訪問介護事業所の8割以上が「ヘルパー不足」に悩んでいます
「求人を出しても応募がない」「ベテランが次々と退職してしまう」——訪問介護事業所の経営者なら、誰もが直面する深刻な課題です。
訪問介護の人手不足は、有効求人倍率15.53倍(2023年度)という数字が示す通り、業界最悪レベルに達しています。令和5年度の調査では、事業所の81.4%が「人材不足」を感じており、6割以上が「利用者の依頼を断らざるを得ない」状況に陥っています。
この記事では、2026年最新の業界動向と実践的な解決策を5つに厳選してご紹介します。訪問介護事業所で10年以上の経営実務経験をもとに、即効性のある対策から中長期的な戦略まで、段階的に解説します。
読み終える頃には、あなたの事業所でも今日から実践できる具体的な人材確保策が手に入るはずです。
なぜ訪問介護だけが人手不足なのか?4つの構造的原因
介護業界で最も高い有効求人倍率
訪問介護の有効求人倍率は15.53倍と、特別養護老人ホーム(3.2倍)や通所介護(2.8倍)と比較しても圧倒的に高い数値です。これは求職者1人に対して15件以上の求人があることを意味します。
介護業界全体の有効求人倍率が3.64倍であることを考えると、訪問介護の人材獲得がいかに困難かがわかります。他産業の平均1.03倍と比較すれば、その深刻度は一目瞭然です。
さらに問題なのは、訪問介護ヘルパーの4人に1人が65歳以上、1割以上が75歳以上という高齢化です。今後5年以内に大量退職が予想され、人手不足は加速する見込みです。
2024年報酬改定によるマイナス2〜3%の打撃
2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬は2〜3%引き下げられました。身体介護(30分以上1時間未満)は396単位から387単位へ、生活援助(45分以上)は225単位から220単位へと減額されています。
これは訪問介護の収支差率が7.8%と他サービスより高いことが理由ですが、実態は大規模事業所と小規模在宅訪問事業所との格差が大きく、小規模事業所の多くは赤字経営に苦しんでいます。
報酬減による収益悪化は、職員の給与アップや労働環境改善への投資を困難にし、人材確保をさらに厳しくする悪循環を生んでいます。
移動時間が給与に反映されない労働環境
訪問介護特有の問題は、利用者宅への移動時間が勤務時間として扱われないケースが多いことです。1日に5〜8件の訪問をこなす場合、移動だけで2〜3時間を費やしますが、この時間に賃金が発生しない事業所も少なくありません。
さらに1回あたりの提供時間が短時間化しており、30分・45分といった細切れの勤務が主流です。拘束時間は長いのに実働時間が短く、収入が不安定になりがちです。
夜間・休日のオンコール対応や、一人で緊急判断を求められる精神的負担も大きく、身体的にも精神的にもハードな労働環境が離職率を高めています。
「誰でもできる仕事」という社会的誤解
介護職全般に対する「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが、若年層の職業選択において大きな障壁となっています。特に訪問介護は、認知症対応や医療的ケアの知識、緊急時の判断力など高度な専門性が求められるにもかかわらず、その価値が社会的に正しく評価されていません。
初任者研修以上の資格が必須であることも、無資格で始められる施設介護と比べて就業ハードルを高くしています。資格取得に時間と費用がかかることが、潜在的な人材を遠ざけている側面があります。
さらに少子高齢化により他業種でも人手不足が深刻化しており、より条件の良い職場へ人材が流出しているのが現状です。
訪問介護の人手不足を解消する5つの実践策
【即効性あり】処遇改善加算の完全取得で月額3.7万円アップ
処遇改善加算を最大限活用すれば、職員1人あたり月額最大37,000円の賃金改善が可能です。2024年度調査では、処遇改善加算を取得している事業所の平均給与は前年より約1万円増加しています。
まず「介護職員等処遇改善加算」(最大11.1%)を取得し、次に「介護職員等特定処遇改善加算」(最大6.3%)、さらに「介護職員等ベースアップ等支援加算」(最大3.0%)と段階的に積み上げましょう。
取得のポイントは、キャリアパス制度の整備と職場環境改善計画の作成です。所要期間は約3〜6ヶ月。社会保険労務士や介護コンサルタントの支援を受ければ、確実に取得できます。
給与明細に「処遇改善手当」として明記することで、職員のモチベーション向上と求人時のアピール効果が得られます。
【定着率向上】ICT導入で記録業務を60%削減
介護ソフトやタブレット端末の導入により、記録業務時間を最大60%削減できます。手書き記録の転記作業がなくなり、訪問先からリアルタイムで入力可能になるため、事務作業の残業が激減します。
スケジュール管理システムを活用すれば、GPS機能で最短ルートを自動提案し、移動時間を1日30分〜1時間短縮できます。これにより訪問件数を増やせるため、収益改善にも直結します。
介護ソフト導入費用は1事業所あたり30〜50万円程度ですが、ICT導入補助金(最大100万円)を活用できます。導入から運用まで3〜6ヶ月が目安です。
注意点は、高齢のヘルパーへの操作研修を丁寧に行うこと。段階的な移行期間を設け、サポート体制を整えることが成功のカギです。
【採用強化】リファラル採用で定着率80%超を実現
既存職員からの紹介(リファラル採用)は、採用コストを70%削減し、定着率を80%以上に高める効果があります。職場の雰囲気や待遇を熟知した職員が紹介するため、ミスマッチが起きにくいのが最大のメリットです。
紹介制度を成功させるには、紹介者への報奨金(3〜5万円)の設定と、紹介しやすい環境づくりが必要です。職員満足度が低い状態では機能しないため、まず内部環境の改善から始めましょう。
具体的には、月1回の職員ミーティングで「友人・知人で介護に興味がある方がいたら紹介してください」と呼びかけます。紹介カードを作成し、いつでも渡せるようにしておくと効果的です。
「潜在的な転職希望者」にアプローチできるのも強みです。他事業所で不満を抱えている経験者を引き抜けるチャンスになります。
【柔軟な働き方】短時間正社員制度で主婦層を獲得
週3日・1日4時間からでも正社員として雇用できる短時間正社員制度を導入すれば、育児中の主婦層や定年後のアクティブシニアなど、フルタイム勤務が困難な人材を確保できます。
社会保険適用の条件(週20時間以上)を満たしつつ、柔軟な勤務形態を提供することで、パート・アルバイトとの差別化が図れます。賞与や退職金制度も整備すれば、長期定着が期待できます。
ワークシェアリングと組み合わせ、午前・午後・夕方のシフトを複数人で分担する体制を構築しましょう。1人のフルタイム職員を2〜3人の短時間正社員で代替することで、人手不足を補えます。
導入にあたっては就業規則の変更が必要です。社会保険労務士に相談し、法令遵守を確認しながら進めてください。所要期間は2〜3ヶ月程度です。
【中長期戦略】地域の教育機関と連携し新卒採用ルートを確保
地域の専門学校や大学と連携し、実習受け入れから採用まで一貫した育成ルートを構築することが、中長期的な人材確保の決め手になります。年間2〜3名の新卒採用が安定すれば、事業所の世代交代もスムーズに進みます。
実習受け入れ時には、業務の厳しさだけでなく「利用者の笑顔」「やりがい」を実感できるプログラムを用意しましょう。先輩職員によるメンター制度を設け、安心して学べる環境を整えることが重要です。
学校訪問や就職説明会への参加、奨学金返済支援制度の導入なども効果的です。初年度は1〜2名の採用から始め、3年後に年間5名体制を目指す計画を立てましょう。
地域の福祉人材センターやハローワークとも連携し、未経験者向けの職場体験会を年4回程度開催すると、潜在層の掘り起こしにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 処遇改善加算の取得は難しいですか?
A: 初めての取得でも、社会保険労務士などの専門家に依頼すれば3〜6ヶ月で可能です。キャリアパス制度と職場環境改善計画の整備が必要ですが、多くの事業所が取得に成功しています。費用は20〜30万円程度かかりますが、加算収入で十分回収できます。
Q2: ICT導入で高齢ヘルパーが使いこなせるか心配です
A: 60代・70代でもタブレット操作は可能です。導入時に個別研修(1人2〜3時間)を実施し、操作が簡単なシステムを選べば問題ありません。むしろ記録作業が楽になり、利用者との時間が増えたと好評を得ているケースが多数あります。
Q3: 小規模事業所でもリファラル採用は効果がありますか?
A: むしろ小規模の方が効果的です。職員同士の距離が近く、紹介しやすい雰囲気があるためです。職員5名の事業所でも年間1〜2名の紹介実績があり、採用コスト削減と定着率向上の両方を実現しています。
Q4: 外国人材の受け入れは現実的ですか?
A: EPA(経済連携協定)や特定技能制度を活用すれば可能です。ただし言語サポートや住居の確保、生活支援が必要なため、初めての場合は登録支援機関のサポートを受けることをおすすめします。受け入れまで6ヶ月〜1年の準備期間が必要です。
Q5: 人材確保に最も効果的な施策は何ですか?
A: 給与アップと働きやすい環境の両立が最重要です。処遇改善加算で給与を上げつつ、ICT化で残業を減らし、柔軟な勤務体制を整える。この3つを同時に進めることで、採用力と定着率が劇的に向上します。
まとめ:今日から始める人手不足解消の3ステップ
訪問介護の人手不足は、複合的な原因により生じている構造的問題です。しかし、適切な対策を段階的に実施すれば、必ず改善できます。
今日から始められる3つのアクションがあります。まず(1)処遇改善加算の取得状況を確認し、未取得なら専門家に相談すること。次に(2)既存職員にリファラル採用制度を説明し、紹介を呼びかけること。最後に(3)ICT導入の情報収集と補助金申請の検討を開始することです。
人材確保は一朝一夕にはいきませんが、小さな一歩の積み重ねが大きな成果につながります。利用者の笑顔と職員のやりがいを守るため、あなたの事業所でも今日から人手不足解消の取り組みを始めてみませんか?

