介護職員不足の現状:2026年度の深刻さと地域別・施設別の実態データ

福祉経営

介護職員の不足は、統計開始以来初めて「職員数が減少」する危機的な段階に入りました。
厚生労働省の最新推計(2024年7月)によると、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされているのに対し、現在は約212万人にとどまり、約28万人(11.7%)が不足する見込みです。

加えて、有効求人倍率は全業種平均1.16倍に対して4.08倍と、介護職員1人につき4つの職場が採用を求めている状況が続いており、採用困難が深刻化しています。

この記事では、介護職員不足の現状を統計データで明確にし、地域別・施設規模別・職種別の実態を紹介します。経営層が現状を正確に認識し、対策を立てるための基礎情報が見つかります。


介護職員不足の全体像:時系列で見る深刻化

職員数が統計初の減少に転じた2023年度

令和5年度(2023年度)の介護職員数は212万6,000人で、令和4年度比で2万8,000人(1.3%)の減少となりました。
これは、介護サービス統計が開始されて以来、初めての職員数減少です。

同期間に要介護(要支援)認定者数は705万人から720万人へと15万人増加しており、職員が減少する中で介護需要が増加する逆転現象が起こっています。

2026年度の必要数推計と不足幅の拡大

第9期介護保険事業計画に基づく厚生労働省の推計では、以下のようになります:

2026年度
必要数:約240万人
現在数(2022年度):約215万人
不足幅:約25万人(年6.3万人程度の追加が必要)

2040年度(今後16年後):
必要数:約272万人
不足幅:約57万人(全体の21%)

つまり、今後も毎年5~6万人程度の追加職員が必要とされているにもかかわらず、現実には職員数が減少している状況が、危機度の深さを物語っています。

有効求人倍率の高止まり:4倍超の異常値

介護関係職種の有効求人倍率の最新値は4.08倍(全業種平均1.16倍)です。

これは、求職者1人に対して4つ以上の職場が採用を求めているという状況を意味し、採用競争が極めて激しいことを示しています。

特に都市部では倍率がさらに高く、関東圏(東京・神奈川・埼玉)では5倍を超える地域も存在しており、都市部での採用困難が特に深刻です。


地域別の不足実態:都市部と過疎地で異なる課題

都市部(東京・神奈川・大阪・愛知):激烈な採用競争

都市部の有効求人倍率は5~6倍に達しており、施設間での人材奪い合いが深刻です。

東京都の場合:有効求人倍率6.97倍で全国で最も高く、新規採用は「募集をかけてもほぼ応募がない」という施設も多い状況。

愛知県:6.49倍で、訪問介護事業所での採用が極めて困難。

大阪府:5.0倍超で、既存施設との給与競争が激化。

対応の方向性:都市部では、採用困難を前提に「既存職員の定着促進」に経営資源を集中し、定着率を向上させることが戦略になります。

地方都市部(福岡・広島など):相対的に緩いが課題あり

地方都市では有効求人倍率が3~4倍程度で、都市部ほどではありませんが、それでも全業種平均を大きく上回っています。

特徴
・都市部からの人材流入がないため、地元出身者の確保が重要
・地方特有の人間関係の密接さが離職要因になりやすい

過疎地域:採用ニーズは少ないが維持が困難

必要な職員数自体が都市部ほど多くないため、相対的な不足率は低いですが、絶対数の確保が困難です。

具体的課題
・単一施設では採用候補者がほぼいない状況
・複数施設での共同採用が必須
・UIターン層への情報発信が重要


施設規模・施設種別による現状の差

大規模施設(100床以上)と小規模施設(20床未満)の離職率の違い

離職率は施設規模により大きく異なります。

10%未満の低離職率施設:全体の約50%
・大規模施設や環境整備が進んだ施設に多い

30%以上の高離職率施設:全体の約10%
・小規模施設や人間関係問題を抱える施設に多い

つまり、同じ介護業界でも施設により離職率に3~4倍の開きがあり、経営の努力で改善可能であることを示しています。

訪問介護と施設介護の不足度の差

訪問介護:有効求人倍率が5倍以上と特に深刻
非常勤・短時間労働者が中心で、採用層が限定的
利用者宅への移動が業務負担となり、定着困難

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設:有効求人倍率が3~4倍
常勤職員中心だが、夜勤負担が離職要因


職員構成の高齢化と世代交代困難

60歳以上が全職員の21.6%、若年層が6.2%

介護労働安定センターの令和6年度調査によると:
・60歳以上:21.6%(約46万人)
・10~20代:6.2%(約13万人)

つまり、経験者が減少する一方で、新世代の育成が追いつかない構造が固定化しています。

世代交代の課題

向こう5~10年での懸念
・60歳以上の職員が定年退職を迎える時期が来ると、大量の経験喪失が起こります。
・20代職員が少ないため、育成できる人材層が不足
・施設全体の専門性・技術継承が困難になる恐れ


職員属性別の現状

女性職員が約80%を占める構造

介護職員の約80%が女性であり、出産・育児との両立困難から、30代で多くの女性職員が離職する傾向があります。

育児支援の充実度による定着率の差
・保育所完備・育児休暇充実施設:定着率70%以上
・支援なし施設:定着率40%未満

資格保有者の配置状況

介護福祉士の配置率:全国平均約30%
・2024年度改定で「新加算I」の要件が「30%以上配置」となったため、不足がより顕著に

初任者研修修了者:約50%
・無資格者:約20%


離職理由の実態:「人間関係」が最多

介護労働安定センターの調査によると、職員が職場を辞めた理由は以下の通りです:

第1位:職場の人間関係に問題(23.2%)
次点(給与15.0%、キャリア見通し15.6%)を大きく上回る

第2位:将来の見込みが立たない(15.6%)
昇進・昇給ルートが不明確な施設での離職が多い

第3位:収入が少ない(15.0%)
全産業平均年460万円に対し、介護職は約350万円

人間関係改善の効果
・相談窓口がある施設で「人間関係に問題なし」と答えた職員:42.1%
・相談窓口がない施設:22.9%
その差は19.2%ポイント


今後の不足予測と2025年がピークの意味

2025年が不足のピーク、その後緩和予想

介護職員不足は2025年度がピークとなり、その後は徐々に緩和される見込みです。

理由は、2025年以降、要介護者数の伸び率が鈍化していくためです。

ただし注意点
・都市部では、人口集中により2030年まで高い需要が続く見込み
・過疎地では、絶対数の不足で対応困難が続く


よくある質問(FAQ)

Q1:職員数が減少しているのに、必要数が増える予測はなぜですか?

A:職員数減少は「現在の伸び率が止まった」という意味で、必要数は「要介護者の増加」に基づいています。つまり、採用困難のため職員が増やせなくなった一方で、要介護者は今後も増える予測のため、ギャップが拡大しているのです。

Q2:地方の小規模施設は採用をあきらめるべきですか?

A:単独での採用はほぼ困難ですが、地域内での複数施設共同採用、外国人材受け入れ、定年延長制度の活用など、複合戦略で対応可能です。

Q3:訪問介護の不足が特に深刻な理由は?

A:訪問介護は非常勤・短時間労働者が中心で、採用候補層が限定的です。加えて、利用者宅への移動が業務負担で、既存職員の定着が困難という構造があります。

Q4:女性職員が80%の構図はいつまで続きますか?

A:介護職の実質的な業務内容(身体的負担)を考えると、今後も女性が中心になる可能性が高いです。そのため、育児・介護との両立支援の充実が、業界全体の定着率向上に不可欠です。

Q5:世代交代困難に対して、施設個社でできることは?

A:現在の経験者(50~60代)を「メンター」「指導者」「管理職」として継続雇用し、知識・技術継承の仕組みを構築することが重要です。定年延長制度や短時間勤務制度の導入で実現できます。


まとめ

介護職員不足は、統計初の職員数減少という客観的な危機段階に入りました。2026年度には約28万人(11.7%)の不足が見込まれ、特に都市部の有効求人倍率は4倍を超える異常な状況が続いています。

同時に、施設間の離職率には3~4倍の開きがあり、経営による努力で改善可能な領域も存在しています。人間関係問題の解決、世代交代体制の構築、女性職員への両立支援など、施設個社で取り組むべき課題は明確です。

2025年が不足のピークという見通しを前に、今からの対策が業界全体の分かれ目となります。

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