介護の人材不足を2025年までに解消する8つの実践対策と成功事例

福祉経営
  1. はじめに
  2. 介護の人材不足とは
    1. 数字で見る深刻な現状
    2. 2025年問題と2040年問題
  3. 介護人材不足の5つの根本原因
    1. 原因1:少子高齢化による労働力人口の減少
    2. 原因2:低賃金と処遇の問題
    3. 原因3:人間関係の問題と高い離職率
    4. 原因4:身体的・精神的な負担の大きさ
    5. 原因5:介護業界へのネガティブイメージ
  4. 介護人材不足解消の8つの実践対策
    1. 対策1:処遇改善加算の最大限活用(難易度:中/効果:大)
    2. 対策2:ICT・介護ロボット導入による生産性向上(難易度:中/効果:大)
    3. 対策3:職場環境改善と人間関係の円滑化(難易度:中/効果:大)
    4. 対策4:柔軟な働き方の提供(難易度:低/効果:中)
    5. 対策5:教育研修体制の充実(難易度:中/効果:中)
    6. 対策6:外国人介護人材の活用(難易度:高/効果:中)
    7. 対策7:介護の魅力発信と採用広報の強化(難易度:低/効果:中)
    8. 対策8:認証評価制度の活用(難易度:中/効果:中)
  5. 人材不足対策で失敗しないための注意点
    1. 注意点1:対策の優先順位を間違えない
    2. 注意点2:一時的な対策で終わらせない
    3. 注意点3:全ての対策を同時に実施しない
    4. コツ1:採用がうまくいっている理由を参考にする
    5. コツ2:職員参加型で改善を進める
    6. コツ3:地域の自治体と連携する
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1:小規模事業所でも処遇改善加算は取得できますか?
    2. Q2:ICT導入の効果はどれくらいで実感できますか?
    3. Q3:人間関係の問題を早期発見する方法は?
    4. Q4:外国人材の受け入れで注意すべきことは何ですか?
    5. Q5:離職率を下げる最も効果的な方法は何ですか?
  7. まとめ

はじめに

「求人を出しても応募がない」「採用してもすぐに辞めてしまう」と悩んでいませんか。

介護の人材不足は、2025年に約32万人、2040年に約57万人が不足する構造的問題で、有効求人倍率3.97倍、事業所の84%が人材不足を感じる深刻な状況です。

この記事では、介護業界の人材確保支援に13年携わってきた経験から、人材不足の根本原因と事業所が実践できる具体的な解決策を解説します。厚生労働省のデータと実際の成功事例に基づく信頼性の高い情報です。

読み終える頃には、人材確保と定着率向上の実践的な方法が明確になるでしょう。

介護の人材不足とは

介護の人材不足とは、高齢化による介護需要の急増に対し、介護人材の供給が追いつかず、介護サービスを提供する事業所や施設で恒常的に職員が不足している状態を指します。単なる一時的な採用難ではなく、少子高齢化という社会構造の変化に起因する長期的かつ構造的な問題です。

数字で見る深刻な現状

厚生労働省の推計では、2025年度に約240万人の介護職員が必要とされる一方、現状のまま推移すると約32万人が不足すると見込まれています。さらに2040年度には約272万人が必要で、約57万人の不足が予測されます。これは全体の約21%に相当し、10名体制が必要な現場に8名しか配置できない計算です。

有効求人倍率は全職業平均1.16倍に対し、介護関係職種は3.97倍と約3.4倍の開きがあります。求職者1人に対して約4件の求人がある状態で、特に都市部では深刻です。東京都では7.65倍と全国平均の約2倍に達し、人材獲得競争が極めて厳しくなっています。

介護労働安定センターの調査では、介護事業所の約7割が職員不足を感じており、そのうち約9割が「採用が困難」と回答しています。民間調査でも84%の事業所が人材不足を実感しているというデータもあり、ほとんどの事業所が人材確保に苦慮している実態が浮き彫りになっています。

2025年問題と2040年問題

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題は目前に迫っています。2025年には後期高齢者が約2,155万人に達し、介護需要が急増します。この時期の人材不足が最も深刻で、毎年約5万人規模の不足が続くと予測されています。

さらに2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピークを迎えます。この頃には現役世代が著しく減少するため、高齢者を支える担い手が現在よりさらに少なくなります。介護需要そのものは緩やかにピークアウトしますが、労働力人口の減少により人材確保の困難さは続きます。

介護人材不足の5つの根本原因

原因1:少子高齢化による労働力人口の減少

最大の原因は日本全体の労働力人口の減少です。少子高齢化により、2040年には労働力人口が約4割減少すると予測されています。働き手となる若年層が減り、高齢者が増え続けるため、介護サービスを必要とする人は増える一方で、働き手は減り続ける構図です。

この問題は介護業界に限らず多くの産業で共通する課題ですが、介護業界は特に高齢化の直接的な影響を受けます。要介護者の増加と労働力の減少が同時進行するため、需給ギャップが拡大し続けます。

原因2:低賃金と処遇の問題

介護職の平均年収は約382万円で、全産業平均の458万円を大きく下回ります。体力的・精神的負担の大きさに対し、賃金が見合っていないという声が多数を占めます。

介護保険制度では報酬単価が決まっているため、事業所が自由に価格設定できず、売上を大幅に伸ばすことが困難です。処遇改善加算や特定処遇改善加算はありますが、他産業との賃金格差は依然として大きく、経済的な理由で他業種へ転職する職員が後を絶ちません。

夜勤や休日出勤も多く、不規則な勤務形態も敬遠される要因です。仕事の重要性に対して社会的評価や賃金が十分に報われていないという認識が、新規参入や長期就労の障壁となっています。

原因3:人間関係の問題と高い離職率

介護職の離職理由の第1位は「職場の人間関係に問題があったため」で23.2%を占めています。令和5年度の介護職員の離職率は13.6%、訪問介護員は11.8%に上ります。

協働が不可欠な職場で、上下関係や対人トラブルが表面化しやすく、感情労働の側面も強いためストレスが蓄積されやすい環境です。管理者のマネジメント不足、ハラスメント問題、職員間のコミュニケーション不全などが離職を招きます。

採用しても定着しなければ人材不足は解消されません。離職率の高さが慢性的な人材不足の一因となっています。

原因4:身体的・精神的な負担の大きさ

介護労働安定センターの調査では、「身体的負担が大きい」と回答した介護職員が29.3%、「精神的にきつい」が22.5%に上ります。入浴介助、移乗介助、排泄介助など、身体的負担の大きい業務が多く、腰痛などの健康問題を抱える職員も少なくありません。

認知症ケアや終末期ケアでは精神的負担も大きくなります。利用者やその家族との関係構築、クレーム対応なども精神的ストレスとなります。夜勤や早朝勤務による不規則な生活リズムも、心身の負担を増大させます。

人手不足により一人あたりの業務量が増加し、休憩時間が取れない、残業が増えるといった悪循環に陥ります。十分なケアを提供できず、利用者と向き合う時間が減少する事態も発生しています。

原因5:介護業界へのネガティブイメージ

介護業界未経験者の介護へのイメージは「体力的にきつい」「給与が低い」「汚い仕事が多い」といったネガティブなものが多数を占めます。いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」イメージが定着し、応募段階で敬遠されるケースが目立ちます。

長崎県の調査では、「介護の仕事をしたいと思わない」理由として「体力的・精神的にきついから」43.9%、「給与など待遇が悪いから」19.2%と回答されています。実際には働き方を工夫している施設や支援制度が整っている施設もありますが、その実態が広く知られていないことが課題です。

介護人材不足解消の8つの実践対策

対策1:処遇改善加算の最大限活用(難易度:中/効果:大)

処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3つを確実に取得し、その増収分を職員に還元します。最上位の加算を取得することで、1人あたり月数万円の処遇改善が可能です。

勤続10年以上の介護福祉士に対し月額8万円の増額または年収440万円を確保する特定処遇改善加算を活用しましょう。基本給の見直し、各種手当の充実、賞与の増額など、具体的な給与体系の改善を実施します。

地域の相場より1〜2割高い給与設定にすることで、求人への応募率が向上します。処遇改善の内容を求人広告に具体的に記載し、差別化を図ることが重要です。

対策2:ICT・介護ロボット導入による生産性向上(難易度:中/効果:大)

介護記録のタブレット化、音声入力システム、シフト作成の自動化、請求業務のシステム化など、ICT活用で記録業務時間を50%削減できます。LIFE(科学的介護情報システム)への対応も含め、データ入力・活用の効率化を図りましょう。

見守り支援ロボット、移乗介助リフト、入浴支援機器などの導入で身体的負担を軽減し、職員の健康維持と長期就労を実現します。国や自治体のICT導入補助金を活用すれば、初期投資を50〜75%抑えられます。

LIFE加算の取得により、ICTを活用しながらインセンティブも得られます。業務効率化により創出された時間を利用者への直接的なケアに充当することで、サービスの質も向上します。

対策3:職場環境改善と人間関係の円滑化(難易度:中/効果:大)

離職理由第1位の「人間関係」問題に対処するため、定期的な1on1面談を実施し、職員の悩みや不満を早期に把握します。月1回30分程度、管理者が全職員と個別に話す時間を設けましょう。

ハラスメント防止研修を年2回実施し、相談窓口を設置します。問題が発生した場合は迅速に調査し、適切な対処を行うことで、職場の信頼を維持します。チームビルディング研修や懇親会を定期的に開催し、職員同士のコミュニケーションを促進します。

感謝を伝え合う文化を作ることで、良好な人間関係を構築できます。「ありがとうカード」制度など、日常的に感謝を表現する仕組みを導入している事業所では、離職率が低い傾向があります。

対策4:柔軟な働き方の提供(難易度:低/効果:中)

週3日勤務、時短勤務、日勤のみ勤務、夜勤専従など、多様な働き方を用意します。育児や介護と両立したい主婦層、体力的に夜勤が難しいシニア層など、幅広い人材にアプローチできます。

正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣など、雇用形態の選択肢を増やします。シフトの希望を最大限配慮し、月1回のシフト希望提出で調整する仕組みを作ります。突発的な休暇にも柔軟に対応できる体制を整え、有給休暇の取得率を80%以上に引き上げます。

ワークライフバランスを重視する姿勢を示すことで、定着率が向上します。「採用がうまくいっている理由」調査では、「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」が57.3%で上位に入っています。

対策5:教育研修体制の充実(難易度:中/効果:中)

新人職員には必ず先輩職員がOJTで指導し、最低3ヶ月は手厚くサポートします。プリセプター制度を導入し、1対1で相談できる環境を作ることで、早期離職を防ぎます。

月1回の勉強会、外部研修への参加支援、資格取得費用の補助など、スキルアップの機会を提供します。介護福祉士、ケアマネジャーへのキャリアパスを明確化し、「この施設で成長できる」というイメージを持ってもらいます。

介護に関する入門的研修を活用し、未経験者の参入を促進します。研修修了後の職場体験とマッチングを組み合わせ、入職までつなげる一体的支援を強化しましょう。

対策6:外国人介護人材の活用(難易度:高/効果:中)

EPA、技能実習、特定技能、留学生など、複数のルートから外国人材を受け入れられます。技能実習では最大5年、特定技能では通算5年、介護福祉士資格を取得すれば永続的な在留が可能です。

日本語研修の実施、生活支援、住居の確保など、サポート体制を整備すれば、長期就労が期待できます。外国人スタッフは真面目で勤勉な方が多く、定着率が高い傾向があります。受け入れ実績のある監理団体や登録支援機関と連携し、計画的に進めることをお勧めします。

対策7:介護の魅力発信と採用広報の強化(難易度:低/効果:中)

求人媒体の選定を見直し、ターゲット層に合った媒体を活用します。求人サイト、Indeed、求人ボックスなど、複数の媒体に掲載することで露出を増やします。

施設の魅力を具体的に伝える採用ページを作成します。「職員の1日の流れ」「先輩職員のインタビュー」「研修制度の詳細」「給与・待遇の明示」など、求職者が知りたい情報を丁寧に掲載します。SNSでの情報発信、職員紹介動画の制作、施設見学会の定期開催など、施設の雰囲気を伝える工夫をします。

介護の日(11月11日)や福祉人材確保重点期間を活用し、介護の魅力を積極的に発信しましょう。やりがいや社会的意義を伝えることで、ネガティブイメージの払拭につながります。

対策8:認証評価制度の活用(難易度:中/効果:中)

人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度を活用します。都道府県が基準に基づく評価を行い、一定の水準を満たした事業者に認証を付与する制度です。

認証を取得することで、「職場環境が良い」「人材育成に力を入れている」という客観的な証明となり、求人への応募率が向上します。職員の定着率向上にもつながり、人材確保と定着の両面で効果があります。

人材不足対策で失敗しないための注意点

注意点1:対策の優先順位を間違えない

新規採用に力を入れる前に、既存職員の離職防止が最優先です。せっかく採用しても職場環境が悪ければすぐに辞めてしまい、採用コストが無駄になります。まずは人間関係の改善、業務負担の軽減、処遇の見直しなど、内部環境の整備に注力しましょう。

注意点2:一時的な対策で終わらせない

補助金を活用してICTツールを導入しても、職員が使いこなせなければ効果は出ません。導入後の研修、運用ルールの策定、定期的な見直しが必要です。処遇改善も一度行えば終わりではなく、継続的な見直しが求められます。

注意点3:全ての対策を同時に実施しない

限られた予算と人員で、8つの対策すべてを同時に実施することは困難です。施設の現状を分析し、最も効果的な対策から優先順位をつけて実施しましょう。段階的に取り組むことで、無理なく改善を進められます。

コツ1:採用がうまくいっている理由を参考にする

介護労働安定センターの調査で「採用がうまくいっている理由」の第1位は「職場の人間関係がよいこと」62.7%でした。次いで「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」57.3%、「仕事と家庭の両立の支援を充実させていること」47.9%です。

成功している事業所の共通点を自施設にも取り入れることで、効果的な対策が実現できます。

コツ2:職員参加型で改善を進める

施設側が良かれと思って実施した対策が、職員にとっては負担になる場合もあります。定期的にアンケートを実施し、職員の本音を聞き出す仕組みを作りましょう。「何をしてほしいか」「何が一番困っているか」を直接聞くことで、的確な対策を打てます。

コツ3:地域の自治体と連携する

都道府県や市町村の介護人材確保施策を活用しましょう。地域医療介護総合確保基金を活用した支援事業、自治体向け手引きの活用、伴走支援事業への参加など、行政のサポートを受けることで効果的な対策が実現できます。

よくある質問(FAQ)

Q1:小規模事業所でも処遇改善加算は取得できますか?

可能です。処遇改善加算の取得には事業所の規模は関係ありません。研修実施体制、キャリアパス制度の整備、職場環境等要件を満たせば、小規模事業所でも最上位の加算を取得できます。社会保険労務士や介護コンサルタントに相談し、要件を確認しながら段階的に整備することをお勧めします。加算取得により増収分を職員に還元すれば、給与アップの財源を確保できます。

Q2:ICT導入の効果はどれくらいで実感できますか?

導入後3〜6ヶ月で効果が実感できます。最初の1〜2ヶ月は操作習得に時間がかかり、一時的に業務時間が増える場合もありますが、慣れてくれば記録業務時間を50%削減できた事例が多数報告されています。導入前に十分な研修を実施し、サポート体制を整えることで、スムーズな定着が可能です。国や自治体の補助金を活用すれば、初期投資を抑えられます。

Q3:人間関係の問題を早期発見する方法は?

定期的な1on1面談と匿名アンケートが有効です。月1回30分程度、管理者が全職員と個別に話す時間を設けます。「最近困っていることはないか」「職場の雰囲気はどうか」など、オープンな質問で本音を引き出します。四半期に1回、匿名アンケートを実施し、「人間関係で困っていることはないか」「改善してほしいことは何か」を聞きます。離職面談も重要で、退職理由の本音を聞くことで問題の早期発見につながります。

Q4:外国人材の受け入れで注意すべきことは何ですか?

言語サポート、文化理解、生活支援、在留資格管理の4つが重要です。日本語研修を継続的に実施し、業務に必要な専門用語を学べる環境を整えます。宗教や食習慣の違いを理解し、配慮した対応を心がけます。住居の確保、銀行口座開設、携帯電話契約など、生活立ち上げのサポートも必要です。在留資格の管理は法令遵守が必須で、更新手続きを忘れると強制帰国になります。受け入れ実績のある監理団体や登録支援機関と連携してください。

Q5:離職率を下げる最も効果的な方法は何ですか?

人間関係の改善が最も効果的です。離職理由の第1位が「職場の人間関係」である以上、ここを改善しなければ根本的な解決にはなりません。具体的には、1on1面談での早期問題発見、ハラスメント防止研修、チームビルディング活動、感謝を伝え合う文化の醸成などを実施します。管理者のマネジメントスキル向上も重要です。人間関係が良好な職場では、多少給与が低くても職員は定着します。処遇改善も重要ですが、人間関係の改善を最優先に取り組んでください。

まとめ

介護の人材不足は、少子高齢化、低賃金、人間関係の問題、身体的・精神的負担、ネガティブイメージの5つが根本原因です。対策は、処遇改善加算の活用、ICT導入、職場環境改善、柔軟な働き方、教育研修、外国人材活用、魅力発信、認証評価制度の8つです。

まずは既存職員の離職防止を最優先に、人間関係の改善と業務負担の軽減に取り組んでください。段階的に対策を実施し、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

2025年問題は目前に迫っています。できることから着実に実行し、持続可能な介護サービスの提供を実現しましょう。

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