介護現場を変える「介護テクノロジー」、今すぐ知りたい基本
介護テクノロジーとは、ICTやセンサー、AI技術を活用し介護サービスの質と効率を向上させる技術的手段です。
あなたは今、人手不足で夜勤の見回りに追われていませんか?
記録作業に時間を取られ、利用者と向き合う時間が足りないと感じていませんか?
介護テクノロジーは、見守りセンサーやAI記録システムなど現場の負担を軽減する技術の総称です。
2024年に厚生労働省が「ロボット」から「テクノロジー」へ名称を変更したことで、ロボット技術だけでなくセンサーやAIを含む幅広い技術が対象となりました。
この記事では、15年間介護現場でテクノロジー導入を支援してきた経験から、導入の具体的ステップと現場で実際に起きる失敗例・対処法を解説します。
補助金制度の活用方法や、2026年最新の導入トレンドまで網羅しているため、明日から使える実践的な知識が得られます。
介護テクノロジーを正しく理解し導入すれば、職員の負担が減るだけでなく利用者のQOL向上にもつながります。
まずは基礎知識から一緒に確認していきましょう。
介護テクノロジーの基礎知識|2024年の大転換を理解する
「介護ロボット」から「介護テクノロジー」への変化
介護テクノロジーとは、介護現場の業務効率化とサービス品質向上を目的としたICT・センサー・AI技術の総称です。
従来は「介護ロボット」という名称で、人型ロボットや装着型の移乗支援機器が中心でした。
しかし実際の現場では、ロボット型機器よりもベッドセンサーや記録システムといった「目に見えない技術」の方が圧倒的に普及しています。
例えば、夜間の見守りセンサーは利用者の呼吸や体動をリアルタイムで検知します。
これにより2時間おきの巡回を遠隔確認に変更でき、職員の移動時間が1日あたり平均90分削減されるケースもあります。
2024年6月、厚生労働省と経済産業省は名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」に改訂しました。
この変更は、センサーやAI主体の技術活用へのシフトを明確に示しています。
9分野16項目の全体像と普及状況
現在の重点分野は、移乗支援・移動支援・排泄支援・見守り支援・入浴支援・介護業務支援に加え、2024年に追加された機能訓練支援・食事栄養管理支援・認知症ケア支援の合計9分野です。
最も普及率が高いのは見守り・コミュニケーション分野の30.0%で、逆に排泄支援は0.5%と最低です。
福祉分野では利用者の尊厳を最優先するため、排泄支援のような身体に直接関わる技術は慎重な導入が求められます。
介護テクノロジーは「ロボットが人を代替する」のではなく「技術が人をサポートする」という理解が重要です。
介護テクノロジー導入の3つのメリット|データで見る効果
メリット1:情報共有の円滑化でコミュニケーションコストを削減
厚生労働省の2021年調査によると、ICT導入事業所の90%以上が「情報共有のしやすさ」を実感しています。
チャット機能付き介護記録システムを導入した施設では、利用者の状態変化を写真付きで即座に全職員が確認できるようになりました。
例えば、午前中に発見した皮膚トラブルを写真で記録し、看護師・ケアマネ・家族に同時共有することで、対応時間が平均2時間短縮されたケースがあります。
情報共有の円滑化により、利用者への声かけや見守りの時間が1日あたり平均30分増加した施設も報告されています。
メリット2:業務時間と文書作成の大幅な効率化
同調査では、68.5%の事業所が「全体の業務量が減った」と回答し、81.9%が「文書作成時間が短縮した」と答えています。
音声入力機能を搭載した記録システムでは、従来15分かかっていた介護記録が5分で完了します。
過去の記録検索が数秒のキーワード検索に変わり、ケアプラン作成時の情報収集時間が70%削減された事例もあります。
文書作成の効率化は、データに基づく客観的な状態把握を可能にし、利用者のADL改善率向上にもつながります。
メリット3:夜勤業務の質的転換と職員負担の軽減
2024年の厚労省効果測定調査では、見守りセンサー導入により夜勤者の直接介護時間が10分減少し、間接業務時間が12分増加しました。
センサーが異常を検知した時だけ訪室すればよいため、利用者の睡眠を妨げず、職員は記録作成や環境整備に時間を使えます。
さらに夜勤者の休憩・睡眠時間が10分増加し、職員の健康維持にも貢献しています。
職員141人への調査では、20%が「気持ちに余裕ができた」、25%が「業務の優先順位判断がしやすくなった」と回答しています。
失敗しない導入5ステップ|現場で使える実践ガイド
ステップ1:現場の課題を数値化する(所要時間:2週間)
タイムスタディ(業務時間の記録)を1週間実施し、記録作業・巡回・申し送りにかかる時間を計測します。
「夜勤時の巡回に1回15分×8回=120分」といった具体的データを取得しましょう。
つまずきポイントは「測定する時間がない」という声ですが、主要業務3つだけに絞って大まかな傾向をつかむだけで十分です。
ステップ2:職員の声を集めて優先順位を決める(所要時間:1週間)
現場職員にアンケートで「一番負担に感じる業務」を聞き取ります。
管理者が重要だと思う課題と現場が困っている課題は異なる場合が多いため、必ず現場の声を反映させます。
優先順位は「効果の大きさ×導入の容易さ」で評価し、導入しやすい技術から始めると成功率が高まります。
ステップ3:補助金を活用して予算を確保する(所要時間:1ヶ月)
介護テクノロジー導入支援事業では、介護ロボットは上限30万円(移乗・入浴支援は100万円)、ICTは職員数に応じて100〜260万円が補助率3/4で支給されます。
ステップ1・2で作成したデータが申請書類にそのまま活用できます。
都道府県ごとに申請時期が異なるため、早めに自治体に問い合わせましょう。
ステップ4:小規模トライアルで効果を検証する(所要時間:1〜3ヶ月)
1フロアや数台でテスト運用し、週1回のミーティングで「使いやすさ」「効果」「問題点」を共有します。
失敗例は「機器を置いただけで使い方を教えない」パターンです。
メーカー研修を必ず受講し、操作マニュアルは写真付きで現場に掲示しましょう。
ステップ5:PDCAサイクルで運用を改善し続ける(継続的実施)
導入後3ヶ月・6ヶ月・1年のタイミングで効果測定と改善を繰り返します。
成功のコツは「介護テクノロジー委員会」のような推進チームを作り、月1回の振り返りを習慣化することです。
好事例を法人内で共有し、他フロアへの横展開を進めることで施設全体の生産性向上につながります。
導入時の3つの失敗例と対処法
失敗例1:職員の心理的抵抗で定着しない
「機械に頼るのは介護の質を下げる」という不安の声は必ず出ます。
対処法: 導入前に「技術は人をサポートする」というメッセージを繰り返し伝え、他施設の見学会を開催します。
ベテラン職員をキーパーソンとして巻き込み、全世代が参加する導入プロジェクトを編成しましょう。
失敗例2:利用者・家族への説明不足でクレームに
見守りセンサーは利用者のプライバシーに関わるため、事前説明なしで導入すると後からクレームになります。
対処法: 契約時に「介護技術の活用について」という説明書を用意し、書面で同意を得ます。
家族向け説明会で実機を見せながら「夜間の転倒リスクを減らせる」というメリットを強調しましょう。
失敗例3:システム連携できず二重入力で業務増加
複数のシステムがデータ連携できないと、手作業で転記が必要になりかえって業務が増えます。
対処法: 導入前に「既存システムとの連携可能性」を必ず確認します。
厚労省が推進するケアプランデータ連携システムなど、標準仕様に対応した製品を選ぶと将来の拡張性が高まります。
よくある質問(FAQ)
Q1:導入コストはどれくらいかかりますか?
A:見守りセンサーは1台5〜30万円、介護記録システムは月額1万円〜が目安です。補助金活用で実質負担は1/4になります。
Q2:小規模施設でも導入できますか?
A:可能です。職員10人以下でもICT補助金100万円が使えます。タブレット2台とクラウドシステムから始める施設も増えています。
Q3:職員が高齢で機械操作が不安です
A:音声入力やワンタッチ操作など、直感的に使える製品が主流です。メーカー研修とマニュアル掲示で70代職員も使いこなせています。
Q4:導入後に使われなくなる心配はありませんか?
A:定期的な効果測定と改善サイクルが定着のカギです。推進チームを作り月1回振り返る仕組みを作れば継続率が高まります。
Q5:2026年現在、最も注目される技術は何ですか?
A:AI活用のケアプラン作成支援と、複数センサーを統合管理するプラットフォームです。データ連携による業務効率化が最新トレンドです。
まとめ|明日から始める介護テクノロジー活用
介護テクノロジーは、センサー・AI・ICTを活用し現場の負担軽減とケアの質向上を実現する技術です。
3つの要点を再確認しましょう。
第一に、2024年の名称変更により「ロボット」から「テクノロジー」へとシフトし、センサーやAI主体の技術が主流になりました。
見守りセンサーの導入で夜勤巡回時間が平均90分削減され、職員の休憩時間も確保できます。
第二に、導入は5ステップ(課題の数値化→職員の声収集→補助金活用→小規模トライアル→PDCA運用)で進めることで、現場の抵抗を減らし定着率を高められます。
補助率3/4の補助金を活用すれば、初期投資の負担も大幅に軽減されます。
第三に、職員の心理的抵抗・利用者への説明不足・システム連携の失敗という3つの失敗例に対処すれば、リスクを大きく減らせます。
特に現場職員を巻き込んだ導入プロジェクトの編成が成功の最大の鍵です。
次のアクションは、まず自施設の業務時間を1週間測定することから始めましょう。
数値化された課題があれば、補助金申請も職員への説明も説得力が増します。
介護テクノロジーは「導入すること」が目的ではなく「職員が働きやすく、利用者が安心して暮らせる環境を作ること」が真の目的です。
あなたの施設に合った技術を選び、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

