ICT機器とは|7種類の機器と選び方・導入成功の3ステップを解説

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介護現場のICT機器を体系的に理解する

介護現場の業務効率化を図りたいが、どのICT機器を選べば良いかわからず悩んでいませんか?

ICT機器とは介護現場で情報通信技術を活用し業務効率化やケアの質向上を支援する機器で、介護ソフト・タブレット端末・見守りシステムなど7つに分類されます。

本記事では、介護施設で12年以上のICT導入コンサルティング経験をもとに、機器の種類から選び方、導入手順まで、初めて検討する方でも理解できるよう体系的に解説します。

この記事を読めば、自施設に最適なICT機器が選択でき、効果的な導入計画を立てられるようになるでしょう。

介護現場におけるICT機器の基礎知識

ICT機器の定義と役割

ICT機器とは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」を活用した機器の総称で、介護現場では業務効率化とケアの質向上を目的として導入されます。ITが技術そのものを指すのに対し、ICTはコミュニケーションや情報共有の側面が強調された概念です。

介護現場における ICT機器の役割は3つに大別されます。第一に記録業務の効率化で、手書きからデジタル入力へ移行することで作業時間を大幅に削減します。第二に情報共有の円滑化で、職員間や多職種間でのリアルタイムな情報伝達を実現します。

第三に利用者の安全確保で、見守りシステムやセンサーにより事故リスクを低減します。これらの役割を果たすことで、職員は本来の介護業務に集中できる環境が整い、利用者へのケアの質も向上するのです。

ICT化が求められる背景

介護現場でICT化が加速している背景には、深刻な人材不足があります。厚生労働省の推計によれば、2040年には約69万人の介護人材が不足すると見込まれています。現状でも職員1人あたりの業務負担は増加しており、効率化は喫緊の課題です。

さらに、団塊の世代が75歳以上となる2025年問題により、介護需要は急増しています。限られた人員でより多くの利用者に質の高いサービスを提供するには、ICT機器による業務の省力化が不可欠です。介護労働安定センターの調査では、ICT導入事業所の離職率が非導入事業所より2〜3ポイント低いという結果も出ています。

令和6年度介護報酬改定では、ICT機器導入による加算制度や人員配置基準の緩和も導入されました。これにより、ICT化は経営戦略としても重要な位置づけとなっています。

ICT機器導入の現状と課題

介護労働実態調査によると、パソコンで利用者情報を共有している事業所は52.8%、タブレット端末を活用している事業所は28.6%と、導入率は年々上昇しています。特に介護ソフトは5割以上の施設で導入されており、ICT化の基盤となっています。

一方で、約2割の事業所はICT機器を全く導入していません。その主な理由は、第一に導入コストの高さで、初期費用と維持費用が負担となっています。第二に職員のICTスキル不足で、特にベテラン職員の中にはデジタル機器への抵抗感が強い方もいます。

第三に補助金制度の活用率の低さで、ICT導入支援補助金が存在するにもかかわらず、申請手続きの複雑さから活用されていないケースが多くなっています。これらの課題を克服することが、ICT化推進の鍵となります。

介護現場で活用される7種類のICT機器

介護ソフト(記録・請求システム)

介護ソフトは、記録から請求までを一元管理する最も基本的なICT機器です。利用者情報の管理、ケアプランの作成、日々の介護記録、モニタリング、国保連への請求業務まで、業務全般をカバーします。

クラウド型とオンプレミス型があり、クラウド型はインターネット経由でどこからでもアクセス可能で、初期費用が抑えられます。オンプレミス型は自社サーバーで管理するため、セキュリティ面で優位ですが、初期投資が高額になります。

導入効果として、ケアプラン作成時間が平均30〜40%削減されたという事例があります。また、記録のリアルタイム共有により、申し送りの時間も大幅に短縮されます。LIFE対応やケアプランデータ連携標準仕様に対応したソフトを選ぶと、補助金の補助率拡充も受けられます。

タブレット端末・スマートフォン

タブレット端末やスマートフォンは、現場での記録入力や情報確認に活用されます。訪問先やベッドサイドで直接入力できるため、事務所に戻って清書する時間が不要になります。画面サイズは10インチ程度が視認性と携帯性のバランスが良いとされています。

防水・防塵機能付きの端末を選ぶと、介護現場特有の環境にも対応できます。バッテリー駆動時間は8時間以上あると、1日の業務をカバーできます。指紋認証や顔認証などのセキュリティ機能も重要です。

利用者や家族への説明時にも活用でき、写真や動画を見せながら説明することで理解が深まります。特に認知症の方へのコミュニケーションでは、視覚的な情報提示が効果的です。Wi-Fi環境の整備が前提となるため、導入時にはネットワーク構築も検討しましょう。

見守りシステム・センサー

見守りシステムは、利用者の離床や転倒リスクを検知して職員に通知する機器です。大きく4種類に分類されます。第一にセンサーマット型で、マットに乗った重みで検知します。第二にシートセンサー型で、ベッドからの起き上がりや離床を感知します。

第三に超音波・赤外線センサー型で、足元の動きを検知します。第四にカメラ型で、天井設置のカメラで利用者の動きを映像で確認できます。カメラ型は映像データが残るため、事故発生時の検証にも活用できます。

導入により、夜間巡回の回数を3分の1に削減できた事例もあります。ただし、プライバシーへの配慮が必要で、利用者・家族への十分な説明と同意取得が不可欠です。令和6年度介護報酬改定では、見守り機器の導入が生産性向上推進体制加算の要件となっています。

インカム・コミュニケーションツール

インカムは、職員間の音声通話を可能にする機器です。従来のPHSと異なり、ハンズフリーで通話でき、介助中でも情報共有ができます。複数人での同時通話が可能なため、緊急時の迅速な対応に役立ちます。

スマートフォンとBluetoothイヤフォンを組み合わせたスマホインカムも普及しています。必要なものはスマートフォン、Bluetoothイヤフォン、インターネット環境の3つで、距離制限なく通話できます。ナースコールや介護ソフトとの連携も可能です。

導入により、呼び出しへの応答時間が平均2分から30秒に短縮されたという事例があります。職員の移動距離も削減され、体力的な負担軽減にもつながります。生産性向上推進体制加算の対象機器にも含まれています。

勤怠管理・給与計算システム

勤怠管理システムは、職員の出退勤時刻を記録し、労働時間を自動集計する機器です。タイムカードや出勤簿の手書き記入から解放され、集計ミスも防げます。シフト管理機能と連携すれば、予定と実績の比較も容易になります。

給与計算システムと統合すれば、勤怠データが自動的に給与計算に反映され、事務作業が大幅に削減されます。有給休暇の残日数管理、時間外手当の自動計算、年末調整の簡素化など、バックオフィス業務の効率化に貢献します。

介護現場では変則的なシフトが多いため、夜勤手当や休日出勤手当の計算が複雑になりがちです。システム化により、計算ミスや支給漏れを防ぎ、職員の信頼も高まります。クラウド型なら職員自身がスマートフォンから勤怠登録できる機能もあります。

シフト管理ソフト

シフト管理ソフトは、職員の勤務シフトを効率的に作成する機器です。職員の希望休や資格要件、人員配置基準などの条件を入力すると、最適なシフト案を自動生成します。手作業では数時間かかるシフト作成が、数分で完了します。

変更が発生した際の調整も容易で、変更の影響範囲を即座に確認できます。職員へのシフト通知も、システムから一斉送信できるため、紙の掲示や個別連絡の手間が省けます。公平性の確保にも役立ち、特定の職員に負担が偏ることを防げます。

一部のソフトには、適正な人員配置を提案する機能もあります。利用者の介護度やサービス内容に応じた必要人員を算出し、過不足のないシフトを組むことができます。シフト作成時間が月10時間から2時間に削減された事例もあります。

送迎管理システム

送迎管理システムは、デイサービスなどの送迎業務を効率化する機器です。利用者の住所をもとに最適なルートを自動計算し、送迎時間の短縮と燃料費の削減を実現します。ドライバーへのルート指示も、スマートフォンやタブレットで簡単に共有できます。

遅延や変更が発生した際は、リアルタイムで家族に通知できます。GPSと連携すれば、送迎車の現在位置を事務所から確認でき、問い合わせへの対応もスムーズになります。利用者の乗降記録も自動化され、サービス提供実績の管理も容易です。

送迎ルートの見直しにより、1日あたりの送迎時間が平均30分短縮された事例もあります。ドライバーの負担軽減にもつながり、安全運転の確保にも寄与します。事故やトラブル時の記録としても活用できます。

ICT機器導入の実践的3ステップ

ステップ1: 現状分析と機器選定(所要時間2〜4週間)

まず現在の業務フローを可視化し、どの業務にどれだけ時間がかかっているかを分析します。記録業務、申し送り、請求業務、シフト作成など、各業務の所要時間を1週間程度記録しましょう。職員へのヒアリングも実施し、負担を感じている業務を洗い出します。

次に導入目的を明確化します。業務時間の削減、情報共有の円滑化、事故リスクの低減など、何を優先するかによって選ぶべき機器が変わります。予算も設定しましょう。補助金を活用すれば、自己負担は総額の2分の1から4分の1に抑えられます。

機器選定では、複数のベンダーからデモ版を取り寄せ、実際に操作してみることが重要です。操作性、サポート体制、既存システムとの連携性、将来的な拡張性などを評価基準とします。小規模施設なら介護ソフトとタブレット、中規模以上なら見守りシステムやインカムの追加も検討しましょう。

ステップ2: 導入計画の策定と職員研修(所要時間1〜2ヶ月)

導入計画書を作成します。導入スケジュール、職員研修計画、データ移行計画、予算計画の4つが主要な項目です。補助金を申請する場合は、導入による業務改善効果を数値目標で示すことが求められます。「記録時間を30%削減」「残業時間を月20時間削減」など、具体的な目標を設定しましょう。

職員研修は段階的に実施します。まず管理者や情報担当者が先行して習得し、その後、他の職員へ展開する方法が効果的です。研修は1回2時間程度を3〜4回に分けて行うと、理解が深まります。ベンダーによる導入研修だけでなく、施設内での勉強会も定期的に開催しましょう。

操作マニュアルは、ベンダー提供のものだけでなく、施設独自の簡易マニュアルも作成します。よくある質問をまとめたFAQ集があると、職員が迷ったときに役立ちます。導入に不安を感じる職員には個別サポートを行い、取り残される人がいないよう配慮が必要です。

ステップ3: 段階的導入と効果測定(所要時間3〜6ヶ月)

いきなり全ての業務を切り替えるのではなく、段階的に導入します。まず新規利用者のみシステム登録し、既存利用者は更新時に移行するなど、職員の負担を分散させましょう。1ヶ月の試用期間を設け、問題点を洗い出してから本格導入すると成功率が高まります。

導入後は定期的に効果測定を行います。業務時間の変化、残業時間の推移、職員満足度、利用者満足度などを記録します。導入1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後と定期的に振り返り、改善点を見つけましょう。数値データだけでなく、職員の声も収集することが重要です。

つまずきポイントの共有も大切です。月1回程度、ICT活用に関する情報交換の場を設け、便利な使い方や困ったことを共有します。成功事例を共有することで、他の職員のモチベーション向上にもつながります。データは補助金の実績報告や、次の機器導入検討にも活用できます。

ICT機器選定と導入の成功ポイント

よくある失敗例と対策

最も多い失敗は「導入したが使われない」ケースです。操作が複雑すぎる、従来の方法の方が慣れているという理由で、紙記録に戻ってしまう施設があります。対策として、シンプルで直感的に操作できる機器を選ぶこと、最低1ヶ月は使い続けるルールを設けることが有効です。

「高額な機器を導入したが効果が見えない」失敗もあります。見守りシステムを導入しても、通知を無視したり対応が遅れたりすると意味がありません。対策として、導入前に運用ルールを明確化し、通知への対応手順を定めておくことが重要です。効果測定の指標も事前に設定しましょう。

「職員間でスキル格差が広がる」失敗にも注意が必要です。若手職員はすぐに使いこなす一方、ベテラン職員が取り残されると、チーム内の分断が生じます。対策として、ペアでの作業や、得意な職員が苦手な職員をサポートする仕組みを作りましょう。年齢や経験に関わらず、全員が使えるようになることが目標です。

介護現場特有の留意点

介護現場では利用者の個人情報を扱うため、セキュリティ対策が不可欠です。パスワード管理ルール、デバイスの持ち出し制限、定期的なバックアップなど、明確なルールを策定してください。紛失時の遠隔ロック機能や、一定時間操作がない場合の自動ロック設定も有効です。

夜勤や変則勤務が多いため、24時間いつでもサポートを受けられる体制が理想です。ベンダー選定時には、サポート時間帯や対応方法(電話・メール・チャット)を確認しましょう。緊急時の問い合わせ先を職員全員に周知することも重要です。

利用者・家族への説明も忘れずに行います。特に見守りシステムやカメラ導入時は、プライバシーへの配慮と安全確保の目的を丁寧に説明し、同意を得ることが必要です。説明文書を作成し、署名をもらうことで、後のトラブルを防げます。

補助金を活用したコスト削減

ICT導入支援補助金を活用すれば、初期費用の負担を大幅に軽減できます。職員1名で最大10万円、31名以上で最大300万円まで補助されます。補助率は原則2分の1ですが、LIFE対応やケアプランデータ連携などの要件を満たすと4分の3に拡充されます。

申請には導入計画書の作成が必要です。業務改善の具体的な目標、導入スケジュール、職員研修計画などを記載します。SECURITY ACTIONの宣言も必須要件となっているため、事前に手続きを済ませておきましょう。宣言自体は15分程度で完了します。

令和6年度からは生産性向上推進体制加算も新設されました。見守り機器、インカム、介護ソフトの3種を導入し、生産性向上委員会を設置することで、最大100単位の加算が算定できます。補助金と加算を併用することで、投資回収期間を大幅に短縮できます。

よくある質問(FAQ)

Q1: ICT機器導入にどのくらいの費用がかかりますか?

小規模施設の場合、介護ソフトとタブレット端末で初期費用30〜50万円、月額利用料1〜3万円が目安です。中規模以上で見守りシステムやインカムを追加すると、初期費用100〜200万円程度になります。

補助金を活用すれば、自己負担は4分の1から2分の1に抑えられるため、実質30〜100万円程度で導入可能です。クラウド型サービスなら初期費用が安く始めやすくなっています。

Q2: デジタル機器が苦手な職員でも使いこなせますか?

現在の介護ソフトは直感的に操作できるよう設計されています。スマートフォンが使える方なら基本操作は数日で習得できます。

段階的な研修と施設内でのサポート体制を整えれば、デジタル機器が苦手な職員も徐々に慣れていきます。60代のベテラン職員がICTを活用している事例も多数あります。不安がある場合は、操作が簡単な機器を選び、十分な研修期間を設けることが重要です。

Q3: どのICT機器から導入を始めるべきですか?

まず介護ソフトとタブレット端末の導入をおすすめします。記録業務は全ての施設で発生する基本業務のため、効果が最も実感しやすいためです。

次に、施設の課題に応じて機器を追加します。夜間の見守りに課題があれば見守りシステム、職員間の連絡に課題があればインカム、シフト作成に時間がかかっていればシフト管理ソフトという順序が効果的です。一度に多くを導入するより、段階的に拡大する方が成功率が高くなります。

Q4: 導入後のサポート体制はどうなっていますか?

多くのベンダーは電話・メール・リモート接続によるサポートを提供しています。契約内容により、サポート時間帯が平日9〜18時のみの場合と24時間対応の場合があります。

介護現場は夜勤もあるため、24時間対応のベンダーが理想です。導入後3ヶ月は訪問サポートを含むプランもあります。ベンダー選定時には、サポート体制を必ず確認し、施設の運営形態に合ったサービスを選びましょう。

Q5: ICT機器導入で本当に業務時間は削減されますか?

適切に導入・運用すれば、業務時間は確実に削減されます。介護労働実態調査では、ICT導入施設の記録時間が平均30〜40%削減されています。ただし、導入直後の1〜2ヶ月は操作に慣れるため、一時的に時間がかかる場合もあります。

3ヶ月後以降から効果が実感できるケースが多く、6ヶ月後には明確な業務時間短縮が見られます。効果測定を定期的に行い、データで効果を可視化することが継続のコツです。

まとめ

ICT機器とは介護現場の業務効率化とケアの質向上を実現する強力なツールです。重要なポイントは、現状分析で課題を明確化し自施設に最適な機器を選定すること、段階的な導入と丁寧な職員研修で定着を図ること、補助金を活用してコストを抑え効果測定で改善を続けることの3点です。

まずは都道府県のICT導入支援補助金の募集情報を確認し、自施設に合った機器のデモ版を試してみましょう。小規模施設なら介護ソフトとタブレット端末から始めることをおすすめします。

ICT化は介護現場の未来を変える可能性を秘めています。職員がより質の高いケアに集中できる環境を整え、利用者の満足度向上と職員の働きやすさの両立を実現しましょう。あなたの施設でも、この機会にICT導入への第一歩を踏み出してみませんか。

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