この記事は、介護・障がい福祉サービスを運営する法人の経営者・管理者に向けて、シフト表を「人員基準を満たす確認書類」から「経営判断の材料」に変えるための見方を整理したものです。
職員から「人が足りない」という声が上がったとき、増員以外の打ち手を検討するには、負荷がいつ・どこに・どういう形で偏っているのかを数字で示す必要があります。その材料は、すでにシフト表の中にあります。
シフト表が「配置の確認」で止まっている
多くの法人でシフト表は、必要な人数を満たしているかを確認するために作られ、確認が終わると保管されます。しかしシフト表には、誰が・いつ・どの役割で入っていたかという情報が時系列で蓄積されています。この蓄積を横断して見ると、勤務表を1か月単位で見ているだけでは分からない構造が現れます。
ここで見たいのは個人の頑張りではなく、人が入れ替わっても同じ場所に負荷が集まる構造です。構造であれば、シフトの組み方や業務の配置を変えることで手が打てます。
シフトから読む3つの視点
視点1:時間帯ごとの厚みを、曜日別に重ねて見る
1か月のシフト表を曜日ごとに重ねると、常に人が薄くなる時間帯が浮かび上がります。多くの事業所では、送迎・入浴・記録・申し送りといった業務が特定の時間帯に集中しており、そこに人員の谷が重なると、毎日同じ時間に現場が逼迫します。
この構造が見えれば、打ち手は増員だけではありません。記録を別の時間帯に移す、申し送りの方法を変える、といった業務側の調整で緩和できる場合があります。
視点2:役割を担える人数を数える
シフト表を「人数」ではなく「その役割を担える人が何人いるか」で見直します。特定の資格や担当が必要な役割を2〜3人でしか回せていない場合、その人たちは休みも研修も取りにくくなります。これは本人の問題ではなく配置の構造です。
数えた結果は、育成計画の優先順位に直結します。「誰に、どの役割を、いつまでに担えるようにするか」を名指しで決められるようになります。
視点3:経験年数の組み合わせを見る
人数の条件だけでシフトを組むと、経験の浅い職員が集まる日と、ベテランが集まる日が偶然できます。前者の日には判断の相談が管理者に集中し、後者の日には育成の機会が失われます。シフトの条件に経験年数の分布を加えるだけで、この偏りは減らせます。
可視化を経営会議の材料にする
1. 集計は月1回、既存の会議に載せる
新しい会議を作ると続きません。既存の管理者会議や運営会議の議題に、時間帯の厚み・役割別の人数・経験分布の3点を毎月載せる形にします。集計は表計算で足ります。
2. 個人名の議論にしない
可視化した結果を特定の職員の働き方の評価に使うと、現場は数字を出さなくなります。議論の対象は配置と業務の設計であることを、最初に明示します。
3. 打ち手を1つに絞って試す
3つの視点から課題が同時に見えても、一度に手をつけると効果が判別できません。翌月は1つだけ変え、同じ集計で変化を確認します。
数字が示すのは「増員が要る場所」だけではない
可視化の結果、どうしても増員が必要だと判断される場合もあります。その場合でも、どの時間帯・どの役割に必要なのかを示せるかどうかで、採用の要件も、採用後の定着も変わります。「人が足りない」という総論のままでは、採用しても配置が最適化されず、同じ逼迫が繰り返されます。
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よくある質問
Q1. 集計に使えるシステムがありません。表計算でも可能ですか。
A. 可能です。3つの視点はいずれも、シフト表の情報を数え直すだけで得られます。まずは1か月分を手作業で集計し、続けられる形が見えてから仕組み化を検討してください。
Q2. 小規模事業所でも意味がありますか。
A. 職員数が少ないほど、役割を担える人数の偏りは深刻になります。視点2だけでも先に確認する価値があります。
Q3. 可視化した結果、打ち手が見つからない場合はどうすればよいですか。
A. その場合は、業務そのものの量と手順に原因があることが多いため、対象時間帯の業務を洗い出し、記録や連絡の方法を見直す方向で検討してください。配置だけでは解決しない課題を切り分けられること自体が、可視化の成果です。
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