介護職不足の原因と対策を徹底解説|2026年に必要な現場視点の解決策

福祉経営

深刻化する介護職不足の現実

「スタッフが足りず夜勤が回らない」「求人を出しても応募がない」と悩んでいる施設管理者は少なくありません。介護職不足は2026年時点で約25万人規模に達し、2040年には57万人が不足すると予測されています。本記事では、介護業界で20年以上採用支援に携わってきた経験をもとに、人手不足の根本原因と現場で実践できる解決策を具体的に解説します。データに裏打ちされた対策と成功事例から、あなたの施設に合った人材確保の糸口が見つかるはずです。

介護職不足の現状|データで見る深刻度

2026年は人手不足のピーク

厚生労働省の推計によると、介護職員の必要数は2026年度に約240万人に達する一方、現在の職員数は約215万人にとどまっています。毎年5万人規模で人材が不足する状態が2025年度まで続き、今がまさに人手不足のピークです

有効求人倍率から見ても事態は深刻です。介護関係職種の有効求人倍率は全国平均で3.97倍。職業全体の平均1.16倍と比べると3倍以上の開きがあり、特に東京都では7.65倍と異常な高さを記録しています。

高齢化と少子化のダブルパンチ

人手不足の背景には構造的な問題があります。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、要介護認定者は約708万人に達しました。介護保険制度開始時の2000年と比べると2.8倍の増加です。

一方で生産年齢人口は減少を続け、2029年には6,951万人、2065年には4,529万人まで落ち込むと予測されています。介護を必要とする高齢者が増え続ける一方で、介護を担う若者が減っていく構造的な悪循環に陥っているのが現状です。

介護現場の高齢化も進行中

介護職員自身の高齢化も見過ごせません。令和6年度の調査では、介護従事者の19.2%が60歳以上である一方、10〜20代はわずか6.2%にとどまります。年齢とともに定年退職を迎える職員が増えるため、今後さらに人手確保が困難になる事態が予想されます。

介護職不足の5つの根本原因

原因1|仕事内容に対する賃金の低さ

介護職が人手不足に陥る最大の要因は、業務の負担と賃金のミスマッチです。令和6年賃金構造基本統計調査によると、医療・福祉産業の平均賃金は30.64万円。全産業平均を下回る水準です。

夜勤や身体介護など体力を使う重労働であるにもかかわらず、社会的意義の大きさに見合った報酬が得られていません。賃金の低さが原因で介護職員が定着せず、慢性的な人手不足を招いています

原因2|人間関係の複雑さ

令和6年度の介護労働実態調査では、仕事に関する悩みとして「業務に対する社会的評価が低い」が20.2%、「身体的負担が大きい」が24.6%を占めました。しかし現場では、職場の人間関係が離職の最大要因となっています。

介護現場では利用者やその家族、医療機関スタッフなど多様な関係者と関わるため、他業種よりもストレスが蓄積しやすい環境です。「職場のスタッフと合わない」「利用者が言うことを聞かない」「他職種と意見が食い違う」といった悩みが離職につながっています。

原因3|評価制度の不備

仕事の評価基準が明確でない施設では、能力や働きぶりが給与や賞与に反映されにくく、不満が蓄積します。勤続年数や年功序列だけで評価される環境では、若手とベテランの間に摩擦が生じやすくなります。

頑張っている職員が正しく評価されないと、新人が入ってもすぐに辞めてしまう悪循環に陥ります。

原因4|身体的・精神的負担の大きさ

入浴介助や排泄介助、体位変換など身体的負担の大きい業務が多く、夜勤シフトでは生活リズムを保つのが困難です。24時間365日体制の施設では、土日祝日の定期的な休暇も取りにくく、家庭との両立が難しいケースも少なくありません

原因5|社会的評価とイメージの低さ

「介護は大変そう」「離職率が高い」というネガティブなイメージが先行し、特に若手人材や未経験者が介護業界への一歩を踏み出すハードルとなっています。実際には離職率13.8%と産業計全体の14.2%と大差ないにもかかわらず、イメージが定着を阻んでいます。

介護職不足を解消する7つの実践的対策

対策1|処遇改善による給与アップ

2024年6月、政府は処遇改善加算を一本化し加算率を引き上げました。2024年度に2.5%、2025年度に2.0%(月額6,000円相当)のベースアップを目指す施策です。

施設側としては、介護職員等処遇改善加算の上位区分を取得することで職員の給与を引き上げられます。加算取得には昇給の仕組みや賃金体系の明確化が必要ですが、それ自体が働きやすい環境整備につながります。

対策2|ICT導入による業務効率化

勤怠管理やシフト作成アプリ、介護記録用タブレットの導入により、事務作業の負担を大幅に軽減できます。厚生労働省の調査では、ICTを導入した施設の多くがプラスの効果を実感しています。

まずシフト管理と勤怠管理のデジタル化から始め、次に介護記録のタブレット入力を導入、最後に前払い給与サービスなど福利厚生面のシステムを整備していく段階的なアプローチが効果的です。

所要時間は、シフト管理アプリの導入で約1〜2週間、介護記録システムで1〜2ヶ月が目安です。つまずきやすいのは職員の操作習熟ですが、操作が簡単なシステムを選び、マニュアル整備と研修を丁寧に行うことで解決できます。

対策3|ユニットケアの導入

10名程度を1ユニットとして同じメンバーで生活し、決まったスタッフがケアにあたる形態です。利用者一人ひとりの生活を尊重できるだけでなく、ユニットごとに実践しやすく職員同士の人間関係改善にもつながります

従来の集団ケアと比べてギスギスした人間関係が解消され、介護職員のストレス抑制効果が期待できます。

対策4|相談窓口の設置

介護労働安定センターの調査によると、相談窓口がある事業所で働く職員の42.1%が「人間関係について特に悩みがない」と回答したのに対し、窓口がない事業所では22.9%にとどまりました。19.2%の開きがあります。

職員が問題を抱えた際に気軽に相談できる窓口を設置することで、人間関係の問題を早期に解決でき、離職防止につながります。

対策5|外国人人材の受け入れ

特定技能1号や育成就労制度(旧技能実習)により、外国人介護人材の受け入れが進んでいます。特定技能では訪問介護も含め身体介護と付随業務が可能で、技能実習生ができなかった一人夜勤も認められています

若い労働力の確保、地方での採用しやすさ、助成金や補助金の活用というメリットがあります。日本語教育や生活サポートの体制整備は必要ですが、人手不足解消の有効な選択肢です。

対策6|資格取得支援制度

介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士などの資格取得費用を施設が負担することで、職員のキャリアアップを支援できます。前向きに頑張る人材を応援することで、職員が介護業界で自己実現を達成すれば、人材の定着と人手不足解消につながります

対策7|積極的な採用活動

ハローワークや人材紹介会社に任せきりの「待ち」の採用から脱却し、コーポレートサイトの採用ページを充実させ、SNSで施設の魅力を発信しましょう。Web媒体での情報発信はほとんどコストをかけずに実施できます。

人材紹介会社を利用する場合も、施設見学会の開催、定期的な情報共有、求人内容のブラッシュアップなど「マネジメント」の視点を持つことで、紹介手数料に見合った成果を引き出せます。

人手不足解消に成功した3つの事例

事例1|コミュニケーション改善で応募2倍

岐阜県のデイサービスでは、3ヶ月以内の離職率が50%という深刻な状況でした。現場アンケートで判明した原因は、スタッフ同士のコミュニケーション不足です。

グループワーク形式の他己紹介、感謝カードの取り組み、朝礼終礼での気づき発表、定期的な勉強会をスタッフ主導で実施しました。職場の雰囲気が改善した後、求人サイトに取り組み内容を記載すると応募が2倍にアップし、2名の採用に成功しています。

事例2|外国人人材で長期的な人材確保

東日本の介護施設では、2009年からフィリピン人介護士の受け入れを開始。言語や文化の違いを乗り越えるため、日本語教育プログラムと生活サポート体制を整備しました。

若い労働力の確保に成功し、現在では海外での介護事業展開にもそのノウハウを活かしています。

事例3|制度充実で職場復帰率100%

兵庫県の特別養護老人ホームでは、30年以上前から女性が働きやすい労働環境を整備。産前産後休暇8週間、つわり休暇、生理休暇、子どもの病気時の休暇制度などを導入し、男性の育児休暇取得も推奨しています。

産休・育休後の職場復帰率はほぼ100%で、30年以上勤務している職員もいます。新規雇用が難しい業界だからこそ、制度を整えて職員に長く働いてもらう環境づくりが効果を発揮しています。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護職不足は本当に他の業界より深刻なのですか?

A: はい。介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍で、全職業平均1.16倍の3倍以上です。東京都では7.65倍に達し、採用競争が極めて激しい状況です。

Q2: 離職率が高いと聞きますが実際はどうですか?

A: 医療・福祉分野の離職率は13.8%で、産業計全体の14.2%と大きな差はありません。ただし施設によって差があるため、事前確認が重要です。

Q3: ICT導入のコストはどのくらいかかりますか?

A: シフト管理アプリは月額数千円〜数万円、介護記録システムは初期費用10〜50万円+月額利用料が目安です。助成金や補助金を活用すれば導入コストを抑えられます。

Q4: 外国人人材の受け入れで注意すべき点は?

A: 日本語能力の確認、生活サポート体制の整備、文化や価値観の違いへの理解が必要です。受け入れ実績のある登録支援機関と連携すると手続きがスムーズです。

Q5: 小規模施設でもできる対策はありますか?

A: 相談窓口の設置、感謝カード制度、定期面談など、コストをかけずに人間関係を改善する施策から始めましょう。職員が定着すれば採用コストも削減できます。

まとめ

介護職不足は2026年に25万人規模と予測され、賃金の低さ・人間関係・評価制度の不備が主な原因です。対策の3本柱は「処遇改善とICT導入」「職場環境の整備」「積極的な採用活動」です。

まず自施設の離職理由を職員アンケートで把握し、相談窓口設置やコミュニケーション改善など低コストでできる対策から始めましょう。次に処遇改善加算の上位区分取得を目指し、並行してICTツールを段階的に導入していきます。

人手不足解消は一朝一夕にはいきませんが、成功事例が示すように、職員が長く働ける環境を整えれば必ず成果は現れます。今日から一つでも行動を起こし、持続可能な介護現場を作っていきましょう。

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