令和7年度介護労働実態調査|不足感65.8%の実像

介護労働安定センターが令和7年度介護労働実態調査を公表(2026年7月29日)。離職率12.4%、不足感65.8%、定着に効くのは賃金より休みやすさ。経営者が読み取るべき3点を解説します。

令和7年度介護労働実態調査|不足感65.8%の実像

この記事は、人材の確保と定着に取り組む介護事業所の経営者・管理者に向けて、公表されたばかりの全国調査の結果を経営判断の材料として読み解くものです。

調査の概要

公益財団法人介護労働安定センターは2026年7月29日、「令和7年度 介護労働実態調査」結果の概要を公表しました(出典: 介護労働安定センター、2026年7月29日資料提供)。本調査は厚生労働省の委託により、事業所調査は平成14年度から、労働者調査は平成15年度から毎年実施されているものです。調査は令和7年10月1日〜31日に実施され、調査対象基準日は令和7年10月1日とされています。

公表された主な数値

離職率は横ばい、採用率は小幅上昇

訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は12.4%で横ばいとなる一方、採用率は14.6%と2年ぶりの上昇となりました。ただし上昇幅は0.3ポイントと小幅にとどまっています。

不足感は前年度より上昇

事業所全体の従業員の過不足感について、「大いに不足」11.1%、「不足」、「やや不足」33.8%を合計した「不足」とする事業所の割合は65.8%で、前年度より上昇しました。このうち、より深刻な「大いに不足」と「不足」の合計は32.0%と、約3事業所に1事業所にのぼります。

職種別では訪問介護員の深刻度が最も高く、「大いに不足」と「不足」の合計は58.6%となっています。

効果があったとされる方策

採用において効果があると事業所が回答した方策では「賃金水準の向上」が38.4%で最も高く、職場定着において効果があると回答された方策では「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が57.9%で最も高くなっています。

働きがい・働きやすさ

訪問介護員の68.3%、介護職員の56.8%が、今の仕事や職場は「働きがいがある」と回答しています(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)。「働きやすい」については訪問介護員72.7%、介護職員63.3%でした。

スポットワークの活用

過去1年間にスポットワークを利用したことがある事業所は8.9%で、そのうちスポットワークから正社員等へ雇用したことがあるのは28.0%でした。介護職員の過不足状況別に見ると、「大いに不足」とする事業所で15.3%、「不足」とする事業所で14.8%と、不足感の高い事業所ほど利用割合が高くなっています。

経営者が読み取るべき3つのポイント

採用に効くものと定着に効くものは、性質が違う採用で効果があるとされた1位賃金水準の向上 38.4%原資が必要 / 一度上げたら下げられない他法人も同じ手を打つため差がつきにくい→ 収支の裏づけがないと着手できない定着で効果があるとされた1位休暇の取得・勤務日時の変更をしやすい職場づくり 57.9%原資より「代替できる状態」が要る引き継ぎ・記録・情報共有の仕組みが前提→ 仕組み化で着手できる余地がある休みを取りやすくするとは、「その人以外でも回る状態」を作ること記録・引き継ぎが属人化していれば、制度上休めても実際には休めない不足感65.8%・深刻な不足32.0%(令和7年度調査)という前提では「人を増やして解決する」計画は成立しにくい。仕組みで支える設計が先になる

ポイント1: 採用率が上がっても不足感は解消していない

採用率は2年ぶりに上昇しましたが、上昇幅は0.3ポイントで、不足とする事業所の割合はむしろ前年度より上昇しています。採用の努力だけで不足感が解消する局面ではないことを、この2つの数字の組み合わせが示しています。

ポイント2: 定着で効くとされた方策は「原資」より「仕組み」を必要とする

採用で最も効果があるとされた「賃金水準の向上」には原資が要ります。一方、定着で最も効果があるとされた「休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」は、原資よりも「その職員でなくても回る状態」を必要とします。

記録や引き継ぎが特定の職員の頭の中にある状態では、制度上は休暇が取れても実際には休めません。休みやすさは、情報共有の仕組みの結果として生まれます。

ポイント3: スポットワークは不足感の高い事業所ほど使われている

スポットワークの利用は全体では8.9%にとどまりますが、不足感が「大いに不足」の事業所では15.3%と高くなっています。短期の人手を受け入れる場合、その日のうちに業務を伝えきれる状態が前提になります。手順書や記録の整備は、ここでも効いてきます。

今日から着手できること

調査結果を経営に反映させる第一歩は、自法人の数値を全国平均と並べてみることです。離職率、採用率、有給休暇の取得率を出し、公表値と比較します。差がある項目が、優先的に手を打つべき領域です。

そのうえで、休みやすさを支える仕組み(記録の共有、引き継ぎの標準化、担当外でも対応できる情報整理)に着手します。人材育成の内製化については福祉のDX人材育成|外部研修に頼らない内製化5段階で、法人としての点検の仕組みは福祉法人の内部監査を機能させる3つの設計で扱っています。

なお、障がい福祉分野についても人材確保の議論が進んでいます。関連する動きは障害福祉の人材確保検討会が初会合|注目3ポイントをご覧ください。

まとめ

令和7年度調査が示したのは、採用がわずかに改善しても不足感は緩んでいないという状況です。そのうえで、定着に効くとされた方策の中心は賃金ではなく「休みやすさ」でした。

休みやすさは、就業規則を変えるだけでは実現しません。誰かが休んでも業務が回る状態、つまり情報が個人ではなく組織に蓄積されている状態を作ることが、実務上の中身になります。詳細な数値は、介護労働安定センターの公表資料をご確認ください。

よくある質問

Q. この調査の対象は介護分野に限られますか。
A. 本調査は介護事業所と介護労働者を対象とした調査です。障がい福祉分野や児童福祉分野は対象に含まれていません。ただし、人員不足の構造や定着に関する論点には共通する部分が多く、参考指標として活用している法人もあります。

Q. 自法人の離職率はどう計算すればよいですか。
A. 調査では一定の定義に基づいて算出されています。自法人の数値を比較する際は、公表資料に記載された算出方法を確認し、同じ定義で計算してください。定義が異なる数値を並べても比較になりません。

Q. 詳細な報告書はどこで見られますか。
A. 介護労働安定センターのウェブサイトで、結果の概要のほか、事業所調査結果報告書と労働者調査結果報告書が公開されています。都道府県版が別途掲載される場合もあるため、地域の実情と比較したい場合はあわせてご確認ください。

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