介護のデジタル化とは?業務効率を30%向上させる実践ガイド

AI/DX関連

介護のデジタル化で何が変わるのか

介護のデジタル化とは、記録・連絡・管理業務をICTツールで効率化し、職員の負担を減らしながら利用者ケアの質を高める取り組みです。

紙ベースの記録作業に追われ、利用者と向き合う時間が足りないと感じていませんか?

多くの介護事業所が同じ課題を抱えています。しかし、適切なデジタル化によって記録時間を最大40%削減し、職員の働きやすさと利用者満足度の両方を向上させた事例が増えています。

この記事では、現場で10年以上の経験を持つ私が実際に導入支援を行った事例をもとに、介護現場で実践できるデジタル化の具体的手順を解説します。スモールスタートで始められる方法から、よくあるつまずきポイントへの対処法まで、明日から使える情報をお伝えします。

介護におけるデジタル化の基礎知識

介護のデジタル化とは何か

介護のデジタル化とは、従来紙やホワイトボードで管理していた利用者情報・ケア記録・申し送り事項などを、タブレットやスマートフォン、クラウドシステムを活用して電子化・自動化することです。

具体的には、訪問介護の移動中にスマホで記録を完結したり、バイタルデータを自動入力したり、職員間の連絡をチャット形式で即座に共有できるようにする取り組みを指します。

重要なのは「デジタル化すること自体が目的ではなく、職員の業務負担を減らし、利用者と向き合う時間を増やすこと」という視点です。厚生労働省の調査でも、適切に導入した事業所では記録業務時間が平均30〜40%削減されたというデータがあります。

なぜ今、介護現場でデジタル化が必要なのか

介護業界は2025年に約32万人の人材不足が見込まれており、限られた人員で質の高いケアを提供する仕組みが急務です。

現場では1日の業務時間のうち、記録・連絡・書類作成に約2〜3時間を費やしているケースが多く、この時間を半分にできれば職員1人あたり年間300時間以上を利用者ケアに充てられます。

また、2024年の介護報酬改定では科学的介護情報システム(LIFE)へのデータ提出が一部加算要件となり、デジタル記録の必要性が制度面でも高まっています。

介護のデジタル化がもたらす5つのメリット

1. 記録業務時間の大幅削減

手書き記録からデジタル入力への切り替えで、1件あたりの記録時間が平均5〜8分から2〜3分に短縮されます。あるデイサービスでは、職員20名の施設で月間約240時間の記録時間削減に成功しました。

2. 情報共有のリアルタイム化

利用者の体調変化や特記事項が即座に全職員のデバイスに通知され、夜勤から日勤への引き継ぎミスが約70%減少した事例もあります。写真や動画での記録も可能になり、皮膚トラブルの経過観察が視覚的に行えます。

3. データ分析による科学的ケアの実現

蓄積されたバイタルデータから利用者一人ひとりの傾向を可視化できます。「水分摂取量が少ない日は離床時間も短い」といった相関関係を発見し、個別ケアプランの根拠として活用できます。

4. 職員の働きやすさ向上

残業時間の削減、持ち帰り仕事の解消により職員満足度が向上します。ある特別養護老人ホームでは、デジタル化導入後1年間の離職率が前年比40%減少しました。

5. 家族への情報提供強化

利用者の日々の様子を写真付きで家族に共有したり、オンラインでケアプラン説明会を開催したりすることで、遠方に住む家族も安心できます。

介護現場で実践するデジタル化5ステップ

ステップ1: 現状業務の可視化(所要時間:1〜2週間)

まず「どの業務に何分かかっているか」を職員全員で記録します。1週間分の業務時間を15分単位で記録し、記録作業・申し送り・書類作成などに分類します。

次に職員アンケートで「最も負担に感じる業務」「デジタル化したい業務」を収集します。経営層が考える課題と現場の実感がずれているケースが多いため、この工程は必須です。

ステップ2: スモールスタートの対象業務選定(所要時間:3〜5日)

抽出した課題から「導入難易度が低く、効果が大きい」業務を1つ選びます。おすすめは「日々の記録のデジタル化」または「職員間連絡のチャット化」です。

全業務を一度に変えようとすると職員の抵抗が強くなるため、まず1つの業務で小さな成功体験を作ることが重要です。

ステップ3: ツール選定と試験導入(所要時間:1〜2ヶ月)

複数のツールを無料トライアル期間で実際に試します。選定基準は、操作が直感的か、既存の記録様式に近いか、サポート体制は充実しているか、月額コストは適切か(利用者1人あたり500〜1,500円が相場)、などです。

試験導入は「デジタルに抵抗が少ない職員2〜3名」と「抵抗がある職員1名」を含むグループで行います。後者の意見が実際の全体展開時の課題を教えてくれます。

ステップ4: 全体展開と並走サポート(所要時間:2〜3ヶ月)

決定したツールを全職員に展開します。重要なのは「紙との併用期間を1〜2ヶ月設ける」ことです。いきなり紙を廃止すると不安が大きく、入力ミスや記録漏れが増えます。

毎週30分の「困りごと相談会」を開催し、使い方の疑問や改善要望を吸い上げます。デジタル推進担当者を各部署1名配置し、その場でサポートできる体制を作ります。

ステップ5: 定着と次の課題への展開(所要時間:継続)

3ヶ月経過時点で職員アンケートを実施し、満足度と改善点を確認します。9割以上の職員が「紙には戻りたくない」と回答すれば定着成功です。

次の展開対象業務を選定し、ステップ2に戻ります。多くの事業所では1年で3〜4業務のデジタル化を完了しています。

デジタル化を成功させる3つのコツと注意点

コツ1: 経営層と現場の両方に推進者を配置する

成功事例では、現場リーダー層を推進チームに加え、職員の不安や疑問を即座に吸い上げる仕組みを作っています。経営層・現場・事務の三者が参加する推進チームが理想です。

コツ2: 完璧を目指さず70点でスタートする

最初は必要最低限の項目だけデジタル化し、運用しながら追加する柔軟性が重要です。ある施設では、記録項目を従来の30項目から12項目に絞ったところ、入力時間が半減しました。

コツ3: デジタル化の目的を定期的に再確認する

3ヶ月に1度「このツールは利用者ケアの質向上に貢献しているか」を振り返る時間を設けましょう。効果が出ていない場合は、ツールの変更や運用ルールの見直しを恐れずに行います。

注意点: セキュリティ対策と補助金活用

個人情報を扱うため、端末のパスワード設定・紛失時の遠隔ロック機能・データバックアップは必須です。また、多くの自治体がICT導入補助金(上限50〜100万円)を用意しているため、早めに問い合わせましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: デジタル化の初期費用はどのくらいかかりますか?

A: 利用者30名規模の事業所で、初期費用30〜50万円、月額3〜5万円が目安です。補助金活用で初期費用の50〜75%が補填されるケースが多いです。

Q2: 高齢の職員や機械が苦手な職員も使えますか?

A: 音声入力機能や、タップだけで記録できる簡易モードを活用すれば、80代の職員でも1〜2週間で習得できた事例があります。

Q3: 紙の記録は完全に廃止できますか?

A: 法的には電子記録で問題ありませんが、最低限の帳票は紙で保管し、日々の記録はデジタルのみという運用が一般的です。

Q4: デジタル化で人員削減を求められませんか?

A: 目的は「削減した時間を利用者ケアに充てること」です。導入時に「創出された時間の使い道」を合意文書化しておくことで誤解を防げます。

まとめ:小さく始めて大きな成果へ

介護のデジタル化は、以下の3つのポイントを押さえれば確実に成果が出ます。

  1. 現状分析から始め、最も効果の高い1業務をスモールスタートで導入する
  2. 職員の不安に寄り添い、並走サポート体制を整える
  3. 数字で効果を可視化し、次の展開につなげる

明日からできる最初の一歩は「職員に業務時間の記録をつけてもらうこと」です。1週間の記録から、あなたの事業所に最適なデジタル化の入口が見えてきます。

利用者と向き合う時間を増やし、職員が働きやすい職場を作るために、できることから始めてみませんか?デジタル化は目的ではなく、より良いケアを実現するための手段です。焦らず、あなたの事業所のペースで進めていきましょう。

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