この記事は、介護・障がい福祉サービスを運営する法人の経営者・管理者に向けて、直近の業界ニュースを経営判断の観点から解説するものです。
何が公表されたのか
株式会社ライフシフトは2026年8月11日、介護現場のICT・DXをテーマにした書籍を全文無料で公開したと発表しました(出典: PR TIMES、株式会社ライフシフト、2026年8月11日)。同社の発表では、公益財団法人介護労働安定センターの介護労働実態調査(令和6年度)を出典として、ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記機能を日常的に利用している事業所が75.4%である一方、昼間の業務負担軽減に効果を感じている事業所は49.4%であるという2つの数値が示されています。
一次情報は次のリリースで確認できます。
介護のICT導入は75.4%、それでも負担が軽くなったと感じている事業所は49.4%(PR TIMES)
2つの数値の差が意味すること
導入している事業所の割合と、効果を実感している事業所の割合に開きがあるという指摘は、多くの法人の実感と一致するのではないでしょうか。導入したのに楽になっていないという状態は、機器やソフトの性能の問題として語られがちですが、実際には業務の設計側に原因があることが少なくありません。
以下、この差がどこで生まれるのかを3つの視点で整理します。なお、数値の詳細な定義や調査方法については、出典元の調査結果でご確認ください。
差を埋める3つの視点
視点1:紙と電子の並走をいつまで続けるか
最も多いのが、電子システムを導入しながら紙の様式も残っている状態です。この状態では、同じ内容を2度残すことになり、導入前より作業が増えます。並走をやめる日を決めず、現場の判断に委ねていると、並走は恒常化します。どの帳票を、いつから電子に一本化するのかを法人として決める必要があります。
視点2:記録の起点が現場に移っているか
入力そのものは電子化されていても、現場で手書きメモを取り、後でまとめて入力する流れが残っていれば、作業量は変わりません。記録が生まれる時点でそのまま残る形になっているかを確認します。ここは端末の台数や置き場所、入力にかかる時間といった、業務動線の設計の問題です。
視点3:確認・修正の工程が膨らんでいないか
入力を効率化すると、今度は内容を確認する工程に負担が移ることがあります。管理者が全件を読み直す運用になっていれば、法人全体の作業時間は減りません。何を確認し、何は担当者に委ねるのかという基準を決めることで、この工程は圧縮できます。
経営として確認しておきたいこと
導入の可否を議論する段階は多くの法人で過ぎており、論点は「入れたものが効いているか」に移っています。効いているかを判断するには、導入前後で比較できる数字を持っておく必要があります。導入時に測定していない場合でも、これから範囲を広げる業務については、変更前の状態を測っておくことをおすすめします。
また、効果が出ていない場合に、ツールを入れ替えるのか、業務の設計を変えるのかを切り分けることも重要です。上の3視点はいずれも、ツールを替えても解消しない種類の課題です。
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よくある質問
Q1. 紙を完全になくす必要がありますか。
A. 必ずしも必要ではありません。重要なのは、同じ内容を紙と電子の両方に残す運用をなくすことです。紙で残す帳票を決め、その範囲では電子入力を求めない、という切り分けが現実的です。
Q2. 現場から「入力が増えた」と言われた場合、どう扱うべきですか。
A. どの工程で増えたのかを具体的に聞き取ってください。入力そのものなのか、確認・修正なのか、二重記入なのかで、打つ手がまったく異なります。
Q3. 導入前の数字を測っていない場合、効果は評価できませんか。
A. 過去に遡って測ることはできませんが、これから対象を広げる業務については、変更前の状態を2週間程度測っておくことで比較が可能になります。次の一手から始めれば十分です。
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