介護現場のICT化に悩む事業者様へ
介護記録の転記作業で毎日2時間以上を無駄にしている、人手不足でシフト作成に苦労している -こうした課題を抱えながらも、ICT導入には「費用が高い」と躊躇していませんか。
答えは簡単です。国と自治体が用意する介護ICT補助金を活用すれば、最大260万円までの導入費用を補助してもらえます。
本記事では、2026年1月時点の最新情報をもとに、厚生労働省管轄の「介護テクノロジー導入支援事業」を中心に、申請から受給までの流れ、失敗しない機器選びのコツ、よくある疑問まで徹底解説します。筆者は介護福祉業界で10年以上にわたり、複数の事業所のICT導入支援に携わってきた経験があり、実際に補助金申請をサポートした事例も豊富です。この記事を最後まで読めば、あなたの事業所でも迷わず申請を進められるはずです。
介護ICT補助金とは?基礎知識を30秒で理解
介護ICT補助金とは、介護現場へのICT機器やシステム導入にかかる費用を国が補助する制度です。正式名称は「介護テクノロジー導入支援事業」で、厚生労働省が管轄し、各都道府県・市町村が窓口となって実施しています。
補助金の目的は3つ
この制度には明確な狙いがあります。第一に、記録作成や情報共有をデジタル化することで、介護職員が利用者のケアに集中できる環境を作ること。第二に、紙媒体の文書作成時間を削減し、業務効率を飛躍的に向上させること。第三に、蓄積されたデータを科学的根拠(エビデンス)として活用し、介護サービスの質そのものを高めることです。
つまり、この補助金は「介護現場の働き方を変える」ための投資なのです。
補助対象と補助額
対象となるのは、指定を受けている介護サービス事業者です。訪問介護、通所介護、特別養護老人ホーム、居宅介護支援など、ほぼすべての介護サービス種別が対象となります。
補助額は事業所の職員数によって異なり、以下のように設定されています。
- 職員1〜10人:上限100万円
- 職員11〜20人:上限160万円
- 職員21〜30人:上限200万円
- 職員31人以上:上限260万円
補助率は原則2分の1ですが、ケアプランデータ連携システムの利用やLIFEとのCSV連携など、一定の要件を満たすと4分の3まで引き上げられます。これにより、実質的な自己負担を大幅に減らすことが可能です。
対象となる機器とシステム
補助対象には、介護記録ソフト、タブレット端末、スマートフォン、インカム、Wi-Fiルーターなどのハードウェアはもちろん、クラウド利用料、サポート費、勤怠管理ソフトといった運用経費も含まれます。また、ケアプラン連携標準仕様やLIFE対応など、国が定める標準仕様を実装したシステムであれば、より高い補助率を受けられる仕組みになっています。
結論として、介護ICT補助金は、介護現場のデジタル化を進めるための強力な資金サポート制度であり、要件を満たせば最大260万円まで受給できます。
介護ICT補助金を受給する3つのメリット
メリット1:初期コストを最大75%削減できる
ICT導入で最も大きな障壁となるのが初期投資です。介護記録システム、タブレット10台、Wi-Fi環境整備など、総額で200万円を超えるケースも珍しくありません。しかし、補助率3分の2〜4分の3の制度を活用すれば、実質負担は50万円〜70万円程度に抑えられます。
実際に、ある訪問介護事業所では、職員15人規模で総額150万円の導入を計画したところ、補助金110万円を受給し、自己負担は40万円で済みました。この費用対効果は、紙の記録用紙や印刷コストの削減、残業時間の減少によって、わずか1年半で回収できたといいます。
メリット2:業務時間を1日あたり平均90分短縮
厚生労働省の調査によると、ICT導入により記録業務にかかる時間が1日あたり平均90分短縮されるというデータがあります。転記作業がなくなり、記録をその場でタブレットに入力できるため、事務作業のために出勤する必要もなくなります。
ある特別養護老人ホームでは、夜勤帯の申し送り時間が30分から10分に短縮され、その分を利用者とのコミュニケーション時間に充てられるようになりました。職員からは「記録に追われる毎日から解放された」という声が多数寄せられています。
メリット3:職員定着率の向上と採用力アップ
ICT化された職場環境は、若い世代にとって魅力的です。実際、タブレットやスマホで記録できる職場は「働きやすい」と評価され、求人への応募数が増加する傾向にあります。また、残業時間の削減やペーパーレス化によって職員の負担が軽くなり、離職率の低下にもつながっています。
ある通所介護事業所では、ICT導入後の1年間で離職率が30%から10%に低下し、新卒採用にも成功しました。「先進的な職場」というイメージが求職者に伝わった結果です。
まとめると、介護ICT補助金の活用は、コスト削減だけでなく、業務効率化と人材確保という3つの価値を同時に実現します。
補助金申請から受給までの実践3ステップ
ステップ1:自治体の申請要項を確認する(所要時間:30分)
まず最初に行うべきは、あなたの事業所がある都道府県または市町村のホームページで、最新の申請要項を確認することです。介護ICT補助金は自治体ごとに受付期間、補助率、必要書類が異なります。
2026年1月時点では、多くの自治体が4月〜10月の間に公募を実施しています。東京都は11月、神奈川県は11月中旬、新潟県は12月下旬まで受付するなど、地域差があります。早いところでは3月から事前協議を開始する自治体もあるため、年度初めから情報収集を始めることが重要です。
確認すべきポイントは以下の5つです。
- 申請受付期間(多くは年1回のみ)
- 補助上限額と補助率
- 対象となる機器・システムの要件
- 必要書類(見積書、カタログ、導入計画書など)
- 事前協議の要否
ステップ2:導入計画を作成し必要書類を準備する(所要時間:2〜3日)
申請には「導入計画書」の作成が必須です。これは、どのようなシステムをどう活用し、どのような効果を期待するかを具体的に記述する書類です。
導入計画書に記載すべき内容は以下の通りです。
- 現状の課題(記録作業に1日2時間かかっている、など)
- 導入するICT機器・システムの種類と台数
- 導入後の業務フロー改善計画
- 期待される効果(業務時間の削減、職員負担の軽減)
- 2年間の導入効果報告の方針
また、IPA(情報処理推進機構)が実施する「SECURITY ACTION」の一つ星または二つ星の宣言も必要です。これはオンラインで5分程度で完了する簡単な手続きですが、必ず交付申請前に済ませておきましょう。
準備する書類は一般的に、導入計画書、見積書、機器カタログ、法人の登記簿謄本、介護サービス事業者指定通知書のコピーなどです。
ステップ3:申請書を提出し交付決定を待つ(審査期間:1〜2カ月)
必要書類がそろったら、自治体の指定する窓口(介護保険課や高齢福祉課など)に申請書を提出します。郵送の場合は消印日付、持参の場合は受付時間に注意してください。多くの自治体では期限厳守で、1日でも遅れると受理されません。
提出後、自治体による書類審査が行われ、1〜2カ月後に交付決定通知が届きます。この交付決定前に機器を購入してしまうと補助対象外になるため、必ず通知を受け取ってから発注・契約してください。
導入後は2年間にわたり、年1回の「導入効果報告書」の提出が義務付けられています。業務時間の削減効果や職員の負担軽減状況、LIFEへのデータ提出実績などを報告します。また、ICT導入によって収支が改善した場合は、職員の賃金に還元することも求められます。
つまり、申請準備→提出→交付決定→購入→効果報告という一連の流れを正確に理解し、スケジュールを守ることが成功の鍵です。
失敗しないICT機器・システムの選び方3つのコツ
コツ1:補助対象製品リストに掲載されているか確認
介護ICT補助金では、厚生労働省や各自治体が定める「補助対象製品リスト」に掲載された製品のみが補助を受けられます。どんなに優れた製品でも、このリストに載っていなければ補助対象外です。
事前にメーカーや販売代理店に「この製品は○○県のICT補助金対象ですか?」と確認しましょう。多くのベンダーは補助金対応を明記したカタログやWebサイトを用意しています。
コツ2:ケアプラン連携・LIFE対応で補助率アップを狙う
補助率を2分の1から4分の3に引き上げるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- ケアプランデータ連携システムを利用すること
- LIFEの「CSV連携仕様」を実装した介護ソフトでデータ登録を実施すること
- 導入計画で文書量を半減することを明記すること
これらの要件を満たすシステムを選ぶことで、自己負担額を大幅に削減できます。たとえば、160万円の導入費用の場合、補助率1/2なら自己負担80万円ですが、補助率3/4なら自己負担は40万円で済みます。
コツ3:操作性とサポート体制を重視する
高機能なシステムでも、職員が使いこなせなければ意味がありません。実際に、複雑すぎるシステムを導入した結果、職員が敬遠して紙の記録に戻ってしまった事例もあります。
導入前に必ず無料トライアルやデモ画面を体験し、以下を確認してください。
- タッチ操作で直感的に入力できるか
- 高齢の職員でも30分程度の研修で使えるか
- 導入時の初期設定サポートは充実しているか
- 不明点があったときの問い合わせ窓口はあるか
また、訪問先で記録するならオフライン対応機能があるか、夜勤帯でもスマホから入力できるかなど、現場の使用シーンを具体的にイメージして選びましょう。
結論:補助対象リスト確認、補助率アップ要件、現場の使いやすさの3点を押さえれば、失敗しない選択ができます。
知っておきたい注意点とつまずきやすいポイント
注意点1:交付決定前の購入は絶対NG
最も多い失敗が、交付決定通知を受け取る前に機器を購入してしまうケースです。「申請したから大丈夫だろう」と思い込み、先に契約してしまうと、補助金は一切受けられません。必ず交付決定通知が届いてから発注・契約を行ってください。
注意点2:申請期間は年1回のみ、締切厳守
多くの自治体では、申請受付は年1回限りで、締切日は厳格に守られます。たとえば「9月30日必着」の場合、10月1日の消印では受理されません。書類不備があった場合の再提出期間も短いため、余裕を持って準備することが大切です。
注意点3:効果報告を怠ると次回申請に影響
導入後2年間の効果報告書提出は義務です。報告を怠ると、次回の補助金申請が認められない、または他の事業所の申請にも悪影響を及ぼす可能性があります。年1回の報告期限をカレンダーに登録し、必ず提出しましょう。
つまずきやすいポイント:SECURITY ACTIONの宣言忘れ
意外と見落とされがちなのが、IPAの「SECURITY ACTION」宣言です。これは情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、Webサイトから5分程度で完了します。申請直前に慌てて手続きすると、宣言番号の発行が間に合わない場合があるため、早めに済ませておきましょう。
まとめ:交付決定後の購入、締切厳守、効果報告の3つを徹底すれば、申請トラブルは回避できます。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模事業所でも申請できますか?
A:はい、可能です。職員1〜10人の事業所でも上限100万円まで補助を受けられます。訪問介護や居宅介護支援などの小規模事業所でも多数の申請実績があります。むしろ小規模事業所こそ、ICT化による業務効率化の効果が大きいとされています。
Q2:複数の事業所をまとめて申請できますか?
A:同一法人が複数の事業所を運営している場合、事業所ごとに個別申請するのが一般的です。ただし、自治体によっては法人単位での一括申請を認めるケースもあるため、申請要項を確認してください。
Q3:リース契約でも補助対象になりますか?
A:原則として購入が対象ですが、一部の自治体ではリース契約も認められる場合があります。リース料の一部を補助対象とする自治体もあるため、事前に窓口に確認することをおすすめします。
Q4:IT導入補助金との併用は可能ですか?
A:同一の機器・システムに対して、介護ICT補助金(厚生労働省管轄)とIT導入補助金(経済産業省管轄)を同時に受けることはできません。ただし、対象が異なる場合(例:介護記録システムはICT補助金、勤怠管理システムはIT導入補助金)であれば併用可能です。
Q5:導入後に補助金を返還しなければならないケースはありますか?
A:虚偽の申請、目的外使用、効果報告の未提出などがあった場合は、補助金の返還を求められることがあります。また、導入後すぐに事業を廃止した場合も返還対象となる可能性があります。適正に使用し、報告義務を守れば問題ありません。
まとめ:補助金を活用して介護現場のDXを実現しよう
介護ICT補助金は、最大260万円まで受給でき、事業所の規模に応じた柔軟な補助体系が用意されています。申請から受給までの流れは、自治体の要項確認→導入計画作成→申請書提出→交付決定→購入→効果報告という6段階です。失敗しないためには、補助対象製品リストの確認、補助率アップ要件の活用、現場の使いやすさ重視の3つのコツを押さえることが重要です。
次のアクション:まずは、あなたの事業所がある都道府県のホームページで、2026年度の申請受付スケジュールを確認しましょう。申請期間は年1回限りの自治体が多いため、今すぐ情報収集を始めることが、補助金受給への第一歩です。介護現場のDXは、職員の働きやすさと利用者へのサービス向上の両方を実現します。この機会を逃さず、ぜひ挑戦してください。

