介護職の人手不足を解消する5つの実践策|経営者が今すぐできる採用と定着の具体策

福祉経営

深刻化する介護業界の人材確保問題

「また欠員が出た」「募集しても応募が来ない」――。多くの介護事業所が人手不足に悩んでいます。

介護職の人手不足は、低賃金・身体的負担・人間関係の問題が主な原因で、2040年には57万人が不足すると予測されています。現場では64%の施設が人材不足を実感し、サービス質の低下が懸念されています。

本記事では、介護業界の経営支援実績をもとに、限られた予算でも実行できる人手不足解消の具体策を5つのステップで解説します。採用ノウハウから離職防止、外国人人材活用まで実践的に紹介しますので、明日から行動を起こせる内容となっています。

なぜ介護業界は慢性的な人手不足なのか

介護業界の人手不足は、複数の構造的要因が絡み合った深刻な問題です。現状を正確に把握することが効果的な対策の第一歩です。

需要と供給のギャップが年々拡大

日本の高齢化は予想を超える速度で進行しています。2025年には要介護認定者が約708万人に達し、介護保険制度開始時の2.8倍となりました。一方、介護職員数は約215万人にとどまり、2040年には272万人が必要です。今後15年で57万人の人材確保が必要な計算になります。

地域格差も深刻で、東京都の介護職有効求人倍率は7.65倍と全国平均3.97倍の約2倍に達し、都市部ほど人材確保が困難です。

賃金水準の低さが人材流出を招く

介護福祉士の平均年収は約330万円と、全業種平均440万円を大きく下回ります。夜勤や休日出勤、身体介護の負担を考えると、この賃金格差が人材流出や新規参入の妨げとなっています。政府は処遇改善加算を進めていますが、勤続10年以上という条件があり、平均勤続年数6年の現場では恩恵を受ける職員が限られています。

離職の最大要因は人間関係

実際の離職率13.8%は全産業平均14.2%とほぼ同水準です。しかし、公益財団法人介護労働安定センターの調査では、退職理由の第1位は「職場の人間関係」で23.2%を占め、「収入が少ない」(15.0%)を上回ります。評価制度が不明確で頑張りが報われない、年功序列で若手が活躍できないといった組織的問題が、人間関係のストレスを増幅させています。

社会的評価の低さが若年層参入を阻む

「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージが若年層の参入を妨げています。介護従事者の19.2%が60歳以上である一方、10〜20代はわずか6.2%です。高齢化する職員が定年を迎える一方で若い世代が参入しなければ、人手不足はさらに深刻化します。

今すぐ実践できる人手不足解消5つのステップ

人手不足解消には、採用強化と離職防止の両面からアプローチが必要です。限られた予算でも実行可能な具体策を優先順位順に紹介します。

ステップ1: 職場環境の可視化と改善(1〜2ヶ月)

離職防止には問題の早期発見が不可欠です。まず匿名職員アンケートで人間関係、業務負担、評価制度の満足度を5段階評価し、改善要望を収集します。次に管理職が個別面談で表面化していない悩みを聞き取り、月1回の改善会議で具体策を検討・実行します。

例えば「シフト希望が通りにくい」には調査締切を早める、「新人教育の負担」には担当者手当を支給するなどです。結果を必ず公表し、できることから着手する姿勢を示すことが職員の信頼につながります。

ステップ2: 評価制度の明確化(2〜3ヶ月)

不公平感や努力が報われない不満を解消するため、評価基準を明確にします。介護技術、コミュニケーション能力、チームワーク、業務改善提案などを3〜5段階で評価し、年2回の評価結果を昇給や賞与に反映させます。

「何をすれば評価されるか」を全職員が理解できるよう基準を明示し、評価面談で具体的フィードバックと成長目標を共有します。管理職向け評価者研修で統一した視点を持たせることも重要です。

ステップ3: 採用活動の積極化とPR強化(継続的)

「待ち」から「攻め」の採用への転換が必要です。施設ホームページに職員の写真や動画、インタビューを掲載し、職場雰囲気を伝えます。スマホ動画のSNS発信だけでも効果があります。

介護専門求人サイトを活用し、給与や休日だけでなく、研修制度、キャリアパス、職場雰囲気など求職者が知りたい情報を具体的に記載します。人材紹介会社の担当者を施設に招いて見学してもらい、自施設の特徴を丁寧に説明することでマッチ度の高い紹介につながります。

ステップ4: 多様な働き方の導入(1〜2ヶ月)

週3日勤務、午前のみ勤務、日曜のみ勤務など柔軟なシフトパターンを用意します。子育て中の主婦や定年後シニア層、副業希望者など潜在的人材を掘り起こせます。

専門性の高い身体介護は経験者が担当し、清掃や配膳などの周辺業務は未経験者やパート職員が担当する役割分担により、効率的な人材活用が可能です。シフト管理システムの導入で運用の複雑さを軽減しましょう。

ステップ5: 外国人人材の活用(3〜6ヶ月)

特定技能1号は一定の技能と日本語能力があり、訪問介護を含む幅広い業務に従事でき、採用しやすく活用の幅が広い制度です。登録支援機関との契約、住居確保、日本語学習支援などの準備が必要ですが、既存職員への理解促進研修も実施します。手続きの複雑さや言語の壁には専門支援機関を活用すれば負担は軽減できます。

失敗しないための3つの注意点

採用のみ注力し離職対策を怠る

離職率が高ければ「穴の開いたバケツ」状態で採用コストだけかさみます。職場環境改善を並行して進めることが長期的な人材確保につながります。

トップダウンで制度導入

現場のニーズと合わなければ効果は出ません。必ず現場職員の意見を聞き、小規模試行から始めて改善を重ねましょう。

短期的効果を求めすぎる

採用活動強化、職場環境改善、職員定着促進は半年から1年単位で効果が現れます。焦らず継続的に取り組みましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 小規模事業所でも外国人人材を受け入れられますか?

A: 可能です。登録支援機関に委託すれば受け入れ体制を整えられます。住居確保や生活支援も機関が代行するため負担は軽減されます。まずは地域の支援機関に相談しましょう。

Q2: 処遇改善加算取得のメリットは何ですか?

A: 職員の給与を直接増やせることに加え、労働環境整備が必要なため職場環境改善にもつながります。取得事業所は求職者評価も高く採用で有利です。

Q3: ICTツール導入のコストが心配です

A: 月額制クラウドサービスなら初期費用を抑えられます。自治体のICT導入補助金制度もあります。小規模から始めて効果確認しながら拡大する方法もおすすめです。

Q4: 評価制度をどこから始めればよいですか?

A: 現在の評価方法の問題点を職員と共有し、シンプルな評価項目(3〜5項目)を設定して半年試行します。運用しながら改善を重ねることで自施設に合った制度が構築できます。

Q5: 人間関係改善の具体的方法は?

A: 定期的なチームミーティング、感謝を伝え合う仕組み(サンクスカード等)、相談窓口設置が有効です。管理職が日常的に職員とコミュニケーションを取り、小さな不満を早期解消する姿勢が重要です。

まとめ:持続可能な人材確保体制を今から構築

介護職の人手不足は賃金、人間関係、社会的評価という3つの課題が絡み合った構造的問題です。しかし、職場環境の可視化、評価制度整備、積極的採用活動、多様な働き方導入、外国人人材活用という5つのステップを着実に実行すれば、改善への道は開けます。

重要なのは短期的応急処置ではなく、長期的視点での持続可能な人材確保体制構築です。まずは自施設の現状を正確に把握し、できることから始めてください。

職員アンケート実施、求人票見直し、外国人人材受け入れ情報収集など、明日からでも着手できる施策があります。人手不足という課題に真摯に向き合い改善に取り組む姿勢そのものが、職員や求職者からの信頼を生み、結果として人材が集まる事業所へと成長していきます。

タイトルとURLをコピーしました