介護業界の人手不足は採用困難率86.6%、2040年には57万人が不足する深刻な状況です。
原因は低賃金だけではありません。少子高齢化、身体的負担、人間関係のストレス、社会的評価の低さ、そして「負のスパイラル構造」が複雑に絡み合っています。
本記事では厚生労働省のデータをもとに、人手不足の5つの構造的原因を解説。なぜ若者が介護職を選ばないのか、なぜ離職率が高いのか、その本質に迫ります。
採用・定着で悩む施設管理者の方、介護業界の未来を知りたい方必見の内容です。
介護業界の人手不足の現状|データで見る深刻度
2040年には57万人が不足する見込み
厚生労働省の試算によれば、2040年には約272万人の介護職員が必要とされる一方で、約57万人(約21%)が不足すると予測されています。
2023年時点ですでに介護職員数は233万人で、毎年5万人規模の不足が続いています。
有効求人倍率は全職種平均の3.4倍
2023年度の介護職の有効求人倍率は3.97倍で、全職種平均(1.16倍)の約3.4倍です。
特に都市部では4倍を超える地域もあり、「求人を出しても応募がない」状況が常態化しています。
採用困難率86.6%の衝撃
介護労働実態調査(2023年度)では、86.6%の事業所が「採用が困難」と回答。
その理由は:
- 他産業より労働条件が悪い:53.7%
- 同業他社との人材獲得競争が激しい:53.1%
- そもそも応募者がいない:48.9%
単に求人倍率が高いだけでなく、採用市場そのものが機能不全に陥っています。
介護業界の人手不足の原因5つ|構造的問題を深掘り
原因1:少子高齢化による需給ギャップの拡大
介護を必要とする人は増え、働き手は減るという構造的矛盾が最大の原因です。
要介護認定者は20年で2.8倍に増加
2000年に256万人だった要介護認定者は、2023年に708万人(2.8倍)に増加しました。
一方、15~64歳の生産年齢人口は1995年の8,726万人から2023年には7,395万人へ減少しており、介護人材の供給源そのものが縮小しています。
2025年問題と団塊世代の高齢化
2025年には団塊世代(約800万人)が全員75歳以上になり、要介護リスクが急増します。
これにより介護需要はさらに高まりますが、若年労働人口は減少し続けるため、需給ギャップは拡大する一方です。
原因2:賃金の低さと他産業との格差
介護職の平均年収は全産業平均より約120万円低いことが、人材流出の大きな要因です。
介護職の平均年収は約370万円
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、介護職の平均年収は約370万円。
全産業平均の約490万円より約120万円低く、特に若年層(20~30代)では他業種との差が顕著です。
処遇改善加算でも追いつかない
政府は処遇改善加算(2024年度から月額6,000円引き上げ)を実施していますが、全産業平均との差は依然として大きいのが現実です。
特に都市部では生活費が高く、「生活が成り立たない」との声も多く聞かれます。
原因3:身体的・精神的負担の大きさ
排泄介助や入浴介助など身体的に負担の大きい業務が、介護職敬遠の理由となっています。
離職理由の上位に「身体的負担」
介護労働実態調査では、離職理由の4位に「腰痛や体力的な負担」(20.2%)がランクイン。
夜勤や不規則なシフトによる生活リズムの乱れも、心身への負担を増大させています。
介護ロボットやICT導入の遅れ
業務効率化のための介護ロボットやICTの導入率は、見守りシステムで3.7%にとどまります。
人手不足で導入検討の余裕がなく、「人手不足→負担増→離職→さらなる人手不足」という負のスパイラルが生じています。
原因4:人間関係のストレスと職場環境
離職理由の第1位は「人間関係」(23.2%)であり、賃金(6位)よりも上位です。
職場内のコミュニケーション不全
介護現場は多職種連携が必要ですが、情報共有や相談体制が不十分な施設も多く存在します。
特に新人職員が孤立しやすく、「相談できずに辞める」ケースが後を絶ちません。
施設管理者のマネジメント力不足
施設長や管理者が現場の声を聞かない、あるいはハラスメントへの対応が不十分なケースもあります。
これが職員の不満を蓄積させ、離職の引き金となっています。
原因5:社会的評価の低さとイメージ問題
「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く、若者の職業選択から外れやすい現実があります。
学生の介護職志望率は低下傾向
介護福祉士養成施設の入学者数は、ピーク時(2008年度)の約2.2万人から2023年度は約0.6万人へ73%減少しました。
これは「介護職=将来性がない」「社会的評価が低い」というネガティブなイメージの定着を示しています。
メディアでの偏った報道
介護現場での虐待や事故のニュースは大きく報道される一方、やりがいや成長を伝える報道は少ないのが現状です。
このため若者や親世代が介護職を「避けるべき職業」と認識してしまいます。
なぜ原因が複雑に絡み合うのか?|負のスパイラル構造
人手不足の原因は単独ではなく、相互に影響し合って悪循環を生んでいます。
人手不足の負のスパイラル
- 人手不足発生 → 職員1人あたりの業務量増加
- 身体的・精神的負担増 → 離職者増加
- さらなる人手不足 → 採用活動に時間・予算を割けない
- 労働条件改善できず → 採用困難・離職加速
- 施設の評判低下 → さらに応募者減少
この5段階の負のスパイラルが、介護業界全体を苦しめています。
若者離れとイメージ悪化の連鎖
- 低賃金 → 生活できない → 若者が選ばない
- 社会的評価の低さ → 親が反対 → 志望者減
- メディアの偏向報道 → ネガティブイメージ強化 → さらに志望者減
このように、構造的な問題が複合的に作用しているため、一つの施策だけでは解決困難なのです。
よくある質問(FAQ)
Q1:介護業界の人手不足の最大の原因は何ですか?
少子高齢化による需給ギャップの拡大が最大の原因です。要介護者は2.8倍に増えた一方、生産年齢人口は減少しており、構造的に人材供給が追いつきません。
Q2:処遇改善加算で賃金は改善されていますか?
2024年度から月額6,000円引き上げが実施されましたが、全産業平均との差は約120万円残っており、十分とは言えません。特に都市部では生活費が高く、若者の定着には至っていません。
Q3:離職理由で最も多いのは何ですか?
「人間関係」(23.2%)が第1位です。賃金(6位)よりも上位であり、職場のコミュニケーション不全やマネジメント力不足が深刻な問題となっています。
Q4:介護ロボットやICTの導入が進まないのはなぜですか?
人手不足で導入検討の余裕がないことが主因です。見守りシステムの導入率は3.7%にとどまり、負のスパイラルから抜け出せない施設が多いのが現状です。
Q5:若者が介護職を選ばない理由は何ですか?
低賃金、社会的評価の低さ、「3K」のイメージが主な理由です。介護福祉士養成施設の入学者は15年間で73%減少しており、若者離れは深刻化しています。
まとめ|人手不足の原因を理解し、解決の第一歩へ
介護業界の人手不足は、少子高齢化・低賃金・身体的負担・人間関係・社会的評価の低さという5つの構造的原因が複雑に絡み合って発生しています。
採用困難率86.6%、2040年には57万人不足という現実を前に、原因の本質を理解することが解決への第一歩です。
次のステップ: 自施設の離職理由や採用課題を分析し、職員の声を聞く仕組みづくりから始めましょう。一つひとつの改善が、負のスパイラルを断ち切る力となります。

