■ リード
厚生労働省の調査により、日本年金機構の障害年金センターで職員の独断によって認定調書が廃棄され、別の認定医に審査を依頼し直していたケースが約7,500件にのぼることが明らかになった。
なかには、当初「支給」とされた判定が最終的に「不支給」へと転じた事例も生じており、審査の公正性に対する疑念が広がっている。
こうした事態を受け、障害年金申請の専門家が申請者に向けて具体的な備えを発信している。
■ 本文
約7,500件で審査がやり直しに
2026年1月16日、厚生労働省は障害年金の審査をめぐる調査結果を公表した。
日本年金機構の障害年金センターにおいて、担当職員の判断で最初の認定医が作成した認定調書を廃棄し、別の認定医に審査を引き継がせていたことが判明。
その件数は約7,500件に達した。
このうち、令和7年10月以降に認定が完了し内容が確認できる811件を精査したところ、当初「支給」と判断されていたにもかかわらず、最終的に「不支給または下位等級」へと変更された事例が17件存在した。
さらに「まだ判断していない」段階から不支給に転じたケースを加えると、合計41件が不利益な結果を受けたことになる。
厚生労働省は専門家による最終判断の妥当性に問題はなかったとする立場をとっているが、認定プロセスの客観性をめぐって社会的な疑問が浮上している。
専門家が指摘する「書類の曖昧さ」という根本問題
この問題に対し、うつ病による障害年金申請に特化した支援機関である社会保険労務士法人 全国障害年金パートナーズ(東京都千代田区、代表:宮里竹識)は独自の見解を示した。
同法人によれば、審査の過程で「疑義あり」と判断されるケースの多くは、申請書類の曖昧さや不備に起因するという。
具体的には、障害等級欄への誤記入、診断書と申立書との間の説明密度のズレ、初診日を証明する資料の準備不足などが主な原因として挙げられている。
制度が複雑である以上、申請者側が意図せず不備を生じさせてしまうケースは珍しくない。
その結果、審査の場で疑義が発生し、プロセスが複雑化する一因となっているとの分析だ。
申請者ができる3つの備え
同法人は2,500名超の支援実績と98.8%の受給率をもとに、審査での不利を防ぐための対策として以下の3点を挙げている。
① 初診日の証拠を誰もが理解できる形で整理する
精神疾患では転院歴が多く、初診日の特定が困難になりがちだ。
紹介状・診療情報・領収書といった資料を集め、転院の経緯を時系列で整理しておくことが重要だとしている。
② 診断書と申立書の説明に一貫性を持たせる
症状の波や日常生活への支障、支援の具体的な内容(誰が・何を・どの頻度で)を明確に記述し、両書類の間で矛盾が生じないよう提出前に確認することが求められる。
③ 第三者によるチェックと書類の控え保全を徹底する
書類間の整合性を第三者の目線で確認するとともに、全提出物をPDF化して保管しておくことで、万が一不支給となった際の検証にも備えられる。
今後の動向と制度改善への期待
宮里代表は、今回の問題を審査側が恣意的に結論を操作したという単純な図式で捉えるべきではなく、複雑な認定プロセスの構造的な課題として見るべきだと述べた。
その上で、申請者自身がコントロールできる範囲の準備を着実に行うことの重要性を強調している。
厚生労働省は現在、2024年5月以前のケースを含めた職員へのヒアリング調査を進めており、2026年4月末を目途に新たな対応方針を公表する予定としている。
制度側の改善と当事者の備えが両輪で進むことが、今後の課題となりそうだ。
参照元:社会保険労務士法人 全国障害年金パートナーズ(PR TIMES掲載、2026年2月25日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000167940.html
厚生労働省「障害年金における認定調書の取扱いについて」(2026年1月16日公表)
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