介護職員数が初の減少に転じた2023年度|背景と現場でできる対策
介護職員数は2023年度に約2.9万人減少し、介護保険制度が始まった2000年度以降で初めて前年度比マイナスとなりました。需要が拡大し続ける一方で供給側が縮小に転じたこの事実は、介護業界が転換点に差しかかっていることを示しています。本記事では厚生労働省の公表資料を整理し、減少の背景と現場で取り組める対策を解説します。
介護職員数が初めて減少した2023年度
実数データ(厚労省「介護サービス施設・事業所調査」)
| 年度 | 介護職員数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2022年度 | 約215万人 | 増加 |
| 2023年度 | 約212.6万人 | 約2.9万人減 |
介護保険制度開始以降、職員数は基本的に増加を続けてきました。2023年度に初めて減少に転じたことは、需給バランスの構造的な変化を示す重要なシグナルといえます。
将来必要数の推計(厚労省 第9期介護保険事業計画)
| 年度 | 必要数 | 不足見込み |
|---|---|---|
| 2026年度 | 約240万人 | +約25万人 |
| 2040年度 | 約272万人 | +約57万人 |
2026年度までは年6.3万人ペース、2040年度までは年3.2万人ペースで職員を確保し続ける必要があります。実数が減少に転じている現状は、この確保ペースを大きく下回る状態です。
採用環境の厳しさを示す指標
介護関係職種の有効求人倍率
厚労省「一般職業紹介状況」では、介護関係職種の有効求人倍率は約4倍(3.94〜4.08倍)と全職種平均の約1.2倍を大きく上回っています。とくに訪問介護員は2023年度に14倍を超える水準で、人材確保がきわめて困難な状況が続いています。
不足感の広がり
公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査(令和5年度)」によると、職員の不足感(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)は64.7%。訪問介護員に限れば3区分合計で約8割に達しており、サービス類型による濃淡はあるものの、全体として人手不足感が強い状況です。
なぜ介護職員数が減少に転じたのか
需要拡大と供給縮小の同時進行
65歳以上人口は2025年に3,657万人となり、2042年に約3,878万人でピークを迎える推計です。需要は拡大を続ける一方、生産年齢人口は減少しており、業界をまたいだ人材獲得競争が激化しています。
他産業との処遇差
介護職員等処遇改善加算は2024年6月に4段階へ一本化され、月額1万円規模(基本給等)の改善が想定されています。R6年度処遇状況等調査では月給・常勤の介護職員の基本給等が11,130円増加するなど、処遇改善は進んでいますが、業界横断的な人材獲得競争のなかで相対的な処遇格差は依然として課題です。
養成課程への入学者減少
介護福祉士の養成施設への入学者数は近年低い水準が続いており、新規参入の縮小が将来の供給力低下につながりかねません。
離職要因と職場環境
R5年度の離職率は13.1%、R6年度は12.4%(調査開始以来の過去最低)と離職率自体は低下傾向にあります。一方で、新規入職を増やせなければ人員総数は維持できないため、定着策と採用策を両輪で進める必要があります。
現場で取り組める対策
短期・中期・長期の3つの時間軸で対策を整理します。
短期(今すぐ)|職員が「辞めない」職場づくり
- ハラスメント・人間関係に関する相談窓口の設置
- 1on1面談などコミュニケーション機会の定期化
- シフト・勤務時間の柔軟化(短時間勤務、夜勤免除など)
- 現場の業務棚卸しによる負担集中の見直し
中期(数か月〜半年)|処遇改善とICT活用
- 介護職員等処遇改善加算の取得・上位区分への移行
- キャリアパス制度と資格取得支援の整備
- 介護記録ソフト・見守り機器・インカムなどの段階的導入
- 介護テクノロジー導入支援事業(補助率最大3/4、自治体・年度で異なる)の活用検討
- 生産性向上推進体制加算(Ⅰ:月100単位/Ⅱ:月10単位)の要件確認
長期(年単位)|採用基盤と多様な人材の活用
- SNS・採用サイトでの情報発信強化
- 外国人介護人材(EPA・技能実習・特定技能)の戦略的受入れ
- 地域の養成校・高校・大学との接点づくり
- 業務分担の見直しと介護助手など多様な人材の組み合わせ
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護職員数の減少は今後も続きますか?
A. 1年の数字で長期トレンドを断定することはできませんが、生産年齢人口の減少が続くなか、何もしなければ供給縮小傾向は強まる可能性があります。厚労省の推計でも2040年度に向けて+約57万人の確保が必要とされており、対策強化が求められます。
Q2. 離職率は下がっているのに、なぜ職員数が減るのですか?
A. 離職率(2024年度12.4%)は過去最低水準ですが、入職者数や養成施設への入学者数が伸びていないため、ネットの増減はマイナスに振れる可能性があります。定着と採用を両輪で進める必要があります。
Q3. 小規模事業所でできる対策は何ですか?
A. 相談窓口の整備や1on1面談など、費用をかけずに着手できる定着策から始めるのが現実的です。そのうえで、処遇改善加算の上位区分取得や、補助金を活用したICT導入を段階的に検討するとよいでしょう。
Q4. 外国人介護人材は本当に戦力になりますか?
A. EPA・技能実習・特定技能のいずれも一定の要件のもとで運用されており、適切な日本語教育と生活サポートを行えば長期的な戦力となり得ます。2025年4月からは特定技能「介護」での訪問介護従事も可能となり、活躍領域が広がっています。
Q5. 国の支援制度はどこで確認できますか?
A. 厚労省・都道府県の介護保険担当窓口、地域医療介護総合確保基金の各年度の公募要領で確認できます。年度・自治体ごとに対象や補助率が異なるため、最新情報を窓口で確かめることが重要です。
まとめ
2023年度の介護職員数2.9万人減は、介護保険制度開始以来初めての減少という象徴的な数字です。一方で2026年度に+25万人、2040年度に+57万人を確保する必要があり、実数の減少傾向と将来の必要数とのギャップは拡大しつつあります。離職率自体は過去最低水準まで下がっており、定着策と並行して、処遇改善・ICT活用・外国人材受入などの採用基盤づくりを進めることが、これからの介護経営の重要テーマとなります。
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