「1法人では無理でも、3法人ならできることがある」
「求人を出しても来ない、来てもすぐ辞める。もうどうしたらいいのか分からなくて、近隣の法人に相談したんです。そしたら、みんな同じ悩みを抱えていて。それなら一緒にやろう、という話になったんです」
これは、定員20名のグループホームを運営する小規模法人の理事長の言葉です。地方の介護人材不足は深刻で、1法人単独での採用活動は費用対効果が低く、研修体制も十分に整備できない状況が続いていました。
導入前の課題:「小さすぎる」ことが採用・運営の足かせに
この地域では、小規模な介護事業者が点在していましたが、それぞれが個別に動いていたため、非効率な部分が多くありました。
3法人(グループホーム2事業所・訪問介護1事業所・デイサービス1事業所)の課題
・各法人の求人広告費:合計年間約180万円(重複出稿が多く効率が悪い)
・合同研修ができないため、各法人が個別に研修を実施 → 3法人合計で年間約60回・延べ240人日の研修コスト
・事務処理(請求・勤怠管理)を各法人が別々に行い、担当者の残業が月平均30時間超
・採用しても「法人規模が小さく将来が不安」という理由での早期離職が多く、1年以内離職率が38%
・福利厚生の充実が難しく、大手法人との求人競争に完敗する状況が続いていた
「正直、単独では太刀打ちできないと感じていました。でも、そのまま黙って縮小していくのも嫌だった」と別の法人の施設長は語ります。
補助金の活用内容:1法人120万円×3法人=最大360万円の補助
3法人は、地域医療介護総合確保基金「介護サービス事業者の生産性向上や協働化等を通じた職場環境改善事業」(介護現場デジタル改革パッケージ)の「協働化・大規模化等による職場環境改善事業」を活用しました。
この事業では、小規模法人を1以上含む複数の法人によるグループが対象となり、1法人あたり120万円(グループ全体で最大1,200万円)が補助されます。
費用内訳
| 項目 | 金額 |
| 合同採用サイト構築・運用費(初年度) | 90万円 |
| 合同研修プログラムの設計・実施費 | 75万円 |
| 人事管理・勤怠システムの共通化(3法人分) | 120万円 |
| 事務処理部門の集約支援(コンサルタント費用) | 45万円 |
| ICTインフラ整備(拠点間接続) | 60万円 |
| 経営改善専門家への助言費用 | 30万円 |
| 合計(総額) | 420万円 |
| 補助額(3法人×120万円) | 360万円 |
| 自己負担額(3法人合計) | 60万円 |
補助申請にあたっては業務改善計画を共同で作成し、翌年度から3年間の効果報告を行うことが求められました。
導入後の効果:採用コスト半減、合同研修で育成コストも圧縮
Before → After(協働化後1年時点)
| 指標 | 協働化前(3法人合計) | 協働化後 | 変化 |
| 求人広告費(年間) | 約180万円 | 約75万円 | ▲58%削減 |
| 研修コスト(年間) | 約240人日 | 約100人日 | ▲58%削減 |
| 事務担当者の月間残業時間 | 合計90時間超 | 合計30時間以下 | ▲67%削減 |
| 1年以内離職率 | 38% | 22% | ▲16ポイント改善 |
| 採用者数(年間・3法人合計) | 6名 | 15名 | 2.5倍増 |
合同での採用活動により「3法人合同のキャリアパス」を打ち出すことができ、「小さい法人でも将来の選択肢がある」として求職者の関心を集めることに成功しました。採用コストと研修コストの削減を合わせると、年間で約150万円のコスト削減効果が生まれています。
まとめ:「つながる」ことが小規模事業者最大の戦略になる
単独では解決できない課題も、複数の事業者が連携することで突破口が開けます。補助金の活用により、自己負担は3法人合計でわずか60万円(1法人あたり20万円)に抑えられました。
地方・小規模事業者ほど、この「協働化」という選択肢を真剣に検討する価値があります。ライバルではなく、地域の介護を一緒に守る仲間として手を組む。その第一歩として、地域医療介護総合確保基金の協働化支援メニューを活用してみてください。
※本事例はモデルケースです。実際の補助額・効果は施設規模や都道府県の実施状況により異なります。補助金の申請にあたっては、各都道府県の担当窓口にご確認ください。
