喀痰吸引等研修の概要|1号・2号・3号の違いと取得までの4ステップ
喀痰吸引等研修は、介護職員が医師の指示のもとで痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを実施できるようになるための研修です。対象者や実施できる行為によって1号・2号・3号の3種類に分かれており、働く施設や利用者に合わせて選ぶ必要があります。本記事では、3つの研修の違いと選び方、取得までの4ステップ、費用を抑える方法を整理して解説します。
喀痰吸引等研修とは
制度の背景
2012年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、一定の研修を修了した介護職員が、医師や看護師との連携のもとで痰の吸引と経管栄養を実施できるようになりました。それまで医師・看護師に限られていた行為を、研修を修了した介護職員も登録事業所において実施できる仕組みです。
取得後にできる医療的ケア
研修を修了して認定を受けると、登録事業所において次のケアを実施できるようになります。
- 痰の吸引:口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部からの吸引
- 経管栄養:胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養
特養や有料老人ホームでは、看護師を待たずに適切なタイミングで吸引が行える、訪問介護では利用者宅で経管栄養の注入が行えるなど、現場での対応の幅が広がります。
1号・2号・3号研修の違いと選び方
| 区分 | 対象 | 実施できる行為 |
|---|---|---|
| 1号研修 | 不特定多数の利用者 | 痰吸引3種類+経管栄養3種類(計6行為) |
| 2号研修 | 不特定多数の利用者 | 1号のうち、気管カニューレ内部吸引と経鼻経管栄養を除く4行為 |
| 3号研修 | 特定の利用者(ALS等の重度障害者など) | その利用者に必要な行為のみ |
1号研修
幅広い利用者がいる施設で働く方に適しています。実施できる行為が最も多く、就職・転職時にも評価されやすい区分です。
2号研修
気管切開をしている利用者が少ない施設や、経鼻経管栄養を扱わない施設では2号研修で十分対応できる場合があります。1号より学習範囲が狭いため、費用・期間を抑えやすい傾向があります。
3号研修
主に重度訪問介護や障害者施設で、特定の利用者に継続的にケアを提供するための研修です。講義時間が短く費用も抑えられる一方で、対象者が変わるたびに改めて研修を受ける必要があります。
選び方の目安
- 多様な利用者がいる特養・有料老人ホーム → 1号研修
- 気管切開・経鼻経管栄養が少ない施設 → 2号研修
- 重度訪問介護・特定の利用者への継続支援 → 3号研修
迷った場合は、将来の転職も見据えて1号研修を選ぶと幅広い職場で活かしやすくなります。
取得までの4ステップ
ステップ1:必要な研修区分を確認する
まず勤務先・希望先の施設に、どの区分の研修が必要かを確認します。施設によっては受講費用を補助するケースや、実地研修の受け入れに対応してくれるケースもあるため、事前に相談しておくと進めやすくなります。
ステップ2:登録研修機関に申込む
各都道府県のホームページに掲載されている「登録研修機関」のリストから、通学可能な機関を探します。確認すべきポイントは、立地、開講スケジュール、受講費用と支払い方法です。定員制のため、開講の1〜2か月前が締切となることが多くあります。
ステップ3:基本研修(講義+演習)と筆記試験
1号・2号研修では、講義50時間+演習が標準的な構成です。3号研修は講義8時間+演習1時間と短めです。講義では感染予防、安全確保、痰吸引・経管栄養の理論と手順などを学び、演習では人形を使って手技を反復練習します。筆記試験は講義内容から出題されるため、真面目に受講していれば対応できる難易度とされています。
ステップ4:実地研修・認定申請
実地研修は、看護師の指導のもと、実際の利用者に対して医療的ケアを実施する段階です。1号・2号は行為ごとに10〜20回の実施が必要で、3号は対象者に必要な行為について「安全に実施できる」と判断されるまで行います。実地研修が修了したら、都道府県に「認定特定行為業務従事者」の認定申請を行い、認定証の交付を受けて医療的ケアの実施が可能になります。
研修内容の概要
基本研修(1号・2号)
講義は50時間で、人間と社会、保健医療制度とチーム医療、安全な療養生活、清潔保持と感染予防、健康状態の把握、痰吸引と経管栄養の理論・実際、緊急時の対応などの分野で構成されます。演習では各行為を5回以上実施し、手順を身につけます。
基本研修(3号)
講義8時間で、重度障害者の地域生活支援に特化した内容を学び、演習1時間で対象者に必要な手技を確認します。
実地研修
口腔内吸引10回以上、その他の行為(鼻腔内吸引・気管カニューレ内部吸引・各種経管栄養)20回以上の実施が一つの目安です。勤務先で実施できるケース、登録研修機関が提携施設を紹介するケースがあり、進め方は機関ごとに異なります。
費用と費用を抑える方法
研修費用は機関や地域によって異なりますが、目安は次のとおりです。
| 区分 | 費用の目安 |
|---|---|
| 1号研修 | 6万〜15万円 |
| 2号研修 | 5万〜12万円 |
| 3号研修 | 1.5万〜2.5万円 |
実地研修費用は基本研修に含まれる場合と、別途必要な場合があります。費用を抑える方法としては、次の3つが代表的です。
- 事業所負担制度の活用:介護施設の多くがスキルアップ支援として受講費用を補助しています
- 介護福祉士実務者研修修了者の免除:基本研修(講義・演習)が免除され、実地研修のみの受講で済むケースがあります
- 自治体の助成金・補助金の確認:都道府県や市町村でスキルアップ支援の助成制度を設けている自治体があります
研修期間の目安は、1号・2号で基本研修15日程度+実地研修1〜3か月、3号で基本研修2日程度+実地研修1〜2か月です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 介護福祉士実務者研修との違いは?
A: 実務者研修は介護福祉士国家試験の受験要件として位置付けられる研修で、喀痰吸引等の基本研修部分は含まれますが、実地研修は含まれません。実際にケアを実施するには別途実地研修の受講が必要です。
Q2: どの研修を選べばいいですか?
A: 働く施設と対象とする利用者で判断します。多様な利用者の施設なら1号、気管切開等が少ない施設なら2号、特定の障害者への継続支援なら3号が適しています。
Q3: 実地研修はどこで受けられますか?
A: 勤務先での実施が基本です。難しい場合は登録研修機関に相談し、提携施設の紹介や、都道府県窓口からの受け入れ施設情報の入手を検討します。
Q4: 試験は難しいですか?
A: 講義内容からの出題で、合格基準は正答率9割以上が一般的です。真面目に受講していれば対応できる難易度で、不合格でも再試験を受けられます。
Q5: 取得後すぐに実施できますか?
A: 認定証交付後、登録特定行為事業者(または登録喀痰吸引等事業者)で、医師の指示と看護師との連携のもとで実施できます。
まとめ
喀痰吸引等研修は、介護職員が医療的ケアを安全に実施できるようになるための重要な研修です。1号・2号・3号の3区分があり、働く施設と対象者に応じて選ぶこと、基本研修と実地研修の2段階で構成されること、事業所負担や実務者研修修了者の免除を活用すれば費用を抑えやすいことが要点です。まずはお住まいの都道府県のホームページで登録研修機関を確認し、開講スケジュールと費用を比較するところから始めましょう。
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