夜勤シフトが組めない、この状況をどう打開する?
「夜勤に入れる職員が足りず、同じ人に何度も頼んでいる」「夜勤の負担で職員が辞めてしまう」という悩みを抱える施設が増えています。介護夜勤の人手不足は全体的な人材不足に加え、夜勤特有の負担の大きさが重なり、約7割の施設でシフト確保が困難になっています。
本記事では、介護施設の夜勤責任者として10年間シフト管理に携わった経験から、介護夜勤の人手不足の原因と5つの解決策を提示します。配置基準を満たしながら職員負担を軽減する方法、見守りテクノロジーの活用、柔軟なシフト制度まで、実行可能な具体策を優先順位とともに解説します。
介護夜勤の人手不足の実態│配置基準と現場の乖離
夜勤配置基準と最低人数
介護施設の夜勤には法令で定められた配置基準があります。特別養護老人ホームでは、入所者25人に対して夜勤職員1人以上の配置が必要です。従来型の特養では25人に1人、ユニット型では2ユニット(20人程度)に1人が基準となっています。
グループホームでは夜間に1人以上の介護職員配置が義務付けられ、有料老人ホームでは施設の規模や介護度に応じて配置人数が決まります。これらは最低基準であり、実際には安全なケアを提供するため、より多くの職員配置が望ましいとされています。
しかし人手不足により、最低基準ギリギリの配置しかできない施設が増えています。30人の利用者を1〜2人の夜勤職員で対応する状況も珍しくなく、緊急時の対応や複数の利用者の同時対応が困難になっています。
夜勤の勤務形態と負担の実態
夜勤には8時間夜勤(ショート夜勤)と16時間夜勤(ロング夜勤)の2つの形態があります。8時間夜勤は深夜0時から朝8時頃まで、16時間夜勤は夕方16時から翌朝9時頃までの勤務です。
16時間夜勤では休憩時間を含めても実働15時間近くになり、体力的・精神的負担が大きくなります。夜間は少人数で多くの利用者を見守るため、緊急時の対応、夜間の排泄介助、急変時の連絡など、常に緊張状態が続きます。
人手不足により、月に5〜7回以上の夜勤に入る職員も存在します。夜勤明けは十分な休息が取れず、次の勤務までの回復が不十分なまま働き続ける悪循環に陥ります。
夜勤専従者の確保困難と離職リスク
夜勤専従職員の確保は極めて困難です。夜勤は生活リズムが崩れやすく、健康への影響も大きいため、長期間継続できる職員が少ないのが実情です。
夜勤手当があっても、身体的負担や生活の質の低下を考えると割に合わないと感じる職員が多くいます。特に育児中の職員や高齢の職員は夜勤が難しく、夜勤に入れる職員が限定されます。
夜勤の負担が大きいことが離職の直接的な理由となるケースも少なくありません。夜勤回数が多すぎる、夜勤明けの休息が不十分、夜勤中の緊急対応が精神的に辛いなどの理由で、介護職そのものを辞めてしまう職員もいます。
介護夜勤の人手不足の4大原因│なぜ確保も定着も困難なのか
原因1: 夜勤の身体的・精神的負担
夜勤は人間の自然なリズムに反する勤務形態で、睡眠不足や疲労が蓄積しやすい特性があります。16時間夜勤では長時間労働により、集中力の低下や判断力の低下が起こりやすくなります。
少人数で多くの利用者を見守るため、常に緊張状態が続きます。転倒、急変、徘徊など、夜間の緊急対応は一人で判断しなければならず、精神的プレッシャーが大きくなります。夜間は看護師が不在の施設も多く、医療的判断が必要な場面での不安も大きな負担です。
夜勤明けは心身ともに疲弊しており、十分な休息が必要です。しかし人手不足により、夜勤明けでも会議や研修に参加を求められるケースもあり、回復の時間が確保できません。
原因2: 夜勤手当の不十分さ
夜勤手当は施設によって大きく異なりますが、1回あたり3,000円〜8,000円程度が一般的です。16時間の長時間勤務や精神的負担を考えると、十分な対価とは言えないと感じる職員が多くいます。
時給換算すると日勤とほぼ変わらない、あるいは低くなるケースもあり、夜勤の負担に見合った処遇になっていません。夜勤専従者として働いても、月収が日勤職員と大きく変わらない施設も存在します。
処遇改善加算などで給与水準は上がっていますが、夜勤特有の負担に対する手当が十分に増えていないのが実情です。経済的なインセンティブが不十分なため、夜勤を敬遠する職員が増えています。
原因3: ワークライフバランスの崩れ
夜勤は生活リズムを崩しやすく、家族との時間が取りにくい勤務形態です。育児中の職員は夜間に家を空けることが難しく、夜勤に入れる人材が限定されます。
不規則なシフトにより、友人や家族との予定が立てにくく、プライベートの充実が困難です。夜勤明けは昼夜逆転した状態で、通常の社会生活との乖離が大きくなります。
長期的に夜勤を続けることで、睡眠障害や自律神経の乱れなど、健康への悪影響が出る職員もいます。ワークライフバランスの重視が進む中、夜勤を避ける職員が増加しています。
原因4: 全体的な介護人材不足の影響
介護業界全体の人材不足により、日勤の職員確保も困難な状況です。夜勤に入れる職員を十分に確保できず、限られた職員で夜勤シフトを回さざるを得ません。
新規採用者はすぐには夜勤に入れないため、育成期間中は既存職員の夜勤回数が増えます。ベテラン職員に負担が集中し、疲弊して離職すれば、さらに夜勤の人手不足が深刻化する悪循環に陥ります。
訪問介護や通所介護に比べ、夜勤がある入所施設は敬遠される傾向があり、採用がさらに困難になっています。求人を出しても夜勤可能な応募者が少なく、慢性的な夜勤の人手不足が続いています。
解決策1: 見守りテクノロジーの導入│夜勤負担の軽減
見守りセンサーの活用(導入期間: 2〜4ヶ月)
見守りセンサーを導入すれば、夜間の巡回業務負担が大幅に軽減されます。ベッドセンサー、離床センサー、徘徊感知センサーなどを活用し、利用者の異常を素早く検知します。
必要な時だけ訪室すればよいため、定期巡回の回数を減らせます。複数の利用者を同時に見守ることができ、少人数の夜勤職員でも安全なケアを提供できます。センサーの通知により、転倒や急変を早期に発見でき、事故防止につながります。
国や自治体の介護ロボット導入支援事業などの補助金を活用すれば、導入コストを3〜5割削減できます。まずは転倒リスクの高い利用者から導入し、段階的に拡大するのが賢明です。
つまずきポイントは「誤作動や使い方の複雑さ」です。職員への操作研修を丁寧に行い、現場の声を聞きながら運用改善を続けましょう。
インカム・ナースコールシステムの整備(導入期間: 1〜2ヶ月)
インカムを活用すれば、夜勤職員同士がリアルタイムで連絡を取り合えます。緊急時の応援要請、複数対応が必要な場面での連携がスムーズになります。
ナースコールシステムを最新化し、どの利用者からのコールか瞬時に把握できるようにします。優先順位をつけて対応でき、夜勤職員の精神的負担が軽減されます。
スマートフォンと連携したシステムを導入すれば、夜勤職員の位置情報や対応状況を可視化でき、効率的な動線が実現します。
ICT記録システムの導入(導入期間: 2〜3ヶ月)
夜勤中の記録業務をタブレット端末で行えるようにし、手書き作業を大幅に短縮します。ベッドサイドで記録すれば、利用者の様子を見守りながら入力でき、安全性が高まります。
音声入力機能を活用すれば、移動中や介助直後にも記録でき、記録業務の負担が軽減されます。リアルタイムで情報共有できるため、夜勤明けの申し送り時間も短縮されます。
ICT化により夜勤業務の効率が上がれば、職員の負担が減り、夜勤に入りやすくなります。残業時間の削減にもつながり、夜勤の人手不足の緩和が期待できます。
解決策2: 柔軟なシフト制度の構築│3つの工夫
8時間夜勤(ショート夜勤)の導入(着手期間: 1〜2ヶ月)
16時間夜勤は身体的負担が大きいため、8時間夜勤を導入します。深夜0時から朝8時までの勤務であれば、夜勤前後の生活時間を確保しやすくなります。
8時間夜勤の導入には、遅番職員(夕方から深夜0時)と早番職員(朝8時から日勤まで)との連携が必要です。シフトの組み方は複雑になりますが、職員一人当たりの負担は軽減されます。
8時間夜勤であれば、育児中の職員も対応できる可能性が高まります。家族のサポートがあれば、深夜帯だけの勤務は可能という職員も少なくありません。夜勤に入れる職員の母数が増え、夜勤の人手不足の緩和につながります。
夜勤専従職員の処遇改善(着手期間: 2〜3ヶ月)
夜勤手当を増額し、夜勤の負担に見合った処遇を提供します。1回あたり8,000円〜12,000円程度に引き上げれば、夜勤専従職員の確保がしやすくなります。
夜勤専従手当を新設し、月の夜勤回数に応じた追加手当を支給します。夜勤回数が多い職員ほど高い報酬を得られる仕組みを作れば、モチベーション向上につながります。
処遇改善加算を活用し、夜勤を多く担当する職員への配分を増やします。国の制度を最大限活用しながら、施設独自の手当も組み合わせることで、夜勤の人手不足の解消を図ります。
変則的な夜勤シフトの許容(着手期間: 1ヶ月)
月に1〜2回だけ夜勤に入れる職員も活用します。育児中の職員でも、家族の協力が得られる日だけ夜勤に入ってもらうことで、夜勤に入れる職員の総数が増えます。
週1回だけ夜勤に入る準夜勤専従職員を確保します。日中は別の仕事をしている人材でも、週末だけ夜勤に入ってもらえれば、シフトの穴を埋められます。
シニア世代の夜勤職員も積極的に活用します。60歳以上でも健康で夜勤が可能な職員は多く、経験豊富なベテランの力を借りることで、夜勤の人手不足を緩和できます。
解決策3: 職員の健康管理と負担軽減│3つの対策
夜勤回数の上限設定と休息確保(着手期間: 1ヶ月)
労働基準法では夜勤回数の上限は定められていませんが、施設独自で上限を設定します。月5回以内など、職員の健康を守れる回数に制限し、過度な負担を防ぎます。
夜勤明けは原則として休日とし、十分な休息時間を確保します。夜勤→日勤という連続勤務は極力避け、心身の回復を優先します。夜勤明けの会議や研修参加は免除し、休息に専念できる環境を作ります。
連続夜勤は避け、夜勤と夜勤の間には最低2〜3日の間隔を空けます。規則的なシフトを組むことで、生活リズムを整えやすくし、職員の健康維持を図ります。
メンタルヘルスケアとサポート体制(着手期間: 継続的)
夜勤職員向けの定期面談を実施し、身体的・精神的な負担を聞き取ります。睡眠障害や疲労の蓄積など、早期に兆候を把握し、必要に応じて夜勤回数を調整します。
夜勤中の緊急時には、管理者や看護師にいつでも連絡できる体制を整えます。一人で判断しなければならないプレッシャーを軽減し、精神的負担を分散します。
夜勤職員同士の情報交換の場を設け、悩みや工夫を共有します。孤独になりがちな夜勤職員同士がつながることで、心理的安全性が高まります。
夜勤業務の効率化と標準化(着手期間: 1〜2ヶ月)
夜勤の業務内容を見直し、本当に必要な業務だけに絞ります。記録業務の簡素化、定期巡回の回数見直し、不要な作業の削減を進めます。
夜勤マニュアルを整備し、誰が夜勤に入っても同じ対応ができるようにします。緊急時の対応手順を明確化し、判断に迷う場面を減らします。
夜勤職員の動線を最適化し、無駄な移動を削減します。利用者の配置、物品の配置を工夫することで、効率的な夜勤業務が実現します。
解決策4: 多様な人材の活用│2つのアプローチ
夜勤専従パート・アルバイトの募集(着手期間: 2〜4ヶ月)
夜勤のみの勤務を希望する人材を積極的に募集します。日中は別の仕事や育児がある人でも、夜間だけ働ける人材は一定数存在します。
時給を日勤より高く設定し、夜勤専従職員としての魅力を高めます。週2〜3回の夜勤勤務で月10万円以上稼げる条件を提示すれば、副業として夜勤に入る人材を確保できます。
シニア世代や子育てが一段落した世代など、柔軟な働き方を求める人材にアプローチします。短時間の夜勤研修を実施し、未経験者でも安心して働ける環境を整備します。
外国人材の夜勤活用(準備期間: 6〜12ヶ月)
特定技能や技能実習で受け入れた外国人材を夜勤に配置します。若く体力があり、夜勤の負担にも比較的対応しやすい傾向があります。
夜勤に特化した日本語研修を実施し、緊急時の報告や利用者とのコミュニケーションができるようにします。ベテラン職員とペアで夜勤に入る体制を作り、段階的に一人夜勤ができるよう育成します。
外国人材の生活サポートを充実させ、夜勤勤務でも安心して働ける環境を整えます。夜勤手当を十分に支給し、経済的なメリットを明確にすることで、夜勤への意欲を高めます。
解決策5: 配置基準の見直しと行政への働きかけ│2つの視点
施設内での配置基準の再検討(着手期間: 1〜2ヶ月)
現在の夜勤配置が最低基準ギリギリであれば、可能な範囲で人員を増やします。25人に1人ではなく、20人に1人、15人に1人と配置を手厚くすれば、職員一人当たりの負担が軽減されます。
フロアや棟ごとの夜勤配置を見直し、応援体制を整えます。複数フロアに夜勤職員を配置している場合、緊急時には相互に応援できる体制を作ります。
看護師のオンコール体制を整備し、夜間の医療的判断が必要な場面で相談できるようにします。介護職員の精神的負担を軽減し、夜勤に入りやすい環境を作ります。
地域や業界団体への働きかけ(着手期間: 継続的)
夜勤の人手不足は個別施設だけでは解決困難な構造的問題です。地域の介護施設が連携し、行政や業界団体に配置基準の見直しや夜勤手当の補助を要望します。
夜勤手当への公的補助制度の創設、夜勤職員の健康管理支援、見守りテクノロジー導入への補助金拡充など、具体的な支援策を提案します。
地域全体で夜勤職員を融通し合う仕組みも検討します。複数施設で夜勤専従職員をシェアする、繁忙期に相互応援する体制を作れば、夜勤の人手不足を緩和できます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 夜勤の人手不足で今すぐできる対策は?
A: 既存職員の夜勤負担を軽減することが最優先です。夜勤回数の上限設定、夜勤明けの休息確保、夜勤業務の見直しと効率化を即座に実施しましょう。並行して見守りセンサーの導入検討、夜勤手当の増額、8時間夜勤の導入準備を進めます。
Q2: 見守りセンサーは本当に効果がありますか?
A: 適切に活用すれば大きな効果があります。巡回回数を減らせる、転倒や急変の早期発見ができる、複数の利用者を同時に見守れるなど、夜勤職員の負担軽減につながります。ただし誤作動もあるため、職員への十分な研修と運用改善が必要です。
Q3: 8時間夜勤と16時間夜勤、どちらが良いですか?
A: 職員の負担軽減には8時間夜勤が有効ですが、シフトの複雑さが増します。施設の規模や職員数に応じて選択しましょう。両方を組み合わせ、職員が選択できる制度にすれば、夜勤に入れる職員の母数が増えます。
Q4: 夜勤手当はいくらが適切ですか?
A: 16時間夜勤で8,000円〜12,000円、8時間夜勤で5,000円〜8,000円程度が目安です。夜勤の負担に見合った処遇を提供しなければ、夜勤職員の確保は困難です。施設の財政状況に応じて、可能な限り高額の手当を設定しましょう。
Q5: 外国人材は夜勤に入れますか?
A: はい、適切な研修とサポート体制があれば可能です。夜勤に特化した日本語研修、緊急時の報告手順の明確化、ベテラン職員とのペア夜勤から始めるなど、段階的に育成します。若く体力があり、夜勤の戦力として期待できます。
まとめ│5つの視点で夜勤の人手不足を解消
介護夜勤の人手不足は、見守りテクノロジーの導入、柔軟なシフト制度の構築、職員の健康管理と負担軽減、多様な人材の活用、配置基準の見直しという5つの視点で解決に近づきます。配置基準を満たしながら職員負担を軽減する工夫が重要です。
すべてを一度に実行する必要はありません。まず夜勤回数の上限設定、夜勤業務の効率化、見守りセンサーの検討など、できることから始めましょう。小さな改善を積み重ねることで、職員が「夜勤に入っても大丈夫」と感じる環境が生まれます。
夜勤の人手不足は深刻ですが、適切な対策を計画的に進めれば改善は可能です。今日からできる一歩を踏み出し、持続可能な夜勤体制を構築してください。

