介護離職対策で企業ができること|2025年改正法対応と支援の進め方
家族の介護を理由に従業員が退職する「介護離職」は、長く企業の人材リスクとして指摘されてきました。2025年4月から改正育児・介護休業法が段階的に施行され、企業には介護離職防止のための雇用環境整備や、対象従業員への個別の周知・意向確認などが義務付けられています。
本記事では、改正法で求められる対応の概要、就業規則の見直し方、相談体制の整え方、柔軟な働き方の導入手順を整理します。介護離職が表面化していない企業でも、いまから準備を始めておくことが将来の人材定着につながります。
介護離職が企業経営に与える影響
中堅・管理職層に集中するリスク
介護を担う従業員は40〜50代が中心とされ、組織の中核として業務をけん引している層と重なります。経験年数の長い社員が急に離職すると、後任の育成や顧客対応の引き継ぎに時間とコストがかかり、現場の生産性に直結するインパクトがあります。
採用・育成ノウハウの流出
退職した社員がもっていた業務ノウハウや社内人脈は、定量化しにくい資産です。介護を理由とする離職は本人の意向というより環境要因による面が大きく、「整備されていれば残れたはずの人材」を失うことになります。
採用市場での評価への影響
両立支援制度の充実度は、求職者がエントリー先を選ぶ際の比較項目として重視される傾向にあります。介護離職対策は「コストをかけて法令を守る取り組み」というだけでなく、採用力や定着率に効いてくる経営テーマとして位置づけることが大切です。
2025年改正法で企業に求められる対応
改正育児・介護休業法は、介護に直面する前段階からの情報提供と、個別の意向確認を企業に求めています。主な義務は次の3点です。
介護に直面する前の情報提供
40歳に到達した従業員などに対し、介護休業や介護休暇、短時間勤務といった両立支援制度を周知することが求められます。資料の配布や社内ポータルへの掲載など、本人がいつでも参照できる形で情報をそろえておくと、いざ介護が始まったときに制度を知らないまま退職を選ぶ事態を防げます。
介護の申し出があった際の個別周知と意向確認
従業員から介護の申し出があった場合、企業は利用可能な制度を個別に説明し、本人の働き方の希望や見通しをヒアリングする必要があります。介護の状況は要介護度や同居の有無、地域資源の利用状況によって大きく異なるため、画一的な対応ではなく一人ひとりに合わせた支援プランの提示が欠かせません。
雇用環境整備の措置
研修の実施、相談窓口の設置、事例の収集と提供、両立支援制度の方針周知のうち、いずれかの措置を講じることが事業主の義務とされています。複数を組み合わせて実施するほど、利用しやすい職場環境につながります。
企業が整える3つの基盤
基盤1:制度の点検と社内向け資料の整備
まず自社の就業規則が法定基準(介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、介護休暇は年5日(対象家族2人以上で10日))を満たしているかを確認します。次に、制度の概要・申請の流れ・相談窓口を1冊にまとめた社内ガイドを作成し、配布とイントラ掲載の両方で従業員がいつでもアクセスできるようにします。
基盤2:相談体制と専門家との連携
担当者を明確にした社内相談窓口を設けるとともに、社外の専門家(社会保険労務士、ケアマネジャー、地域包括支援センターなど)との連携先をリスト化しておきます。社内では話しにくい内容も第三者には相談しやすいため、外部窓口の設置は早期相談につながりやすい施策です。
基盤3:柔軟な働き方の選択肢
テレワーク、フレックスタイム、短時間勤務、時間単位の介護休暇など、業務特性に応じた選択肢を用意します。一斉導入が難しい場合も、まずは部署単位や職種単位で試験運用し、徐々に対象を広げる進め方が現実的です。
中小企業が活用できる支援
中小企業向けには、両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」など、介護休業の取得・職場復帰や両立支援制度の整備を後押しする助成金があります。要件や金額は年度ごとに見直されるため、申請を検討する際は厚生労働省と都道府県労働局の最新公募内容を必ず確認してください。
社会保険労務士など、助成金申請に詳しい専門家に相談することで、自社で利用しやすい制度を整理できます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 小規模企業でも介護離職対策は必要ですか?
A: 必要です。むしろ少人数の組織ほど、1人の離職が業務全体に与える影響が大きく、早期の制度整備が効果を発揮しやすい傾向があります。改正法の義務は事業規模を問わず適用されます。
Q2: 制度を整えても利用されないことはありますか?
A: 周知が不十分なまま制度だけが存在しているケースは少なくありません。管理職への研修や定期的な情報発信、相談しやすい環境づくりを並行して進めることで、利用率は徐々に高まります。
Q3: テレワークが難しい業種でも対応できますか?
A: 可能です。シフトの柔軟化、短時間勤務、介護休暇の時間単位取得など、業種に応じた選択肢があります。自社の業務特性をふまえて、現実的に運用できる制度から組み立てることが大切です。
まとめ
2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、介護離職防止のための雇用環境整備や個別周知が事業主の義務となりました。情報提供・個別面談・相談窓口設置・柔軟な働き方を組み合わせ、自社の規模や業務特性に合わせて段階的に整備することが、無理なく続けられる介護離職対策につながります。介護は誰にでも起こり得るテーマであり、早めの準備が貴重な人材を守る土台になります。
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