介護事業を経営する中で「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」と悩んでいませんか。
2026年時点で約25万人の介護職員が不足すると推計され、有効求人倍率は3.97倍と全職種平均の3倍以上という深刻な状況が続いています。
本記事では、小規模事業所でも今日から実践できる3ステップの解決策を具体的に解説します。福祉経営の現場で15年以上にわたり人材確保に携わってきた経験をもとに、失敗しやすいポイントと対処法もお伝えします。
限られた予算と人員でも着実に職員を確保・定着させるための道筋が見えてきます。
介護職員不足の現状|2040年に57万人不足の危機
厚生労働省の推計によると、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされる一方、現状は約215万人にとどまり約25万人が不足しています。さらに2040年度には約272万人が必要とされ、現状から57万人もの人材を確保しなければなりません。
団塊世代が75歳以上となる2025年問題はすでに目前に迫っており、少子化により働き手は減少する一方です。介護関係職種の有効求人倍率は全国平均で3.97倍、東京都では7.65倍にも達しています。特に訪問介護では事業所の約7割が「不足している」と回答しています。
介護職員不足が起きる5つの根本原因
原因1:賃金水準の低さと処遇への不満
医療・福祉産業の平均賃金は30.64万円で全産業平均を下回っています。夜勤や身体介護など心身の負担が大きい仕事にもかかわらず賃金が見合わず、処遇改善加算を取得しても「配分方法が不透明」という声が聞かれます。
原因2:職場の人間関係によるストレス
介護労働安定センターの調査では、離職理由の第1位が「職場の人間関係に問題」(23.2%)で、「収入が少ない」(六番目)を大きく上回っています。評価制度が整備されていない事業所では「頑張っている人が報われない」という不満が蓄積します。
原因3:身体的・精神的負担の大きさ
介護従事者の24.6%が「身体的負担が大きい」と回答しており、入浴介助や移乗介助が腰痛の原因となっています。夜勤シフトや認知症ケア・看取りなどの負担も離職につながります。
原因4:社会的評価の低さ
介護従事者の20.2%が「業務に対する社会的評価が低い」と感じています。「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが根強く、若年層が介護職を選択肢として考えにくい状況があります。
原因5:採用活動と定着施策の不足
多くの事業所が「求人を出して待つ」という受け身の姿勢で、求人サイトの情報も「募集要項を並べただけ」という内容が目立ちます。新人が孤立し早期離職につながるケースも多く見られます。
介護職員不足を解消する実践3ステップ
ステップ1:職場環境の見える化と改善(所要期間:1〜2か月)
まず現状を正確に把握することから始めます。匿名アンケートを実施し、人間関係・業務負担・評価制度について5段階評価と自由記述で回答してもらいます。外部のサーベイツールを使えば月額数千円で導入可能です。
次にスコアの低い項目や意見を整理し、「特定の職員との関係」「シフトの不公平感」など具体的な課題を洗い出します。職員を交えた会議で改善策を検討し、「感謝カードの導入」「月1回のランチミーティング」など、コストをかけずに実施できる施策から着手します。
「アンケートを取っても本音が出てこない」という失敗がよくあります。対処法は、アンケート結果を受けて1週間以内に何か1つ改善し、「意見は反映される」という実感を持ってもらうことです。
ステップ2:採用力の強化と情報発信(所要期間:1〜3か月)
受け身の採用から、積極的に魅力を発信する採用へ転換します。求人情報を「なぜこの事業所で働くと良いのか」を伝える内容に変更し、職員インタビュー・1日の業務の流れ・研修制度の具体例などを盛り込みます。写真や動画があれば説得力が増します。
ハローワークだけでなく、介護専門の求人サイト、成果報酬型サービス、SNSなど複数のチャネルを活用します。成果報酬型サービスは応募時のみ費用が発生するため、リスクを抑えながら露出を増やせます。
人材紹介会社に施設見学をしてもらい、事業所の魅力を理解してもらうことも重要です。「魅力的な情報がない」と感じる事業所もありますが、職員に「なぜこの職場を選んだのか」をインタビューすると、意外な魅力が見つかります。
ステップ3:定着支援の仕組み化(所要期間:3〜6か月)
せっかく採用した職員が早期離職しないよう、組織的な支援体制を整えます。メンター制度やバディ制度を導入し、新人1人に対して先輩職員1人が相談役となる仕組みを作ります。週1回15分程度の面談で困りごとを聞き、孤立を防ぎます。
施設長や管理者に直接言いにくいことを相談できる窓口を設けます。まずは「意見箱」の設置など簡易な方法から始めても効果があります。また「何をすれば評価されるのか」を明確にし、資格取得支援制度・昇給昇格の基準などを文書化して職員に共有します。
「制度を作っても機能しない」という失敗では、運用が形骸化しています。対処法は、月1回の振り返りミーティングで制度の利用状況を確認し、うまくいっていない場合は都度改善することです。
小規模事業所でもできる低コスト施策
シフト管理アプリ(月額数千円〜)や介護記録のタブレット化(初期費用10万円程度〜)など、少額の投資で大幅な工数削減が可能です。また特定技能制度を活用すれば、若く意欲的な外国人材を受け入れられます。自治体の補助金も活用でき、人手不足解消の有力な選択肢です。
「週3日だけ」「午前中のみ」など、柔軟な働き方を提示することで、子育て中の方や定年後のシニア層など、これまでリーチできなかった人材を獲得できます。
よくある質問(FAQ)
Q1:処遇改善加算を取得していますが、職員の不満が減りません。何が問題でしょうか?
A:配分方法が不透明だと職員は「給料が上がった実感がない」と感じます。加算による収入がいくらで、どういう基準で配分されているかを明示し、頑張りが給与に反映される仕組みを説明することが重要です。
Q2:小規模事業所で予算が限られています。何から始めるべきですか?
A:まず「職場の人間関係改善」から着手してください。感謝カードやランチミーティングなどコストをかけずに実施できる施策でも、離職率低下に効果があります。人が定着すれば採用コストも削減できます。
Q3:外国人材の受け入れは手続きが複雑で不安です。どうすれば良いですか?
A:地域の外国人材支援機関や登録支援機関に相談してください。ビザ手続きや生活サポートを代行してくれるサービスもあり、初めてでも安心して受け入れられます。
Q4:求人を出しても全く応募が来ません。どこに問題があるのでしょうか?
A:求人情報が「募集要項だけ」になっていませんか。求職者は「どんな職場か」「どんな人が働いているか」を知りたがっています。写真や職員の声を加え、職場の雰囲気が伝わる内容に変更してください。
Q5:新人がすぐ辞めてしまいます。どう対策すれば良いですか?
A:新人が孤立していないか確認してください。メンター制度で相談相手を明確にし、定期的に面談を行うことで、小さな悩みを早期にキャッチできます。「1週間後」「1か月後」「3か月後」など節目での面談が効果的です。
まとめ
介護職員不足は構造的な問題ですが、事業所レベルでできる対策は数多くあります。重要なのは(1)職場環境の見える化と改善、(2)採用力の強化と情報発信、(3)定着支援の仕組み化、という3つのステップを着実に進めることです。
まずは職員アンケートで現状を把握し、小さな改善から始めてみましょう。職員が「この職場で働き続けたい」と思える環境を作ることが、最も確実な人材確保策です。明日からできる第一歩として、職員に「職場の良いところ・改善してほしいところ」を3つずつ聞いてみることをお勧めします。

