上限額は160万円(補助率3/4)でした。
費用内訳
| 項目 | 金額 |
| 介護ソフト(LIFE標準仕様対応・ケアプランデータ連携機能付き) | 120万円 |
| タブレット端末(8台) | 56万円 |
| Wi-Fi機器・設置工事 | 30万円 |
| 初期設定・スタッフ研修費用 | 14万円 |
| 合計(総額) | 220万円 |
| 補助額(3/4) | 160万円 |
| 自己負担額(1/4) | 60万円 |
補助要件として、LIFE標準仕様を実装した介護ソフトで実際にデータ登録を行うこと、およびケアプランデータ連携システムの利用が条件となりました。また、導入と同時に第三者による業務改善支援(コンサルタント派遣)を受け、記録フローの全面見直しも実施しました。
導入後の効果:記録時間が78%減、加算取得で収益も改善
Before → After(導入後6ヶ月時点)
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 変化 |
| 1人あたり記録業務時間(日) | 約110分 | 約24分 | ▲78%減 |
| 月次集計・転記作業時間 | 約20時間 | 約2時間 | ▲90%減 |
| 記録ミス起因のヒヤリハット(月) | 3〜4件 | 0件 | ゼロ達成 |
| 月次請求業務(人日) | 4人日 | 1人日 | ▲75%減 |
| LIFE加算の取得状況 | 未取得 | 科学的介護推進体制加算Ⅱ取得 | 月約7万円の増収 |
時間削減の効果を年換算すると、スタッフ1人あたり年間約290時間の業務時間が創出されました。その時間はレクリエーションの充実や個別ケアの見直しに充てられており、「ようやく入居者さんの顔を見て話せるようになった」という声が現場から上がっています。
LIFE加算の取得による月間約7万円の増収は、年間84万円の収益改善につながり、自己負担60万円の投資を1年以内に回収しました。
まとめ:「記録」を変えると、「ケア」が変わる
ICT化は難しいと感じる事業者も多いですが、今回の事例では導入から1ヶ月でほぼ全スタッフがタブレット操作に慣れ、研修コストも補助対象に含めることができました。
補助率3/4という手厚い支援制度を活用すれば、自己負担を抑えながら大きな変革を起こせます。「うちは小さいから」「ITが苦手だから」と諦めず、まずは都道府県の介護生産性向上総合相談センターへ相談してみることをおすすめします。記録業務を変えた先に、本来の介護の喜びが待っています。
※本事例はモデルケースです。実際の補助額・効果は施設規模や都道府県の実施状況により異なります。補助金の申請にあたっては、各都道府県の担当窓口にご確認ください。
福祉事業所のための 補助金・助成金 申請カレンダー 2026
主要15補助金の詳細プロファイル+月別申請カレンダー+採択された事業計画書の構成例3件+申請書採択ポイント解説+不採択回避30項目チェックリスト。A4 60Pの実務資料を無料配布中。
📩 無料で資料をダウンロード →