介護士不足現状、統計開始後初めて減少|2026年度240万人必要の深刻化

福祉経営

2026年度に必要な介護職員数は約240万人ですが、統計開始後初めて「介護職員数が減少」するという、極めて深刻な現状が2025年に報告されました。

2022年度の約215万人から、実は2025年度には微減という状況です。つまり、「採用が進まない+離職が続く=ネット減少」という、かつてない警告信号です。

本記事では、介護士不足の現状を統計データで可視化し、地域別・職種別の差異を詳しく解説します。なぜこの危機が起きたのか、そして事業所が今から準備すべき対応方法を明らかにします。


介護職員「統計開始後初の減少」が示す深刻な現実

職員数減少という前代未聞の事態が発生

厚生労働省の令和5年度(2023年度)介護サービス施設・事業所調査によると、介護職員数が統計開始後初めて減少したことが報告されました。これは2022年度の約215万人から、わずかですが減少しており、「採用できない」「離職が止まらない」という、介護業界の崩壊的な状況を象徴しています。

従来、介護職員数は毎年1~3万人程度の増加傾向にありました。それが「初めて減少」したのです。この意味するところは極めて深刻です。

必要数240万人と現状の致命的な乖離

一方、2026年度に必要な介護職員数は約240万人と推計されています。2022年度の215万人から約25万人の増加が必須という計算ですが、現状は「減少」しています。つまり、必要と現状のギャップは「25万人以上」に拡大していることになります。

年間6.3万人のペースでの採用が必要とされていますが、実現不可能性が高まっています。

有効求人倍率は依然4倍超で改善の兆し未来

介護関係職種の有効求人倍率は依然として3~4倍以上で推移しており、全職業平均1.15倍と比較して圧倒的に高い状態が続いています。つまり、「企業側が求人を出しても、求職者が応募しない」という致命的なミスマッチが続いているのです。

離職率は低下傾向(現在13.6%)にありますが、採用が進まない以上、「既存職員の離職防止」だけでは対応不可能です。


なぜ職員数が減少したのか:採用困難と離職の同時進行

採用母数の激減:潜在的な労働人口が枯渇

地域ごとにほぼ全ての地域で生産年齢人口は減少し、都市部では高齢人口が増加、過疎地域では高齢人口は減少という現象が起きており、どの地域でも働き手そのものが減少しています。

少子高齢化により、2017年の労働人口6,530万人が2040年に5,245万人(約20%減少)へと劇的に減少する見通しの中、介護業界も「採用すべき人材層が存在しない」という構造的問題に直面しています。

不本意な採用停止:採用基準の引き上げ

一部事業所では「人手不足が続くなら、採用基準を上げて質を確保する」という判断をしています。結果として「採用件数は減少するが、配置した人材の質は維持する」という選択をしている事業所も存在します。

これが「職員数減少」の背景にある可能性があります。

仕事のきつさと給与の乖離が加速

介護職の有効求人倍率が高い理由は、「求職者が応募しない」ことです。その理由は、給与と業務内容の乖離です。

介護職員の平均給与は約271,000円(全産業平均約330,400円との差6万円以上)であり、処遇改善加算による上昇もあり、差は多少縮小しましたが、業務内容の厳しさに見合っていません。

結果として、「採用されても2~3ヶ月で離職」という早期離職が増えており、採用の効率性が低下しています。


地域別・職種別で異なる介護士不足の現状

都市部の深刻さ:採用競争が過熱

東京都では1人の求職者に対して約5件の求人があり、神奈川県のように若干低いところもあるが、どの地域でも介護人材の確保が大きな課題

東京の例では、2026年度に必要な介護人材212,525人に対し、現状推移では184,367人と、28,158人不足します。

一方、栃木県では必要数35,271人に対し現状27,196人と、8,075人の不足です。相対的には栃木県の採用困難度が高い(採用倍率では栃木が東京より高い)ですが、絶対数では東京の方が深刻です。

訪問介護の危機:職種別の不均等な人手不足

訪問介護員の人手不足感は全職種で最も深刻(81.2%以上)です。理由は「定員概念がない」という特性があり、採用できなければサービス時間そのものが縮小するためです。

夜間訪問介護員の平均年齢は60代が半数以上を占めており、「5~10年で現場がどうなるか」という懸念が出ています。

入所系施設との職員確保の差

特別養護老人ホームなど入所系施設は、配置基準に基づいた「必要職員数が明確」であり、採用が進みやすい傾向にあります。一方、訪問介護は柔軟な採用が可能だが、時給制などで「安定的な雇用」が提供しにくく、採用困難性が高まります。


職員数減少の影響:サービス低下と事業所崩壊の危機

利用者サービスの実質的な低下

職員数が減少すれば、既存職員の一人当たり業務量が増加します。食事介助、排泄介助、入浴介助といった基本的なサービスが、時間制約により雑になる傾向が生じます。

結果として、利用者のQOL低下、誤嚥や転倒などのリスク増加が懸念されます。

既存職員の過重労働と連鎖的離職

「職員が減少→残った職員の負担増→さらに離職が加速」という悪循環が生じます。この連鎖は、単年度の職員数減少より、数年単位での複合的な人員欠損を招きます。

事業所の経営危機

利用者対応時間が不足すれば、訪問介護の場合「予定していたサービス提供ができない」という事態が発生します。サービス提供不可による収益減少、それに伴う給与原資減少が起き、さらなる離職を招きます。最悪のケース、事業所閉鎖に至ります。


長期的課題:2040年まで続く人手不足構造

2040年度57万人不足:相対不足率の悪化

2040年度に必要な介護職員約272万人に対し、供給見込みは約215万人と推計されており、差は約57万人(相対不足率約21%)になります。

これは「10名体制が必要な現場に8名しか配置できない」という状況を意味し、質の高いサービスを提供することが不可能になります。

2040年以降の緩和はない:高齢者ピークアウト後も不足は続く

高齢者数が2040年代にピークアウトするため、「必要な介護職員数」は減少方向になると予想されます。しかし、「供給される介護職員数」がそれ以上に減るため、相対的な人手不足率は改善しません。

つまり、「人数的には減るが、相対的には足りない」という矛盾した状況が続くのです。


よくある質問(FAQ)

Q1:職員数が「初めて減少」したというのは、本当に危機的か?

A:極めて危機的です。従来は「毎年増加」という前提で対策が立てられてきました。それが「減少」した意味は、「採用の停止」もしくは「離職の加速」を示しており、構造的転換点に到達したことを意味します。

Q2:有効求人倍率4倍超が続くのに、なぜ採用に成功する事業所が存在するのか?

A:採用成功事業所は、「処遇改善加算の最大活用」「職場環境の徹底改善」「キャリアパス明示」といった、複合的な施策を実装している場合が多いです。つまり、施策の有無で大きな差が生じています。

Q3:職員数減少は、今後も続くのか?

A:可能性は高いです。出生数がこれ以上減少しない限り、労働人口の減少トレンドは変わりません。ただし、外国人材受け入れ拡大、介護ロボット導入による相対的人員確保などにより、緩和の可能性はあります。

Q4:介護職員数が減少すれば、介護報酬は上がるのか?

A:上昇圧力が高まるでしょう。サービス提供が不可能になれば、事業所側が「人員確保のための待遇改善予算が必要」と主張でき、介護報酬改定での加算上昇につながりやすくなります。

Q5:事業所はどう対応すべきか?

A:職員数減少が続く前提で、「定員の引き下げ」「サービス提供時間の短縮」「業務効率化の加速」といった現実的な対応を同時進行させることが重要です。


まとめ

介護職員数の統計開始後初の減少は、介護業界が「新段階」に入ったことを示しています。2026年度に必要な240万人に対し、現状は減少傾向—つまり、必要と現状のギャップは急速に拡大しています。

採用困難、離職防止、長期構造的人員不足という三重の課題が同時に進行する中、事業所は「今から準備する時間」をもう失いかけています。

職員数減少が現実化した以上、「採用で完全に補える」という期待は捨て、効率化と現有人員の定着に全力投下することが、2026年以降の事業継続を約束する現実的な戦略です。

地域や職種による差異を理解し、自事業所に最適な対応を今から設計することが急務です。

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