「早期119番」だけでは不十分――介護施設での心停止、救命を分ける2つの要因とは

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介護施設で心停止が起きたとき、救急車を早く呼ぶほど助かりやすい――そう思われがちだが、実際にはそう単純ではないことが、新潟医療福祉大学の研究チームによって明らかになった。

通報のタイミングや心停止が起きた時間帯によって、生存率に大きな差が生じることが、国内2万7千件超のデータ分析から示された。


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国際誌に掲載された大規模な全国調査

新潟医療福祉大学大学院(救急救命学分野)の外山元講師らの研究グループは、2026年2月9日、国際的な学術誌「Scientific Reports」(Nature関連誌)に研究論文を発表した。

研究では、2017年から2022年にかけて全国の介護施設で発生した心停止のデータを後ろ向きに分析。
対象は65歳以上で、心停止の瞬間が目撃されており、かつ心臓に原因があると推定される事例に限定した。

有効症例数は27,222件にのぼる。

「心停止前通報」が持つ意外な落とし穴

研究チームが特に注目したのが、119番通報のタイミングだ。
心停止が確認されるに通報が行われた「心停止前通報(pre-arrest call)」と、
確認に通報した「心停止後通報(post-arrest call)」に分類し、それぞれの転帰を比較した。

全体の約4割(39.6%、10,789件)が心停止前通報だった。
一見、早期通報として望ましいように思えるが、実態は異なった。

心停止前通報のケースでは、居合わせた職員らが心肺蘇生(CPR)を実施した割合が43.3%にとどまり、心停止後通報(84.4%)と比べて約半分の水準だった。
さらに、1か月後の生存率も、心停止前通報の方が統計的に有意に低いことが多変量解析でも確認された(調整オッズ比0.78)。

研究チームはこの背景として、心停止前に通報した場合、スタッフが「救急隊の到着を待つ」という意識になりやすく、CPRへの移行が遅れる可能性を指摘している。
通報後も消防の指令員から口頭指導を受けながら蘇生を続ける体制が、より重要だという示唆だ。

夜間の心停止は生存率が半分以下

もう一つの重要な知見が、発生時間帯による生存率の差だ。
日中(昼間帯)の1か月生存率が8.0%であったのに対し、夜間は3.3%と、実に半分以下にとどまった。

夜間発生は、生存率低下と独立して関連することが多変量解析でも示されている(調整オッズ比0.44)。

夜勤帯は施設内の人員が手薄になりやすく、心停止への初期対応が遅れるリスクが高まる。
この数字は、夜間の人員体制や訓練機会の充実が、介護現場における重要な課題であることを浮き彫りにしている。

現場への提言

研究を主導した外山講師は、今回の成果について「早期通報だけでは転帰改善に十分でない可能性がある」と述べており、通報後も現場でCPRを継続できる運用の仕組みや、夜勤体制の強化が鍵になると訴えている。

高齢化が急速に進む日本において、介護施設での心停止への対応力を高めることは、社会全体の急務といえる。
本研究は、その具体的な方策を議論するための重要な根拠を提供するものだ。


参照元

本記事は以下のプレスリリースをもとに、内容を独自に再構成して作成しました。

プレスリリース:
新潟医療福祉大学(NSGグループ)「介護施設入所者の心停止は『119通報のタイミング』と
『発生時間帯』が救命を左右!」(PR TIMES、2026年2月24日公開)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001985.000032951.html

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