月末の記録業務はタブレット1台で劇的に変わります
毎日の電話対応で記録が追いつかない、夜遅くまで転記作業、月末は請求業務で残業続き。そんな日々に疲弊していませんか。
ケアマネのICT活用とは、タブレットや介護ソフト、チャットツールを使って記録・情報共有・請求業務を電子化し、業務時間を大幅に削減する手法です。訪問先での即時記録、多職種とのリアルタイム連携、自動請求処理により月40時間以上の業務時間短縮が実現できます。
本記事では、居宅介護支援事業所で8年間ICT化を推進してきた経験をもとに、具体的な導入手順から活用のコツまで解説します。令和6年度介護報酬改定により担当件数上限が45件から49件に拡大され、ICT活用の重要性はさらに高まっています。
筆者は過去5つの事業所でICT導入を支援し、平均して記録業務を60%削減してきました。
この記事を読めば、あなたも利用者と向き合う時間を増やし、本来のケアマネ業務に集中できるようになります。
ケアマネ業務におけるICT活用とは
ICT活用とは、情報通信技術を使って業務効率化を図る取り組みです。ケアマネ業務では、紙とペン、電話やFAXに頼っていた業務をデジタル化します。
具体的には3つの領域で活用されます。第一に記録業務の電子化です。訪問先でタブレットに直接入力し、事業所に戻ってから転記する手間をなくします。第二に情報共有のデジタル化です。チャットツールで多職種と瞬時に連携し、電話の伝言ゲームを解消します。第三に請求業務の自動化です。記録データから自動的に実績票や請求書を作成します。
令和6年度介護報酬改定では、ICT活用が制度として評価されるようになりました。ケアプランデータ連携システムの利用と事務職員配置により、担当件数の上限が44件から49件に引き上げられます。これは国がICT化を推進している証拠です。
ある居宅介護支援事業所では、タブレット導入により記録作業時間が1日2時間から45分に短縮されました。月間換算で約30時間、年間360時間もの時間が生まれています。この時間を利用者訪問や多職種連携に充てられるのです。
ICT活用は単なる効率化ではありません。本来注力すべき支援の時間を増やすことで、ケアマネジメントの質を向上させる手段なのです。
ケアマネがICT活用で得られる4つのメリット
記録業務の劇的な時間短縮
最大のメリットは、記録にかかる時間が半分以下になることです。手書き記録をパソコンに転記する作業が完全になくなります。
訪問先でタブレットに入力すれば、その場で記録が完了します。音声入力機能を使えば、運転中に支援経過を録音し、自動でテキスト化することも可能です。
ある一人ケアマネ事業所では、利用者49人を担当しながら記録時間を1日1時間以内に抑えています。以前は10人担当で手いっぱいだったのが、ICT活用で約5倍の生産性を実現しました。
請求業務も大幅に効率化されます。記録データから自動的にサービス提供票や給付管理票が作成されるため、月末の作業時間が3分の1になります。返戻の不安も軽減され、精神的負担も減少します。
多職種連携の質と速度向上
情報共有がリアルタイムになります。チャットツールを使えば、一度のメッセージで関係者全員に情報を伝えられます。
電話やFAXでは、相手が不在だと何度もかけ直す必要がありました。チャットなら24時間いつでも送信でき、相手の都合の良い時に確認してもらえます。
デイサービス事業所との連携では、利用者の体調変化をチャットで即座に共有できます。写真や動画も添付できるため、状況がより正確に伝わります。情報伝達のミスが大幅に減少しました。
サービス担当者会議もオンラインで開催できます。多忙な医療職や仕事をしている家族も参加しやすくなり、会議の質が向上します。移動時間も不要なため、1日に複数の会議を効率的に開催できます。
担当件数の拡大と収入増加
ICT活用により、担当件数の上限が拡大されます。令和6年度改定では、要件を満たせば49件まで担当可能になりました。
従来は40件を超えると報酬が減額される逓減制がありました。ICT導入により45件、さらに49件まで通常報酬で受けられるため、事業所の収入が増加します。
実際の事例では、接骨院を経営しながらケアマネ業務を続ける方が49人を担当しています。ICT化により業務時間が削減されたため、複数の役割を両立できるようになったのです。
収入増加は事業所の経営安定につながります。事務職員の雇用や研修参加の費用を確保でき、さらなる質の向上が可能になります。
ケアマネジメントの質向上
データに基づいたケアプランが作成できます。AI機能を活用すれば、過去の成功事例から最適なサービスを提案してくれます。
LIFEへのデータ提出も簡単になります。科学的介護を推進し、エビデンスに基づいた支援ができるようになります。加算の算定要件も満たしやすくなります。
情報の見える化により、チーム全体で利用者を支えられます。訪問記録や連絡履歴がすべて電子データとして蓄積され、いつでも誰でも確認できます。急な欠勤時の引き継ぎもスムーズです。
職員の離職率も低下します。残業が減り、煩雑な作業から解放されることで、仕事のやりがいを感じやすくなります。働きやすい環境は人材定着につながります。
ケアマネICT活用の実践5ステップ
ステップ1:現状の業務課題を洗い出す(所要時間2時間、難易度★☆☆)
まず自分の業務を1週間記録します。記録作業、電話対応、訪問、請求業務など、何にどれだけ時間を使っているか可視化しましょう。
時間がかかっている業務トップ3を特定します。多くの場合、記録の転記作業、月末の請求業務、他事業所との調整が上位に入ります。
つまずきポイントは、課題を抽象的にとらえてしまうことです。「忙しい」ではなく「訪問記録の転記に1日1.5時間かかる」と具体的に数値化しましょう。
同僚や他の職種にもヒアリングします。「FAXの実績票を手入力するのが大変」「電話がつながらず何度もかけ直す」など、現場の声を集めます。
これらの課題がICT導入の目標になります。「記録時間を半分にする」「請求業務を3日から1日に短縮する」と明確な数値目標を設定しましょう。
ステップ2:導入するツールを選定する(所要時間5時間、難易度★★☆)
課題に合わせて必要なツールを決定します。基本は介護ソフト、タブレット端末、チャットツールの3つです。
介護ソフト選びでは、ケアプランデータ連携システム対応が必須です。他事業所との情報共有がスムーズになり、報酬改定の要件も満たせます。LIFE対応、音声入力機能、請求業務の自動化機能も確認しましょう。
タブレットは訪問先での記録入力に使います。画面サイズは10インチ程度が見やすく入力しやすいです。防水機能やバッテリー持続時間も重要な選定基準です。
チャットツールは無料アプリから始められます。グループチャット機能、ファイル共有機能、既読確認機能があれば十分です。医療・介護専用のツールもあり、セキュリティ対策が施されています。
つまずきポイントは、高機能すぎるツールを選ぶことです。最初は基本機能だけで十分。使いこなせてから機能を追加しましょう。多くのソフトで無料体験期間があるため、実際に試してから決定できます。
ステップ3:補助金を活用して導入する(所要時間8時間、難易度★★★)
ICT導入支援事業の補助金を申請します。都道府県により異なりますが、最大100万円から260万円の補助が受けられます。
申請要件を確認しましょう。記録・情報共有・請求が一気通貫であること、ケアプランデータ連携システム対応であること、LIFE対応であることが一般的な条件です。
必要書類は、交付申請書、導入計画書、見積書、事業所の指定通知書です。都道府県のホームページから様式をダウンロードできます。
つまずきポイントは、申請時期を逃すことです。多くの自治体で年1回、6月から8月に募集します。前年度から情報収集し、募集開始と同時に申請できるよう準備しましょう。
補助金は後払いです。先に購入して支払いを済ませ、実績報告後に振り込まれます。資金繰りを考慮して計画を立てる必要があります。概算払いに対応する自治体もあるため確認しましょう。
ステップ4:段階的に運用を開始する(所要時間20時間、難易度★★★)
いきなり全機能を使わず、段階的に導入します。第一段階では訪問記録のタブレット入力から始めましょう。
最初の2週間は、従来の手書き記録と並行してタブレット入力を試します。操作に慣れ、入力ミスが減ってから完全移行します。並行期間は手間が増えますが、ここを乗り越えることが成功の鍵です。
第二段階でチャットツールを導入します。まず特定の事業所1〜2カ所と試験的に使い始めます。相手の協力が得られやすい事業所を選びましょう。
第三段階で請求業務の自動化に取り組みます。データ連携の設定を行い、自動生成された実績票を確認します。最初の数カ月は手作業との照合が必要です。
つまずきポイントは、完璧を求めすぎることです。最初は入力に時間がかかり、かえって非効率に感じます。1〜2カ月の慣れ期間を見込んでおきましょう。焦らず継続することが重要です。
ステップ5:効果を測定し改善する(所要時間2時間/月、難易度★★☆)
導入前後で業務時間を比較します。記録時間、電話対応時間、請求業務時間を毎月計測し、削減効果を数値化しましょう。
利用者や他事業所からのフィードバックも集めます。「情報共有が早くなった」「連絡が取りやすくなった」など、定性的な効果も記録します。
月1回、振り返りの時間を設けます。うまく使えていない機能、もっと活用できそうな場面を洗い出し、運用方法を改善します。
補助金を受けた場合、導入効果の報告義務があります。年1回、都道府県に業務改善の成果を報告する必要があります。日頃からデータを記録しておけば、報告書作成がスムーズです。
改善を続けることで、さらなる効率化が実現します。PDCAサイクルを回し、自分の事業所に最適な使い方を見つけていきましょう。
ICT活用で失敗しない3つの注意点
セキュリティ対策を徹底する
個人情報を扱うため、情報漏洩対策が不可欠です。タブレットには必ずパスワードロックをかけ、紛失時のリモート消去機能を設定しましょう。
チャットツールは医療・介護専用のものを選ぶか、一般的なツールでも暗号化通信に対応したものを使います。個人名や要介護度などの機微情報は、チャット上では伏せ字にするなどの工夫も必要です。
Wi-Fi環境では公衆無線LANを使わず、事業所専用の回線かセキュリティの高いモバイルルーターを使用します。ウイルス対策ソフトも必ず導入しましょう。
定期的な職員研修も重要です。年1回は情報セキュリティ研修を実施し、事故防止の意識を高めます。万が一の情報漏洩時の対応手順もマニュアル化しておきましょう。
ITが苦手な職員へのサポート体制を整える
ケアマネの平均年齢は高く、ITに不慣れな職員も多いです。導入時の丁寧なサポートが成功の鍵になります。
マニュアルは紙ベースで用意します。画面のスクリーンショット付きで、大きな文字で見やすく作成しましょう。動画マニュアルも効果的です。
担当者を決めて、いつでも質問できる体制を作ります。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮させない雰囲気づくりが大切です。
最初は時間がかかっても叱らず、褒めて励まします。「前より入力が速くなりましたね」と小さな進歩を認めましょう。苦手意識を持たせないことが継続のポイントです。
定期的なフォローアップ研修を実施します。月1回、30分程度の勉強会で便利な機能を紹介したり、困っていることを共有したりします。
すべてをデジタル化しようとしない
ICT化が目的ではなく、業務改善が目的です。アナログの方が効率的な場面もあります。
例えば、利用者宅での軽微なメモは手書きの方が早い場合もあります。その場で簡単にメモし、後でまとめてタブレットに入力する方が現実的です。
事業所内の申し送りボードは、ホワイトボードのままの方が一覧性が高いこともあります。デジタルとアナログを使い分ける柔軟性が重要です。
ICT化を強制すると、かえって現場の士気が下がります。「使いたい人から使う」「できる範囲から始める」という段階的アプローチが成功の秘訣です。
機器に業務を合わせるのではなく、業務に機器を合わせます。理想的な機器を探すより、機器に合わせて業務フローを少し変更する柔軟性を持ちましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: ICT導入後、すぐに業務は楽になりますか?
いいえ、導入直後は一時的に業務負担が増えます。操作に慣れるまで1〜2カ月かかり、その間は従来の方法との併用で手間が増えることもあります。しかし慣れてくれば確実に効率化されます。焦らず継続することが重要です。実際の事例では、3カ月後から効果を実感し始め、半年後には記録時間が半分になっています。
Q2: 小規模事業所でもICT導入は必要ですか?
はい、むしろ小規模事業所こそICTが有効です。一人ケアマネ事業所では、事務作業の効率化が直接的に訪問時間の確保につながります。また令和6年度改定により、ICT活用で担当件数上限が拡大され、小規模でも収入増加が見込めます。無料アプリから始めれば初期コストも抑えられます。
Q3: 他事業所がICTを使っていない場合はどうすればいいですか?
段階的に協力者を増やしていきましょう。まず理解のある1〜2の事業所とチャットツールを試験導入します。効果を実感した事業所が他所に広めてくれることもあります。すべての事業所と同時に始める必要はありません。従来の電話・FAXとICTを併用しながら、徐々に移行していけば問題ありません。
Q4: ケアプランデータ連携システムとは何ですか?
ケアマネ事業所と介護サービス事業所の間で、ケアプランや実績データを電子的にやり取りするシステムです。従来は紙やFAXで送っていたサービス提供票を、データで一括送信できます。令和6年度改定では、このシステムを活用することが担当件数上限拡大の要件になっており、導入が推奨されています。
Q5: AI機能でケアプランが自動作成されるとケアマネは不要になりますか?
いいえ、ケアマネの仕事はなくなりません。AIはあくまでケアプラン作成を支援するツールです。利用者の細かなニーズの把握、家族との信頼関係構築、多職種との調整など、人にしかできない業務は多数あります。むしろAIが事務作業を代行することで、本来のケアマネジメント業務に集中できるようになります。
まとめ
ケアマネのICT活用について3つのポイントをまとめます。
第一に、ICT活用により月40時間以上の業務時間削減が可能です。記録のタブレット入力、チャットでの情報共有、請求業務の自動化により、本来の支援業務に集中できます。令和6年度改定では担当件数上限も49件に拡大され、収入増加も見込めます。
第二に、段階的導入が成功の鍵です。訪問記録から始め、チャットツール、請求自動化と順に広げましょう。補助金を活用すれば最大260万円の支援を受けられます。セキュリティ対策とITが苦手な職員へのサポートも忘れずに。
第三に、ICT化は手段であり目的ではありません。利用者と向き合う時間を増やし、ケアマネジメントの質を向上させることが本来の目標です。デジタルとアナログを使い分ける柔軟性を持ちましょう。
次のアクションとして、まず自分の業務時間を1週間記録してみましょう。何にどれだけ時間を使っているか可視化することが、ICT導入の第一歩です。
煩雑な事務作業から解放され、利用者の笑顔に向き合える時間を増やしましょう。ICT活用はそのための強力な味方です。

