介護職の処遇改善に「高い期待」も「現場への実現に不安」 全国474人の現場調査で二極化が明らかに

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2025年度補正予算の介護職員賃上げ支援策が成立する中、介護職の現場からは処遇改善への期待と課題が同時に浮かび上がっている。全国の介護職員を対象とした意識調査では、6割以上が期待を示す一方で、賃上げだけでは解決できない構造的な問題についての指摘も相次ぐ。


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賃上げへの期待と懸念が混在する現場の声

レバウェル株式会社が運営する介護職専門の求人サービスは、2025年12月に全国の介護職員474人を対象に意識調査を実施した。政府による処遇改善支援策に対する現場の受け止め方を把握するための調査である。

結果は明確に、職員の間で異なる見方が並存していることを示した。賃上げへの期待度については、「非常に期待している」と回答した層が32.3%、「やや期待している」が28.7%で、合わせて61.0%の職員が肯定的な見方を示した。一方で、「あまり期待していない」「全く期待していない」と答えた層も25.3%に達している。

政府の支援策では、月額1万円相当の賃上げを基本としており、要件によっては1人当たり月額約1.9万円相当の処遇改善を実施する方針である。しかし、実際に必要だと考える月額の引き上げ幅を聞くと、5万円以上の引き上げを望む層が34.2%で最多となった。この結果から、政府の支援水準を大幅に上回る改善を求める声が現場で強いことが浮き彫りになっている。

一方で、「現状で十分満足している」と答えた層(4.2%)に加え、5千円~2万円程度の引き上げで良いと考える層を合算すると33.2%となり、約3人に1人は政府の支援策と同等水準での改善で納得する可能性も示された。

金銭以上に求められる職場環境の改善

注目すべきは、賃上げ以外に職員が強く求める改善内容である。最も多く挙げられたのは「人員の増員や配置見直しによる業務負担の軽減」で、7割以上(70.9%)の職員が重要だと指摘している。続いて「働き方の柔軟性向上」が50.8%、「職場の人間関係や雰囲気の改善」が38.0%となった。

これらの数値は、介護現場が直面する根本的な課題を映し出している。慢性的な人手不足による業務量の増加は、職員の離職原因となっており、賃金引き上げだけでは人材確保と定着につながらないという認識が現場に共有されていることを示唆している。

就業継続意欲が高まる見込みも、転職検討層は約4割

賃上げが実現した場合の職場での就業継続意欲について、「大幅に高まる」(29.7%)と「やや高まる」(41.6%)を合わせると71.3%の職員が働き続けたい気持ちが強まると回答した。処遇改善が人材定着に一定の効果を持つ可能性を示す結果である。

しかし、賃上げが期待に届かなかった場合の行動については、より複雑な構図が見えてくる。「現在の職場で働き続ける」と答えた層は50.6%と半数程度である一方で、「介護職員として別の職場への転職」を検討する層が20.0%、「他業界への転職」を考えている層が16.9%で、合計36.9%に達している。

つまり、賃上げの実現度合いが、介護職からの離職や業界からの流出を左右する可能性が大きいということを意味している。支援策の効果は、その内容だけではなく、期待値とのギャップの大きさにも左右されるのである。

支援策が現場に届くまでの課題

調査コメントの中には、支援策への期待とともに、実現可能性についての不安も多く寄せられている。特に重要な指摘が、「法人単位への給付では、現場の職員まで支援が十分に行き渡るか懸念がある」という声である。

支援金が施設経営の別の用途に充てられるのではないか、あるいは職員全員に公平に配分されるのかといった懸念は、過去の処遇改善加算制度における現場での経験に基づくものと考えられる。支援効果を確実に現場職員の待遇改善につなげるための仕組みの透明化と、実行確認体制の構築が重要な課題として浮かび上がっている。

また、人材育成体制の未整備についても指摘されている。新しい人材が増えても、それを教育指導できる体制が整備されなければ、サービスの質維持が困難になるという現実的な課題が挙げられている。

構造的な課題解決に向けた総合的アプローチの必要性

超高齢化社会の進展に伴い、介護需要は年々増加している。一方で、介護職の有効求人倍率は全職業平均の約3倍以上に達しており、慢性的な人手不足は解決されていない。

今回の政府による補正予算案は、こうした背景の中で打ち出された施策である。調査からは、賃上げが職員の就業意欲を高める効果が期待できる一方で、それだけでは業界全体の課題解決には至らないことが明らかになった。

介護現場が求めているのは、金銭的な処遇改善に加えて、人員確保による業務負担の適正化、働き方の柔軟性向上、職場環境の改善といった、総合的な施策の実行である。支援策を実際の現場改善につなげるためには、施設経営者、行政、職員間の密接な協働と、透明性のある情報開示が不可欠である。


参照元

PR TIMES「介護職員の約6割が賃上げに『期待』、希望額は『月5万円以上』が最多。一方で現場に行き渡るのか不安の声も」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000838.000010591.html

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