介護職員の定着率を87.6%まで高める5つの実践ステップ【2026年最新データ】

福祉経営
  1. 介護職員の定着率は87.6%(離職率12.4%)で全産業平均を上回る
  2. 介護職員の定着率とは?現状データで理解する基礎知識
    1. 定着率と離職率の正確な定義
    2. 2026年時点の最新データ分析
    3. 職種別・施設形態別の定着率の違い
  3. 定着率向上がもたらす5つの経営的メリット
    1. メリット1:採用コストの大幅削減
    2. メリット2:サービス品質の安定と向上
    3. メリット3:職員の心理的安全性向上
    4. メリット4:地域での評判向上と採用力強化
    5. メリット5:管理者の業務負荷軽減と戦略業務への集中
  4. 定着率を高める5つの実践ステップ【段階別完全ガイド】
    1. ステップ1:採用段階でのミスマッチ防止(所要期間:採用活動期)
    2. ステップ2:入職後6ヶ月の集中サポート体制(所要期間:6ヶ月)
    3. ステップ3:1から3年目のキャリア形成支援(所要期間:継続的)
    4. ステップ4:働きやすい環境整備(所要期間:3から6ヶ月で段階導入)
    5. ステップ5:組織風土の改善(所要期間:継続的、効果実感3から6ヶ月)
  5. 定着率向上を成功させる3つのコツと注意点
    1. コツ1:離職の兆候を早期発見するチェックリスト活用
    2. コツ2:「入職後3ヶ月・6ヶ月・1年」の定期面談を必ず実施
    3. コツ3:給与だけでなく「やりがい」の提供を忘れない
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1:定着率向上に最も効果的な施策は何ですか?
    2. Q2:小規模事業所でもプリセプター制度は導入できますか?
    3. Q3:定着率が低い原因はどうやって特定すればよいですか?
    4. Q4:訪問介護の定着率が高い理由は何ですか?
    5. Q5:新人育成に時間をかける余裕がありません
  7. まとめ:定着率向上は「仕組み」と「文化」の両輪で実現

介護職員の定着率は87.6%(離職率12.4%)で全産業平均を上回る

「介護職はすぐ辞めてしまう」というイメージをお持ちではありませんか?

実は2025年度の最新調査で、介護職員の定着率は87.6%(離職率12.4%)となり、全産業平均の定着率85.8%(離職率14.2%)を1.8ポイント上回りました。

10年前と比べて離職率は4.1ポイントも改善しており、適切な施策により定着率はさらに向上可能です。

本記事では、福祉経営の現場で実際に定着率90%以上を達成している事業所の手法を基に、採用後6ヶ月・1年・3年の各段階で効果的な定着施策を解説します。人材不足に悩む管理者の方、新人育成を担当される方に、明日から実践できる具体的手順をお伝えします。

介護職員の定着率とは?現状データで理解する基礎知識

定着率と離職率の正確な定義

定着率とは、一定期間内に採用した職員のうち、その期間終了時点でも在籍している職員の割合を示す指標です。計算式は「期末在籍人数を期初在籍人数で割って100をかける」となります。

離職率はその逆で「離職者数を期初在籍人数で割って100をかける」で算出されます。定着率87.6%は、100人雇用した場合に約88人が1年後も勤務している状態を意味します。

2026年時点の最新データ分析

厚生労働省の雇用動向調査によると、介護職員の離職率は以下のように推移しています。

2015年度は16.5%、2020年度は14.9%、2023年度は13.1%、そして2024年度は12.4%(定着率87.6%)となりました。

この10年間で4.1ポイントの改善は、処遇改善加算の拡充、キャリアパス制度の整備、ICT導入による業務効率化などの施策が功を奏した結果といえます。

職種別・施設形態別の定着率の違い

実は「介護職」といっても、職種や働く場所で定着率には大きな差があります。

職種別離職率(2024年度)を見ると、訪問介護員は11.3%(定着率88.7%)、施設介護職員は12.4%(定着率87.6%)、介護支援専門員は10.8%(定着率89.2%)となっています。

施設形態別の傾向としては、特別養護老人ホームは比較的安定しており定着率88から90%、有料老人ホームはやや流動的で定着率85から87%、通所介護は中間的で定着率86から89%、訪問介護は意外にも最も定着率が高い傾向にあります。

訪問介護の定着率が高い理由は、勤務の自由度が高いこと、利用者との1対1の関係性が構築しやすいこと、移動時間による心理的リフレッシュが可能なことなどが挙げられます。

定着率向上がもたらす5つの経営的メリット

メリット1:採用コストの大幅削減

1人の職員を新規採用するコストは、求人広告費・面接対応・研修費用を含めて平均30から50万円かかります。離職率を5%改善すれば、50人規模の事業所で年間75から125万円のコスト削減が可能です。

定着率90%を維持している事業所では、欠員補充の採用活動が年1から2回で済むため、採用担当者の業務負荷も大幅に軽減されています。

メリット2:サービス品質の安定と向上

経験3年以上の職員が全体の60%を超えると、介護技術の標準化が進み、事故発生率が平均40%低下するというデータがあります。

ベテラン職員が多いほど、新人への的確な指導が可能になり、チーム全体のケア品質が底上げされます。利用者やご家族からの信頼度も高まり、口コミによる新規利用者獲得にもつながります。

メリット3:職員の心理的安全性向上

離職率が低い職場では、職員間の人間関係が安定し、相談しやすい雰囲気が醸成されます。これにより新人が孤立するリスクが減り、メンタルヘルス不調による休職も平均30%減少します。

安定したメンバー構成は、チームワークの質を高め、業務分担の効率化や互助の文化を育てます。

メリット4:地域での評判向上と採用力強化

定着率が高い事業所は「働きやすい職場」として地域で評判になり、求人への応募数が増加します。実際に定着率90%以上の事業所では、1件の求人に対して平均3から5件の応募があり、選考の質が向上しています。

紹介入社(職員からの友人紹介)の割合も高まり、採用のミスマッチが減少します。

メリット5:管理者の業務負荷軽減と戦略業務への集中

頻繁な欠員補充や新人教育に追われず、管理者が経営戦略や地域連携、サービス改善などの本来業務に時間を使えるようになります。

定着率が安定すると、長期的な人材育成計画や設備投資計画が立てやすくなり、事業所の持続的成長が可能になります。

定着率を高める5つの実践ステップ【段階別完全ガイド】

ステップ1:採用段階でのミスマッチ防止(所要期間:採用活動期)

具体的手順をご紹介します。

まず業務内容の透明化です。これには30分程度かかりますが、求人票に「1日のスケジュール例」「担当する利用者数」「夜勤の有無と頻度」を明記します。

次に職場見学の必須化です。1時間程度の時間を取り、面接前に必ず現場見学を実施し、実際の業務風景・職員の雰囲気を体感してもらいます。

そして先輩職員との面談設定です。30分程度で、管理者だけでなく、同年代や同じ職種の先輩と話す機会を設け、率直な質問を受けます。

実施のコツとしては、ネガティブな情報(夜勤の大変さ、身体的負荷など)も正直に伝えること、求職者の「やりたいこと」と事業所の方針が合致するか双方向で確認すること、「3年後どうなりたいか」を必ず質問しキャリアビジョンの一致を確認することが重要です。

ステップ2:入職後6ヶ月の集中サポート体制(所要期間:6ヶ月)

この期間の離職率が最も高く(全離職の約40%)、重点的な支援が必要です。

具体的手順として、まずプリセプター制度の導入があります。初日から3ヶ月間、新人1名に対して先輩職員1名を固定配置し、業務・メンタル両面をサポートします。

次に段階別チェックリストの活用です。1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の各時点で習得すべき技術・知識を明文化し、達成状況を可視化します。

週次1on1ミーティングも重要です。15分程度を週1回、直属の先輩または管理者が困りごと・不安を聞く短時間面談を実施します。

そして3ヶ月・6ヶ月評価面談です。各30分程度で習得状況の確認と今後の目標設定を行い、成長実感を持たせます。

実施のコツとしては、プリセプターには「教える技術」の研修を事前実施(2時間程度)すること、チェックリストは「できた」だけでなく「自信度」も記入させること、1on1では「話を聞く8割、アドバイス2割」の姿勢を徹底すること、小さな成長も具体的に褒めて承認することが大切です。

ステップ3:1から3年目のキャリア形成支援(所要期間:継続的)

具体的手順をご説明します。

年次別到達目標の明確化には計画時間として2時間程度必要です。1年目は「基本業務の自立」、2年目は「後輩指導開始」、3年目は「リーダー候補」など段階を設定します。

外部研修参加の計画的推奨として、年2から3回、認知症ケア、リスクマネジメント、リーダーシップなど、本人の興味とキャリアに合わせた研修を選択します。

資格取得支援制度の整備も通年で行います。介護福祉士、介護支援専門員などの受験費用補助・勉強会開催・有給取得配慮を実施します。

2年目以降は役割付与による動機づけとして、レクリエーション担当、新人教育補助、委員会リーダーなど、小さな責任を段階的に付与します。

実施のコツとしては、キャリアパスは「給与」だけでなく「役割・裁量・専門性」の3軸で設計すること、研修は「参加させる」のではなく「本人が選ぶ」形式にすること、資格取得者には合格祝い金や手当アップで報いること、役割付与後は定期的にフォローし困りごとを早期発見することが重要です。

ステップ4:働きやすい環境整備(所要期間:3から6ヶ月で段階導入)

具体的手順として、シフト希望の尊重制度を月次運用で実施します。月1回の希望休を確実に取得できる体制、連続夜勤の回避ルール設定を行います。

業務効率化ツールの導入には導入期間として3ヶ月程度かかります。記録のICT化、インカム導入による情報共有迅速化、見守りセンサーによる負担軽減を進めます。

休憩時間の確保徹底は即時実施可能です。「休憩は権利」という認識の共有、休憩室の環境整備(テレビ・雑誌・マッサージチェア等)を行います。

育児・介護との両立支援は制度整備に1ヶ月程度必要です。短時間勤務制度、時差出勤、急な休みへの柔軟対応ルールの明文化を行います。

実施のコツとしては、シフト作成は公平性と透明性を重視し作成ルールを明文化すること、ICT導入は「職員の負担軽減」を第一目的に操作研修を十分に実施すること、休憩時間は「とっていいよ」ではなく「必ずとる」文化にすること、両立支援制度は利用者が出やすいよう利用事例を共有することが大切です。

ステップ5:組織風土の改善(所要期間:継続的、効果実感3から6ヶ月)

具体的手順として、月次ミーティングでの意見交換を月1回・1時間実施します。業務改善提案、困りごと共有、成功事例の発表など双方向コミュニケーションを行います。

感謝と承認の文化醸成は日常的に行います。「ありがとうカード」制度、月間MVP表彰、管理者からの個別フィードバックなどを実施します。

理念・ビジョンの浸透活動は四半期に1回行います。事業所が目指すケアのあり方を再確認し、日々の業務との結びつきを対話します。

ハラスメント防止体制として年2回研修と相談窓口設置を行います。パワハラ・セクハラの定義共有、相談しやすい外部窓口の設置を実施します。

実施のコツとしては、ミーティングは「否定しない」「まず聞く」ルールを徹底すること、感謝カードは「行動具体的に」書く文化にすると効果が高まること、理念は抽象的な標語ではなく「具体的な行動例」で示すこと、ハラスメント対策は加害者処罰ではなく予防教育に重点を置くことが重要です。

定着率向上を成功させる3つのコツと注意点

コツ1:離職の兆候を早期発見するチェックリスト活用

以下の兆候が見られたら、早めの個別面談が有効です。

遅刻・欠勤が増える(月2回以上)、表情が暗くなる・挨拶が減る、ミスが増える・報告が遅れる、休憩時間に一人でいることが多い、業務改善提案や意見が出なくなる、といった点に注意しましょう。

対処法としては、兆候発見後1週間以内に、信頼できる先輩か管理者が「最近どう?」と軽い声かけから始め、本人が話しやすい環境を作ります。問題が明確なら即座に改善策を提示し、「見捨てない」姿勢を示すことが重要です。

コツ2:「入職後3ヶ月・6ヶ月・1年」の定期面談を必ず実施

新人がつまずきやすいタイミングは、入職直後よりも「慣れてきた頃」です。3ヶ月目は現実とのギャップに悩み、6ヶ月目は成長停滞感を感じ、1年目は今後のキャリアに迷いが生じます。

失敗例としては、「忙しいから」と面談をスキップすると、不満が蓄積し突然の退職につながります。

成功例としては、カレンダーに面談日を最初から入れておき、「面談は職場の文化」として定着させている事業所は、定着率が平均5から8ポイント高くなります。

コツ3:給与だけでなく「やりがい」の提供を忘れない

処遇改善は重要ですが、離職理由の第1位は「人間関係」(34.3%)、第2位は「理念への不満」(26.3%)であり、「給与」は第4位(16.6%)です。

注意点として、給与アップだけでは定着率は上がりません。「この仕事に意味がある」「自分は成長している」「仲間に認められている」という実感が、長期就業の決め手になります。

利用者からの感謝の言葉を共有する、成長を可視化する、チームでの達成感を演出するなど、内発的動機づけを重視しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1:定着率向上に最も効果的な施策は何ですか?

A:入職後6ヶ月のプリセプター制度による集中支援です。この期間の離職を防ぐことで、全体の定着率が大きく向上します。

Q2:小規模事業所でもプリセプター制度は導入できますか?

A:職員10名未満でも可能です。専任ではなく「担当制」として、業務と並行しながら新人を見守る形でも効果があります。

Q3:定着率が低い原因はどうやって特定すればよいですか?

A:退職者への匿名アンケートと、在職者への定期的な満足度調査を組み合わせると、本音が見えてきます。外部機関の活用も有効です。

Q4:訪問介護の定着率が高い理由は何ですか?

A:勤務時間の自由度が高く、利用者との1対1の関係構築がしやすいことが主因です。移動時間が心理的リフレッシュになる効果もあります。

Q5:新人育成に時間をかける余裕がありません

A:初期投資は必要ですが、定着すれば採用・教育コストは長期的に削減されます。まずは週1回15分の1on1から始めましょう。

まとめ:定着率向上は「仕組み」と「文化」の両輪で実現

介護職員の定着率87.6%は、適切な施策により90%以上へ向上可能です。重要なポイントは以下の3つです。

第一に、採用段階のミスマッチ防止と入職後6ヶ月の集中支援が最優先であること。第二に、キャリア形成支援と働きやすい環境整備を並行して進めること。第三に、感謝と承認の文化を日常的に醸成し、やりがいを実感できる組織にすることです。

まずは明日から、新人職員への「週1回15分の1on1」を始めてみましょう。小さな一歩が、職員の安心感を生み、定着率向上の確かな成果につながります。

人材定着は一朝一夕には実現しませんが、継続的な取り組みにより、職員も利用者も笑顔になれる職場が必ず作れます。あなたの事業所の未来を、今日から変えていきましょう。

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