介護現場の夜間対応が危機的状況に8,000施設調査が浮き彫りにする構造的課題

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介護施設の夜間体制が深刻な状態にあることが、大規模な実態調査から明らかになりました。全国の施設のうち約17%が対応の崩壊寸前と答え、半数近くが具体的な対策を講じていないなど、認識と行動の大きなズレが存在しています。こうした状況を受け、テクノロジー企業が医療現場の知見を活かした夜間支援サービスの強化に乗り出しています。

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深刻な実態調査――現場の本音を数値化

株式会社アンカーが2025年4月から12月にかけて全国8,000の介護施設を対象に実施した調査によると、夜間体制に対する危機感は業界全体に広がっています。

調査結果から見えてくるのは、施設間の状況のばらつきと、業界全体の抜本的な改善の遅れです。夜間体制に満足していると回答した施設は12%にとどまる一方、既にオンコール支援の導入や検討を進めている施設は36%、強い危機感を抱く施設は35%となっています。最も懸念される点は、対応が崩壊寸前の状態にあると述べた施設が17%存在することです。

さらに注目に値するのは、約50%の施設が夜間体制の改善に向けた具体的な対策をまだ講じていないという結果です。危機認識がありながらも、実際の行動につながっていない現状が浮き彫りになっています。

「人がいない」ではなく「考える余裕がない」

興味深いことに、調査では従来指摘されていた「人手不足」よりも、「人員は配置されているものの、次の判断を考える余力がない」という回答が多く集まりました。これは単なるマンパワーの問題ではなく、夜間という限られた環境の中で、判断者に過度な負担がかかっていることを示しています。

この構造的な問題が長年対策されずに続いてきた背景には、業界全体が解決策を先延ばしにしてきた側面があると考えられます。

医療現場から介護へ――新しいアプローチ

アンカーは、医療機関で実装されている夜間対応の仕組みを介護現場向けに再設計したサービスをアップデートしました。2026年1月9日より、夜間に発生した相談や判断内容をリアルタイムで文書化し、関係者と共有する「即時報告サービス」の提供を開始しています。

このサービスの背景には、医師である創業者が病院勤務時に目撃した介護現場の実態があります。高齢患者の搬送時に医療情報が不足していたり、判断内容が記録されていなかったり、夜間は医師や看護師に連絡が取りにくかったりするなど、医療と介護の連携における多くの課題を認識してきました。

創業者は「問題は人員ではなく仕組みにある」と指摘し、構造的な改善に取り組むことを決定しました。

夜間対応の「見える化」で何が変わるか

新サービスの特徴は、従来の「電話代行業務」とは異なり、夜間対応そのものを包括的に再設計している点です。

判断の即時記録化:夜間に発生した相談や判断の内容がその場で整理され、ファックスやメール、電話などの現場に合わせた手段で即座に共有されます。

医師との連携強化:看護師が一次対応を行い、必要に応じて医師が判断に直接関与する仕組みになっており、医療的なサポートと記録の作成が同時に進みます。

翌日への情報伝達:夜間に何が起きたのかが明確に記録されるため、翌朝の申し送りや医療機関への情報提供がスムーズになります。

波及効果――現場、利用者、社会全体へ

このようなアプローチが定着することで、複数のレベルで改善が期待されています。

介護職員にとっては、判断に対して医学的なバックアップが得られることで安心感が高まり、離職の抑止にもつながる可能性があります。入居者と家族にとっては、対応の透明性と信頼性が向上します。施設経営者にとっては、リスク管理が事前段階で実現され、問題が深刻化する前に対応できるようになります。

さらに広い視点からは、不必要な救急搬送の減少や入院期間の短期化、医療資源の最適配分により、社会全体の医療・介護コスト削減に貢献する可能性があります。

業界内での位置付け

アンカーのサービスは、医療現場で実際に機能してきた仕組みを介護に適用するというユニークなアプローチを取っており、導入・相談件数は前年比で10倍以上のペースで増加しているとされています。

これは単なる業務効率化ではなく、高齢化社会における社会福祉コストの持続可能性という、現在業界全体で議論が高まっているテーマへの実践的な回答でもあります。

まとめ

介護現場の夜間体制が抱える課題は、人手不足だけでは説明できない複雑な構造を持っています。医療と介護の連携強化、判断と記録の一体化、情報の即時共有といった仕組みの整備が、現場の負担軽減と社会的コスト削減の両立につながるという考え方が、業界内で広がりつつあります。今後、こうしたアプローチが他の施設やシステムでも導入されるかどうかが、介護業界全体の改善を左右する重要な要素となるでしょう。


参照元

株式会社Anchor プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000171037.html 

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