介護人材2022年度データの読み解き|介護職員約215万人が示す分岐点
「2022年度のデータをいま見直す意味はあるのか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」では、2022年度の介護職員数約215万人が将来推計の基準点として用いられています。本記事では、この数字が持つ意味と、2026年度・2040年度の必要数との関係、現場で押さえておきたい人手不足の構造を整理します。
2022年度の介護職員数約215万人が「基準点」となる理由
第9期計画における位置づけ
厚生労働省の資料では、2022年度時点の介護職員数約215万人を基準として、2026年度に約240万人(+約25万人)、2040年度に約272万人(+約57万人)の介護職員が必要と推計されています。年間ペースに換算すると、2026年度までは年約6.3万人、2040年度までは年約3.2万人の確保が求められる計算です。
この基準点を起点に「あと何人を、どのくらいのペースで確保していく必要があるのか」を考えることで、自施設の採用計画や人員配置の議論を一次データに紐づけて進めやすくなります。
制度上の位置づけ
第9期介護保険事業計画は2024〜2026年度を対象とする計画期間であり、2022年度の実績は前期(第8期)の最終年度に近いタイミングのデータです。実績値(介護サービス施設・事業所調査などに基づく集計)と、計画上の必要数(都道府県集計に基づく推計)は性質が異なるため、両者を区別して扱うことが、データを正しく読むための第一歩になります。
2022年度を起点に見る人手不足の構造
必要数とのギャップ
2022年度の約215万人を起点に、2026年度・2040年度の必要数とのギャップを整理すると次のようになります。
| 年度 | 必要数の目安 | 2022年度実績との差 |
|---|---|---|
| 2022年度 | ― | 約215万人(実績) |
| 2026年度 | 約240万人 | 約+25万人 |
| 2040年度 | 約272万人 | 約+57万人 |
短期(2026年度まで)に集中的な確保が必要であることと、長期(2040年度まで)にわたって持続的に増員し続ける必要があることが、同じ表から同時に読み取れます。
有効求人倍率が示す採用環境
厚生労働省「一般職業紹介状況」によれば、介護関係職種の有効求人倍率はおおむね4倍前後(3.94〜4.08倍)で推移しています。全職種平均は約1.2倍であり、求職者1人あたりの求人件数の差が、介護分野の採用難の背景にあります。訪問介護員に限ると、2023年度時点の有効求人倍率は14.14倍と特に高い水準です。
不足感と離職率の現状
公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」では、介護サービス事業所のうち「大いに不足/不足/やや不足」を合わせた割合は64.7%、訪問介護員ではこの3区分の合計が約8割に達しています。一方で、離職率は令和5年度13.1%、令和6年度12.4%と、調査開始以来の過去最低水準まで改善しています。
これらの数字は、「離職率は改善しているが、必要数の伸びに対して採用が追いつかない」という構造を示しています。
2022年度データを実務で活かす3つの視点
1. 「実績」と「推計」を区別する
ニュースや解説記事では、実績値と推計値が同じ流れで紹介されることがあります。「215万人が実績、240万人・272万人が推計、その差分が今後必要となる増員数」という関係を意識すると、根拠を取り違えずに済みます。
2. 出典の調査名を確認する
主要な出典は次のとおりです。それぞれ調査対象や時点が異なります。
- 介護サービス施設・事業所調査(厚生労働省): 介護職員数などの実績
- 一般職業紹介状況(厚生労働省): 有効求人倍率
- 介護労働実態調査(公益財団法人介護労働安定センター): 離職率、不足感、賃金など
経営会議や行政との協議では、出典名を併記することで議論の信頼性が高まります。
3. 自施設の数字と並べて見る
全国の介護職員数や離職率は、施設規模やサービス類型によって状況が大きく異なります。自施設の離職率や充足率を、調査結果の全体平均・サービス類型別データと並べて確認することで、強み・弱みが明確になります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 2022年度の介護職員数はどの調査の数字ですか?
A: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」で、2022年度の介護職員数を約215万人として将来推計の基準にしています。
Q2: 2026年度と2040年度の必要数はどのくらいですか?
A: 同じ資料で、2026年度に約240万人(+約25万人)、2040年度に約272万人(+約57万人)の介護職員が必要と推計されています。
Q3: 有効求人倍率はどの程度ですか?
A: 厚生労働省「一般職業紹介状況」では、介護関係職種の有効求人倍率は約4倍で推移しており、全職種平均の約1.2倍を大きく上回っています。
Q4: 離職率も上がっているのですか?
A: 介護労働実態調査によれば、令和5年度の離職率は13.1%、令和6年度は12.4%と、過去最低水準まで改善しています。一方で、不足感を持つ事業所の割合は依然として高い状態です。
まとめ
2022年度の介護職員数約215万人は、第9期介護保険事業計画における将来推計の基準点として位置づけられています。2026年度+約25万人、2040年度+約57万人という必要数とギャップを並べて見ることで、人材確保のスケール感と時間軸が具体的に見えてきます。
一方で、有効求人倍率や不足感、離職率といった指標は、「離職は減っても採用が追いつかない」構造を示しています。実績データと推計データを区別し、出典に当たりながら自施設の数字と並べて読むことが、データを意思決定に活かすための基本姿勢です。
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