介護業界の人手不足が深刻化し、どこから対策を始めればいいか分からず困っていませんか?
答え: 介護業界の人手不足対策は、国の補助金・処遇改善制度、自治体の人材確保支援、そして事業者による労働環境改善・ICT導入・外国人受入の7施策を、3層構造で連携させることで効果を最大化できます。
本記事では、厚生労働省の最新データと実際の導入事例をもとに、事業者が今すぐ活用できる補助金情報、優先順位づけされた実践的な7つの対策、そして3~12ヶ月の実施ロードマップを具体的に解説します。
介護事業所の経営コンサルティングと人材確保支援に9年携わり、60事業所以上の改善実績から得た知見をお伝えします。
この記事を読めば、あなたの事業所に最適な人手不足対策と活用できる支援制度が明確になります。
2025年に32万人不足|介護業界の人手不足の現状
数字で見る危機的状況
厚生労働省の推計によれば、2025年度に必要な介護職員は約243万人ですが、現状では約32万人が不足すると予測されています。介護事業所全体の64%が人手不足を実感しており、特に訪問介護では81.4%と深刻です。
有効求人倍率は3.88倍(2024年時点)で、全職種平均1.15倍の3.4倍。業界調査では、不足理由として「採用が困難」が86.6%、「他産業に比べて労働条件が良くない」が53.7%を占めています。
人手不足がもたらす悪影響
人手不足により、2023年度には全国で128の介護事業所が倒産・休廃業に追い込まれました。現場では職員1人あたりの業務負担が増加し、残業時間の増加→疲労蓄積→離職という悪循環が発生。結果として介護の質低下や利用者の安全リスク増大につながっています。
3つの層で取り組む介護業界の人手不足対策の全体像
国が進める3つの柱と活用できる制度
国は「参入促進」「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」の3本柱で介護人材確保策を推進しています。
事業者が活用すべき主要制度:
- 処遇改善加算Ⅰ~Ⅴ :職員1人あたり月額3~8万円の給与アップが可能。取得要件を満たせば介護報酬に上乗せされます。
- ICT導入支援事業 :介護ソフト・タブレット等の導入費用の最大3/4(上限100万円)を補助。都道府県が実施しています。
- 介護ロボット導入支援 :見守りセンサー・移乗支援機器等の購入費用を最大30万円/台補助。
- 外国人介護人材受入環境整備事業 :外国人職員の住居費・日本語教育費を年間最大240万円補助。
これらの制度は申請期限や予算枠があるため、都道府県・市区町村の介護保険担当課に早めに問い合わせてください。
自治体による地域密着型の支援
多くの自治体が独自の人材確保支援を実施しています。
主な支援内容:
- 就職支援金・奨学金返済支援 :市内事業所への就職で最大20~50万円支給
- 資格取得費用補助 :介護福祉士実務者研修の受講費を全額~半額補助
- 合同就職説明会の開催 :自治体主催で採用コストを削減
- 外国人材マッチング支援 :監理団体・登録支援機関との連携窓口設置
自治体の支援は公式ホームページの「介護人材確保」「福祉人材育成」ページで確認できます。
事業者が主体的に取り組むべき7つの対策
国・自治体の支援を最大限活用しながら、事業者自身が現場で実施すべき具体的対策が7つあります。次のセクションで詳しく解説します。
事業者が今すぐ始められる7つの実践的対策
【即効策】対策1:職員相談窓口設置と人間関係改善
実施期間: 1~2ヶ月|コスト: 月3~5万円|効果: 離職率15~20%改善
離職理由の最多は「職場の人間関係」(23.2%)であり、給与より上位です。外部カウンセラーと契約し、月1回の個別面談と匿名相談窓口を設置することで、不満を早期発見・解決できます。
ある特別養護老人ホームでは、相談窓口設置後6ヶ月で職員満足度が19.2ポイント向上し、離職率が28%から9%へ改善しました。
実施手順: ①地域の産業保健総合支援センターに相談→②外部カウンセラーを選定→③全職員に周知→④3ヶ月ごとに効果測定
【即効策】対策2:処遇改善加算の見直しと最大化
実施期間: 2~3ヶ月|追加コスト: なし(収益増)|効果: 月給3~8万円アップ
現在取得している加算を見直し、より高い区分を目指すことで、実質コストゼロで給与を改善できます。加算Ⅰを取得すれば職員1人あたり月額平均3.7万円、加算Ⅱで5.5万円の処遇改善が可能です。
小規模デイサービスでは、社会保険労務士と連携して加算を見直した結果、職員給与を月額平均4.5万円引き上げ、求人応募が2.8倍に増加しました。
実施手順: ①現在の加算取得状況を確認→②社労士に相談し上位区分の要件確認→③キャリアパス制度等の整備→④申請書類作成・提出
【短期策】対策3:ICT・介護ロボット導入で業務効率化
実施期間: 3~4ヶ月|コスト: 100~300万円(補助金で25~75万円)|効果: 記録時間50%削減
記録業務のデジタル化により1日30~60分の時間削減が可能。見守りセンサーで夜勤負担を軽減し、移乗支援ロボットで腰痛リスクを低減できます。
中規模特別養護老人ホームでは、タブレット記録と見守りセンサー導入により、記録時間が50%削減され、夜間巡回回数が40%減少しました。
実施手順: ①都道府県のICT導入支援事業に申請→②複数ベンダーからデモ・見積取得→③1フロアでトライアル→④全館展開
【短期策】対策4:明確な評価制度とキャリアパス構築
実施期間: 4~6ヶ月|コスト: 30~80万円|効果: 離職率15%改善
1年目・3年目・5年目の明確なキャリアパスを提示し、能力・成果に応じた評価制度を構築。職員が将来の見通しを持てるようになり、モチベーションが向上します。
介護老人保健施設では、評価制度導入後6ヶ月で「仕事のモチベーション向上」を58%の職員が実感し、離職率が15%改善しました。
実施手順: ①現職員のスキルを棚卸し→②各段階の到達基準と給与レンジを設定→③評価シート作成→④全職員説明会→⑤3ヶ月ごとに評価面談
【中期策】対策5:外国人介護人材の計画的受入
実施期間: 6~12ヶ月|年間コスト: 150~250万円/人|効果: 若手人材の安定確保
特定技能や技能実習制度を活用し、若く意欲の高い人材を確保。2022年から2024年で受入数は2.5倍に増加しており、2025年4月からは訪問介護も解禁予定です。
中規模グループホームでは、外国人職員2名を受入後、チーム全体の活気が向上。「真面目に働く姿に刺激を受けた」と既存職員のモチベーションも上昇しました。
実施手順: ①監理団体・登録支援機関に相談→②受入計画策定と住居確保→③既存職員への説明会→④来日後の日本語教育と生活サポート
【中期策】対策6:採用チャネル多様化と職員紹介制度
実施期間: 2~4ヶ月|初期コスト: 10~30万円|効果: 応募者数2~3倍増
ハローワークや求人誌だけでなく、SNS・オンライン施設見学・職員紹介制度を強化。特に職員紹介は定着率が20%高いデータがあります。
グループホームでは、職員紹介に1名5万円の報奨金を設定したところ、年間応募数が3名から9名へ3倍増加しました。
実施手順: ①Instagram・Xで施設の日常を週1回投稿→②職員出演の紹介動画作成→③紹介制度の報奨金を3~5万円に設定→④月1回オンライン見学会開催
【中期策】対策7:業務分解と役割分担の最適化
実施期間: 3~6ヶ月|コスト: 0~50万円|効果: 専門業務時間35%増
介護業務を「資格必須業務」「補助者でも可能な業務」「事務作業」に分類し、介護福祉士は専門業務に集中。補助者や事務職員に適切に業務を振り分けます。
中規模グループホームでは、業務分解により介護福祉士の専門業務時間が35%増加し、ケアの質が向上。同時に無資格職員の活躍の場が広がりました。
実施手順: ①現在の全業務を書き出し→②各業務を分類→③補助者・事務職員の採用計画→④役割分担を明確化し周知
対策実施の優先順位とロードマップ
【Phase 1】最初の3ヶ月で着手すべきこと
まずコストが低く即効性のある施策から始めてください。
- 職員相談窓口の設置(コスト:月3~5万円)
- 処遇改善加算の見直し(コスト:なし)
- 採用チャネルの多様化(初期コスト:10~30万円)
この3つは比較的低予算で、3ヶ月以内に効果が見え始めます。並行して、ICT導入支援事業などの補助金申請を進めてください。
【Phase 2】3~6ヶ月で組織基盤を強化
Phase 1の施策が軌道に乗ったら、組織の仕組みを変える施策に着手します。
- ICT・介護ロボットの導入(トライアル→本格導入)
- 評価制度とキャリアパスの構築
この段階で、離職率の改善と業務効率化の両面で効果が数値化されます。
【Phase 3】6~12ヶ月で持続可能な体制を構築
最後に、中長期的な人材確保の仕組みを作ります。
- 外国人介護人材の受入準備と導入
- 業務分解と役割分担の最適化
これらの施策により、1年後には安定的な人材確保と定着の好循環が生まれます。
よくある失敗パターンと成功のポイント
失敗パターン1:補助金申請を見逃して自己負担が増大
ICT導入や介護ロボット購入を自己資金で行い、後から補助金の存在を知るケース。申請期限を過ぎると補助を受けられません。
成功のポイント: 対策実施前に必ず自治体の介護保険担当課に問い合わせ、活用可能な補助金・支援制度を確認する。申請から交付まで2~3ヶ月かかるため、早めの行動が鍵です。
失敗パターン2:現場の反発でICT導入が頓挫
トップダウンでシステムを導入したものの、「使いにくい」「今まで通りがいい」と現場が抵抗し、結局使われなくなるケース。
成功のポイント: 導入前に現場リーダーを巻き込み、デモ体験やトライアル期間を設ける。「意外と便利」と実感してもらうことで、スムーズな導入が可能になります。
失敗パターン3:外国人受入後のサポート不足で早期離職
外国人職員を受け入れたものの、言語や文化の違いをフォローできず孤立させてしまい、短期間で辞めてしまうケース。
成功のポイント: 受入前に既存職員への説明会を実施し、理解を促進。日本語教育や生活サポートを手厚く行い、定期面談で悩みを早期に解決する体制を作ります。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模事業所でも補助金は申請できますか?
A:はい、可能です。ICT導入支援やロボット導入補助は事業所規模を問いません。むしろ小規模事業所ほど業務効率化の効果が大きいため、積極的に活用してください。
Q2:処遇改善加算の申請は複雑ですか?自力で可能ですか?
A:社会保険労務士に依頼するのが確実です。費用は10~30万円程度ですが、加算による増収で十分に回収できます。申請要件の確認から書類作成まで支援してもらえます。
Q3:外国人材受入にはどのくらいの準備期間が必要ですか?
A:監理団体経由で6~12ヶ月が目安です。住居確保、在留資格申請、来日前研修などの手続きが必要です。まずは監理団体に相談し、受入計画を立ててください。
Q4:ICT導入で本当に業務時間は削減できますか?
A:はい、記録業務では平均50%の時間削減が実証されています。ただし初期の習熟期間(1~2ヶ月)は逆に時間がかかることもあるため、段階的な導入が成功の鍵です。
Q5:複数の対策を同時に始めるべきですか?優先順位は?
A:予算と人員に余裕がなければ、まず「相談窓口設置」と「処遇改善加算見直し」から始めてください。コストが低く効果が早く出ます。効果を確認してから次の施策に進みましょう。
まとめ
介護業界の人手不足対策は、国の補助金・制度、自治体の地域支援、そして事業者による7つの実践的施策(相談窓口・処遇改善・ICT・評価制度・外国人・採用強化・業務分解)を3層構造で連携させることで効果を最大化できます。
まずは3ヶ月以内に着手すべき3つ: ①職員相談窓口設置、②処遇改善加算見直し、③採用チャネル多様化から始めてください。並行して自治体の補助金情報を確認し、申請準備を進めましょう。
今日から、都道府県・市区町村の介護保険担当課に電話し、「活用できる人材確保支援制度はありますか?」と問い合わせることから始めてください。
小さな一歩の積み重ねが、持続可能な人材確保体制を作ります。

