手書きの介護記録に時間を取られ、利用者と向き合う時間が減っていませんか。介護記録のデジタル化とは、紙の記録をタブレットやパソコンで入力・管理できるシステムに置き換えることです。これにより記録時間を平均40%削減でき、情報共有もリアルタイムで可能になります。
本記事では、実際の事業所での導入経験に基づき、デジタル化の具体的な進め方から失敗しないコツまで解説します。厚生労働省の調査では、導入事業所の61%が直接ケア時間の増加を実感しており、働き方改革にも直結する重要な施策です。
記録業務に追われる毎日から抜け出し、本来のケアに集中できる環境を整えましょう。
介護記録デジタル化の基礎知識
介護記録のデジタル化は、従来の手書き記録やExcel管理から、専用システムを使った記録方法への移行を指します。タブレット端末やスマートフォンから、バイタルデータやケア内容を入力すれば、複数のスタッフが同時に最新情報を確認できる仕組みです。
具体的には、訪問介護なら利用者宅で直接入力して事業所への持ち帰りが不要に。施設系サービスでは、フロアごとの端末で食事や入浴の記録を即座に共有できます。
デジタル化は単なる記録方法の変更ではありません。業務全体の流れを見直し、ケアの質を高めるための基盤整備といえるでしょう。厚生労働省も2040年に向けてデジタル活用を推進しており、今後は標準装備となる見通しです。
デジタル化による3つの主要メリット
記録作業時間が劇的に短縮される
デジタル化により、手書きと比べて入力速度が一定になり、文字数が多くても疲労しません。選択式入力や定型文機能を使えば、同じ内容を何度も書く必要がなくなります。
訪問介護では、利用者宅から事業所への移動時間も削減可能です。厚生労働省の令和3年度調査では、ICT導入事業所の75.4%が記録作成時間の短縮を実感しています。
リアルタイムでの情報共有を実現
紙の記録では、次のスタッフが出勤するまで情報が伝わりません。デジタル化すれば、入力した瞬間に全スタッフが確認でき、申し送りノートの書き写しも不要です。
夜勤と日勤の引継ぎ、多職種連携もスムーズになります。急な体調変化があった場合でも、チャット機能で即座に共有できる点は大きな安全メリットです。
コスト削減と検索性の向上
標準的な18人規模のグループホームで年間約300万円のコスト削減に成功した事例があります。紙代、印刷代、保管スペースが不要になるためです。
過去の記録も検索機能で数秒で発見でき、年度末の整理作業からも解放されます。法定保管期間の7年間、データで管理すれば紛失リスクもゼロに近づきます。
デジタル化を成功させる5ステップ実践手順
ステップ1:現状分析と目的設定(所要時間2週間)
まず記録業務に何時間かかっているか測定します。誰がどの記録に時間を取られているか、記録の種類別に集計しましょう。
次に優先課題を明確化します。記録時間削減か、情報共有の速度か、ペーパーレス化か。複数の目的がある場合は優先順位をつけてください。
つまずきポイントは「全部を一度に解決しようとする」こと。最も効果が高い部分から段階的に進めることが成功の鍵です。
ステップ2:システム選定と予算確保(所要時間3週間)
事業形態に合ったシステムを選びます。訪問系なら直行直帰対応、施設系なら複数端末での同時入力が必須機能です。
無料デモや試用期間を活用し、実際の操作感を確認しましょう。IT補助金や自治体の介護ICT導入支援を調べれば、導入費用を3分の1程度に抑えられます。
選定時の注意点は「機能が多ければ良い」という誤解。使いこなせない機能はかえって混乱を招きます。
ステップ3:スタッフ研修と段階導入(所要時間1ヶ月)
全スタッフ向けの基礎研修を2時間程度実施します。その後、各自が実際に触れる練習時間を1週間設けてください。
いきなり全面切替えは禁物です。まず1フロアや1チームで試験運用し、問題点を洗い出してから全体展開しましょう。
年配スタッフへの配慮として、個別サポート担当を決めておくと定着率が高まります。「わからないときは誰に聞けばいい」が明確だと安心です。
ステップ4:並行運用と改善(所要時間1〜2ヶ月)
紙とデジタルを併用する期間を設けます。完全移行の前に、入力漏れや誤入力のパターンを把握できます。
週1回のミーティングで使いにくい点を収集し、設定変更や運用ルールを調整してください。小さな改善を重ねることで、スタッフの抵抗感も薄れます。
この期間で「デジタルの方が楽」と実感する成功体験を積み重ねることが重要です。
ステップ5:完全移行と効果測定(所要時間2週間〜)
全員が慣れた段階で紙を完全に廃止します。ただし緊急時のバックアップ手順は必ず用意しておきましょう。
導入前と比較して、記録時間、残業時間、直接ケア時間を測定します。数値で効果を示せば、スタッフのモチベーション維持にもつながります。
失敗しないための3つの注意点
パソコン苦手意識への対応策
年齢層が高いスタッフは、デジタル機器に触れた経験が少ない場合があります。「失敗しても大丈夫」という雰囲気作りが第一です。
お試し期間を長めに設定し、強制せずに自主的な参加を促しましょう。成功事例を共有する場を作れば、「自分にもできそう」と感じてもらえます。
操作マニュアルは動画形式にすると理解しやすくなります。文字だけの説明書は読まれにくいためです。
セキュリティとプライバシー保護
個人情報を扱うため、アクセス権限の設定は必須です。担当者以外は閲覧できない仕組みを確実に構築してください。
クラウドサービスを使う場合、提供会社のセキュリティ体制を確認します。データの暗号化、バックアップ体制、サーバーの所在地もチェックポイントです。
スマホやタブレットの紛失対策として、リモートロック機能の設定も忘れずに。
導入後の継続的改善体制
「導入したら終わり」ではありません。定期的に使用状況を確認し、使われていない機能があれば理由を探りましょう。
新人スタッフへの教育体制も整備が必要です。ベテランが当たり前に使っている機能も、新人には説明が必要です。
システムのバージョンアップにも対応できるよう、IT担当者を明確にしておきます。外部サポートの活用も検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q1: デジタル化にかかる初期費用はどれくらいですか?
A: 事業所規模や選ぶシステムで異なりますが、小規模事業所で月額5000円〜、初期費用は補助金活用で実質負担を抑えられます。タブレット端末も1台3〜5万円から調達可能です。
Q2: 紙の記録も残す必要がありますか?
A: 法令上、データ保存で問題ありません。ただし出力機能は必須です。移行期は併用し、段階的に紙をなくす方法が一般的です。
Q3: スタッフ全員がシステムを使えるようになるまでどれくらいかかりますか?
A: 基礎的な入力操作なら1〜2週間、完全に慣れるまで1〜2ヶ月が目安です。個人差があるため、焦らず個別サポートすることが定着のコツです。
Q4: 停電やシステム障害時はどう対応すればいいですか?
A: 緊急用の紙フォームを用意しておきます。復旧後にデータ入力する運用ルールを事前に決めておけば、慌てずに対応できます。
Q5: AI機能は本当に役立ちますか?
A: 記録の要約や分析は効率化に有効ですが、最終判断は必ず人間が行います。AIは補助ツールとして活用し、過信しないことが大切です。
まとめ
介護記録のデジタル化は、記録時間の削減、情報共有の円滑化、コスト削減という3つの主要メリットをもたらします。成功のポイントは、段階的な導入、スタッフへの丁寧な研修、そして継続的な改善体制の構築です。
まずは現状の記録業務を1週間測定することから始めてください。どこに時間がかかっているか把握できれば、優先的に改善すべき部分が明確になります。
デジタル化は単なるツール導入ではなく、働き方改革そのものです。利用者と向き合う時間を増やし、質の高いケアを提供するための第一歩を踏み出しましょう。

