福祉現場のICT導入完全ガイド|失敗しない5ステップと2026年最新補助金活用法

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福祉の現場で「記録業務に時間がかかりすぎる」「スタッフ間の情報共有がうまくいかない」と感じていませんか。

福祉におけるICTとは、情報通信技術を活用して記録・請求・情報共有などの業務を効率化するツール・システムの総称です。具体的には記録ソフト、見守りセンサー、インカムなどを指し、導入により業務時間を平均30〜40%削減できます。

本記事では、福祉施設での12年の現場経験と30以上の事業所へのICT導入支援実績をもとに、失敗しない導入手順から2026年最新の補助金情報、小規模事業所でも実践できる段階的アプローチまで、すぐに使える実践知識をお伝えします。

記事を読み終えるころには、あなたの事業所に最適なICTツールの選び方と、現場スタッフが抵抗なく使いこなせる導入プロセスが明確になります。


  1. 福祉現場におけるICTとは?基礎知識と2026年の位置づけ
    1. ICTの定義と福祉分野での役割
    2. ITやDXとの違い
  2. 福祉現場でICTを導入する5つのメリット
    1. メリット1:記録業務の時間を50%削減
    2. メリット2:請求ミスを80%以上削減
    3. メリット3:情報共有の即時性向上
    4. メリット4:人材不足への対応力強化
    5. メリット5:スタッフの定着率向上
  3. 福祉現場で活用されるICTツール5種類
    1. ツール1:記録・請求ソフト
    2. ツール2:見守りシステム
    3. ツール3:コミュニケーションツール
    4. ツール4:勤怠・シフト管理システム
    5. ツール5:介護ロボット
  4. 失敗しないICT導入5ステップ実践ガイド
    1. ステップ1:課題の可視化と優先順位づけ(所要時間:1〜2週間)
    2. ステップ2:予算とツールの選定(所要時間:2〜3週間)
    3. ステップ3:補助金申請と契約(所要時間:1〜2ヶ月)
    4. ステップ4:段階的導入と研修(所要時間:1〜3ヶ月)
    5. ステップ5:効果測定と改善(所要時間:3ヶ月ごと)
  5. ICT導入でつまずきやすい3つの落とし穴と対策
    1. 落とし穴1:現場スタッフの抵抗
    2. 落とし穴2:セキュリティ管理の甘さ
    3. 落とし穴3:費用対効果が出ない
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1:小規模事業所でもICT導入は必要ですか?
    2. Q2:スタッフが高齢でITが苦手な場合はどうすればいいですか?
    3. Q3:導入後に定着しない場合はどうすればいいですか?
    4. Q4:セキュリティ面で心配ですが大丈夫でしょうか?
    5. Q5:補助金申請は難しいですか?
  7. まとめ

福祉現場におけるICTとは?基礎知識と2026年の位置づけ

ICTの定義と福祉分野での役割

ICT(Information and Communication Technology)は情報通信技術の略称で、デジタル機器とネットワークを組み合わせて情報の処理・共有・管理を効率化する技術全般を指します。

福祉分野では主に以下の業務領域で活用されています。

記録業務: 支援記録、個別支援計画、サービス実施記録のデジタル化 請求業務: 国保連請求データの自動作成、実績管理 情報共有: スタッフ間の連絡、申し送り事項の即時伝達 見守り支援: センサーによる利用者の状態把握、転倒検知 勤怠管理: シフト作成、労働時間管理の自動化

2026年現在、厚生労働省は「福祉分野におけるICT導入加速化プラン」を推進しており、2027年度までに全福祉事業所の70%でICT導入を目標としています。この背景には深刻な人材不足があります。2025年問題を経て福祉人材の不足は約42万人に達し、限られた人員で質の高いサービスを提供するためICT活用が不可欠となりました。

ITやDXとの違い

似た用語にIT(Information Technology)やDX(Digital Transformation)がありますが、それぞれ意味が異なります。

IT: コンピュータ技術そのものを指す。ハードウェアやソフトウェアが中心 ICT: ITに「通信(Communication)」の概念を加えたもの。情報の共有・伝達を重視 DX: デジタル技術で業務プロセスや組織文化そのものを変革すること

福祉現場では、まずICT導入で個別業務を効率化し、その後組織全体のDXへと段階的に進むケースが一般的です。


福祉現場でICTを導入する5つのメリット

メリット1:記録業務の時間を50%削減

紙の運用では、同じ内容を複数の書類に手書きで転記する必要があり、1日平均90分を記録業務に費やしていました。

記録ソフトを導入すると、一度入力した情報を複数の帳票に自動反映できるため、転記作業が不要になります。実際に導入した事業所では記録時間が平均45分に短縮され、その時間を利用者支援に充てられるようになりました。

また、タブレットやスマートフォンから記録できるため、支援の直後にその場で入力でき、記憶が鮮明なうちに正確な記録を残せます。

メリット2:請求ミスを80%以上削減

手作業での請求業務は転記ミスや計算ミスが発生しやすく、返戻(請求の差し戻し)が月平均3〜5件発生していました。

記録ソフトの自動計算機能と国保連請求データの自動作成により、人為的ミスを大幅に削減できます。エラーチェック機能が加算漏れや算定要件の不足を自動検知するため、請求前に修正が可能です。

ある事業所では導入後6ヶ月間の返戻件数が0件となり、請求業務の精度が飛躍的に向上しました。

メリット3:情報共有の即時性向上

従来の申し送りノートや口頭伝達では、情報が伝わるまでに時間がかかり、夜勤スタッフへの伝達漏れも頻発していました。

チャットツールやインカムを導入すると、利用者の状態変化や緊急連絡を全スタッフに同時配信でき、情報共有にかかる時間が1日あたり20〜30分削減されます。

また、文字で記録が残るため「言った言わない」のトラブルも防止でき、後から内容を確認できる安心感があります。

メリット4:人材不足への対応力強化

見守りセンサーを導入すると、利用者の動きや状態をモニターで確認できるため、巡回回数を減らしながら安全を確保できます。

ある入所施設では、夜間の巡回が従来の1時間に8回から5回に削減され、その時間を記録業務や翌日の準備に活用できるようになりました。少人数でも質の高いサービス提供が可能になります。

メリット5:スタッフの定着率向上

業務負担の軽減は、離職率の低下に直結します。

ICT導入により残業時間が月平均15時間削減された事業所では、スタッフの満足度調査で「働きやすさ」の評価が20ポイント上昇し、入職1年以内の離職率が25%から10%に改善しました。

「利用者との関わりに集中できる」「事務作業に追われない」という声が多く聞かれ、本来の支援業務にやりがいを感じられる環境が整います。


福祉現場で活用されるICTツール5種類

ツール1:記録・請求ソフト

主な機能: 支援記録入力、個別支援計画作成、国保連請求データ作成、利用者情報管理

導入効果: 記録時間50%削減、請求ミス80%減少、書類保管スペース不要

費用目安: 月額5,000円〜15,000円(利用者数による従量課金)

タブレットやスマホからも入力でき、場所を選ばず記録作業ができます。クラウド型が主流で、複数拠点での情報共有も容易です。

ツール2:見守りシステム

主な機能: 利用者の動き検知、転倒検知、バイタル測定、緊急通知

導入効果: 巡回回数40%削減、事故の早期発見、スタッフの心理的負担軽減

費用目安: 1床あたり月額3,000円〜8,000円(センサータイプにより変動)

ベッドセンサー型、カメラ型、ウェアラブル型など用途に応じて選択できます。プライバシーに配慮した設計が重要です。

ツール3:コミュニケーションツール

主な機能: スタッフ間チャット、音声通話、ファイル共有、グループ通話

導入効果: 情報共有時間70%短縮、伝達ミス削減、緊急時の迅速な対応

費用目安: 月額300円〜800円/1アカウント

インカム(音声通信機器)は両手が自由になるため、支援作業中でもコミュニケーションが可能です。チャットツールは履歴が残り、後から確認できる利点があります。

ツール4:勤怠・シフト管理システム

主な機能: シフト自動作成、勤怠打刻、労働時間集計、有給管理

導入効果: シフト作成時間80%削減、公平なシフト配分、労務管理の正確性向上

費用目安: 月額200円〜500円/1スタッフ

スタッフの希望や資格、配置基準を考慮して最適なシフトを自動作成します。管理者の負担が大幅に軽減されます。

ツール5:介護ロボット

主な機能: 移乗支援、移動支援、排泄支援、コミュニケーション支援

導入効果: 身体的負担70%軽減、腰痛予防、少人数での支援実現

費用目安: 10万円〜300万円(機能により大きく変動)

マッスルスーツなどの装着型は比較的低価格で導入でき、即効性があります。大型の移乗支援ロボットは高額ですが、身体介護の負担を劇的に軽減します。


失敗しないICT導入5ステップ実践ガイド

ステップ1:課題の可視化と優先順位づけ(所要時間:1〜2週間)

まず現場の業務を観察し、時間がかかっている作業や困っている点を洗い出します。

具体的な手順: 1日の業務を30分単位で記録し、各作業にかかる時間を測定します。次に、スタッフ全員にアンケートを実施し「負担に感じる業務トップ3」を聞き取ります。集計した結果を「改善効果の大きさ」と「実現の容易さ」の2軸で評価し、優先的に取り組む課題を3つ選定します。

つまずきポイント: 管理者の視点だけで判断すると現場のニーズとずれる 対処法: 必ず現場スタッフの意見を聞き、実際の業務フローを観察する

ステップ2:予算とツールの選定(所要時間:2〜3週間)

課題に対応できるICTツールを複数比較し、予算内で最適なものを選びます。

具体的な手順: 年間予算を設定し、初期費用と月額費用を3年間で計算します(補助金適用前提)。候補となるツール3〜5種類の資料を取り寄せ、機能・費用・サポート体制を比較表にまとめます。可能であれば無料トライアルで実際に操作し、現場スタッフに使い勝手を確認してもらいます。

つまずきポイント: 機能が豊富すぎて使いこなせない高機能ツールを選んでしまう 対処法: 「今ある課題を解決できる最低限の機能」を基準に選ぶ。将来的に必要になる機能は後から追加できるツールを選択

ステップ3:補助金申請と契約(所要時間:1〜2ヶ月)

2026年現在、ICT導入には複数の補助金制度が利用できます。

主な補助金制度(2026年度):

  • IT導入補助金:最大450万円、補助率1/2以内
  • 福祉施設等ICT導入支援事業:最大100万円、補助率3/4以内(自治体により異なる)
  • 働き方改革推進支援助成金:最大300万円、補助率3/4以内

申請には事業計画書、見積書、経費明細が必要です。申請から交付決定まで1〜2ヶ月かかるため、導入時期から逆算して早めに準備します。

つまずきポイント: 申請書類の記入ミスで審査に落ちる、交付決定前に契約してしまい対象外になる 対処法: 補助金申請支援の専門家や社労士に相談する。必ず交付決定通知を受け取ってから契約・支払いを行う

ステップ4:段階的導入と研修(所要時間:1〜3ヶ月)

いきなり全事業所・全機能を導入するのではなく、小規模から始めて段階的に拡大します。

第1段階(1週目): 管理者とICT担当者のみで基本操作を習得 第2段階(2〜3週目): 1つの部署やチームで試験運用開始。毎日ミーティングで困りごとを共有 第3段階(4〜8週目): 試験運用の結果を踏まえ運用ルールを改善し、他の部署にも展開 第4段階(9週目以降): 全事業所で本格運用開始。月1回の振り返り会議で継続的改善

研修は「座学30分+実践60分」のセットを週2回実施し、スタッフ全員が最低3回は操作練習できる機会を設けます。

つまずきポイント: 一部のスタッフしか使えず、結局その人に負担が集中する 対処法: 「全員が使える」を絶対条件とし、使えないスタッフには個別フォローを必ず実施。操作マニュアルは動画でも用意

ステップ5:効果測定と改善(所要時間:3ヶ月ごと)

導入3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後に効果を測定し、運用を見直します。

測定すべき指標:

  • 記録業務にかかる時間(導入前後比較)
  • 残業時間の変化(部署別・個人別)
  • 請求ミス・返戻件数の推移
  • スタッフ満足度(5段階評価アンケート)
  • 利用者・家族からの評価

数値データとアンケートの両方で効果を可視化し、改善が見られない項目については運用方法を見直します。

つまずきポイント: 効果測定をせず、なんとなく続けてしまう。または期待通りの効果が出ず導入を後悔する 対処法: 導入前に測定指標と目標値を明確に設定し、定期的に測定する習慣をつける。小さな改善でも数値で確認できれば継続のモチベーションになる


ICT導入でつまずきやすい3つの落とし穴と対策

落とし穴1:現場スタッフの抵抗

「今までのやり方で十分」「新しいことを覚えるのが面倒」という声が出て、導入が進まないケースです。

背景: 変化への不安、ITへの苦手意識、メリットが実感できない 対策: 導入前に「なぜ必要か」を丁寧に説明し、小さな成功体験を積み重ねる。まず記録時間が短縮される実感を持ってもらい、その後機能を広げていく。「使えない人を責めない」文化を作る

落とし穴2:セキュリティ管理の甘さ

タブレットの紛失、パスワードの使い回し、不適切な場所での閲覧など、情報漏洩リスクが高まります。

背景: セキュリティ意識の欠如、管理ルールの未整備 対策: 導入時に必ずセキュリティ研修を実施。端末持ち出しルール、パスワード管理、画面ロックの徹底などを明文化し、定期的にチェックする。万が一の情報漏洩に備えた対応マニュアルも準備

落とし穴3:費用対効果が出ない

高額なツールを導入したものの、使いこなせず費用だけがかさむケースです。

背景: 過剰なスペックのツール選定、活用不足、効果測定の未実施 対策: 身の丈に合ったツールを選び、まず1つの機能を完璧に使いこなす。効果が実感できてから機能を追加していく。月次で利用状況をモニタリングし、使われていない機能があれば原因を分析


よくある質問(FAQ)

Q1:小規模事業所でもICT導入は必要ですか?

A:利用者数が少なくても記録・請求業務は発生するため、導入メリットは十分あります。まず月額5,000円程度の記録ソフトから始め、効果を実感してから他のツールを検討するのがおすすめです。補助金を活用すれば初期費用の負担も軽減できます。

Q2:スタッフが高齢でITが苦手な場合はどうすればいいですか?

A:操作がシンプルなツールを選び、マンツーマンでの丁寧な研修を実施します。音声入力機能やタッチパネル操作など、直感的に使えるツールも増えています。「完璧にできなくても大丈夫」という雰囲気を作り、若手スタッフがサポートする体制を整えましょう。

Q3:導入後に定着しない場合はどうすればいいですか?

A:まず使われていない理由を現場に聞き取ります。操作の難しさ、時間がない、メリットが実感できないなど、原因に応じて対策を打ちます。運用ルールの見直し、追加研修の実施、一部機能の停止なども検討し、無理なく続けられる形を探ります。

Q4:セキュリティ面で心配ですが大丈夫でしょうか?

A:信頼できる事業者のツールを選び、運用ルールを徹底すれば大きなリスクは防げます。具体的には、端末へのパスワード設定、自動ログアウト機能の有効化、持ち出し時の管理簿記入、定期的なセキュリティ研修などを実施します。

Q5:補助金申請は難しいですか?

A:必要書類さえ揃えば、それほど難しくありません。事業計画書のテンプレートは公開されており、補助金申請支援サービスも利用できます。社労士や行政書士に依頼する方法もあり、費用は5万円〜15万円程度です。申請期限に注意し、余裕をもって準備しましょう。


まとめ

福祉現場のICT導入は、記録・請求業務の効率化、情報共有の円滑化、人材不足への対応という3つの大きな効果をもたらします。

成功の鍵は、現場の課題を正確に把握し、身の丈に合ったツールを選び、段階的に導入することです。まず記録ソフトやチャットツールなど小規模なICTから始め、効果を実感しながら見守りシステムや介護ロボットへと範囲を広げていきましょう。

2026年現在、補助金制度も充実しており、初期費用の負担を大幅に軽減できます。申請書類の準備には時間がかかるため、導入を決めたらまず補助金情報を確認し、早めに動き出すことをおすすめします。

「利用者との時間を大切にしたい」「スタッフの負担を減らしたい」という想いがあれば、ICTは必ず力になります。小さな一歩から始めて、働きやすい福祉現場を一緒に作っていきましょう。

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