介護施設の人手不足を解消する7つの実践策【2026年版・施設種別対応】

福祉経営

介護施設の人手不足は、2040年に57万人不足・離職率13.6%という構造的問題です

「夜勤シフトが組めない」「ケアの質が保てない」「このままでは閉鎖するしかない」——介護施設の経営者が直面する人手不足は、もはや一時的な課題ではありません。

介護施設の人手不足は、2040年に必要数272万人に対し約57万人(21%)が不足し、離職率13.6%、有効求人倍率3.6倍という数字が示す通り、業界全体の構造的課題です。厚生労働省の試算によると、都市部では有効求人倍率が4〜7倍に達し、1人の求職者を複数施設で奪い合う状況が続いています。

この記事では、介護施設経営15年の実務経験をもとに、施設規模・種別に応じた7つの実践的解決策を、費用対効果と実施優先度とともに解説します。

読み終える頃には、あなたの施設で今月から着手できる具体的な人手不足解消プランが手に入るはずです。

介護施設の人手不足が深刻化する3つの構造的要因

【要因①】2040年問題と要介護者の急増

厚生労働省の推計によると、2040年には介護職員が272万人必要とされる一方、約57万人が不足します。これは10名体制の施設で常に8名しか配置できない状態を意味します。

団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年以降、要介護認定者は現在の約690万人からさらに増加します。特に75歳以上の後期高齢者では31.8%が要介護認定を受けており、前期高齢者(4.3%)と比較して約7倍の認定率です。

都市部では状況がさらに深刻です。東京都の有効求人倍率は7.39倍、神奈川県は4.09倍と、地方(2.5倍前後)の約3倍の人材獲得競争が繰り広げられています。

【要因②】離職率13.6%と人間関係問題

公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度調査」によると、介護職員の離職率は13.6%、訪問介護員は11.8%です。離職理由の第1位は「職場の人間関係に問題」(27.5%)で、前年の18.8%から大幅増加しています。

「収入が少ない」は第6位にとどまり、一般的なイメージと現場の実態には乖離があります。むしろ、評価制度の未整備により「仕事ができる人」と「できない人」の差が給与に反映されず、不公平感が人間関係悪化を招いています。

小規模施設ほど職員同士の距離が近く、人間関係のトラブルが表面化しやすい傾向があります。チーム連携が不可欠な介護現場では、人間関係の悪化が業務効率とケア品質に直結します。

【要因③】業界イメージと賃金水準の問題

介護職の平均年収は全産業平均より低く、「3K(きつい・汚い・危険)」のマイナスイメージが若年層の参入を妨げています。処遇改善加算により段階的な改善は進んでいますが、特に男性職員の26.4%が「収入が低い」ことを離職理由に挙げています。

介護保険制度により報酬単価が決められているため、一般企業のように自由に給与を上げられない構造的制約があります。処遇改善加算を最大限活用すれば職員1人あたり月額3.7万円の改善が可能ですが、取得していない施設も少なくありません。

若手確保には、給与改善だけでなく、キャリアパス制度の整備、教育研修体制の充実、ワークライフバランスの実現など、総合的な魅力づくりが求められます。

施設種別・規模別の人手不足解消策7選

【優先度★★★】処遇改善加算の完全取得(全施設共通)

処遇改善加算(11.1%)、特定処遇改善加算(6.3%)、ベースアップ等支援加算(3.0%)を最大限活用すれば、職員1人あたり月額3.7万円・年収44万円の賃金改善が実現します。

投資対効果(ROI): 社労士費用20〜30万円で、年間数百万円〜数千万円の加算収入。職員20名の施設なら年間約880万円の人件費アップが可能です。

実施期間: 3〜6ヶ月。キャリアパス制度と職場環境改善計画の整備が必要。社労士や介護コンサルタントの活用で確実に取得できます。

給与明細に「処遇改善手当」として明記することで、求人応募数増加と既存職員の定着率向上の両方が期待できます。

【優先度★★★】ICT導入による記録業務60%削減

介護ソフト・タブレット端末導入により、記録業務時間を60%削減できます。手書き記録の転記作業がなくなり、現場からリアルタイム入力が可能になります。

施設規模別の効果:

  • 小規模(職員10名以下): 週10〜15時間の削減
  • 中規模(職員20〜50名): 週30〜50時間の削減
  • 大規模(職員50名以上): 週50〜100時間の削減

投資対効果: 初期費用30〜50万円、月額3〜5万円。ICT導入補助金(最大100万円)活用で実質負担を50%以下に抑制可能。導入3〜6ヶ月で効果実感。

スケジュール管理機能で訪問介護の移動時間を1日30分〜1時間短縮でき、訪問件数増加による収益改善も実現します。

【優先度★★】人間関係改善の3段階施策

第1段階(1〜3ヶ月): 月1回15〜30分の個別面談制度導入。管理者・リーダーが実施し、不満や悩みを早期キャッチします。費用は追加コストなしで実施可能。

第2段階(3〜6ヶ月): 匿名アンケート(年2回)と外部講師によるコミュニケーション研修(年2〜4回)。研修費用は1回5〜10万円。相談窓口設置により、相談窓口がある施設の職員は42.1%が「人間関係の悩みなし」と回答(窓口なし施設は22.9%)。

第3段階(6ヶ月〜): 職業能力評価基準を活用した公正な評価制度構築。外部コンサルタント費用50〜100万円で、頑張りが正当に評価される仕組みを整備します。

特に小規模施設(職員20名以下)で効果大。人間関係改善により離職率を5〜10%低減できれば、採用コスト(1名あたり30〜50万円)の大幅削減につながります。

【優先度★★】施設種別特化のICT活用

特別養護老人ホーム・老人保健施設: 見守りセンサー導入で夜勤職員の巡回負担を30〜40%削減。転倒・転落事故(全体の65.6%)を早期発見し、事故対応時間を短縮します。初期費用50〜150万円(入居者数による)。

デイサービス・通所介護: 送迎管理システムでルート最適化。1日30分〜1時間の移動時間削減で、受け入れ可能人数を5〜10%増加できます。初期費用20〜40万円。

訪問介護: GPS連動スケジュール管理とインカム音声入力で記録時間を週17時間短縮した事例あり。訪問件数を1日1〜2件増やせば、月間収益5〜10万円アップが可能です。

【優先度★】外国人材(特定技能)の活用

特定技能「介護」は、技能実習と異なり就労目的の在留資格で、業務範囲が広く一人夜勤も可能です。2025年4月の制度改正で訪問介護も解禁され、活用範囲が拡大しました。

受け入れメリット: 若い労働力確保、地方でも採用しやすい、助成金・補助金の活用可能(日本語教育・資格取得支援等)。

注意点: 言語サポート、住居確保、生活支援が必要。初めての場合は登録支援機関の活用を推奨。受け入れ準備期間6ヶ月〜1年。費用は紹介料30〜50万円+月額2〜3万円のサポート費用。

大規模施設(職員50名以上)で特に有効。複数名同時受け入れで相互サポート体制を構築できます。

【優先度★】ワークシェアリング・短時間正社員制度

特定業務(送迎・入浴介助・食事介助)を切り分け、短時間勤務者を複数雇用する手法です。学生・主婦・シニアなど、フルタイム勤務困難な層を取り込めます。

週3日・1日4時間からでも正社員雇用し、社会保険を適用(週20時間以上)。賞与・退職金制度も整備すれば長期定着が期待できます。

小規模施設(職員20名以下)で特に有効。1人のフルタイム職員を2〜3人の短時間正社員で代替し、柔軟なシフト編成が可能になります。就業規則変更は社労士に依頼し、2〜3ヶ月で導入できます。

【優先度★】地域連携・人材シェアリング

複数の事業所間で職員を共有・融通し合う仕組みです。繁忙期に応援し合い、閑散期の人件費を抑制できます。地域の施設と連携協定を結び、月1〜2名規模で試験運用から開始しましょう。

送迎・入浴介助など専門スタッフを地域でシェアすることで、各施設の採用負担を軽減できます。自治体によっては人材シェアリング促進の補助金もあります。

よくある質問(FAQ)

Q1: ICT導入で高齢職員が使いこなせるか心配です

A: 60代・70代でもタブレット操作は可能です。導入時に1人2〜3時間の個別研修を実施し、操作が簡単なシステム(大きなボタン・音声入力対応)を選べば問題ありません。むしろ手書き作業が減って楽になったと好評を得ている施設が多数あります。段階的導入(まず記録のみ→徐々に機能拡大)も有効です。

Q2: 小規模施設でも処遇改善加算は取得できますか?

A: 職員5名以下の小規模施設でも取得可能です。キャリアパス制度は施設規模に応じた簡易版で対応できます。社労士費用20〜30万円で、年間数十万円〜数百万円の加算収入が得られるため、費用対効果は極めて高いです。小規模施設向けの申請支援サービスもあります。

Q3: 人間関係問題はどこまで経営者が介入すべきですか?

A: 月1回の面談と年2回の匿名アンケートで「兆候の把握」に努め、深刻化する前に外部の専門家(産業カウンセラー・社労士)を活用すべきです。経営者が直接仲裁すると偏りが生じるリスクがあります。第三者の相談窓口設置が効果的で、設置施設は人間関係の悩みが約20%減少しています。

Q4: 外国人材と既存職員の関係はうまくいきますか?

A: 受け入れ前の既存職員への説明会(2〜3回)と、受け入れ後のフォロー面談(月1回)を実施すれば、トラブルは最小限に抑えられます。言語・文化の違いを「学びの機会」と捉え、相互理解を促進する雰囲気づくりが重要です。成功施設では、外国人材が職場の活性化・若返りに貢献しています。

Q5: 最も費用対効果が高い施策は何ですか?

A: 処遇改善加算取得とICT導入の組み合わせが最強です。加算で給与アップし採用力を高めつつ、ICTで業務効率化と残業削減を実現すれば、「高待遇で働きやすい職場」として人材が集まります。投資回収期間は6ヶ月〜1年で、中長期的な経営安定につながります。

まとめ:施設規模別の優先実施プラン

介護施設の人手不足は、施設規模・種別に応じた段階的対策で改善できます。

小規模施設(職員20名以下):まず(1)処遇改善加算の取得、次に(2)人間関係改善の面談制度導入、最後に(3)ワークシェアリングで柔軟な雇用形態を整備しましょう。

中規模施設(職員20〜50名):まず(1)処遇改善加算+ICT導入、次に(2)評価制度の構築、最後に(3)外国人材受け入れ検討を進めましょう。

大規模施設(職員50名以上):まず(1)処遇改善加算+本格的ICT導入、次に(2)外国人材の計画的受け入れ(年間3〜5名)、最後に(3)地域連携・人材シェアリングの主導役を担いましょう。

持続可能な介護施設運営のため、あなたの施設でも今月から優先度の高い施策に着手してみませんか?

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