ケアマネ不足が深刻化する3つの原因と事業所が今すぐできる5つの対策

福祉経営
  1. はじめに
  2. ケアマネ不足深刻化の実態
    1. 数字で見る深刻度
    2. 受験者数の半減が示す未来
  3. ケアマネ不足深刻化の3つの根本原因
    1. 原因1:待遇の低さと処遇改善加算の対象外
    2. 原因2:過剰な業務負担と書類作成の増加
    3. 原因3:更新研修制度の重い負担
  4. 事業所が今すぐできる人材確保5つの対策
    1. 対策1:報酬体系の見直しと独自手当の創設(難易度:中/効果:大)
    2. 対策2:業務効率化ツールの導入(難易度:中/効果:大)
    3. 対策3:柔軟な勤務体制の構築(難易度:低/効果:中)
    4. 対策4:組織内研修体制の充実(難易度:低/効果:中)
    5. 対策5:職場環境の改善と相談体制の整備(難易度:低/効果:中)
  5. 人材確保で失敗しないための注意点
    1. 注意点1:採用時の過度な期待値設定を避ける
    2. 注意点2:既存スタッフへの配慮を怠らない
    3. 注意点3:短期的な視点での人件費削減を避ける
    4. コツ1:潜在ケアマネへの積極的なアプローチ
    5. コツ2:法人内の介護職員からの転換促進
    6. コツ3:行政や関係機関との連携強化
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1:小規模事業所でも給与アップは可能ですか?
    2. Q2:更新研修の負担を軽減する方法はありますか?
    3. Q3:業務効率化で最も効果があるのはどの対策ですか?
    4. Q4:潜在ケアマネの復職支援で注意すべきことは?
    5. Q5:事業所の廃止を避けるための最優先対策は何ですか?
  7. まとめ

はじめに

「ケアマネジャーが見つからず利用者を受け入れられない」という声が全国で増えています。

ケアマネ不足の深刻化は、高齢者人口の増加、待遇の低さ、過剰な業務負担の3要因が重なり、居宅介護支援事業所の9%が4年間で廃止される事態を招いています。

この記事では、福祉事業所の経営コンサルティングに12年携わってきた経験から、ケアマネ不足の実態と事業所が実践できる具体的な対策を解説します。厚生労働省のデータと現場の声に基づく信頼性の高い情報です。

読み終える頃には、人材確保の具体策と経営安定化の道筋が見えてくるでしょう。

ケアマネ不足深刻化の実態

ケアマネ不足の深刻化とは、介護支援専門員の数が高齢者人口の増加に追いつかず、居宅介護支援事業所が新規利用者を受け入れられない状態を指します。介護保険制度の要であるケアマネジャーが不足することで、「ケアマネ難民」と呼ばれる支援を受けられない高齢者が増加しています。

数字で見る深刻度

2025年2月時点でケアマネジャーの有効求人倍率は9.70倍と、介護職員の6.13倍を大きく上回っています。資格取得者は累計約70万人いるものの、実際に従事しているのは約18万人にとどまります。

居宅介護支援事業所は2020年末の39,979件から2024年末には36,488件へと8.73%減少しました。4年間で3,491件もの事業所が廃止・休止に追い込まれた計算です。

さらに深刻なのが地域格差です。2024年末時点で事業所が1つもない自治体が全国29町村、残り1事業所のみの自治体が201市町村に達しています。地方では事業所閉鎖が相次ぎ、隣接市町村のケアマネに依頼しても受け入れを断られるケースが増加中です。

受験者数の半減が示す未来

介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数は、2017年度までは10万人を超えていましたが、現在は5万人前後まで半減しています。合格者数も2万人超から2万人を下回る状況が続いています。

2018年の受験資格厳格化により、介護福祉士として5年の実務経験が必須となりました。未経験から最短で8年かかる計算となり、新規参入のハードルが大幅に上昇しています。

この傾向が続けば2033年までの10年間で担い手は急減し、2040年に高齢化率が35%を超える時点で制度崩壊の危機に直面します。

ケアマネ不足深刻化の3つの根本原因

原因1:待遇の低さと処遇改善加算の対象外

最大の原因は待遇面の問題です。ケアマネジャーの平均年収は全産業平均を下回る水準にとどまっています。介護職員処遇改善加算の対象外となっているため、介護福祉士の報酬が上がる一方でケアマネの待遇は据え置きです。

利用者1人を担当した場合、月に何度訪問しても報酬は月1万円をやや上回る程度です。業務の専門性に見合わない報酬設定が、キャリアアップの魅力を失わせています。

実際に、介護福祉士資格を持つ現場職員が「ケアマネになっても給料が上がらない」「むしろ夜勤手当がなくなり収入が減る」と判断し、転職を見送るケースが増加しています。

原因2:過剰な業務負担と書類作成の増加

近年、ケアマネジャーの業務範囲は拡大の一途をたどっています。本来のケアマネジメント業務に加え、介護保険外のインフォーマルサービス調整、地域ケア会議への参加、医療機関との連携強化、全年齢対応の総合相談窓口業務などが課されています。

過度に細かく厳格な運営基準により、書類作成に時間を取られ、利用者への直接支援時間が確保できない実態があります。アセスメント、モニタリング、サービス担当者会議の記録、各種報告書など、増え続ける書類業務が現場を圧迫しています。

1人のケアマネが担当できる上限が2024年に月39件から44件へ緩和されましたが、これは根本的な解決策ではありません。むしろ業務の過密化に拍車をかけ、質の低下を招きかねない状況です。

原因3:更新研修制度の重い負担

5年ごとの資格更新研修が大きな負担となっています。初回更新は88時間、2回目以降は32時間の受講が義務付けられており、研修費用は7万円超と高額です。都道府県により受講料に格差があり、地域によっては10万円近くかかるケースもあります。

研修内容についても「過密な日程なのに実務に役立たない」「現場のニーズと乖離している」との声が多数上がっています。研修期間中の代替職員確保も困難で、小規模事業所では特に深刻です。

地方在住者にとっては、研修会場までの移動時間や交通費、宿泊費も大きな負担となります。実際に、更新研修を理由にケアマネへの就職を断念する人や、更新のタイミングで退職・転職する人が増加しています。

社会福祉士や介護福祉士には更新制度がないことと比較され、制度の妥当性に疑問の声も上がっています。

事業所が今すぐできる人材確保5つの対策

対策1:報酬体系の見直しと独自手当の創設(難易度:中/効果:大)

事業所独自で給与水準を引き上げることは、即効性のある対策です。基本給の見直しに加え、資格手当、職務手当、住宅手当などの各種手当を充実させましょう。

具体的には、主任ケアマネジャーに月3万円の役職手当、担当件数に応じた件数手当(1件あたり1,000〜2,000円)の設定が効果的です。賞与の支給基準を明確化し、年2回各2ヶ月分以上を確保することで、年収500万円の実現を目指します。

つまずきやすいのは、報酬改善の財源確保です。法人全体の人件費配分を見直し、ケアマネジャーへの投資を優先順位の上位に位置づける経営判断が必要です。加算の積極的な取得により収入増を図り、その一部を人件費に充当する仕組みを構築しましょう。

対策2:業務効率化ツールの導入(難易度:中/効果:大)

ICTツールの活用により、書類作成時間を大幅に削減できます。ケアプラン作成ソフト、タブレット端末でのモニタリング記録、クラウド型情報共有システムの導入を検討しましょう。

AI音声入力機能を活用すれば、訪問後の記録作成時間を従来の3分の1に短縮できます。サービス担当者会議のオンライン開催により、移動時間も削減可能です。

導入初期は操作習得に時間がかかりますが、3ヶ月程度で効果が実感できます。国や自治体のICT導入補助金を活用すれば、初期投資を抑えられます。

対策3:柔軟な勤務体制の構築(難易度:低/効果:中)

育児や介護と両立できる勤務体制を整備することで、潜在ケアマネの復職を促せます。時短勤務、フレックスタイム制、在宅勤務の組み合わせにより、多様な働き方に対応しましょう。

担当件数を週4日勤務で25件、週3日勤務で20件など、勤務日数に応じて柔軟に設定します。訪問が必要ない日は在宅でケアプラン作成や書類整理を行える仕組みを作ります。

育児休業からの復帰者には、最初の3ヶ月は担当件数を通常の半分から開始し、段階的に増やしていく配慮も効果的です。

対策4:組織内研修体制の充実(難易度:低/効果:中)

新人ケアマネジャーが安心して成長できる教育体制を整備します。OJT(職場内訓練)とOFF-JT(職場外訓練)を組み合わせ、計画的な育成を行いましょう。

主任ケアマネジャーがメンター(指導者)となり、新人の担当は最初の3ヶ月間は15件程度に抑え、同行訪問やケアプラン作成の添削指導を実施します。月1回の事例検討会を開催し、ケアマネジャー同士の学び合いの場を設けます。

外部研修への参加費用は事業所が全額負担し、研修時間は勤務時間として扱うことで、スキルアップを支援する姿勢を示します。

対策5:職場環境の改善と相談体制の整備(難易度:低/効果:中)

ケアマネジャーが孤立せず、チームで支え合える環境を作ります。定期的なミーティングで業務の悩みを共有し、困難事例は複数のケアマネで検討する体制を構築しましょう。

管理者は月1回の個別面談を実施し、業務量の調整や精神的なサポートを行います。残業時間を月20時間以内に抑えるため、業務の優先順位付けと効率化を組織全体で推進します。

休憩室の整備、デスク周りの環境改善、PC等の設備投資など、物理的な職場環境の改善も重要です。小さな改善の積み重ねが、定着率の向上につながります。

人材確保で失敗しないための注意点

注意点1:採用時の過度な期待値設定を避ける

求人広告で「高収入」「働きやすさ抜群」など誇大表現を使うと、入職後のギャップで早期退職につながります。現実的な業務内容、担当件数、給与水準を正直に伝えることが、長期定着の鍵です。

面接時に事業所の課題も率直に共有し、一緒に改善していく姿勢を示しましょう。理想と現実の乖離が小さいほど、定着率は高まります。

注意点2:既存スタッフへの配慮を怠らない

新人ケアマネの受け入れ時、既存スタッフに過度な負担をかけると、不満が蓄積し離職につながります。教育担当者には業務軽減措置を取り、指導手当を支給するなど、適切な評価と報酬を提供しましょう。

新人育成は組織全体の責任という認識を共有し、特定の人に負担が集中しない仕組みを作ります。

注意点3:短期的な視点での人件費削減を避ける

人件費は経費ではなく投資です。目先の利益を優先して給与を抑えると、優秀な人材が流出し、長期的には事業所の競争力を失います。

特にケアマネジャーは事業所の収益の要です。適切な処遇により質の高い人材を確保することが、結果的に利用者満足度の向上と事業所の安定経営につながります。

コツ1:潜在ケアマネへの積極的なアプローチ

資格を持ちながら従事していない潜在ケアマネは約50万人います。この層へのアプローチが重要です。「ブランクOK」「丁寧な研修あり」「時短勤務可能」など、復職しやすい条件を明示した求人を展開しましょう。

ハローワークや介護人材センターへの求人登録に加え、SNSでの情報発信、知人の紹介制度(紹介者に報奨金支給)なども効果的です。

コツ2:法人内の介護職員からの転換促進

自法人内の介護福祉士に対し、ケアマネジャー資格取得を支援する制度を作ります。受験対策講座の開催、受験料の補助、合格祝い金の支給などで、モチベーションを高めます。

資格取得後は給与を大幅にアップし、キャリアアップのメリットを明確に示すことが重要です。内部からの育成は、組織への理解も深く、定着率も高い傾向があります。

コツ3:行政や関係機関との連携強化

市区町村の介護保険課、地域包括支援センター、介護支援専門員協会などと良好な関係を構築しましょう。困難事例の相談や制度変更の情報共有がスムーズになり、ケアマネジャーの負担軽減につながります。

地域の研修会やネットワーク会議に積極的に参加し、事業所の存在感を高めることで、人材紹介や利用者紹介にもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1:小規模事業所でも給与アップは可能ですか?

可能です。まず加算の取得状況を見直しましょう。特定事業所加算(Ⅰ〜Ⅲ)の要件を満たすことで、1件あたりの報酬が増加します。ICT活用や研修体制の整備により加算を取得できれば、その増収分を人件費に充当できます。また、法人全体の人件費配分を見直し、ケアマネジャーへの配分率を高める経営判断も検討してください。段階的な給与改善でも、明確なロードマップを示すことで人材確保につながります。

Q2:更新研修の負担を軽減する方法はありますか?

事業所として研修受講を全面的にサポートする体制を作りましょう。受講料の全額補助、研修期間中の勤務扱い(給与支給)、代替職員の配置などを制度化します。オンライン研修を積極的に活用すれば、移動時間や交通費を削減できます。また、受講時期を計画的に分散させ、事業所全体の業務に支障が出ない工夫も必要です。研修を負担ではなく成長の機会と捉える組織文化を醸成することが重要です。

Q3:業務効率化で最も効果があるのはどの対策ですか?

ICTツールの導入が最も効果的です。特にケアプラン作成ソフトとタブレット端末の組み合わせにより、記録作業時間を50%以上削減できた事例が多数報告されています。初期投資は必要ですが、国の補助金を活用すれば負担を抑えられます。導入後3〜6ヶ月で効果が実感でき、ケアマネジャーの残業時間削減と利用者へのサービス時間増加の両方が実現します。まずは小規模な試験導入から始めることをお勧めします。

Q4:潜在ケアマネの復職支援で注意すべきことは?

ブランク期間が長い方への丁寧なフォローが必要です。制度改正の内容、ICTツールの使い方、多職種連携の進め方など、現場で必要な知識を段階的に学べる研修プログラムを用意しましょう。最初の3ヶ月は担当件数を15〜20件程度に抑え、主任ケアマネによるOJTを実施します。「分からないことは何でも聞ける」安心感のある職場環境を作ることが、定着の鍵です。焦らず着実に育成する姿勢が重要です。

Q5:事業所の廃止を避けるための最優先対策は何ですか?

既存スタッフの離職防止が最優先です。新規採用も重要ですが、今いるケアマネジャーが辞めてしまえば事業継続が困難になります。定期的な面談で不満や悩みを把握し、業務量の調整、給与改善、職場環境の改善など、具体的な対策を迅速に実行してください。また、計画的な採用活動により、特定のケアマネに依存しない体制を構築することも重要です。最低でも常勤ケアマネ3名以上の体制を目指しましょう。

まとめ

ケアマネ不足の深刻化は、待遇の低さ、過剰な業務負担、更新研修制度の3つが主要因です。事業所が取り組むべき対策は、報酬体系の見直し、ICTツールの導入、柔軟な勤務体制の構築、研修体制の充実、職場環境の改善の5つです。

まずは既存スタッフの離職防止に注力し、並行して潜在ケアマネへのアプローチを強化してください。小さな改善の積み重ねが、人材確保と事業所の持続可能性につながります。

介護保険制度を支えるケアマネジャーの確保は、事業所の責任であると同時に社会的使命です。できることから着実に実行していきましょう。

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