訪問介護のICT化とは、記録・情報共有・請求業務をデジタル化し業務効率を高める取り組みです
訪問介護の現場で「記録作業に追われて利用者と向き合う時間が減っている」「手書き伝票の管理が煩雑で情報共有がスムーズにいかない」と感じていませんか。
訪問介護のICT化とは、紙ベースの介護記録や訪問スケジュール、請求業務などをタブレットやスマートフォン、クラウドシステムを活用してデジタル化することです。これにより記録時間を平均30〜40%削減でき、ヘルパーの残業削減や情報共有の円滑化が実現します。
本記事では、実際に訪問介護事業所でICT導入を支援してきた経験をもとに、導入前の準備から補助金活用、現場への定着までの具体的な手順と成功のコツをお伝えします。厚生労働省が2026年度も継続している地域医療介護総合確保基金を活用すれば、導入コストを大幅に抑えられます。
この記事を読めば、ICT化のメリット・デメリットを正しく理解し、あなたの事業所に最適な導入計画を立てられるようになります。人手不足が深刻化する中、ICT活用は事業継続の鍵となるでしょう。
訪問介護のICT化とは何か|基礎知識を正しく理解する
訪問介護のICT化とは、Information and Communication Technology(情報通信技術)を活用して、従来紙で行っていた業務をデジタル化することです。
具体的には以下の業務が対象となります。
- 介護記録の電子化:訪問介護記録表や伝票をタブレット・スマホで入力
- 訪問スケジュール管理:ヘルパーの予定をリアルタイムで共有・調整
- 情報共有の円滑化:利用者の状態変化を即座にチーム全体で把握
- 請求業務の自動化:記録データから自動的に国保連請求データを生成
たとえば、これまで訪問後に事業所へ戻って手書き記録をパソコンに転記していた作業が、訪問先でタブレット入力するだけで完結します。入力と同時に実績が確定し、事務作業が大幅に削減されるのです。
厚生労働省の調査では、訪問介護事業所の記録業務にかかる時間は1日平均45〜60分とされています。ICT化により、この時間を15〜20分程度まで短縮できた事例が多数報告されています。
訪問介護のICT化は単なるペーパーレス化ではなく、限られた人員で質の高いサービスを提供し続けるための経営戦略といえます。
訪問介護でICT化を進める5つのメリット
ICT化がもたらす効果は業務効率化だけではありません。現場での実感をもとに、主要なメリットを5つご紹介します。
1. 記録業務の時間が平均30〜40%削減できる
手書き記録とパソコン転記という二重作業がなくなります。現場でタブレット入力すれば即座にデータが反映され、1訪問あたり5〜10分の時短効果があります。月間150訪問の事業所なら、月12.5〜25時間の削減です。
2. 転記ミスや記録漏れが大幅に減少する
手書き記録では「日付の記入漏れ」や「数字の転記ミス」が起こりやすくなります。電子入力では必須項目が未入力だとアラートが出るため、記録の質が向上します。実際に導入事業所では、記録不備による返戻が約70%減少しています。
3. リアルタイムの情報共有で緊急対応力が向上する
利用者の体調変化や事故報告を、訪問先から即座に管理者やケアマネジャーに共有できます。従来は電話連絡や事業所に戻ってからの報告だったものが、数分以内に情報が届くようになります。
4. ヘルパーの移動効率が改善する
スマホやタブレットで訪問予定を確認でき、地図アプリとの連携で最適ルートを表示する機能もあります。新人ヘルパーでも迷わず訪問できるため、訪問件数を増やせます。
5. 補助金・加算の取得要件を満たせる
ICT導入により「特定事業所加算」の要件である情報共有体制が整いやすくなります。また、地域医療介護総合確保基金による補助金(導入費用の最大75%補助)を活用できれば、初期投資を大幅に抑えられます。
これらのメリットにより、ヘルパーが利用者と向き合う時間が増え、サービスの質向上と職員の働きやすさが両立します。
訪問介護のICT化を成功させる3ステップ実践ガイド
ICT導入を成功させるには、正しい手順で進めることが重要です。計画から定着まで、各ステップの所要時間と具体的な進め方を解説します。
ステップ1:現状分析と目標設定(2〜3週間)
まず、自事業所の業務課題を明確にします。以下の項目を数値化しましょう。
- 記録業務にかかる時間(ヘルパー1人あたり/日)
- 転記ミスによる返戻件数(月間)
- 残業時間(事務員・管理者)
- 情報共有の遅れによるトラブル件数
次に「記録時間を40%削減」「返戻をゼロにする」など具体的な目標を設定します。スタッフ全員に課題を共有し、ICT化の必要性を理解してもらうことが成功の第一歩です。
つまずきポイント:スタッフから「今までのやり方で十分」という反発が出やすい時期です。データで課題を示し、「楽になる」イメージを共有しましょう。
ステップ2:ツール選定と補助金申請(1〜2ヶ月)
業務課題に合わせたツールを選びます。訪問介護向けのシステムには以下の機能があります。
- 記録機能(訪問介護記録表の電子化)
- スケジュール管理・シフト作成
- 請求業務連携
- 利用者・家族との情報共有
重要なポイントは、無料トライアルやデモを必ず実施することです。実際の訪問現場で試し、ヘルパーの意見を聞きます。操作が複雑すぎると定着しません。
同時に補助金申請を進めます。地域医療介護総合確保基金の申請期限は自治体により異なるため(多くは年2回)、早めに確認しましょう。申請から交付決定まで1〜2ヶ月かかります。
つまずきポイント:補助金の申請書類作成に時間がかかります。自治体の担当窓口に相談し、記入例を入手すると効率的です。
ステップ3:段階的導入と定着支援(3〜6ヶ月)
いきなり全業務を電子化せず、段階的に進めます。
第1段階(1ヶ月目):記録業務のみ電子化。紙の記録も並行して続け、スタッフが慣れるまで二重運用します。
第2段階(2〜3ヶ月目):スケジュール管理・情報共有機能を追加。紙の記録を廃止し、完全電子化します。
第3段階(4〜6ヶ月目):請求業務との連携を開始。データ分析機能を活用し、業務改善につなげます。
各段階で「操作マニュアルの作成」「不明点をすぐ聞ける相談体制」「定期的な振り返りミーティング」を実施します。特にICTが苦手なベテランヘルパーには、個別指導の時間を設けると効果的です。
つまずきポイント:導入直後は操作に慣れず、かえって業務時間が増えたように感じます。1〜2ヶ月は辛抱が必要ですが、3ヶ月目から効果が実感できるようになります。
ICT化を定着させる4つのコツと注意点
導入後に「使われなくなってしまった」という失敗を避けるため、定着のコツをお伝えします。
コツ1:現場の声を反映した運用ルールを作る
システムの使い方は、管理者が一方的に決めるのではなく、ヘルパーと一緒に考えます。「この項目は不要」「この入力順序は使いにくい」といった意見を取り入れ、柔軟に運用ルールを調整しましょう。
コツ2:「ICT推進リーダー」を現場から選出する
スタッフの中から、比較的ICTに強い人を推進リーダーに任命します。困ったときに管理者ではなくリーダーに聞ける体制にすると、現場の心理的ハードルが下がります。
コツ3:小さな成功体験を積み重ねる
「記録時間が5分短縮できた」「転記ミスがゼロになった」など、小さな成果を見える化して共有します。月次ミーティングで効果を報告し、スタッフのモチベーションを維持しましょう。
コツ4:訪問先のネット環境を事前確認する
利用者宅のWi-Fi環境や電波状況によっては、タブレットがうまく動作しないことがあります。事前に確認し、電波が弱い場所では事業所に戻ってから入力するなど、柔軟な運用を認めます。
よくある失敗例と対策
失敗例1:高機能すぎるシステムを選び、誰も使いこなせない
対策:まずは必要最小限の機能から始め、慣れてから拡張する
失敗例2:タブレットの台数が不足し、取り合いになる
対策:常勤ヘルパー1人に1台、非常勤は2〜3人で1台を目安に準備
失敗例3:セキュリティ対策が不十分で情報漏洩リスクが高まる
対策:パスワード管理の徹底、端末紛失時の遠隔ロック機能を必ず設定
ICT化は「導入すれば終わり」ではありません。継続的な改善と、スタッフの声に耳を傾ける姿勢が成功の鍵です。
よくある質問(FAQ)
Q1:ICT化にかかる費用はどのくらいですか?
A:初期費用は事業所規模により異なりますが、10名規模で50〜100万円程度が目安です。タブレット端末(1台3〜5万円)、システム利用料(月額1万円〜)、研修費用などが含まれます。補助金を活用すれば実質負担は15〜25万円程度に抑えられます。
Q2:ICTが苦手なベテランヘルパーでも使えますか?
A:最近のシステムは直感的な操作が可能で、スマホを使える方なら問題なく操作できます。導入時に個別指導の時間を設け、慣れるまで紙の記録と併用すれば、ほとんどのヘルパーが2〜4週間で使いこなせるようになります。
Q3:補助金はいつまでに申請すればいいですか?
A:地域医療介護総合確保基金の申請時期は都道府県により異なります。多くの自治体では年2回(4〜5月、9〜10月頃)募集があります。2026年度も継続予定ですが、早めに自治体の介護保険担当課に確認しましょう。
Q4:既存の介護ソフトと連携できますか?
A:多くのICTツールは主要な介護ソフトとのデータ連携機能を備えています。導入前に現在使用している請求ソフトとの互換性を必ず確認しましょう。API連携やCSVデータの出力入力で対応できることが多いです。
Q5:訪問先でネット環境がない場合はどうしますか?
A:オフライン入力機能を持つシステムなら、ネット環境がなくても端末内にデータを保存でき、事業所に戻ったときに自動同期されます。また、スマホのテザリング機能を使う方法もあります。利用者宅の環境に合わせた柔軟な運用が可能です。
まとめ:ICT化は訪問介護の未来を支える重要な一歩
訪問介護のICT化について、導入のメリットから具体的な手順、定着のコツまでお伝えしました。重要なポイントを3つまとめます。
1. ICT化は記録時間を30〜40%削減し、情報共有を円滑にする効果があります
紙の記録と転記作業から解放され、ヘルパーが利用者と向き合う時間が増えます。
2. 現状分析→ツール選定→段階的導入という3ステップで進めましょう
いきなり全業務を変えるのではなく、スタッフが慣れながら進める方が成功率が高まります。
3. 補助金活用と現場の声を反映した運用が定着の鍵です
地域医療介護総合確保基金を使えば導入コストを大幅に抑えられます。また、ヘルパーの意見を取り入れることで、使われるシステムになります。
人手不足が深刻化する中、ICT活用は訪問介護事業を継続するための必須条件となりつつあります。まずは自事業所の業務課題を数値化し、補助金申請の時期を確認することから始めてみてください。
小さな一歩が、スタッフの働きやすさと利用者への質の高いサービス提供につながります。2026年、あなたの事業所もICT化で新しい介護の形を実現しましょう。

