介護士が足りない理由と現場でできる5つの対策

介護士不足の背景にある少子高齢化・待遇・離職の連鎖を整理し、定着率向上、処遇改善加算、業務効率化、外国人材、地域連携など、現場で取り組める5つの対策を解説します。

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介護士が足りない理由と現場でできる5つの対策

「人手が足りず夜勤の負担が大きい」「採用募集をしても応募が集まらない」——介護現場の人手不足は、長期的な構造的課題です。本記事では、第9期介護保険事業計画や介護労働実態調査をもとに、介護士不足の背景にある本質的な原因を整理し、施設規模を問わず取り組める5つの対策を解説します。

介護士不足の現状

需給ギャップの大きさ

第9期介護保険事業計画では、介護職員の必要数は2026年度に約240万人(2022年度比+約25万人)、2040年度には約272万人(同+約57万人)と推計されています。年間確保ペースは2026年度までで年6.3万人、2040年度までで年3.2万人が必要とされ、慢性的に不足する見通しが示されています。

採用の難しさ

介護関係職種の有効求人倍率は約4倍で、全職種平均(約1.2倍)と比べて大きく高い水準です。訪問介護員に至っては14.14倍(2023年度)と、特に深刻な売り手市場となっています。介護労働実態調査(令和5年度)では、不足感を持つ事業所は約65%(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)に達し、訪問介護員に限ると約8割が不足と回答しています。

離職率は改善傾向

一方、離職率は近年改善傾向にあり、令和6年度の介護労働実態調査では12.4%と調査開始以来の過去最低水準を記録しました(令和5年度は13.1%)。問題の中心は「辞める人の多さ」よりも、「採用が追いつかない」「労働力供給が減っている」という点に移りつつあります。

なぜ介護士が足りないのか|3つの本質的原因

原因1: 少子高齢化による需給バランスの崩壊

65歳以上人口は2042年に約3,878万人でピークを迎える見通しで、75歳以上人口割合は2055年に26.5%(4人に1人)に達する見込みです。一方で生産年齢人口は減少傾向にあり、需要が増える一方で担い手は減るという構造が続きます。

原因2: 給与・待遇への評価

処遇改善加算の一本化(2024年6月)により、基本給等で月額11,000円規模、平均給与全体で月額14,000円規模の改善が想定され、訪問介護では最上位区分の加算率が24.5%(統合前最高22.4%)と引き上げられました。それでも他産業との給与差や、業務の身体的・精神的負担への評価は依然として課題です。

原因3: 離職と採用難の相互作用

採用難で既存職員の負担が増し、それが離職リスクを高めるという循環が生まれやすい構造があります。離職要因として、人間関係や評価制度の不透明さ、キャリアパスの見えにくさが挙げられることも多く、給与だけで解決しない側面があります。

介護士不足が引き起こす主な影響

影響1: 職員の業務負担の増加

人手不足により1人あたりの業務量が増え、夜勤回数の増加や残業の常態化につながります。腰痛などの身体的負担や、精神的疲労による休職・離職のリスクが高まります。

影響2: ケアの質低下と事故リスクの増加

人手が足りなければ、一人ひとりに向き合う時間が減り、見守りや個別ケアの質が下がります。事故リスクの増加にもつながりやすい構造です。

影響3: 経営への影響

人員配置基準を満たせない場合、報酬上の影響が生じることもあります。新規受け入れの停止や、地域での介護資源不足にもつながり、地域包括ケアシステムの観点でも重大な課題です。

今すぐできる介護士不足対策5選

対策1: 既存職員の定着率を高める

採用と並行して、いま働いている職員の離職を防ぐことが最優先課題です。

  • 月1回の1on1面談で、不満やキャリア希望を早期に把握する
  • 希望シフト反映率を高める仕組みづくり(シフトソフトの活用も含む)
  • 新人にメンター職員を配置する
  • 評価とフィードバックの定期化

定着率の向上は、新人を育成する時間の確保にもつながり、長期的な採用力強化の基盤になります。

対策2: 処遇改善加算を最大限活用する

2024年6月に一本化された処遇改善加算を、未取得の場合は申請を進めましょう。すでに取得している場合も、上位区分への切替を検討する価値があります。

  • 経験年数・資格・役職に応じた賃金テーブルの整備
  • 加算による配分ルールの透明化
  • 改善内容を職員に分かるように明示

申請には一定の準備期間が必要なため、社会保険労務士などの専門家への相談も選択肢の一つです。

対策3: 業務効率化で「見えない時間」を創出する

ICT・介護ロボットの活用による業務効率化は、離職要因の軽減と採用力強化の両面で効果を発揮します。

  • タブレットや音声入力による記録業務のデジタル化
  • 見守り機器による夜間負担の軽減
  • 委員会・会議のオンライン併用
  • 介護テクノロジー導入支援事業の活用(補助率最大3/4。自治体・年度で異なる)
  • 生産性向上推進体制加算(2024年度新設、Ⅰ:月100単位、Ⅱ:月10単位)を踏まえた組織的な取り組み

対策4: 外国人介護人材の受け入れを検討する

特定技能、技能実習、EPA(経済連携協定)などの制度を活用し、外国人介護人材を受け入れる事業所が増えています。2024年度の制度改正で、訪問介護でも外国人材の従事が可能になりました。

  • 登録支援機関との連携
  • 共同受入れによるコストの分散(複数の小規模事業所での協力)
  • 業務マニュアルの多言語化や、文化・宗教面への配慮

受入れ後の定着には、生活支援・日本語教育の継続的なサポートが重要です。

対策5: 地域連携と潜在介護士の復職支援

ハローワーク、社会福祉協議会、介護人材確保のための地域団体と連携し、復職希望者への研修や情報提供を実施する事業所が増えています。

  • 短時間勤務・扶養内勤務など、復職しやすいシフト設計
  • 厚生労働省の貸付制度(復職準備金など)の周知
  • 子育てや家族の事情と両立できる働き方の整備

経験者の復職は、即戦力としての貢献が期待できる重要な選択肢です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護士不足はいつまで続く見込みですか?

A: 第9期介護保険事業計画では2040年度時点で+約57万人の確保が必要とされており、長期的な課題です。その間、定着率向上や生産性向上を組み合わせて乗り切る発想が求められます。

Q2: 小規模施設でも外国人材の受入れは可能ですか?

A: 登録支援機関を活用すれば、単独で受入支援体制を構築する必要はありません。複数事業所での共同受入れも選択肢です。受入後の生活支援・日本語教育を継続できる体制かを事前に検討してください。

Q3: 処遇改善加算の申請は難しいですか?

A: 一本化により様式が整理されましたが、要件確認や賃金改善計画の作成は一定の作業を伴います。社会保険労務士などの専門家への相談で効率的に進めることもできます。

Q4: 給与を上げる余裕がない場合、どこから始めればよいですか?

A: 金銭面以外の働きやすさ改善(希望シフト反映、有給取得促進、1on1面談など)はコストを抑えて進められます。職員満足度調査で課題を可視化し、優先順位をつけて取り組むのが現実的です。

Q5: 採用募集をしても応募が来ません。何を見直せばよいですか?

A: 求人内容の見直しが第一歩です。給与・休日・シフト柔軟性・キャリアパスを具体的に書き、職場の雰囲気が伝わる写真や職員の声を掲載しましょう。SNSやホームページでの継続的な情報発信も効果が期待できます。

まとめ

介護士不足は、少子高齢化・処遇への評価・離職の連鎖が絡み合う構造的な課題です。第9期介護保険事業計画の見通しを踏まえると、長期にわたって人材確保が経営の中心テーマとなり続けます。

しかし、現場で取り組める対策は確かに存在します。既存職員の定着率向上、処遇改善加算の最大限活用、業務効率化、外国人材の受け入れ、地域連携の5つを、施設の規模と状況に合わせて優先順位をつけて実行しましょう。まずは職員との1on1で「いま一番負担になっていること」を聞き取ることから始めてください。小さな改善の積み重ねが、「働き続けたい職場」をつくります。

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