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生成AIはビジネスや教育の現場で急速に存在感を増しているが、実際に使いこなしている人はまだ少数派だ。
千葉大学の研究チームが全国のインターネット利用者約1万3,000人を対象に調査した結果、生成AIの利用者は全体の約2割にすぎず、年齢・学歴・性別・デジタルリテラシーといった要因によって利用率に明確な差があることが判明した。
研究成果は2025年12月、国際学術誌「Telematics and Informatics」に掲載された。
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「使っている人」はどんな人か
2025年1月に実施されたこの調査では、18歳以上の成人13,367人を対象に、ChatGPT・Microsoft Copilot・Google Geminiといった生成AIサービスの直近1年間における利用経験を尋ねた。
その結果、利用者の割合は全体の21.3%にとどまった。
利用者に共通する特徴として、まず年齢の影響が顕著だ。
18〜54歳の若い世代は、75歳以上と比べて約1.4〜1.7倍の利用率を示した。
性別では男性が女性の約1.8倍と大きな差があった。
性格面では、新しいものを積極的に取り入れる傾向(開放性)が高い人ほど利用率も高かった。
学歴や職種も大きな要因で、大学卒業者は約1.4倍、大学院修了者は約1.7倍の利用率だった。
学生(約1.9倍)や専門職(約1.6倍)、都市部に住む人(約1.3倍)でも利用率が高い傾向が確認された。
さらに、日常的なデジタル機器の使い方とも強い相関があった。
スマートフォンやSNSを毎日使う人は、そうでない人と比べて約1.9倍も生成AIを活用していた。
デジタルリテラシーが高いほど利用率が上がるという関係も、データで裏付けられた。
使わない理由は「年代」によって違う
非利用者に理由を聞くと、最多は「必要性を感じない」(39.9%)で、次が「使い方がわからない」(18.5%)だった。
しかし、調査チームが年齢などの属性別に詳しく分析したところ、「使わない理由」は世代によって大きく異なることが明らかになった。
若い世代では、「魅力的なサービスがない」という点が利用の壁になっている一方、中高年層では「操作方法への不安」「セキュリティへの懸念」「利用環境が整っていない」といった理由が多く挙がった。
男性は必要性を感じていないわけではないが、「魅力的なサービスがない」「品質が信頼できない」という点が障壁になりやすいことも示された。
デジタルリテラシーが低い人ほど、操作方法の不明さや環境の未整備、既存の習慣から変えられないという理由を挙げる傾向があった。
AI格差が拡大する前に手を打てるか
今回の研究を率いた千葉大学予防医学センターの中込敦士准教授らは、生成AIを使えない状況は単に本人の関心や意欲の問題ではなく、年齢・教育・デジタル環境に起因する構造的な問題だと指摘する。
この格差が放置されれば、学習機会・労働生産性・情報へのアクセスといった面での不平等がさらに拡大しかねない。
研究チームは今後、生成AIの利用が個人の健康・就労・社会参加にどう影響するかを長期的に追う調査の必要性を強調するとともに、年代やスキルに応じた支援策と、誰にとっても使いやすいAIサービスの設計が求められると提言している。
なお、今回の調査はインターネット上で実施されたため、普段からデジタル機器をほとんど使わない層が対象に含まれにくく、実際のAI格差はこの調査結果よりも大きい可能性があることも、研究チームは自ら認めている。
参照元: PR TIMES(国立大学法人千葉大学) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001102.000015177.html

