介護人材不足の危機は今まさに現実になっている
「求人を出しても応募がない」「職員が辞めてシフトが回らない」——そんな悩みを抱えていませんか。
2025年に必要な介護職員は約245万人ですが、現状では約32万人が不足すると推計されています。有効求人倍率は3.71倍と全業種平均の3倍以上で、介護業界の人手不足は待ったなしの状況です。
この記事では、厚生労働省の最新データに基づき、介護人材不足の実態と原因を解説。さらに、現場の事業者が明日から実践できる3ステップの具体的対策と、失敗しやすい落とし穴の回避法をお伝えします。
15年以上にわたり介護事業所の経営支援に携わってきた知見をもとに、費用対効果の高い方法だけを厳選しました。人材確保に悩む事業者の方は、ぜひ最後までお読みください。
2025年介護人材不足の深刻な実態|データで見る危機的状況
32万人不足という衝撃の数字
厚生労働省「第9期介護保険事業計画」によると、介護業界の人材不足は以下の規模に達しています。
- 2025年度の必要数: 約245万人
- 2019年度の在職数: 約211万人
- 不足人数: 約32万人(年間5.3万人ずつ増員が必要)
さらに、2040年度には約280万人の介護職員が必要となり、現状から約65万人の増員が求められています。団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年に向けて、人材不足は加速度的に深刻化する見込みです。
有効求人倍率3.71倍の意味
介護分野の有効求人倍率は3.71倍(2023年度)で、全業種平均1.16倍の約3.2倍です。これは「1人の求職者を約4事業所が奪い合う」状況を意味します。
一方で、離職率は14.3%と全業種平均(13.9%)とほぼ同水準まで改善。つまり「辞める人は減ったが、入ってくる人がもっと少ない」という構造的な問題が浮き彫りになっています。
2025年問題の本質|団塊世代の後期高齢化
2025年問題とは、1947〜1949年生まれの団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで生じる社会課題です。後期高齢者は2,179万人(全人口の約18%)に達し、要介護認定率が急上昇します。
この結果、介護サービスの需要が爆発的に増える一方で、少子化により働き手は減少。需要と供給のギャップが過去最大となるのが2025年なのです。
介護人材不足を加速させる5つの根本原因
原因1|少子高齢化による労働人口の構造的減少
日本全体の労働人口が減少する中、介護業界は他業種との人材獲得競争に直面しています。特に若年層(15〜39歳)の労働人口は年々減少しており、新卒採用の難易度は上がる一方です。
要介護者は増加する一方で、支える側の現役世代は減少。この構造は今後30年間変わらないため、「人が集まるのを待つ」戦略は通用しません。
原因2|給与水準の低さと社会的評価の問題
2023年の介護職の平均月収は約27.7万円で、全業種平均34.6万円より約7万円低い水準です。10年前(2013年)と比較すると約3万円上昇しましたが、他業種との格差は依然として大きいままです。
加えて「3K(きつい・汚い・危険)」「誰でもできる仕事」といった誤ったイメージが、介護職の社会的評価を下げています。実際には高度な専門知識と技術が必要な仕事であるにもかかわらず、正当に評価されていない現状があります。
原因3|身体的・精神的負担の大きさ
介護現場では、移乗介助や入浴介助など身体的負担の大きい業務が多く、腰痛などの職業病リスクが高まります。さらに夜勤や早朝勤務など不規則な勤務体系が、心身の疲労を蓄積させます。
公益財団法人介護労働安定センターの調査では、離職理由の第1位が「職場の人間関係」(34.3%)、第2位が「運営方針への不満」(26.3%)でした。人間関係のストレスやパワハラなどの精神的負担が、離職を促進しています。
原因4|キャリアパスの不明確さ
「介護職として10年後、どうなっているのか」が見えにくいことも、人材確保を困難にしています。資格取得支援制度や昇給システムが不透明な事業所では、職員は将来への不安を抱き、他業種へ転職してしまいます。
明確なキャリアステップと給与テーブルを示せる事業所ほど、人材の定着率が高い傾向があります。
原因5|デジタル化の遅れによる非効率業務
介護業界では、手書きの記録やFAXでのやり取りなど、アナログな業務が残っています。記録作業に時間を取られ、利用者と向き合う時間が減少。情報共有の遅れや伝達ミスも発生しやすく、職員の負担を増大させています。
IT化が進んでいない事業所では、業務効率が低く、残業時間も増加。結果として職員の不満が高まり、離職につながる悪循環が生まれています。
現場が今すぐ始める介護人材確保3ステップ|実践ガイド
ステップ1|職場環境の可視化と改善(所要期間1〜3ヶ月)
まず取り組むべきこと: 現状の課題を数値化し、優先順位をつけることです。
具体的な手順:
- 職員アンケート実施(無記名、10〜15問、所要時間10分程度)
- 離職理由の分析(過去2年間のデータ抽出)
- 業務時間調査(1週間、主要業務の所要時間を記録)
- 改善項目のリスト化(費用・効果・実現難易度で評価)
- 優先順位トップ3を決定し、実行計画を策定
つまずきポイント: 「完璧な計画」を作ろうとして動けなくなること。まず小さく始め、改善しながら進めることが成功の鍵です。
費用対効果: 初期費用ほぼゼロ。職員の本音を引き出せれば、的確な対策が打てます。
ステップ2|ITツール導入による業務効率化(所要期間2〜6ヶ月)
次に取り組むべきこと: ケア記録のデジタル化と情報共有システムの構築です。
具体的な手順:
- 業務の中で「最も時間がかかっている作業」を特定
- 介護記録ソフト・見守りセンサーなど、該当業務を効率化できるツールを3つ選定
- 無料トライアルやデモを活用して現場で試用(2週間程度)
- 職員からのフィードバック収集と評価
- 最も効果が高かったツールを本格導入
つまずきポイント: 「高機能なシステム」を選んで、現場が使いこなせないこと。シンプルで直感的に操作できるツールを優先しましょう。
費用対効果: 月額3万〜10万円程度の投資で、記録作業時間を30〜50%削減可能。職員1人あたり月5〜10時間の業務削減効果があります。
ステップ3|処遇改善と採用戦略の見直し(所要期間3〜12ヶ月)
最後に取り組むべきこと: 給与体系の透明化と多様な採用チャネルの開拓です。
具体的な手順:
- 処遇改善加算の取得状況確認(未取得なら申請準備)
- 給与テーブルとキャリアパスの明文化(入社1年目、3年目、5年目の給与例を提示)
- 採用サイトやSNSでの情報発信(職場の雰囲気、1日の流れを動画で紹介)
- リファラル採用制度の導入(紹介謝礼3〜5万円)
- 職場体験会の定期開催(月1回、半日体験)
つまずきポイント: 「給与を上げればすぐ人が来る」と考えること。給与改善と並行して、職場の魅力を言語化し発信することが不可欠です。
費用対効果: 処遇改善加算で月1〜3万円の給与アップが可能。リファラル採用は人材紹介会社(年収の20〜30%)より大幅に低コストです。
介護人材確保で失敗する3つのパターンと回避策
失敗1|「とりあえずIT導入」で現場が混乱
よくある事例: 経営層が高機能システムを導入したものの、操作が複雑で現場が使わず、結局手書き記録に戻ってしまう。
回避策: 導入前に必ず現場職員を巻き込み、「何を効率化したいか」を明確にすること。トライアル期間を設け、現場の声を反映してから本格導入を決定しましょう。
失敗2|給与だけ上げて他の改善をしない
よくある事例: 処遇改善加算で給与を上げたが、人間関係や業務負担は改善せず、結局職員が辞めていく。
回避策: 給与改善と並行して、職場環境(休憩室の整備、シフトの柔軟化など)やコミュニケーション改善(定期面談、感謝の言葉の習慣化)にも投資すること。
失敗3|「人が来るまで待つ」受け身の姿勢
よくある事例: 求人サイトに掲載するだけで、積極的な発信や採用活動をせず、応募が来ないと嘆く。
回避策: SNS、職場見学会、地域イベントへの参加など、能動的に情報発信と接点づくりを行うこと。「選ばれる事業所」になるための努力が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 小規模事業所でもIT化は必要ですか?
A: 規模に関わらず、記録のデジタル化は業務効率化に有効です。小規模事業所向けの低価格ツール(月額1〜3万円)も増えており、費用対効果は高いといえます。
Q2: 外国人材の受け入れは効果的ですか?
A: 特定技能や技能実習制度を活用すれば、人材確保の選択肢が広がります。ただし、日本語教育や文化理解のサポート体制が必須です。受け入れ実績のある登録支援機関と連携すると安心です。
Q3: 処遇改善加算の申請は難しいですか?
A: 初めての申請は書類準備に時間がかかりますが、社会保険労務士や介護コンサルタントに依頼すれば、スムーズに進められます。加算取得後の給与アップ効果は大きいため、未取得なら最優先で取り組むべきです。
Q4: 人材紹介会社を使うべきですか?
A: 緊急で人材が必要な場合は有効ですが、費用(年収の20〜30%)が高額です。中長期的には、リファラル採用や自社採用サイトの強化など、自前の採用力を高める方が持続可能です。
Q5: 職員の定着率を上げる最も効果的な方法は?
A: 定期的な1on1面談(月1回、15分程度)で職員の悩みや希望を聞き、小さな改善を積み重ねることです。「声を聞いてもらえている」という実感が、定着率向上につながります。
まとめ|人材確保は「待ち」ではなく「攻め」の時代
介護人材不足は、2025年で32万人、2040年で65万人と拡大し続けます。有効求人倍率3.71倍の厳しい環境では、「良い人が応募してくるのを待つ」戦略は通用しません。
今すぐ始めるべき3つのステップは以下の通りです:
- 職場環境の可視化と改善(費用ゼロ、1〜3ヶ月)
- ITツール導入による業務効率化(月額3〜10万円、2〜6ヶ月)
- 処遇改善と採用戦略の見直し(加算活用で実質負担減、3〜12ヶ月)
重要なのは、完璧を目指さず「小さく始めて改善を重ねる」こと。職員の声を聞き、優先順位をつけ、1つずつ確実に実行していきましょう。
人材確保に成功している事業所は、給与だけでなく「働きやすさ」「成長できる環境」「感謝される文化」を整えています。まずは職場環境の現状把握から、今日の一歩を踏み出してください。

