介護業界の人手不足データ完全解説|2024年最新統計と需給ギャップの実態

福祉経営

介護業界の人手不足はどれくらい深刻なのか?

2023年度、介護職員数は212.6万人となり、統計開始以来初めて前年比2.9万人の減少を記録しました。2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされる中、現状との需給ギャップは約25~57万人に達すると推計されています。

この記事では、厚生労働省の最新データをもとに、介護業界の人手不足の実態を数字で徹底解説します。有効求人倍率3.97倍、訪問介護では81.4%が人手不足と回答するなど、業界を取り巻く厳しい現実を、時系列データや地域別格差から多角的に分析します。

実際に介護現場で10年以上の経験を持つ筆者が、現場の実情とデータを照らし合わせながら解説しますので、人材確保に悩む事業者の方にも実践的な視点を提供できます。

介護人手不足の最新データ|2024年時点の深刻な実態

2023年度に初めて減少した介護職員数

厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」によると、2023年10月1日時点の介護職員数は212.6万人となり、前年度(215.4万人)から2.9万人減少しました。これは、2000年の介護保険制度開始以来、初めての前年割れという歴史的な転換点です。

介護職員数の推移(直近3年間)

年度介護職員数前年比
2021年度210.6万人
2022年度215.4万人+4.8万人
2023年度212.6万人▲2.9万人

この減少は一時的なものではなく、構造的な問題を示唆しています。要介護認定者数は2023年度時点で705万人と増加を続ける一方、支える側の介護職員が減少に転じたことで、需給バランスが急速に悪化しています。

有効求人倍率3.97倍と訪問介護の深刻な人手不足

2025年3月時点の介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍に達し、全職業平均の1.16倍と比較して約3.4倍の高水準となっています。これは、介護職1人を採用するために約4つの求人が競合している状態を意味します。

さらに深刻なのがサービス形態別の状況です。介護業界の調査によると、事業所全体では64%が人手不足を感じていますが、訪問介護では81.4%と突出して高い数値を示しています。

サービス形態別の人手不足感(2023年度)

サービス形態不足と回答した割合
訪問介護81.4%
特別養護老人ホーム68.7%
介護老人保健施設65.3%
通所介護61.2%

訪問介護の81.4%という数字は、10事業所のうち8事業所以上が人手不足に悩んでいる計算になります。移動時間が多く実働効率が低い、利用者宅での孤独な作業が精神的負担となるなど、訪問介護特有の厳しさが影響しています。

2026年・2040年の需給ギャップ|迫りくる危機的状況

2026年度:約25万人不足の現実

第9期介護保険事業計画(2024~2026年度)に基づく厚生労働省の推計では、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされています。2022年度の実績約215万人と比較すると、わずか4年間で約25万人(年間6.3万人)の増員が求められます。

2026年度までの需給ギャップ

項目人数
2022年度の介護職員数約215万人
2026年度の必要数約240万人
需給ギャップ約25万人
年間必要増員数約6.3万人/年

しかし、2023年度に初めて職員数が減少に転じた現状を考えると、年間6.3万人の増員は極めて困難な目標です。過去5年間の平均増加数は約0.2万人/年にとどまっており、目標達成には30倍以上のペースアップが必要になります。

2040年度:約57万人不足という未来

2040年度には、さらに深刻な状況が予測されています。必要な介護職員数は約272万人に達し、2022年度比で約57万人の増員が必要です。2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、75歳以上人口が急増します。

特に都市部では深刻で、都市圏では75歳以上人口が2015年比で1.56倍、1.52倍、1.48倍と急増が見込まれており、地域によって必要な介護職員数に大きな差が生じます。

地域別データと離職率から見る人材確保の課題

都道府県別で最大3.4倍の格差

介護人手不足の深刻度は、地域によって大きく異なります。2025年3月時点の地域別有効求人倍率を見ると、最も高い都市部の7.65倍から、最も低い地方部の2.28倍まで、約3.4倍の開きがあります。

有効求人倍率の地域格差

地域有効求人倍率75歳以上人口増加率(2015→2025年)
都市圏(高)7.65倍1.33倍
都市近郊地域4.63倍1.56倍
地方部(低)2.28倍1.11倍
地方部2.57倍1.10倍

都市部では団塊世代の流入により75歳以上人口が急増する一方、地方では高齢者人口自体が横ばいか微増にとどまります。その結果、都市部では介護需要が急拡大し、職員不足が深刻化しています。

離職率13.1%は改善も採用が追いつかない

介護職員の離職率は、2023年度で13.1%となり、全産業平均の15.4%と比較しても低い水準です。しかし、離職率が改善しても人手不足が解消されない理由は、既存職員数が不足しているためです。

介護職員の離職・採用の状況

項目2023年度
離職率13.1%
採用率16.4%
差引純増+3.3pt

210万人の13.1%は約27.5万人が離職し、16.4%の約34.5万人を採用しても、差引約7万人の純増にとどまります。年間25万人の増員が必要な現状では、採用率を大幅に引き上げる必要があります。

主な離職理由は「職場の人間関係の問題」(34.3%)、「事業所の理念や運営への不満」(32.1%)、「収入が少なかった」(28.8%)となっており、処遇改善だけでなく職場環境の整備が重要です。

介護人手不足の5つの構造的原因

少子高齢化と給与水準の低さ

15~64歳の生産年齢人口は、2020年の7,509万人から2040年には6,213万人へと約1,300万人減少する見込みです。働き手が減る一方で介護ニーズが増加し、需給ギャップが拡大し続けます。

さらに、介護職員の平均月給は27.7万円(2023年度)で、全産業平均の34.6万円と比較して月6.9万円(年間約83万円)低い水準にあります。国は処遇改善加算などで2009年度から月額約5.4万円の賃金改善を実現しましたが、全産業平均との格差は依然として大きく、給与の低さが人材確保の障壁となっています。

デジタル化の遅れと社会的評価の低さ

介護現場では、記録業務、申し送り、会議など間接業務に1日あたり約3時間(実働時間の37.5%)を費やしています。ICT導入率は2023年度時点で約40%にとどまり、紙ベースの記録や口頭での情報共有が依然として主流です。

また、介護職に対する「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージは、若年層の就職意欲を低下させています。介護福祉士養成校の入学者数は、2010年度の約1.8万人から2023年度には約0.7万人へと60%以上減少しました。一方、介護職員の73.2%が「仕事にやりがいを感じる」と回答しており、実際の満足度とイメージの間に大きなギャップがあります。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護職員数が初めて減少した理由は?

A: 2023年度の2.9万人減少は、採用難と離職の両方が影響しています。特に訪問介護事業所の閉鎖や縮小が増加しており、サービス提供体制自体が縮小傾向にあります。

Q2: 有効求人倍率3.97倍は他業界と比べてどれくらい高いのか?

A: 全職業平均1.16倍の約3.4倍で、建設業に次ぐ高水準です。介護職1人を採用するために約4つの求人が競合している状況です。

Q3: 2026年までに25万人の増員は現実的か?

A: 過去5年間の平均増加数が年間0.2万人に対し、必要数は年間6.3万人であり、現状のペースでは極めて困難です。ICT導入、処遇改善、外国人材活用など抜本的な対策が必要です。

まとめ|今すぐ取り組むべき3つのアクション

介護業界の人手不足は、データが示すとおり極めて深刻です。2023年度に初めて職員数が減少に転じ、2026年度には約25万人、2040年度には約57万人の需給ギャップが予測されています。有効求人倍率3.97倍、訪問介護では81.4%が人手不足という現実は、待ったなしの状況です。

今すぐ取り組むべき3つのアクション

  1. ICT・介護ロボット導入による生産性向上 – 記録業務の効率化で職員1人あたりのケア時間を増やす
  2. 処遇改善と柔軟な働き方の実現 – 時短勤務、副業可、資格取得支援など多様な働き方を提供
  3. 外国人材・シニア人材の積極活用 – 外国人労働者のさらなる受入拡大

人手不足は一朝一夕に解決できませんが、データに基づいた現状認識と、事業所・自治体・国が連携した包括的な取り組みにより、持続可能な介護提供体制を構築することは可能です。まずは自事業所の離職率、採用率、業務効率を数値化し、改善の第一歩を踏み出しましょう。

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