介護現場の問題点は何ですか?
介護現場の最大の問題は「深刻な人材不足」です。2025年には約32万人、2040年には69万人の介護職員が不足すると推計されています。この人材不足を起点に、労働環境の悪化・ケアの質低下・職員の離職という負のスパイラルが発生しています。
この記事では、介護現場が抱える7つの主要問題を「社会」「業界」「現場」の3層に分けて解説し、小規模施設でも今日から実践できる具体的解決策を提示します。厚生労働省の最新データと現場経験10年以上の知見をもとに、問題の本質と改善の糸口をお伝えします。
介護現場の7つの問題点
【問題1】2025年問題による要介護者の急増
団塊世代が75歳以上となる2025年、高齢化率は30%に達します。内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、要介護認定者は約690万人、認知症高齢者は約700万人に増加。特別養護老人ホームの入所待機者は約29.2万人(2019年時点)にのぼり、介護難民が深刻化しています。
一人暮らし高齢者は約592万人で、孤立死のリスクも高まっています。
【問題2】深刻な人材不足と高い離職率
厚生労働省の推計では、2040年に約69万人の介護職員が不足します。介護職の有効求人倍率は3.71倍(全職業平均1.13倍)、都市部では7.39倍と全国最高水準です。
業界調査による離職理由トップ5:
- 人間関係(27.5%)- チーム業務特性上、致命的
- 施設の理念・運営への不満(22.8%)- 男性は30.3%
- 他に良い職場がある(転職)- 求人倍率の高さが影響
- 収入が少ない(18.6%)- 男性は26.4%
- 将来の見込みが立たない(15.0%)- キャリアパス不明確
【問題3】低賃金と待遇の悪さ
介護保険制度により報酬上限が決められているため、給与の大幅アップが困難です。サービス利用料が固定されており、一般企業のような収益増による昇給ができない構造的問題を抱えています。リーダー級でも給与が頭打ちになり、将来不安から離職する職員が後を絶ちません。
【問題4】過酷な労働環境
人手不足により一人当たりの業務負担が増大。夜勤は16時間勤務(16:30~翌9:30)で休憩1~2時間のみ、実質17~18時間労働となるケースも。最低人員でシフトを回すため、十分な休憩が取れず心身の疲労が蓄積します。
食事・排泄・入浴介助に加え、記録業務・家族対応もこなす必要があり、丁寧なケアに時間を割けない現実があります。
【問題5】現場職員が感じる3大課題
現場で働く職員が最も強く感じる課題:
①丁寧なケアができない
業務多忙で利用者一人ひとりに十分な時間を割けず、「介護の理想と現実のギャップ」が職員のモチベーション低下を招きます。
②情報共有の不足
多職種連携が必須なのに、紙の記録・口頭申し送りだけでは伝達ミスが発生。事故やケアの質低下に直結します。
③利用者の事故防止の難しさ
転倒・誤嚥などの事故リスクは、見守り人員不足・環境整備の不備・職員の観察力不足が重なり発生します。
【問題6】老老介護・認認介護の深刻化
65歳以上が65歳以上を介護する「老老介護」、認知症患者同士が支え合う「認認介護」が増加。高齢者世帯は全世帯の47.1%(2,372万世帯)で、介護する側の体力・判断力低下により共倒れのリスクが高まっています。
【問題7】介護施設の倒産増加
民間調査機関によると、2022年の介護事業所倒産は143件(過去最多)。小規模事業所(従業員4人以下)が6割を占めます。コロナ禍による利用者減少・物価高騰分を介護報酬で転嫁できない構造が主因です。
問題が連鎖する仕組み
介護現場の問題は以下のような負のスパイラルを形成:
人材不足 → 業務負担増 → 丁寧なケア不可 → 職員の疲弊・罪悪感 → 離職 → さらなる人材不足
この連鎖を断ち切るには、複数の問題に同時アプローチする統合的解決策が必要です。
今日からできる解決策【優先度別】
最優先(今すぐ実行)
①職員のメンタルケア
月1回15分の個別面談、匿名相談窓口設置、ストレスチェック実施。離職率低下に直結します。
②情報共有の効率化
業務用スマホグループでの即時共有、申し送りノートのデジタル化(無料アプリ活用)、朝礼での5分間「気づき共有」。実例では記録時間を週17時間短縮した事例もあります(厚生労働省調査)。
③生活環境の見直し
手すりの高さ調整、照明の明るさ確認、床材の滑り止め対策、動線上の障害物除去。投資不要の家具配置変更だけでも転倒リスクは減少します。
中期的取り組み(3~6ヶ月)
④情報システム・介護DXの段階的導入
まずは記録のデジタル化(タブレット活用)から始め、見守りセンサー、インカムと段階的に導入。ICT補助金・IT導入補助金で初期費用を大幅削減可能です。
⑤職員教育・研修の充実
月1回30分のミニ勉強会をシフト別に開催。ベテラン職員が講師役を務めることで、外部講師費用も不要。認知症ケア・事故防止・コミュニケーション技術を重点テーマに。
⑥雇用形態の多様化
週2日勤務のパート、夜勤専従職員、60代以上のシニア人材、外国人人材の受け入れで採用ハードルを下げます。
長期戦略(6ヶ月~)
⑦処遇改善・待遇向上
処遇改善加算・特定処遇改善加算の取得で職員給与に直接還元。キャリアパス制度の明確化(昇給基準の見える化)、有給取得率向上、夜勤回数の上限設定(月4回まで等)を実施します。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模施設でも情報システム導入は可能ですか?
A:可能です。職員のスマホを活用した無料情報共有アプリから始め、補助金を活用して段階的に導入する方法が効果的です。
Q2:人材不足で研修時間が取れません
A:30分のミニ研修を月1回、シフト別に複数回開催すれば負担を分散できます。研修自体が成長実感につながり離職防止効果があります。
Q3:職員の離職を防ぐ最も効果的な方法は?
A:月1回15分の個別面談が最も即効性があります。悩みを早期把握し、退職の意思が固まる前に対処できます。
Q4:介護ロボットは本当に効果がありますか?
A:見守りセンサーや移乗介助機器は、夜勤負担軽減・腰痛予防に確実な効果があります。補助金活用で費用負担も軽減可能です。
Q5:処遇改善加算の取得は難しいですか?
A:キャリアパス要件と研修計画の策定が必要ですが、社会保険労務士等の専門家に相談すればスムーズに進められます。
まとめ:小さな改善から始めよう
介護現場の問題は複雑ですが、現場レベルで改善できることは必ずあります。まず自施設の問題を「社会」「業界」「現場」の3層で分類し、優先順位をつけて実行しましょう。
今日から始められる3つのアクション:
- 明日の朝礼で職員に「困っていること」を尋ねる
- 月1回15分の個別面談スケジュールを組む
- 情報共有方法を見直す(デジタル化検討)
職員一人ひとりの声を聴き、小さな改善を積み重ねることで、利用者にも職員にも「選ばれる施設」へと成長できます。補助金や支援制度も最大限活用しながら、できることから着実に進めていきましょう。

