知的障害や精神障害のある方が安心して外出できる支援制度が行動援護です。
予防的対応・制御的対応・身体介護的対応の3つの専門支援により、外出時の危険回避と自立した社会参加を実現します。
「家族だけでは外出が不安」「パニックになったらどうしよう」と悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、行動援護の対象者や具体的なサービス内容、申請から利用開始までの流れを解説します。
障害福祉サービスの現場で10年以上携わってきた経験から、実際の利用者・家族の声を交えながらお伝えします。
行動援護とは?まずは基本を30秒で理解
行動援護とは、知的障害や精神障害により一人で行動することが著しく困難で、常時介護を必要とする方に対し、外出時の危険回避・移動支援・身体介護を行う障害福祉サービスです。
国が管轄する障害者総合支援法の介護給付に位置づけられており、全国どこでも同じ基準でサービスを受けられます。
移動支援や同行援護とは対象者や支援内容が異なり、より重度の行動障害がある方を対象とした専門性の高いサービスです。
知的障害や精神障害のある方は、突発的な行動や予測できない状況でのパニック、危険認知の難しさなどの困難を抱えています。
行動援護従業者という専門職が同行することで、本人の安全確保と家族の負担軽減を同時に実現できます。
行動援護の対象者|2つの条件を確認
行動援護を利用するには、以下の2つの条件を両方満たす必要があります。
条件1: 障害支援区分が区分3以上
障害支援区分とは、必要な支援の度合いを区分1〜6の6段階で示したものです。
数字が大きいほど支援の必要性が高いと判断されます。
行動援護は区分3以上が対象です。
条件2: 行動関連項目の合計点数が10点以上
障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目(12項目)の合計点数が10点以上である必要があります。
項目にはコミュニケーション能力、説明の理解力、大声・奇声の頻度、異食行動の有無、多動や行動停止、突発的な行動などが含まれます。
児童の場合は、これに相当する支援の度合いがあれば対象となります。
知的障害により危険認知が難しく道路に飛び出す可能性がある方や、精神障害により予期せぬ状況でパニックを起こしやすい方、強度行動障害があり常時見守りが必要な方などが対象になります。
行動援護のサービス内容|3つの専門支援
行動援護では、予防的対応・制御的対応・身体介護的対応の3つの専門支援を提供します。
予防的対応:トラブルを未然に防ぐ
行動障害が起きないよう、事前に環境を整えたり情報提供を行います。
新しい場所に不安を感じる方に外出前に目的地の写真を見せたり、大きな音が苦手な方には静かなルートを選択したりします。
スケジュール変更がある場合は事前に丁寧に説明することで、利用者の不安を軽減できます。
制御的対応:緊急時に適切に対処する
外出中にパニックや行動障害が起きた際、本人と周囲の安全を確保しながら適切に対応します。
パニックになった際は静かな場所に移動して落ち着くまで見守ったり、突発的な行動を起こしそうなときは優しく声をかけて注意を別に向けたりします。
日頃から信頼関係を築いておくことが、スムーズな対応につながります。
身体介護的対応:日常生活動作をサポート
外出中の排泄・食事・着替えなど、必要な身体介護を行います。
尿意を認識できない方へのトイレ誘導、食事の際の見守り、外出前後の着替え介助など、利用者の尊厳を保ちながら必要最小限の支援を提供します。
行動援護の利用料金|負担上限で安心
行動援護の利用料金は、サービス費用の1割が自己負担です。
ただし、世帯収入に応じて月額上限が設定されています。
生活保護受給世帯と市町村民税非課税世帯は月額0円、市町村民税課税世帯で所得割16万円未満は月額9,300円、それ以外は月額37,200円が上限です。
所得割16万円未満は概ね年収600万円以下の世帯が対象で、多くの世帯で月額0円〜9,300円の範囲で利用でき、経済的負担は軽減されています。
行動援護を利用するまでの5ステップ
ステップ1: 市町村窓口に相談
まずは住んでいる市町村の障害福祉課や社会福祉課の窓口に相談します。
障害者手帳、印鑑、本人確認書類を持参し、現在の生活状況や外出時の困りごと、希望するサービスを伝えます。
事前に電話で予約しておくとスムーズです。
ステップ2: 障害支援区分の認定を受ける
市町村に申請書を提出後、認定調査員による訪問調査と主治医の意見書提出を経て、一次判定と二次判定を受けます。
申請から認定まで約1〜2ヶ月かかるため、主治医への依頼は早めに行いましょう。
ステップ3: サービス等利用計画を作成
相談支援事業所の相談支援専門員が、利用者の希望や状況に応じた計画を作成します。
利用するサービスの種類や時間、目標設定などを相談し、遠慮せずに具体的な希望を伝えることが重要です。
ステップ4: 事業者を選ぶ
行動援護サービスを提供する事業者を選びます。
選び方のポイントは、
行動援護の経験が豊富か、
行動援護従業者養成研修を修了したスタッフが在籍しているか、
希望する外出先や時間帯に対応できるか
の3点です。
複数の事業者を見学・比較し、利用者との相性を確認しましょう。
ステップ5: 受給者証の交付・利用開始
市町村から障害福祉サービス受給者証が交付され、事業者と契約後に利用開始となります。
初回は詳細なアセスメントと試験的な外出を経て、短時間から始めて徐々に時間を延ばすとスムーズです。
行動援護でできること・できないこと
行動援護では、買い物や通院など日常生活に必要な外出、映画館や美術館などの余暇活動、公共交通機関の利用支援、外出先での排泄・食事介助が可能です。
一方で、通勤・通学、営業活動などの経済活動、ギャンブルや飲酒を目的とした外出、本人以外への支援は対象外です。
通年かつ長期にわたる外出や社会通念上不適切な外出には利用できないため注意が必要です。
成功のコツと注意点|よくある3つの失敗
事業者の専門性を確認せずに契約すると、行動障害への理解が不足している場合があります。
必ず見学時に強度行動障害への対応実績を確認しましょう。
初回から長時間利用すると、環境変化に耐えられずパニックを起こすことがあります。
最初は30分〜1時間の短時間から始め、徐々に慣らしていくことが重要です。
家族が遠慮して希望を伝えないと、本当に必要な支援を受けられません。
相談支援専門員や事業者には、具体的な困りごとを率直に伝えることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 行動援護は車での移動も可能ですか?
はい、可能です。
2024年の要件緩和により、行動援護従業者が運転する車での移動が認められています。
ただし事業者により対応が異なるため、事前確認が必要です。
Q2: 利用時間に制限はありますか?
1日8時間までが原則です。
30分単位で利用可能で、必要に応じて1日に複数回利用できますが、報酬算定は1日1回です。
Q3: 行動援護従業者にはどんな資格が必要ですか?
行動援護従業者養成研修または強度行動障害支援者養成研修の修了と、知的・精神障害者への直接支援業務1年以上の実務経験が必要です。
まとめ|行動援護で安心の外出を実現しよう
行動援護を正しく活用すれば、知的障害や精神障害のある方も安全に社会参加できます。
対象条件は障害支援区分3以上と行動関連項目10点以上、利用開始まで5ステップで計画的に進めましょう。
事業者選びでは実績・専門性・相性を重視することが成功の鍵です。
まずは住んでいる市町村の障害福祉課に相談してみましょう。
行動援護は、本人の自立と家族の負担軽減を同時に実現できる素晴らしい制度です。
あなたとご家族が安心して外出できる日々を応援しています。
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