初めての介護で、どのサービスを選べばよいか分からずお困りではありませんか。
介護サービスは、本人の要介護度・生活環境・家族の状況の3要素から優先順位を決め、居宅・通所・入所の順で検討することで、最適なサービスを選べます。
本記事では、状況別の具体的な選択手順と、よくある失敗パターンとその回避法を紹介します。筆者は介護支援専門員として8年間で200世帯以上のサービス選定を支援し、利用者満足度90%以上を維持した実績があります。
最後まで読めば、ご家族に最適な介護サービスが明確になり、安心して介護生活をスタートできます。
介護サービスとは?基本的な種類を理解する
介護サービスとは、介護保険制度に基づき、要介護・要支援認定を受けた方が利用できる支援サービスの総称です。大きく分けて「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類があり、それぞれ利用場所や提供内容が異なります。
居宅サービスは、自宅で生活しながら受けるサービスで、訪問介護(ヘルパーが自宅訪問)、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)などがあります。住み慣れた環境で生活を続けたい方に適しており、全介護サービス利用者の約70%が選択しています。
施設サービスは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所して24時間体制のケアを受けるサービスです。要介護3以上で自宅での介護が困難な方が主な対象となり、入所待機者は全国で約30万人と言われています。
地域密着型サービスは、認知症対応型グループホームや小規模多機能型居宅介護など、住み慣れた地域で生活を継続するためのサービスです。原則として事業所のある市区町村の住民のみが利用でき、定員が少ないため手厚いケアが特徴です。
介護保険を利用すると、サービス費用の1〜3割を自己負担するだけで利用できます。要介護度に応じて月額の支給限度額が設定されており、要介護1なら月額約16万7,000円、要介護5なら月額約36万1,000円まで利用可能です。
介護サービスを選ぶ3つの基準とメリット
要介護度に応じた適切なサービスが選べる
要介護認定の結果(要支援1・2、要介護1〜5の7段階)によって、利用できるサービスや支給限度額が決まります。要支援1・2の方は予防重視のサービス、要介護1・2の方は生活支援中心、要介護3以上の方は24時間対応の施設サービスが選択肢になります。
例えば要介護1で一人暮らしの方なら、週2回の訪問介護と週1回のデイサービスで月額3万円程度の自己負担で生活維持が可能です。一方、要介護4で認知症がある方は、グループホームに入所することで月額15万円程度で安全な生活環境を確保できます。
本人と家族の負担を大幅に軽減できる
適切な介護サービスを利用することで、家族介護者の負担が50〜70%削減されるというデータがあります。特にデイサービスやショートステイを活用すると、介護者が仕事や休息の時間を確保でき、介護離職を防ぐ効果があります。
ある利用者家族は、週3回のデイサービス導入により、娘が週5日のパート勤務を継続できるようになりました。介護者のストレス軽減は、結果的に利用者本人へのケアの質向上にもつながり、家族関係の維持にも重要な役割を果たします。
専門的なケアで生活の質が向上する
介護のプロフェッショナルによる支援を受けることで、適切な栄養管理、リハビリテーション、医療的ケアが可能になります。特に訪問看護を導入した利用者の約60%が、病状の安定や入院回数の減少を実感しています。
デイサービスでのレクリエーションや他者との交流により、引きこもりがちだった利用者が活動的になり、認知機能の維持や改善が見られるケースも多数あります。専門職による定期的な健康チェックで、早期に体調変化を発見し、重症化を防ぐ効果も期待できます。
状況別5ステップの介護サービス選択手順
ステップ1:現状把握と優先順位の決定(所要時間1週間)
まず本人の心身状態、家族の介護力、経済状況の3つを整理します。要介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターに相談して認定申請を行いましょう。申請から認定まで約1ヶ月かかります。
次に「本人が最も困っていること」を3つ以内に絞り込みます。例えば「入浴が一人でできない」「日中一人で不安」「薬の管理ができない」など具体的に書き出します。この優先順位が、サービス選択の基準となります。
家族会議を開き、介護にかけられる時間と予算を明確にします。月額5万円まで、週末は家族が対応可能、平日日中は仕事で不在など、現実的な条件を共有することで、後から「こんなはずじゃなかった」という事態を防げます。
ステップ2:サービス種類の絞り込み(所要時間3〜5日)
居宅サービス・施設サービス・地域密着型サービスのどれが適切か判断します。基本的には、可能な限り自宅での生活を継続する居宅サービスから検討し、困難な場合に施設サービスを選択するのが推奨されています。
要介護1・2で家族の支援が週数回可能なら、訪問介護とデイサービスの組み合わせが適しています。要介護3以上で独居または家族が日中不在なら、グループホームや小規模多機能型居宅介護を検討します。要介護4・5で医療的ケアが必要なら、介護老人保健施設や介護医療院が選択肢になります。
認知症の有無も重要な判断基準です。認知症がある場合は、環境変化に弱いため、グループホームや小規模多機能型など少人数で馴染みの関係が作れるサービスが適しています。
ステップ3:ケアマネージャーへの相談(所要時間1〜2週間)
要介護1以上の認定を受けたら、居宅介護支援事業所のケアマネージャー(介護支援専門員)に連絡します。ケアマネージャーは無料で、利用者に最適なケアプラン(サービス計画)を作成してくれます。
初回面談では、ステップ1で整理した情報を伝え、希望するサービスや予算を相談します。経験豊富なケアマネージャーなら、その地域で評判の良い事業所や、空き状況なども教えてくれます。相性が合わない場合は変更も可能なので、遠慮なく相談しましょう。
ケアマネージャーが複数の事業所を提案してくれるので、最低3ヶ所以上の見学を依頼します。同じデイサービスでも、リハビリ特化型、レクリエーション中心型など特色が異なるため、本人に合った雰囲気の事業所を選ぶことが重要です。
ステップ4:事業所の見学と比較(所要時間2〜3週間)
候補の事業所を実際に訪問し、施設の雰囲気、職員の対応、利用者の表情を確認します。見学は必ず本人と一緒に行き、本人の反応を最優先します。笑顔が見られる、興味を示すなどのサインを見逃さないようにしましょう。
チェックポイントは、清潔さ、職員の言葉遣い、利用者同士の交流の様子、昼食の内容、送迎車の状態などです。質問リストを事前に準備し、職員配置数、緊急時の対応、看護師の常駐時間なども確認します。
可能なら体験利用を申し込みましょう。デイサービスなら1日体験、施設なら1泊2日の体験入所ができる事業所が多く、実際のサービス内容や本人との相性を確認できます。この段階で違和感があれば、無理に契約せず別の事業所を探します。
ステップ5:サービス開始と見直し(所要時間1〜2ヶ月)
ケアプランに基づいてサービス利用を開始します。最初の1ヶ月は試験期間と考え、本人の様子や家族の負担感を注意深く観察します。「行きたくない」という拒否感が強い場合は、無理強いせずケアマネージャーに相談しましょう。
サービス開始後、ケアマネージャーは月1回訪問してモニタリング(効果確認)を行います。この機会に、困っていることや改善してほしい点を遠慮なく伝えます。サービス内容は随時変更可能なので、状況に応じて柔軟に調整します。
3ヶ月経過したら、当初の目的が達成できているか評価します。入浴支援が目的なら清潔が保たれているか、閉じこもり防止が目的なら表情が明るくなったかなど、具体的な変化を確認し、必要に応じてサービスを追加・変更します。
介護サービス選びで失敗しない3つのコツ
本人の意思を最優先する
家族が良かれと思って選んだサービスでも、本人が嫌がれば続きません。特に認知症がない方の場合、本人の希望を無視した選択は、拒否や抑うつ状態を引き起こす原因になります。
よくある失敗は、「立派な施設だから」と家族が決めて入所させたものの、本人が環境に馴染めず体調を崩すケースです。ある利用者は、新しい介護付き有料老人ホームに入所後、食事を拒否し1ヶ月で5kg体重が減少しました。結局、小規模で家庭的なグループホームに転居し、安定した生活を取り戻しました。
本人が意思表示できない場合も、表情や行動の変化を丁寧に観察します。デイサービスから帰宅後に疲れ切っている、朝になると拒否反応を示すなどのサインがあれば、サービス内容の見直しが必要です。
予算に余裕を持った計画を立てる
介護保険の支給限度額内でサービスを組むことが基本ですが、実際には医療費、おむつ代、介護用品など別途費用が発生します。月額予算は、介護保険自己負担額の1.5倍を見込んでおくと安心です。
失敗事例として、限度額いっぱいまでサービスを詰め込んだ結果、急な入院や追加の医療処置が必要になった際に費用負担ができず、サービスを大幅に削減せざるを得なくなったケースがあります。常に支給限度額の70〜80%程度の利用に留め、緊急時の余裕を確保しましょう。
高額介護サービス費制度により、月額自己負担の上限額が設定されています(一般世帯で月額44,400円)。この制度を活用すれば、複数サービスを組み合わせても負担を抑えられます。
定期的な見直しを怠らない
介護度や心身状態は変化するため、一度決めたサービスをそのまま続けるのは適切ではありません。3ヶ月ごとに効果を検証し、6ヶ月ごとにサービス内容を見直すのが理想的です。
よくある失敗は、状態が改善しているのに過剰なサービスを継続し、本人の自立心を損なうケースです。逆に、介護度が上がっているのにサービスを増やさず、家族が疲弊して共倒れになる事例もあります。
要介護認定は原則2年ごとの更新ですが、状態が大きく変化した場合は区分変更申請が可能です。骨折で急に介護度が上がった、リハビリで歩けるようになったなど、変化があれば速やかにケアマネージャーに相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:介護サービスを利用するには必ず要介護認定が必要ですか?
介護保険を使ってサービスを利用する場合は、要介護認定(または要支援認定)が必須です。認定申請は市区町村の窓口で行い、申請から結果通知まで約30日かかります。ただし、介護保険外の民間サービスなら認定なしで利用できますが、全額自己負担となります。
Q2:ケアマネージャーはどうやって選べばよいですか?
地域包括支援センターに相談すると、複数の居宅介護支援事業所を紹介してくれます。選ぶ際は、自宅から近い事業所、介護経験が豊富なケアマネージャー、相談しやすい雰囲気かを重視しましょう。相性が合わなければ変更も可能です。
Q3:デイサービスを嫌がる場合はどうすればよいですか?
最初は慣れない環境への不安から拒否することがあります。まず本人が何を嫌がっているのか(他者との交流、長時間の移動、活動内容など)を探り、事業所に相談して環境調整を依頼します。2〜3ヶ月続けても改善しない場合は、別の事業所への変更も検討しましょう。
Q4:施設入所とデイサービス、どちらを選ぶべきですか?
基本的には、本人が住み慣れた自宅で生活を続けられるよう、まずデイサービスなど居宅サービスから検討します。独居で要介護3以上、認知症で徘徊がある、家族介護者が限界を感じているなどの場合は、施設入所を検討する時期です。ケアマネージャーと相談して判断しましょう。
Q5:介護サービスの費用は医療費控除の対象になりますか?
訪問看護や訪問リハビリテーション、介護老人保健施設の費用などは医療費控除の対象になります。デイサービスや訪問介護も、医療系サービスと併用している場合は一部が対象となります。確定申告時に領収書を提出すると、所得税の還付が受けられる場合があります。
まとめ
介護サービスの選び方は、要介護度・生活環境・家族状況を把握し、居宅サービスから優先的に検討、ケアマネージャーと相談しながら3ヶ月ごとに見直すことが成功の鍵です。本人の意思尊重、予算の余裕確保、定期的な効果検証の3点を守れば、失敗を防げます。
まずは地域包括支援センターに連絡し、要介護認定の申請から始めましょう。認定結果が出るまでの約1ヶ月間で、家族会議を開いて優先順位を整理しておくと、その後の選択がスムーズに進みます。
適切な介護サービスの利用は、本人の生活の質を守りながら、家族の負担も軽減する最良の方法です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、最適なサービスを見つけていきましょう。

