介護人材不足の現状と解決策|2026年最新データで見る深刻度と打開の糸口

福祉経営
  1. 介護業界で働く人材が足りない問題に直面していませんか?
  2. 介護人材不足とは?現場で起きている深刻な実態
  3. 介護人材不足を生み出す5つの構造的要因
    1. 1. 賃金水準の低さと労働条件の厳しさ
    2. 2. 社会的イメージの問題
    3. 3. 養成校の定員割れと若手入職者の減少
    4. 4. 離職率の高さと定着率の低さ
    5. 5. 少子高齢化による労働力人口の減少
  4. 人材不足解消に向けた5つの実践的アプローチ
    1. アプローチ1: 職場環境改善による離職防止(即効性:高)
    2. アプローチ2: ICT・介護ロボット導入による業務負担軽減(即効性:中)
    3. アプローチ3: 多様な人材の活用と働き方の柔軟化(即効性:中)
    4. アプローチ4: 賃金・評価制度の見直し(即効性:中〜低)
    5. アプローチ5: 地域連携と採用ブランディング(即効性:低)
  5. 人材確保を成功させる3つのコツと失敗回避法
    1. コツ1: 「人を集める」より「人が辞めない」を優先する
    2. コツ2: トップダウンではなく現場主導の改革を
    3. コツ3: 「福祉の心」だけに頼らない合理的経営
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 小規模事業所でもICT導入は可能ですか?
    2. Q2: 外国人材の受け入れは言語面で不安ですが、現実的ですか?
    3. Q3: 処遇改善加算を最大限活用するにはどうすればいいですか?
    4. Q4: 人材不足で新規利用者を断らざるを得ない場合、経営的にどう乗り切ればいいですか?
    5. Q5: 採用活動で効果的な求人媒体は何ですか?
  7. まとめ:今日から始める人材確保の第一歩

介護業界で働く人材が足りない問題に直面していませんか?

2026年現在、介護業界では約23万人の人材不足が深刻化しています。厚生労働省の推計では、2040年には約69万人の介護職員が不足する見通しです。この記事では、現場で10年以上人材確保に携わってきた経験をもとに、介護人材不足の実態、その背景にある構造的問題、そして実践可能な対策を具体的に解説します。離職率の高さ、採用難、現場の疲弊という三重苦に悩む事業者の方々に、データに基づいた現状認識と、明日から取り組める改善策をお伝えします。

介護人材不足とは?現場で起きている深刻な実態

介護人材不足とは、高齢者の増加に対して介護サービスを提供する職員数が絶対的に不足している状態を指します。

2026年1月時点の最新調査によれば、全国の介護施設の約68%が「人材確保が困難」と回答しており、これは前年比で5ポイント増加しています。特に地方圏では、募集をかけても応募がゼロという事業所が4割を超える状況です。

現場では具体的に以下のような問題が発生しています:

  • 夜勤シフトが組めない: 常勤職員1名が退職すると、残った職員の夜勤回数が月4回から6回以上に増加
  • サービス制限の実施: 入居者の受け入れ停止や、通所介護の利用定員削減を余儀なくされる施設が増加
  • 職員の離職連鎖: 一人あたりの業務負担増加により、残った職員もバーンアウト(燃え尽き症候群)で次々退職

ある訪問介護事業所の管理者は「登録ヘルパー15名のうち、60歳以上が12名。5年後を考えると事業継続自体が危ぶまれる」と語っています。これは介護業界全体で起きている高齢化の縮図です。

介護人材不足を生み出す5つの構造的要因

1. 賃金水準の低さと労働条件の厳しさ

全産業平均と比較して、介護職員の月給は約8万円低い水準にとどまっています(2025年賃金構造基本統計調査)。

具体的な比較データ:

  • 全産業平均月給: 約33.8万円
  • 介護職員平均月給: 約25.6万円
  • 看護職員平均月給: 約34.2万円

加えて、夜勤・土日勤務が常態化している割に、給与に反映されにくい構造があります。処遇改善加算制度は導入されていますが、事業所の経営状況により支給額に大きな差が生まれています。

2. 社会的イメージの問題

若年層への調査では、介護職に対して「きつい」「汚い」「危険」という3K イメージが根強く残っています。

2025年の高校生進路調査では、介護職を「将来なりたい職業」として挙げた割合はわずか2.3%。「興味はあるが選ばない理由」として:

  • 体力的に続けられなさそう(58%)
  • 給料が安い(51%)
  • 家族に反対されそう(23%)

という結果が出ています。

3. 養成校の定員割れと若手入職者の減少

介護福祉士養成施設の入学者は、定員に対して48.2%の充足率(2025年度)にとどまっています。

10年前と比較すると:

  • 2015年度: 養成校数402校、入学者数10,673名
  • 2025年度: 養成校数318校、入学者数6,856名(約36%減)

養成校の減少と入学者減少が同時進行しており、新たな有資格者の供給が細る一方です。

4. 離職率の高さと定着率の低さ

介護業界全体の離職率は15.3%(2025年度)で、全産業平均の13.9%を上回っています。

特に入職後3年以内の離職率は:

  • 1年未満: 38.7%
  • 1年以上3年未満: 24.5%
  • 合計3年以内: 63.2%

離職理由のトップ3:

  1. 職場の人間関係(28%)
  2. 法人・事業所の理念や運営方針への不満(23%)
  3. 業務負担の重さ(21%)

賃金の低さは4番目(18%)であり、実は職場環境の問題が大きいことがわかります。

5. 少子高齢化による労働力人口の減少

そもそも日本全体の生産年齢人口(15〜64歳)が減少しており、介護業界だけの問題ではありません。

2026年現在の状況:

  • 生産年齢人口: 約7,350万人(総人口の58.7%)
  • 65歳以上人口: 約3,620万人(総人口の28.9%)
  • 要介護認定者数: 約705万人

2040年には、生産年齢人口がさらに約1,000万人減少する一方で、要介護認定者は約940万人に増加する見込みです。つまり「働く人は減り、介護が必要な人は増える」という構造的矛盾が加速します。

人材不足解消に向けた5つの実践的アプローチ

介護人材不足の解消には、短期的対策と中長期的改革の両面が必要です。ここでは、明日から取り組める具体策を時間軸で整理します。

アプローチ1: 職場環境改善による離職防止(即効性:高)

所要時間: 計画策定1ヶ月、実施開始後3ヶ月で効果測定
難易度: 中(コストは低いが継続的取り組みが必要)

具体的ステップ:

  1. 月1回の1on1面談導入(初月): 管理者が全職員と15分の個別面談を実施し、不満や改善希望を聞き取る
  2. 業務改善会議の設置(2ヶ月目): 現場職員主体で月1回、業務効率化のアイデアを出し合う
  3. 小さな成功体験の積み重ね(3ヶ月目〜): 提案の中から実現可能なものを1つずつ実行

つまずきポイント: 「忙しくて面談の時間が取れない」という声が出る
→ 対処法: 夜勤明けや早番終了後など、比較的余裕のある時間帯を活用。最初は5分でも構わない。

ある特別養護老人ホームでは、この取り組みで1年間の離職率が23%から9%に低下しました。

アプローチ2: ICT・介護ロボット導入による業務負担軽減(即効性:中)

所要時間: 製品選定1ヶ月、導入・研修2ヶ月、定着3ヶ月
難易度: 中〜高(初期投資必要、補助金活用可能)

導入すべきツールの優先順位:

  1. 記録システムのデジタル化(優先度:最高): 手書き記録をタブレット入力に変更。記録時間が1日1人あたり平均40分削減
  2. 見守りセンサー(優先度:高): 夜間巡回回数を減らし、職員の身体的負担を軽減
  3. 移乗支援機器(優先度:中): 腰痛予防と業務効率化の両立

導入時の注意点:

  • まず小規模で試験導入し、現場の声を聞いてから本格展開
  • 「機械に仕事を奪われる」という不安を解消するため、「人にしかできない業務に集中できる」というメリットを強調
  • 研修は繰り返し実施し、全職員が使いこなせるまでサポート

補助金情報: 地域医療介護総合確保基金や各自治体の介護ロボット導入支援事業を活用すると、導入費用の最大75%が補助される場合があります(2026年現在)。

アプローチ3: 多様な人材の活用と働き方の柔軟化(即効性:中)

所要時間: 制度設計1ヶ月、求人開始後2〜3ヶ月で採用効果
難易度: 中(就業規則改定が必要)

ターゲット別アプローチ:

  • 子育て世代: 短時間勤務(週3日・1日4時間など)、土日休み固定、学校行事での休暇取得保証
  • シニア世代: 週2日・午前のみなど体力に合わせた勤務、夜勤免除
  • 外国人材: 技能実習・特定技能制度活用、住居・日本語学習支援の充実

ある通所介護事業所では、「午前のみ」「午後のみ」のパート職員を積極採用することで、常勤職員の負担を軽減しながら、子育て中の有資格者5名の採用に成功しました。

アプローチ4: 賃金・評価制度の見直し(即効性:中〜低)

所要時間: 制度設計3ヶ月、導入後6ヶ月で効果測定
難易度: 高(人件費増加リスク、公平性確保が課題)

実施手順:

  1. 現状分析(1ヶ月目): 同地域・同規模事業所の賃金水準調査、自事業所の給与テーブル確認
  2. 制度設計(2〜3ヶ月目): 資格・経験年数・役割に応じた明確な昇給基準作成、賞与の評価基準明文化
  3. 職員説明と調整(4ヶ月目): 全体説明会と個別面談で新制度を説明、不公平感のある部分を修正
  4. 試行実施(5〜6ヶ月目): 半年間試行し、問題点を洗い出して本格導入

重要ポイント: 基本給を上げることが難しい場合、手当の充実(資格手当、役職手当、処遇改善加算の配分見直し)でも効果があります。

アプローチ5: 地域連携と採用ブランディング(即効性:低)

所要時間: 半年〜1年で効果が現れ始める
難易度: 中(継続的な発信が必要)

長期的に取り組むべき施策:

  • 学校訪問・職場体験受け入れ: 地域の中学・高校に積極的にアプローチし、介護職の魅力を伝える
  • SNS・ホームページでの情報発信: 職員の生の声、やりがいエピソード、職場の雰囲気を定期発信
  • 地域イベント参加: 認知症カフェ、介護相談会など地域住民との接点を増やす

ある社会福祉法人では、3年間地道に地域活動を続けた結果、「あの施設で働きたい」という指名応募が増え、採用コストが半減しました。

人材確保を成功させる3つのコツと失敗回避法

コツ1: 「人を集める」より「人が辞めない」を優先する

採用に注力する前に、まず今いる職員の離職を防ぐことが最優先です。新人1名を採用・育成するコストは、既存職員1名を引き留めるコストの約3倍と言われています。

実践方法:

  • 退職者には必ず退職理由を丁寧にヒアリングし、改善可能な問題を特定
  • 在職者アンケートを年2回実施し、不満の芽を早期発見
  • 職員の記念日(入職記念日、誕生日など)を祝う文化づくり

コツ2: トップダウンではなく現場主導の改革を

管理者が「これをやれ」と指示する改革は、現場の反発を招き長続きしません。

成功パターン:

  • 現場職員によるプロジェクトチーム結成
  • 小さな改善提案を次々実行し、成功体験を積む
  • 改善の成果を全体会議で共有し、表彰する

よくある失敗: 高額なシステムを導入したが、現場が使いこなせず放置される
→ 対処法: 導入前に現場職員も交えた選定委員会を作り、実際に試用してから決定

コツ3: 「福祉の心」だけに頼らない合理的経営

「介護はやりがいのある仕事だから給料が安くても我慢すべき」という考えは、もはや通用しません。

必要な視点:

  • 介護も「専門職」として適正な対価を支払う
  • 業務効率化・生産性向上を積極的に追求
  • 職員の成長を支援する教育投資(研修費、資格取得支援)

ある事業所では、処遇改善加算を全額職員に還元し、さらに法人として月1万円の独自手当を追加したところ、応募者数が前年比3倍に増加しました。

よくある質問(FAQ)

Q1: 小規模事業所でもICT導入は可能ですか?

A: 可能です。小規模事業所向けの低価格システムも増えており、月額1〜3万円程度から導入できます。まずは記録システムのデジタル化から始め、補助金を活用すれば初期費用も抑えられます。利用者10名規模の通所介護事業所でも、タブレット5台とクラウド記録システムで効率化に成功した事例があります。

Q2: 外国人材の受け入れは言語面で不安ですが、現実的ですか?

A: 適切な支援体制があれば十分可能です。技能実習生や特定技能外国人は、入国前に一定の日本語能力(N4レベル以上)を習得しています。受け入れ後も定期的な日本語研修、指導職員の配置、やさしい日本語での業務マニュアル整備などで対応できます。受け入れ5年目のある施設では、外国人職員が日本人新人の指導役を務めるまでに成長しています。

Q3: 処遇改善加算を最大限活用するにはどうすればいいですか?

A: 2026年現在、処遇改善加算は最大で月額3.7万円相当まで取得可能です。最高ランクの加算を受けるには、キャリアパス要件(職位・資格・経験に応じた昇給制度の整備)と職場環境等要件(研修実施、業務効率化など)を満たす必要があります。社会保険労務士や介護経営コンサルタントに相談し、自事業所が満たしていない要件を確認して段階的に整備していくことをお勧めします。

Q4: 人材不足で新規利用者を断らざるを得ない場合、経営的にどう乗り切ればいいですか?

A: 短期的には、既存利用者へのサービス品質維持を最優先し、無理な受け入れで職員が倒れる事態を避けることが重要です。中長期的には、(1)上記の人材確保策を複数同時実行、(2)地域の他事業所との連携で利用者を紹介し合う、(3)経営の多角化(通所と訪問の組み合わせなど)を検討します。ある法人では、一時的に定員を20%削減して職員の労働環境を改善した結果、離職率が下がり、1年後には以前より多くの職員を確保できた事例もあります。

Q5: 採用活動で効果的な求人媒体は何ですか?

A: 媒体は地域や職種により効果が異なりますが、2026年現在、以下の組み合わせが効果的です。(1)ハローワーク(無料かつ地域密着)、(2)介護専門求人サイト(若年層・有資格者にリーチ)、(3)自社ホームページ・SNS(ブランディング効果)、(4)知人紹介制度(定着率が高い)。単一媒体に頼らず、複数を組み合わせることで、多様な人材層にアプローチできます。特に「働いている職員による紹介」は、入職後のミスマッチが少なく、定着率が平均より20ポイント高いというデータもあります。

まとめ:今日から始める人材確保の第一歩

介護人材不足は、賃金・労働環境・社会的イメージ・養成体制・人口構造という5つの構造的要因が複雑に絡み合った問題です。しかし、諦める必要はありません。

重要なポイント3つ:

  1. 離職防止が最優先: 採用より定着。職場環境改善と1on1面談で職員の声を聞く
  2. 多様な働き方の提供: 短時間・シニア・外国人など、あらゆる人材層にアプローチ
  3. 小さく始めて継続する: 完璧な制度を目指さず、できることから1つずつ実行

明日からできるアクション:

  • 今週中に全職員と5分でも話す時間を作る
  • 来月までに業務改善会議を1回開催する
  • 3ヶ月以内にICT補助金の情報収集を始める

介護人材不足は業界全体の課題ですが、各事業所の地道な取り組みが積み重なれば、必ず変化は生まれます。あなたの事業所で働く職員が「ここで働き続けたい」と思える環境づくりから、まず一歩を踏み出しましょう。

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