ICT導入支援事業補助金は、介護現場のICT化にかかる費用を国と都道府県が2分の1~3分の4補助する制度です。 厚生労働省が管轄し、地域医療介護総合確保基金を財源としており、毎年度全国で実施されています。本記事では、介護事業所が補助金を活用するための具体的な申請ステップ、対象経費、各都道府県の受付状況を実例で解説します。補助金を活用すれば、ソフトウェアやタブレット導入にかかる自己負担を大幅に削減できますので、ぜひ参考にしてください。
ICT導入支援事業補助金とは
ICT導入支援事業補助金は、介護事業所がICT機器やソフトウェアを導入する際にかかる費用の一部を国と都道府県が補助する制度です。 令和5年度までは「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が別々で実施されていましたが、令和6年度より「介護テクノロジー導入支援事業」として一本化されました。
この制度の目的は、介護現場の業務効率化を通じて職員の負担を軽減し、働きやすい職場環境を実現することです。介護業界の深刻な人材不足を背景に、政府が積極的に推進しています。
補助金は「地域医療介護総合確保基金」を財源とし、各都道府県が実施主体となります。補助要件や申請方法は都道府県により異なります。
補助の対象となる経費と補助率
対象経費の種類
補助対象となる主な経費は以下の通りです。
介護ソフト関連: 介護記録システム、請求ソフト、ケアプランデータ連携システムに対応した介護ソフトの購入費・リース代。標準仕様(ケアプラン連携標準仕様など)に対応していることが要件となります。
デバイス: タブレット端末、スマートフォン、パソコンなど介護ソフト利用に必要な端末。職員間のコミュニケーション向上用インカムも対象です。
ネットワーク環境整備: Wi-Fi環境構築、有線LAN配線工事、モデム・ルーター、アクセスポイントなど。ICTを利用するためのネットワーク整備費用です。
介護ロボット: 移乗支援、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援などの重点分野に該当するロボット。令和7年度より機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症ケア支援の3分野が新たに追加されました。
業務改善支援: 外部のコンサルタントやIT専門家による導入支援、研修実施にかかる経費。事業改善計画の策定支援も対象です。
補助率と補助額
補助率: 実支出額の2分の1~3分の4(都道府県が設定)
より高い補助率(3分の4)は、ケアプランデータ連携システムの導入など特定の要件を満たす場合に適用されます。
補助額上限: 職員数に応じた基準額(例:小規模事業所48万~80万円)。自治体の基準額表で確認が必須です。
補助対象外となる経費と注意点
補助対象外の経費
以下の経費は補助対象となりません。
既に導入済みの機器: 補助決定を受ける前に購入した機器は対象外。交付決定通知を受けた後に購入した分のみが補助対象です。
二重補助: 他の補助金(IT導入補助金など)で既に補助を受けている機器や経費は対象外です。複数の補助金の重複利用はできません。
通信費・保険料・メンテナンス費用: 月々の通信費や端末保険料、ソフトウェア保守料の継続費用は対象外となります。
汎用品や私物: 業務と無関係な用途に使用される可能性がある汎用品や、スタッフの私物として使用される端末は認められません。
よくある失敗事例と対策
失敗事例1:導入計画書を作成せずに申請してしまう ー 補助金申請時には「業務改善計画書」の作成・提出が必須です。事前に自施設の課題を整理し、導入によってどのように改善されるかを明確に記述しましょう。
対策:申請の3ヶ月前から現場スタッフへのヒアリングを開始し、具体的な課題と期待効果を数値化して計画書に反映させることが重要です。
失敗事例2:申請期限を逃す ー 各都道府県の申請期限は年度によって異なり、通常5月~7月の申請受付です。締切を過ぎると翌年度以降の申請となってしまいます。
対策:1月中に自治体の補助金受付時期を確認し、スケジュール管理表を作成して期限管理を徹底してください。
失敗事例3:補助対象外経費を申請してしまう ー 申請時に補助対象の判断を間違えると、交付決定後に減額またはキャンセルされるリスクがあります。
対策:申請前に必ず自治体の交付要綱を精読し、疑問点は事前に相談窓口に問い合わせることをお勧めします。
ICT導入支援事業補助金の申請手続き(4つのステップ)
ステップ1:基礎情報の収集と事前エントリー(1〜2ヶ月前)
難易度:★★☆ 所要時間:10〜20時間
まず、自施設の所在する都道府県のホームページで、当年度の補助金要項を確認します。申請期限、対象経費、提出書類、補助率などが記載されています。
次に、自治体によっては「事前エントリー制」を採用しており、申請の1〜2ヶ月前に事前登録が必要です。予算を超える応募があった場合、この事前エントリーのタイミングで抽選が行われ、申請対象者が絞り込まれます。
つまずきポイント: 自治体のWebシステムへのアカウント登録でエラーが発生し、サポートが遅いことがあります。早めの登録で問題を解決する時間を確保しましょう。
ステップ2:業務改善計画書の策定(1ヶ月前~申請時)
難易度:★★★ 所要時間:20〜30時間
計画書には現状課題、導入ソリューション、改善効果を記述します。
現状課題: スタッフヒアリングで「記録作業に月30時間かかっている」など定量化します。
導入ソリューション: タブレット導入で「月10時間削減可能」など具体的に説明。
改善効果: 3年の削減時間、残業削減、サービス品質向上を数値目標で設定。抽象的な計画では審査落ちのリスクが高まります。
ステップ3:交付申請書類の提出と交付決定(申請期間中)
難易度:★★☆ 所要時間:15〜20時間
申請期間中(通常5月〜7月)に、以下の書類を自治体に提出します。
交付申請書:指定様式で記入。事業所情報、導入機器内容、補助対象経費の内訳を記載。
見積書:導入予定機器・ソフトの詳細見積書。複数ベンダーの見積を比較検討した旨も記載すると評価されやすい。
業務改善計画書:前ステップで作成したもの。
法人の確認書類:法人の登記簿謄本や事業所指定通知書など。
提出方法は自治体によって異なり、紙での郵送、Webシステムでのアップロード、オンライン申請などです。期限厳守が重要です。
予算を上回る応募があった場合、都道府県の基準(初回申請事業所の優先など)に基づいて選考が行われます。交付決定通知書が届くのは申請後、通常1〜3ヶ月後です。
つまずきポイント: 交付決定前に契約・発注した機器は補助対象外となり、高額な自己負担が発生します。決定通知を受けてから発注手続きを開始しましょう。
ステップ4:機器導入と実績報告(決定後〜年度末)
難易度:★★☆ 所要時間:10〜15時間
交付決定通知を受けた後、機器の購入・導入を進めます。年度末までに導入と支払いを完了させることが要件です。
導入後、実績報告書を自治体に提出します。この報告書には、実際に導入した機器の明細、支払った金額(請求書・領収書)、導入による効果(削減時間など)を記載します。
実績報告書が受理されると、補助対象経費の審査が行われ、確定した補助額が通知されます。その後、補助金が交付されるまでは通常1ヶ月程度です。
さらに、補助金交付を受けた翌年度から3年間は、導入による効果を都道府県と厚生労働省に報告する義務があります。削減された業務時間、職員の離職率低下、利用者満足度の変化などをまとめて報告します。
つまずきポイント: 領収書や請求書の紛失、支払い日の誤記など細かな誤りで返納を求められるケースがあります。書類の保管は厳重に行いましょう。
2026年度の補助金受付情報
補助金の申請期限は都道府県により異なります。一般的には4月~8月が申請期間で、自治体によって事前エントリーが必須となる場合があります。
重要: 2026年度も「ケアプランデータ連携システム利用」「LIFE対応」が補助要件となる自治体が増えています。導入ソフトの対応状況を事前確認してから申請してください。
よくある質問(FAQ)
Q1:前年度に補助金を受けている場合、今年度も申請できますか?
A: 自治体によって異なります。過去5年間に補助を受けていない事業所を優先する自治体がある一方、毎年申請可能な自治体もあります。事前に要項で確認が必要です。既導入機器の追加購入は対象外となる場合がほとんどです。
Q2:導入ソフトはどのように選定すればよいですか?
A: 「ケアプランデータ連携標準仕様対応」「LIFE対応」「CSV出力機能」など補助要件を満たしているかを第一条件に選定してください。複数ベンダーのデモを受け、操作性と現場スタッフの習熟度を考慮した選択が成功の鍵です。
Q3:補助金を受ける場合、その後3年間の効果報告は何をすればよいですか?
A: 導入後の業務時間削減、職員残業削減時間、職員満足度など、計画書で設定した目標値に対する実績を報告します。報告形式は自治体により異なるため、交付決定時に確認してください。
Q4:小規模事業所(職員5名以下)でも申請対象ですか?
A: はい、規模を問わずすべての介護事業所が対象です。職員数が少ないため「投資対効果が高い」と評価され、採択されやすい傾向があります。
まとめ
ICT導入支援事業補助金は、実費の2分の1~3分の4を補助する強力な制度です。正しい手続きと計画的なアプローチにより、介護事業所の自己負担を大幅に削減できます。
成功に向けた3つの重要ポイント:(1)申請期限を早めに確認し、スケジュール管理を厳重に行う、(2)現場スタッフへのヒアリングに基づいた説得力のある業務改善計画書を作成する、(3)補助対象経費と対象外経費の判断を正確に行い、事前に自治体に相談する。
2026年度の申請を検討している介護事業所は、今月中に自治体のホームページをチェックし、事前エントリーの時期や提出書類を確認することから始めましょう。補助金を活用すれば、限られた予算の中でも質の高いICT導入が実現できます。

