介護現場の記録業務に追われていませんか?
介護ICTとは、記録・情報共有・見守りをデジタル化し、介護職員の業務負担を30〜40%削減する仕組みです。
手書き記録の転記作業や申し送りの時間が減り、本来のケア業務に集中できるようになります。しかし「職員がITに苦手意識を持っている」「何から始めればいいか分からない」という悩みも多いのが現実です。
本記事では、福祉現場での導入支援経験をもとに、職員の抵抗を最小限に抑える段階的導入法とよくある失敗の回避策を解説します。小規模事業所でも今日から実践できる優先順位と、デジタル苦手な職員へのフォロー体制まで、現場視点でお伝えします。
介護ICTとは?福祉現場のデジタル化の基礎知識
介護ICTとは、情報通信技術を介護現場に活用し、業務効率化とケアの質向上を同時に実現する取り組みです。
具体的には以下の3領域でデジタル化を進めます。
1. 記録業務のデジタル化
紙の介護記録をタブレットで入力し、転記作業を削減します。利用者のバイタルサインや食事摂取量を現場で直接入力すれば、事務所に戻って清書する手間が不要です。
2. 情報共有のリアルタイム化
チャット機能や共有カレンダーで、職員間の申し送りや予定変更を瞬時に伝達できます。「前の勤務者が帰った後に気づいた」という情報の抜け漏れが防げます。
3. 見守り・安全管理の自動化
センサー機器で利用者の転倒リスクや離床を検知し、職員に通知します。夜間の巡回頻度を減らしつつ、安全性を高められます。
これらの活用により、介護職員1人あたりの記録業務時間を1日平均30〜60分短縮できるというデータもあります。削減した時間を利用者とのコミュニケーションに充てることで、サービスの質が向上します。
介護現場にICTが必要な3つの理由
理由1: 深刻な人手不足への対応
介護業界は2025年に約32万人の人材不足が見込まれています。限られた人員で質の高いケアを提供するには、業務効率化が不可欠です。ICTを導入した事業所では、1人の職員が担当できる利用者数が平均1.2〜1.5倍に増加しています。
理由2: 間接業務時間の削減
介護職員の業務時間のうち、約30〜40%が記録・申し送り・書類作成などの間接業務に費やされています。デジタル化により1日1〜2時間の削減が可能です。手書き記録を清書する作業や、口頭で同じ内容を繰り返し伝える時間が大幅に減ります。
理由3: ケアの質とエビデンスの向上
ICTでデータを蓄積すると、利用者の状態変化をグラフで可視化できます。「なんとなく元気がない」という主観的判断ではなく、バイタルデータや活動量の変化に基づいた客観的な判断が可能になります。介護報酬改定で重視される科学的介護にも対応できます。
【実践】職員の抵抗を減らす段階的ICT導入3ステップ
多くの事業所が失敗するのは、いきなり高額なシステムを全面導入しようとするからです。現場の抵抗を最小限に抑えるには、小さく始めて段階的に拡大することが成功の鍵です。
STEP1: 紙の記録をタブレット入力に置き換える(1〜2ヶ月)
必要なもの: タブレット端末、クラウド型記録システム
導入手順:
- 1フロアだけで試験運用(2週間)
- 使いやすさを職員から聞き取り調整
- デジタルに抵抗感の少ない職員を推進リーダーに任命
- 残りのフロアに展開
つまずきポイント対策:
- 入力項目が多い → 必須項目を5つ以内に絞る
- 文字が見づらい → フォントサイズを全端末で統一
- 「紙の方が早い」 → 転記時間を含めた総時間で比較
費用目安: 月額3万〜10万円
STEP2: 職員間の情報共有をアプリ化(1ヶ月)
必要なもの: ビジネスチャットツール、共有カレンダー
導入手順:
- 全職員のスマホにアプリをインストール
- 緊急時の連絡のみアプリで運用開始
- 徐々に日常的な申し送りも移行
- 紙の連絡ノートを段階的に廃止
つまずきポイント対策:
- プライベートスマホ使用に抵抗 → 業務用スマホ貸与または手当支給
- 情報が流れて見逃す → 重要事項はタスク機能で管理
- 高齢職員が操作できない → 「読むだけ」の使い方から始める
費用目安: 無料〜月額1万円
STEP3: 見守りセンサー・高度機器の導入(3〜6ヶ月)
必要なもの: 離床センサー、見守りシステム、介護ロボット
導入手順:
- 転倒リスクの高い利用者5名に試験導入(1ヶ月)
- 誤報頻度や職員負担感を評価
- センサー感度調整・設置位置最適化
- 補助金申請のタイミングで全体展開
つまずきポイント対策:
- 誤報が多い → 感度設定を段階的に調整
- 操作が複雑 → マニュアルを写真付き1枚にまとめる
- 「監視されている」と苦情 → 導入前に説明会を開催
費用目安: 初期費用50万〜300万円(補助金活用で自己負担1/3〜1/2)
ICT導入でよくある失敗例と対策
失敗例1: 職員が使わず、結局紙に戻る
対策: 導入前に職員アンケートで「何ができれば便利か」をヒアリング。研修は1ヶ月間、毎週フォローアップを実施。推進リーダーを各フロアに配置し、困ったときにすぐ聞ける体制を作る。紙との併用期間を1ヶ月に限定し、期限後は紙を廃止する。
失敗例2: データ入力が二重管理になり、かえって忙しくなる
対策: 記録システムと請求ソフトが連携できる製品を選ぶ。紙との併用は最長1ヶ月に限定。行政提出書類も電子申請可能な自治体を確認し、データ出力機能を活用する。
失敗例3: 高額システムを導入したが、費用対効果が見えない
対策: 導入前に「削減したい業務時間」を具体的に設定(例:記録時間を1日30分削減)。導入後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月で効果測定を実施。使っていない機能はオフにし、シンプルな運用から始める。
よくある質問(FAQ)
Q1: ICT導入に使える補助金はありますか?
A: 厚生労働省のICT導入支援事業では、対象経費の最大2/3(上限100万円程度)の補助があります。自治体独自の上乗せ補助もあるため、福祉担当課に確認してください。
Q2: 小規模事業所でも導入できますか?
A: 可能です。まずは無料または低額(月額1〜3万円)のクラウド型記録システムから始め、効果を実感してから段階的に拡大する方法がおすすめです。
Q3: ICTが苦手な高齢職員にはどう対応すればいいですか?
A: 「全員が同じレベル」を目標にしないことです。まずは「記録を見るだけ」から始め、入力は得意な職員がサポートする体制にします。3ヶ月程度の慣れ期間を設けてください。
まとめ:小さく始めて段階的に拡大する
介護ICTは、職員の業務負担を30〜40%削減し、利用者ケアの質を高める強力な手段です。成功のポイントは以下の3つです。
- 記録デジタル化から小さく始める(月額数万円で可能)
- 職員の声を聞きながら段階的に拡大する(1フロアずつ、1機能ずつ)
- デジタル苦手職員へのフォロー体制を最初から作る(推進リーダー配置、週次研修)
まずは記録システムの無料トライアルを申し込み、1フロアだけで2週間試してみてください。小さな成功体験が、事業所全体のICT化への第一歩になります。効率化で生まれた時間を、利用者との対話や専門的なケアに充てることで、職員も利用者も満足度が高まる現場を実現しましょう。

