介護福祉士の人手不足はなぜ深刻化?2025年最新データと現場で使える3つの対策

福祉経営

介護福祉士の人手不足は本当に解決できないのか?

答えは「解決可能」です。ただし、根本原因を理解し適切な対策を実施する必要があります。

2025年現在、介護業界では約32万人の人材が不足し、2040年には57万人に達すると予測されています。この記事では、厚生労働省の最新データをもとに人手不足の真の原因を解明し、現場で今すぐ実践できる3ステップの解決策を紹介します。

15年間介護施設で勤務し、採用担当も経験した筆者が、データと実体験から導き出した実践的な内容です。

この記事を読めば、介護業界の人手不足問題の本質と、あなたの職場で明日から使える具体的対策が分かります。

介護福祉士の人手不足はどれほど深刻なのか?【2025年最新データ】

2025年の人手不足の実態

介護業界における人手不足は、数字で見ると想像以上に深刻です。

厚生労働省「第9期介護保険事業計画」によると、2025年度には約243万人の介護職員が必要とされる一方で、実際の供給は約211万人にとどまり、約32万人が不足する見込みです。これは必要数の約13%に相当します。

さらに問題なのは、この状況が一時的なものではない点です。2040年には272万人が必要とされ、不足数は57万人に拡大すると予測されています。

年度必要数供給見込み不足数不足率
2025年243万人211万人32万人13.2%
2030年257万人225万人32万人12.5%
2040年272万人215万人57万人21.0%

地域別の格差が拡大している

人手不足の深刻度は地域によって大きく異なります。

厚生労働省「令和5年度介護人材確保の現状」によると、介護職の有効求人倍率は全国平均で3.97倍ですが、大都市圏では7.65倍、別地域では5.84倍と都市部で特に深刻です。これは1人の求職者に対し8件近くの求人があることを意味し、採用競争が極めて激しい状況を示しています。

一方、地方では2.5倍前後の地域もあり、都市部との格差は約3倍に達します。この背景には、都市部での高齢化率の急速な上昇と、若年層の都市集中という二重の課題があります。

離職率は改善傾向も定着に課題

業界団体「令和5年度介護労働実態調査」によると、介護職員の離職率は13.6%で、全産業平均の14.2%とほぼ同水準です。

「介護業界は離職率が高い」というイメージは必ずしも正確ではありません。問題は離職率そのものではなく、採用が困難なため一人が辞めた際の穴埋めができない点にあります。

実際、同調査では介護事業所の17.7%が「職員の定着率が低く困っている」と回答しており、人手不足感は数字以上に深刻です。

介護福祉士が不足する3つの根本原因

原因1:人間関係の問題が離職理由の第1位

介護業界の人手不足を語る際、多くの記事で「給与の低さ」が強調されます。しかし現場の実態は異なります。

業界団体の調査によると、介護職を辞めた理由の第1位は「職場の人間関係に問題」で23.2%を占めます。これは「収入が少ない」(14.5%)を大きく上回る結果です。

人間関係の問題が深刻化する背景には、以下の要因があります。

まず、評価基準の不明確さです。「仕事ができる人」と「できない人」の差が明確に給与や昇進に反映されず、頑張っても報われない不満が蓄積します。実際に筆者の前職場では、新人が3ヶ月で辞めた理由を聞くと「先輩と同じ給料なのに仕事量が違いすぎる」という声が多くありました。

次に、チームワークの難しさです。介護現場では24時間365日のシフト制で、全員が同じ時間に働くことがありません。情報共有が不十分になりやすく、「夜勤者がやるべきだった」「日勤の申し送りが不足」といった責任の押し付け合いが発生しがちです。

さらに、閉鎖的な環境も一因です。少人数の事業所では人間関係が固定化し、一度こじれると修復が困難になります。特に訪問介護では一人で利用者宅を訪問するため孤立感が強く、悩みを相談できる環境がない場合もあります。

原因2:仕事内容に見合わない処遇

給与水準の低さも、依然として大きな課題です。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、介護職が含まれる医療・福祉産業の平均賃金は30.64万円で、全産業平均の33.14万円を下回ります。

特に問題なのは、身体的・精神的負担の大きさと賃金のギャップです。入浴介助や排泄介助など体力を要する業務に加え、夜勤による生活リズムの乱れ、利用者や家族からのクレーム対応など、精神的ストレスも大きい仕事です。

筆者が採用面接で聞いた前職場の退職理由でも、「給与が低いから」という単純な理由ではなく、「この仕事量でこの給料では続けられない」という相対的な不満が多く見られました。

処遇改善加算により給与は段階的に上昇していますが、他産業との差は依然として存在します。2019年度から2021年度の3年間で月額平均2.3万円の改善がありましたが、全産業との格差解消には至っていません。

原因3:社会的評価とキャリアパスの不透明さ

介護職の社会的評価の低さも、人材確保を困難にしています。

業界団体の調査では、介護従事者の20.2%が「業務に対する社会的評価が低い」と感じています。高齢者の生活を支える社会的意義の大きい仕事であるにもかかわらず、「3K(きつい・汚い・危険)」というネガティブなイメージが根強く残っています。

さらに問題なのは、キャリアパスの不透明さです。多くの事業所では、介護福祉士を取得した後のキャリア展望が見えにくく、「この先どうなるのか」という不安を抱える職員が少なくありません。

実際、筆者の経験でも、5年目の職員から「介護福祉士を取得したが、次に目指すものが分からない」という相談を受けたことがあります。管理職のポストは限られており、専門性を高める方向性も明確でないため、モチベーション維持が難しいのです。

今すぐできる人手不足解消の3ステップ実践法

ステップ1:人間関係の「見える化」で離職を防ぐ(所要期間:1〜2ヶ月)

最初に取り組むべきは、離職の最大原因である人間関係問題の把握と改善です。

具体的な実施方法:

まず、月1回の個別面談を制度化します。管理者が各職員と15分程度の1対1面談を行い、業務上の悩みや人間関係の課題をヒアリングします。ポイントは「話を聞くだけ」ではなく、記録を残し改善策を検討することです。

次に、匿名の職場満足度調査を実施します。Googleフォームなどの無料ツールを使い、「職場の人間関係」「業務量」「評価の公平性」などについて5段階評価と自由記述で回答してもらいます。匿名性を確保することで、本音を引き出せます。

さらに、相談窓口を設置します。管理者以外の第三者(例:法人本部の人事担当や外部カウンセラー)に相談できる仕組みを作ります。調査機関の調査では、相談窓口がある事業所の職員は42.1%が「人間関係の悩みがない」と回答し、窓口がない事業所(22.9%)と19.2ポイントの差がありました。

つまずきポイントと対処法:

「忙しくて面談の時間が取れない」という声がよく聞かれます。この場合、まずは月1回15分から始め、シフト作成時に面談時間を組み込むことで解決できます。筆者の職場では、早番終了後の14時〜15時を面談時間として確保し、定着させました。

ステップ2:評価制度の明確化でモチベーション向上(所要期間:2〜3ヶ月)

人間関係の次に取り組むべきは、公平な評価制度の構築です。

具体的な実施方法:

まず、評価項目を明文化します。「利用者対応」「記録の正確性」「チームワーク」「業務改善提案」など5〜8項目を設定し、各項目を5段階で評価する基準を作ります。重要なのは「誰が評価しても同じ結果になる」明確さです。

例えば「チームワーク」なら、「月に3回以上他職員の業務をサポートした:5点」「必要時に協力した:3点」など、具体的な行動基準を設けます。

次に、評価結果を給与・賞与に連動させます。年2回の評価で上位20%には月額5,000円の手当、中位60%には3,000円、下位20%には現状維持など、差をつけます。金額は小さくても「頑張りが認められる」実感が重要です。

さらに、キャリアパスを可視化します。「介護職員→リーダー→主任→施設長」という管理職ルートだけでなく、「介護職員→認知症ケア専門員→認知症ケアリーダー」など、専門職としてのキャリアも示します。筆者の職場では、壁に「キャリアマップ」を掲示し、各段階で必要な資格・経験・給与水準を明示したところ、若手職員の資格取得率が2倍になりました。

つまずきポイントと対処法:

「評価基準を作っても主観的になる」という課題があります。対処法は、複数人で評価することです。直属の上司だけでなく、同僚からの360度評価を取り入れることで、客観性が高まります。

ステップ3:「攻めの採用」で若手人材を獲得(所要期間:継続的に実施)

離職防止と並行して、新規採用の強化も必要です。

具体的な実施方法:

まず、採用ページを充実させます。職員インタビュー動画、1日の業務の流れ、先輩の声などを掲載します。スマートフォンで撮影した簡素な動画でも効果があります。筆者の職場では、新人職員に「入職3ヶ月で感じたこと」を1分動画で語ってもらい採用ページに掲載したところ、応募が前年比1.5倍に増えました。

次に、SNSで情報発信します。InstagramやX(旧Twitter)で、施設の日常や職員の様子、イベントの写真などを週1回投稿します。「介護職はかっこいい」「楽しそう」というイメージを伝えることが目的です。投稿内容は、利用者の笑顔や職員の活躍など、ポジティブなものを中心にします。

さらに、人材紹介会社との関係を強化します。紹介会社の担当者を施設に招き、現場を見学してもらいます。職場の雰囲気や特徴を理解してもらうことで、マッチング精度が上がります。また、月1回のオンライン面談で採用状況を共有し、「待ち」ではなく「攻め」の姿勢を示します。

つまずきポイントと対処法:

「SNS運用のノウハウがない」という声があります。最初は週1回の投稿から始め、若手職員に運用を任せるのも一案です。「完璧」を目指さず、「続けること」を優先しましょう。

国や自治体の支援制度を活用する方法

処遇改善加算を最大限活用する

2024年6月に介護職員等処遇改善加算が一本化され、取得しやすくなりました。

加算を取得するメリット:

加算を取得すると、介護報酬に上乗せされた金額が事業所に入り、職員の給与改善に充てられます。2024年度は月額6,000円相当のベースアップが目標とされており、年収で約7.2万円の増加につながります。

取得のポイント:

加算取得には、キャリアパス要件や職場環境改善要件を満たす必要があります。具体的には、昇給の仕組み整備、資格取得支援、研修機会の確保などです。これらは前述のステップ2で紹介した評価制度の整備と連動しており、一石二鳥の効果があります。

ICT導入補助金で業務効率化

厚生労働省のICT導入支援事業を活用すれば、タブレット端末や記録ソフトの導入費用の一部が補助されます。

補助金の内容:

1事業所あたり最大100万円(従業員数により変動)が補助され、記録業務の効率化や情報共有の円滑化に役立ちます。厚生労働省の調査では、ICT導入施設の80%以上が「業務負担が軽減された」と回答しています。

申請方法:

各都道府県の介護保険担当課に申請書を提出します。申請時期は年1〜2回のため、自治体のホームページで確認しましょう。

外国人材受け入れの支援

特定技能外国人の受け入れには、国や自治体から補助金が出る場合があります。

主な支援内容:

日本語教育費用の補助、住居確保の支援、介護福祉士資格取得のための学習支援などがあります。自治体によって内容が異なるため、地域の福祉人材センターに問い合わせることをおすすめします。

特定技能外国人は、技能実習と異なり訪問介護も含めた幅広い業務が可能で、一人夜勤もできます。2025年4月の制度改正で訪問介護が解禁され、活用の幅がさらに広がりました。

よくある質問(FAQ)

Q1: 小規模事業所でも人手不足は解決できますか?

A: 可能です。小規模だからこそ、人間関係の改善や評価制度の導入がしやすいメリットがあります。まずは相談窓口設置から始めましょう。

Q2: 処遇改善加算の取得は難しいですか?

A: 要件を満たせば取得できます。キャリアパス要件はステップ2の評価制度整備で対応でき、事務負担も加算一本化で軽減されました。

Q3: 外国人材の受け入れにはどのくらい費用がかかりますか?

A: 特定技能の場合、採用費約30〜50万円、月額の支援費約2〜3万円が目安です。ただし補助金を活用すれば負担を軽減できます。

Q4: SNSでの情報発信は効果がありますか?

A: あります。特に20〜30代の求職者はSNSで情報収集するため、職場の雰囲気を伝える有効な手段です。週1回の投稿でも十分です。

Q5: 評価制度を導入したら職員の不満が出ませんか?

A: 透明性の高い基準を作り、事前に説明すれば問題ありません。むしろ「頑張りが認められる」と好評を得るケースが多いです。

まとめ:人手不足解消は現場の行動から

介護福祉士の人手不足は、2025年に32万人、2040年には57万人に達する深刻な問題です。

しかし、原因を正しく理解し適切な対策を講じれば解決可能です。

重要なポイント3つ:

  • 人間関係問題が離職理由の第1位であり、見える化と相談窓口設置が最優先
  • 評価制度の明確化で職員のモチベーションを高め定着率を向上
  • 攻めの採用活動でSNSや動画を活用し若手人材を獲得

これらの対策は大規模な予算がなくても実施でき、効果が実証されています。

次のアクション:

今週中に職員との個別面談を1回実施し、人間関係の現状を把握しましょう。小さな一歩が、人手不足解消への大きな前進につながります。

介護業界の未来は、現場で働く一人ひとりの行動から変わっていきます。あなたの職場から、人手不足解消の波を起こしていきましょう。

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