コロナ禍が浮き彫りにした介護人材の課題と現在の対策

新型コロナウイルス感染症は介護現場の人材課題を顕在化させました。当時の経験と教訓を整理し、第9期介護保険事業計画に基づく現在の需給見通しと、施設が取り組むべき対策を解説します。

8 e5YrD3

コロナ禍が浮き彫りにした介護人材の課題と現在の対策

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、介護現場が抱える構造的な人材課題を顕在化させました。感染リスクと向き合いながらケアを継続する職員、面会制限に苦悩する利用者と家族、防護具の不足や情報共有の混乱に直面した管理者——。多くの現場が経験から学び、その教訓は今のBCPや働き方改革、ICT活用の前提となっています。本記事では、コロナ禍が浮き彫りにした介護人材の課題を整理し、第9期介護保険事業計画に基づく現在の需給見通しと、これから取り組むべき対策を解説します。

コロナ禍で顕在化した3つの課題

課題1. 感染リスクと心理的負担

クラスター発生のリスク、家族への感染懸念、感染者対応に伴う精神的負担——介護職員の心身に大きな負荷がかかりました。シフト変更や陽性者対応で休む職員が出ると、残った職員の業務量が一気に増える、という連鎖も起こりました。

課題2. 業務負担の急増

感染予防対策(消毒・健康チェック・ゾーニング)、面会制限下でのコミュニケーション支援、職員の体調管理など、平時にはない業務が積み上がりました。また、面会停止により家族の不安が高まり、電話対応や写真送付など追加対応も発生しました。

課題3. 採用と定着の停滞

感染への不安や、面接・研修のオンライン化への対応遅れなどから、新規採用が一時的に停滞した施設も少なくありませんでした。一方で、リモートワーク不可の業種であることが、求職者の選択肢から介護を外す要因にもなりました。

コロナ禍から得られた4つの教訓

教訓1. BCP(事業継続計画)の重要性

感染症発生時に誰がどう動くかを事前に決めておけるかどうかで、現場の混乱は大きく変わります。2024年4月から介護事業所におけるBCPの策定は義務化されており、感染症・自然災害の両面での備えが必須となりました。

教訓2. 防護具・備蓄品の管理

マスク・消毒液・ガウン・手袋などの備蓄状況の見える化と、補充ルールの明確化が必要です。日常業務の中に組み込み、緊急時に慌てないようにしておくことが現場負担を軽減します。

教訓3. ICTを活用した情報共有

紙ベースの記録や口頭の申し送りだけでは、感染症発生時のような緊急局面で情報の取りこぼしが生じやすくなります。介護記録ソフト・チャットツール・ビデオ通話など、デジタル基盤を持つ施設ほど柔軟に対応できました。

教訓4. 職員のメンタルケア

感染リスクや業務過多によるバーンアウトを防ぐには、相談窓口・産業医面談・ストレスチェックなど心理的サポートの仕組みが必要です。「困ったら相談できる」という安心感が、長期的な定着につながります。

現在の需給見通し(第9期介護保険事業計画)

コロナ禍の経験を踏まえ、介護人材の確保はその後も最重要課題であり続けています。厚生労働省の第9期介護保険事業計画では、必要数の見通しが以下のように整理されています。

区分介護職員数2022年度比
2022年度実績約215万人
2026年度必要数約240万人約+25万人
2040年度必要数約272万人約+57万人

年間の確保ペースは2026年度までで6.3万人、2040年度までで3.2万人が必要とされる計算です。介護関係職種の有効求人倍率は約4倍、訪問介護員は14倍台に達した年度もあり、採用市場は依然として厳しい状況が続いています。

一方、介護労働実態調査によれば、離職率は2024年度に12.4%と調査開始以来の過去最低水準まで改善しています。「離職を抑える」段階から「新規参入を増やす」段階へと、課題の重心が移りつつあるといえます。

コロナ禍の教訓を活かした対策

1. BCP・感染症対策の継続的な見直し

策定して終わりではなく、訓練と振り返りを通じて実効性を高めます。

  • 感染症BCPと自然災害BCPの両輪整備
  • 年1〜2回の訓練実施(机上訓練+実地訓練)
  • 振り返りでの手順見直し

2. 処遇改善加算の最大限活用

2024年6月に処遇改善加算が一本化され、4段階の加算区分に整理されました。月額11,000円規模の基本給等の改善を想定する制度設計です。

  • 加算区分の取得状況の確認と上位区分への変更検討
  • 配分ルールの明示と職員への説明
  • キャリアパス要件の整備

3. ICT・介護テクノロジーの導入

介護ソフトの導入率は約67.5%。コロナ禍で必要性が再認識されたデジタル化を、平時のうちに進めておくことが大切です。

  • 介護記録ソフト
  • 見守り機器
  • インカム・チャットツール
  • オンライン面会・家族向けの情報発信ツール

介護テクノロジー導入支援事業では、補助率最大3/4の支援が用意されています。要件・上限額は自治体・年度で異なるため、都道府県窓口に確認が必要です。

4. 生産性向上推進体制加算の取得

2024年度新設の生産性向上推進体制加算(Ⅰ)月100単位、(Ⅱ)月10単位は、見守り機器等のテクノロジー導入と業務改善検討委員会の設置などを要件としています。テクノロジー導入と収入面の両立を図る選択肢です。

5. 多様な働き方の制度化

短時間勤務、夜勤専従、週3〜4日勤務、シニア再雇用など、応募層を広げる制度を整えます。コロナ禍を経て、柔軟な働き方を求める層は確実に広がっています。

6. メンタルヘルス支援の整備

定期面談、ストレスチェック、外部の相談窓口、産業医面談など、職員が抱え込まずに済む仕組みを継続的に整備します。

7. 採用・情報発信のデジタル化

オンライン面接、職員紹介(リファラル)制度、SNSでの発信、施設見学会(オンライン含む)など、採用チャネルの多様化を進めます。

よくある質問(FAQ)

Q1: BCPはどの程度詳細に作る必要がありますか?

A: 法令上は感染症と自然災害の両面で策定が求められています。誰が・いつ・何を・どの順で行うかが手順書として読めるレベルが望ましく、現場の交代勤務に対応した分かりやすさが重要です。年1〜2回の訓練を通じて磨いていきます。

Q2: コロナ禍でICT導入が進みましたが、まだ導入していません。何から始めるべきですか?

A: 介護記録ソフトと、職員間の情報共有ツール(ビジネスチャットなど)から始める施設が多い傾向にあります。介護テクノロジー導入支援事業の補助対象となるツールも多いため、自治体窓口に相談しながら進めるとよいでしょう。

Q3: 処遇改善加算の運用で気をつけるべきポイントは?

A: 配分ルールの透明性が重要です。「どの職種・経験年数・役割の人にいくら配分されるのか」を明示し、職員からの納得感を得ることで、加算の効果(賃金改善)が定着の力に変わります。

Q4: 採用が思うように進みません。何から見直すべきですか?

A: 求人票の具体性(給与・休日・支援制度)、応募から内定までのスピード、施設の魅力発信(写真・動画・職員の声)の3点をまず見直してください。介護関係職種の有効求人倍率は約4倍で、応募者は短期間で複数施設を比較しています。

Q5: 職員のメンタルケアは何から始めればよいですか?

A: 月1回程度の個別面談を起点に、ストレスチェック・産業医面談・外部の相談窓口を整備していきます。管理職向けの傾聴・コーチング研修も合わせて行うと、日常的なフォロー力が高まります。

まとめ

コロナ禍は介護現場の人材課題を加速度的に表面化させ、BCPの策定義務化やICT活用の重要性を改めて明らかにしました。第9期介護保険事業計画に基づく試算では、2026年度に約+25万人、2040年度に約+57万人の介護職員確保が必要とされ、需給ギャップは依然として大きな課題です。一方で、離職率は過去最低水準まで改善し、定着面では明るい兆しもみられます。

コロナ禍で得た教訓——BCP、ICT、メンタルケア、柔軟な働き方——を平時の運営に組み込み、処遇改善加算や生産性向上推進体制加算、介護テクノロジー導入支援事業を活用しながら、地に足のついた人材確保を進めていきましょう。

📥 無料DL資料

ORDEN COMPASS 資料ダウンロード一覧

補助金カレンダー、非営利団体向けツール100選、経営者向け実務資料など、福祉事業所のIT・経営担当者必読の資料を一元化。すべて無料DL。

📩 資料一覧を見る →

経営の悩みを専門家に相談

人材・ICT・補助金など、福祉経営のお悩みを無料でご相談いただけます。お気軽にどうぞ。

無料相談はこちら →