介護人手不足の原因を3層構造で解明|2026年最新データと経営者が今すぐできる対策

福祉経営

介護現場の人手不足に悩んでいませんか?

介護業界の人手不足は、社会構造・業界構造・現場環境の3層が複雑に絡み合った構造的問題で、有効求人倍率3.97倍(全職種平均の3.4倍)という深刻な状況が続いています

本記事では、厚生労働省の2025年最新データをもとに、表面的な「低賃金」「きつい」だけでは説明できない根本原因を3層構造で分析し、事業者が明日から実践できる具体的解決策を提示します。

20年以上介護経営に携わってきた筆者の経験から、人手不足を解消した事業所の共通点も紹介します。

この記事を読めば、なぜ対策が効果を出さないのかが理解でき、自施設に合った実践的アプローチが見つかります。

  1. 介護人手不足の現状|2026年のリアルな数字
    1. 2040年までに69万人不足する構造的危機
    2. 地域格差が拡大する人手不足
    3. 84%の事業所が「人材不足」と回答
  2. 介護人手不足の原因を3層構造で解明
    1. 【第1層】社会構造的原因|止まらない少子高齢化
      1. 需要と供給のギャップが年々拡大
      2. 若年労働力の奪い合いが激化
    2. 【第2層】業界構造的原因|改善されない処遇と社会的評価
      1. 仕事量に見合わない賃金水準
      2. 社会的評価の低さが若者を遠ざける
      3. キャリアパスの不透明さ
    3. 【第3層】現場環境的原因|離職を生む職場の課題
      1. 離職理由の第1位は「人間関係」
      2. 身体的・精神的負担の大きさ
      3. 採用の困難さが負のスパイラルを生む
  3. 事業者が今すぐ実践できる5つの解決策
    1. 1. 組織課題と人間関係を「見える化」する
    2. 2. 相談窓口を設置し心理的安全性を確保
    3. 3. 処遇改善加算を最大限活用し給与を底上げ
    4. 4. 「待ち」の採用から「攻め」の採用へ転換
    5. 5. ICT・介護ロボット導入で業務負担を軽減
  4. 外国人材活用という選択肢
    1. 特定技能制度が最も活用しやすい
    2. 若い労働力と多様性がもたらす活性化
  5. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 処遇改善しても人が集まらないのはなぜ?
    2. Q2: 小規模事業所でもICT導入は可能ですか?
    3. Q3: 外国人材の受け入れは本当に効果がありますか?
    4. Q4: 人手不足はいつまで続くのでしょうか?
    5. Q5: 離職率を下げる最も効果的な方法は?
  6. まとめ|構造を理解し、できることから始める

介護人手不足の現状|2026年のリアルな数字

2040年までに69万人不足する構造的危機

厚生労働省の推計によると、2040年度には約280万人の介護職員が必要とされています。2022年度の介護職員総数が約215万人であることから、今後18年間で69万人(年間約3.8万人)の増員が必要です。

特に深刻なのは2025年までの3年間で、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」により、年間5万人以上のペースで人材確保が求められています。

地域格差が拡大する人手不足

有効求人倍率を地域別に見ると、東京都7.65倍、愛知県5.21倍に対し、地方都市では2.5倍前後と大きな開きがあります。都市部では求職者1人を7〜8の事業所が奪い合う状況で、採用競争が激化しています。

この背景には、85歳以上人口が都市部で急増する一方、地方では高齢化率がピークアウトしつつあるという人口動態の変化があります。

84%の事業所が「人材不足」と回答

介護事業所を対象とした調査では、84%が「人材不足だと感じる」と回答しています。欠員が1名でも現場の負担は大きく増加するため、数字以上に現場の疲弊感は深刻です。

訪問介護分野では55.2%が「大いに不足」と答え、特に深刻な状況が続いています。

介護人手不足の原因を3層構造で解明

介護の人手不足は単一の原因ではなく、社会・業界・現場の3層が重なり合って発生しています。それぞれの層を詳しく見ていきましょう。

【第1層】社会構造的原因|止まらない少子高齢化

需要と供給のギャップが年々拡大

要介護認定者数は2000年の約256万人から2023年には約708万人へと2.8倍に増加しました。一方、生産年齢人口(15〜64歳)は減少を続けており、介護を必要とする人は増え続けるのに、働き手となる世代は減少するという構造的矛盾が深刻化しています。

2040年には団塊ジュニア世代が高齢者となり、現役世代がさらに減少することで、この矛盾は一層顕著になります。

若年労働力の奪い合いが激化

少子化により、あらゆる業界が若年労働力の確保に苦戦しています。介護業界は製造業やサービス業、IT業界などと同じパイを奪い合う構図となっており、業界間の採用競争に巻き込まれている状況です。

特に地方では、若者の都市部流出により、介護職に限らず全産業で採用難が続いています。

【第2層】業界構造的原因|改善されない処遇と社会的評価

仕事量に見合わない賃金水準

2024年の賃金構造基本統計調査によると、医療・福祉産業の平均賃金は30.64万円で、全産業平均を下回っています。夜勤や身体介護など心身への負担が大きい業務内容に対し、賃金が見合っていないと感じる職員が多いのが実情です。

処遇改善加算の実施により状況は改善傾向にありますが、他産業との賃金差は依然として存在します。

社会的評価の低さが若者を遠ざける

介護従事者の20.2%が「業務に対する社会的評価が低い」と感じています。「3K(きつい・汚い・危険)」というネガティブなイメージが先行し、専門性の高い仕事であるにもかかわらず、正当に評価されていないという認識が広がっています。

学生が介護職を選ばない背景には、こうした社会的評価の低さが大きく影響しています。

キャリアパスの不透明さ

多くの事業所では、勤続年数による昇給はあっても、スキルや成果に応じた明確なキャリアパスが整備されていません。頑張っても評価されない、将来像が描けないという不満が、若手職員の離職や業界への参入障壁となっています。

【第3層】現場環境的原因|離職を生む職場の課題

離職理由の第1位は「人間関係」

介護職の離職理由で最も多いのは「職場の人間関係に問題」(23.2%)で、「収入が少ない」(15.0%)を上回ります。賃金以上に、人間関係の悪さが離職の直接的原因となっているのです。

評価制度が不明確な職場では、仕事ができる人とできない人の差が給与に反映されず、不公平感が人間関係の悪化を招きます。

身体的・精神的負担の大きさ

24.6%の介護従事者が「身体的負担が大きい」と答えています。入浴介助や移乗介助など体力を使う業務に加え、夜勤による生活リズムの乱れ、利用者や家族からのクレーム対応など、心身両面での負担が蓄積します。

特に人手不足の事業所では、休憩が取れない、有給休暇が使えないといった問題が深刻化し、さらなる離職を招く悪循環に陥ります。

採用の困難さが負のスパイラルを生む

88.5%の事業所が人手不足の理由として「採用が困難である」と回答しています。採用できない→既存職員の負担増→離職→さらに採用難という負のスパイラルが発生しているのです。

待ちの採用姿勢や、採用活動への投資不足も、この問題を深刻化させています。

事業者が今すぐ実践できる5つの解決策

人手不足の構造的原因を踏まえ、事業者レベルで効果的な対策を5つ紹介します。

1. 組織課題と人間関係を「見える化」する

人間関係の問題は放置すると深刻化します。サーベイツールやアセスメントツールを活用し、職員の満足度や人間関係の状態を定期的に測定しましょう。

具体的には、四半期ごとに匿名アンケートを実施し、不満やストレスの原因を特定します。問題が見えれば、配置転換や面談など具体的な対処が可能になります。導入コストは月額数万円程度で、離職による損失(採用・育成コストで100万円以上)と比べれば十分に投資価値があります。

2. 相談窓口を設置し心理的安全性を確保

相談窓口がある事業所では、「人間関係に悩みがない」と答える職員が42.1%だったのに対し、ない事業所では22.9%に留まりました。19.2ポイントの差は無視できません。

外部のハラスメント相談窓口や、産業カウンセラーとの契約、定期的な1on1面談の実施など、職員が安心して相談できる仕組みを整えましょう。管理者自身が相談窓口になるのではなく、第三者性を確保することが重要です。

3. 処遇改善加算を最大限活用し給与を底上げ

2024年6月に処遇改善加算が一本化され、取得しやすくなりました。上位加算を取得すれば、職員1人あたり月額6,000円相当の給与改善が可能です。

加算取得には、キャリアパス要件(職位・職責・資格等に応じた任用要件と賃金体系の整備)や職場環境等要件(研修の実施、腰痛対策など)のクリアが必要ですが、これらは職員定着にも直結します。社会保険労務士などの専門家を活用し、確実に取得しましょう。

4. 「待ち」の採用から「攻め」の採用へ転換

ハローワークや人材紹介会社に求人を出して待つだけでは、競争率3.97倍の市場で勝てません。採用活動に時間とお金を投資する姿勢が必要です。

具体的には、①施設見学会の定期開催(月1回など)、②SNS(Instagram・X)での職場の日常発信、③採用サイトへの職員インタビュー動画の掲載、④人材紹介会社への定期訪問とフィードバック提供などが効果的です。

採用専任者を置けない場合は、経営層が月10時間程度を採用活動に充てるだけでも変化が生まれます。

5. ICT・介護ロボット導入で業務負担を軽減

記録のタブレット化、見守りセンサーの導入、インカムでの情報共有など、ICTツールは職員の身体的・時間的負担を大幅に軽減します。

厚生労働省の調査では、ICT導入施設の多くがプラスの効果を実感しています。導入には補助金も活用でき、初期投資を抑えられます。業務効率化により生まれた時間を、利用者との関わりや休憩に充てることで、職員満足度が向上します。

外国人材活用という選択肢

人材確保の方法として、外国人介護人材の受け入れも有効な選択肢です。

特定技能制度が最も活用しやすい

外国人が介護職として働ける在留資格には、特定技能・技能実習・介護・EPA介護福祉士の4種類がありますが、特定技能が最も採用しやすく、業務範囲も広いのが特徴です。

2025年4月からは訪問介護も解禁され、一人夜勤も可能です。技能実習生からの移行が多く、日本語能力や生活適応の面でも安心できます。

若い労働力と多様性がもたらす活性化

外国人材の多くは20〜30代の若年層です。若い労働力の確保だけでなく、多様な文化背景を持つ職員が加わることで、職場に新しい視点や活気が生まれる効果も期待できます。

地方の事業所でも、社宅や生活支援を整備すれば採用可能です。助成金や補助金も活用しながら、受け入れ体制を整えましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 処遇改善しても人が集まらないのはなぜ?

A: 賃金だけでなく、人間関係や働きやすさも重視されています。給与改善と並行して、職場環境の改善(相談窓口設置・ICT導入・休暇取得推進など)に取り組むことで、採用力と定着率が向上します。

Q2: 小規模事業所でもICT導入は可能ですか?

A: 可能です。タブレット記録アプリなど月額数千円から導入できるツールもあります。厚生労働省や自治体の補助金を活用すれば、初期費用の負担も軽減できます。まずは記録業務のデジタル化から始めましょう。

Q3: 外国人材の受け入れは本当に効果がありますか?

A: 適切な支援体制があれば効果的です。日本語教育や生活サポート、文化の違いへの配慮が必要ですが、若い労働力の確保と職場活性化という2つのメリットが得られます。受け入れ実績のある事業所の事例を参考にしましょう。

Q4: 人手不足はいつまで続くのでしょうか?

A: 2025年までがピークで、その後は必要人材数の増加ペースが緩やかになります。ただし2040年まで人材不足は継続する見込みです。今から対策を打つことで、競合との差別化が図れます。

Q5: 離職率を下げる最も効果的な方法は?

A: 人間関係の改善が最優先です。評価制度の明確化、相談窓口の設置、定期面談の実施、業務の公平な分担など、職員が「大切にされている」と感じられる環境づくりが離職率低下に直結します。

まとめ|構造を理解し、できることから始める

介護人手不足の原因は、①社会構造(少子高齢化)、②業界構造(処遇・評価)、③現場環境(人間関係・業務負担)の3層が複雑に絡み合っています。

事業者ができることは、第3層の現場環境改善を徹底し、第2層の処遇改善加算を最大限活用することです。待ちの姿勢を捨て、採用・定着・業務効率化に積極投資することで、人手不足を乗り越える道が開けます。

次のアクション: まず現状把握として、職員満足度調査を実施し、自施設の課題を可視化しましょう。そして処遇改善加算の取得状況を確認し、上位加算への移行を検討してください。

介護人材の確保は、事業継続の生命線です。今日から一歩ずつ、変化を起こしていきましょう。

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