介護現場でICTをどう活用すべきか悩んでいませんか?
介護現場のICT活用とは、情報通信技術を用いて記録業務の自動化、見守りシステムによる安全確保、チャットツールでの情報共有など、人手不足を補いながらケアの質を高める取り組みです。
本記事では、実際に効果を上げた7つの活用例と、失敗しない導入手順を3ステップで解説します。小規模施設でも月20時間の業務削減を実現した事例から学んだ、つまずきポイントと対処法も紹介します。
筆者は介護施設でのICT導入支援を5年間経験し、延べ30施設の業務改善をサポートしてきました。現場の声を反映した実践的な内容をお届けします。
この記事を読めば、あなたの施設に最適なICT活用方法が明確になり、明日から具体的なアクションを起こせます。
ICT活用とは?介護現場での基本的な意味
ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略称で、デジタル機器やソフトウェア、通信ネットワークを活用して情報の共有や業務の効率化を図る技術です。
介護現場では、タブレット端末での記録入力、センサーによる見守り、クラウドでの情報共有など、日々の業務をサポートする形で導入されています。従来の紙とペンによる記録作業をデジタル化することで、記録時間が1件あたり5分から2分に短縮された事例もあります。
ITとの違いは、ICTが「コミュニケーション」を重視している点です。単なる技術導入ではなく、職員間や多職種との連携を円滑にすることが目的となります。例えば、訪問介護スタッフが外出先からリアルタイムで利用者情報を確認し、事務所と即座に連絡を取り合える環境を構築できます。
2025年には約32万人の介護人材不足が見込まれており、限られた人員で質の高いサービスを提供するためには、ICT活用が不可欠な時代になっています。
介護現場で効果を上げているICT活用例7選
1. 記録業務のデジタル化
介護記録をタブレットやスマートフォンで入力するシステムです。手書き記録の転記作業が不要になり、記録時間が約40%削減されます。
北海道のある施設では、モバイル端末導入により、夜勤帯の記録業務が従来の60分から35分に短縮されました。入力した情報は自動で集計され、月次報告書の作成時間も80%削減されています。
音声入力機能を活用すれば、ケア中の気づきを即座に記録でき、記録漏れも防げます。
2. 見守りシステムによる安全確保
ベッドセンサーやカメラを使い、利用者の離床や徘徊をリアルタイムで検知するシステムです。転倒事故のリスクを約60%低減できます。
長崎県の施設では、居室に人感センサーとカメラを設置し、スマートフォンに通知が届く仕組みを構築しました。これにより、不必要な巡回が減り、夜間の訪室回数が1晩20回から8回に減少しています。
録画機能により事故の経緯も確認でき、再発防止策の立案に役立ちます。
3. 排泄予測機器の導入
超音波センサーで膀胱の状態を測定し、排泄タイミングを予測する機器です。適切な声かけにより、失禁が約50%減少します。
鹿児島県の施設では、排泄予測機器の通知をもとにトイレ誘導することで、利用者の尊厳保持とオムツ使用量の削減を両立させました。夜間の適切なタイミングで介助できるため、睡眠の質も向上しています。
定時誘導から個別対応への転換により、スタッフの心理的負担も軽減されます。
4. チャットツールでの情報共有
職員間の連絡をチャット形式で行うツールです。申し送り漏れが約70%削減され、緊急時の連絡も迅速化します。
青森県の施設では、全職員にスマートフォンを配布し、チャットツールを導入しました。写真やメモの共有機能により、口頭での伝達ミスが激減し、職員同士のコミュニケーションも活性化しています。
既読確認機能があるため、情報が確実に伝わったかを確認できる安心感もあります。
5. シフト作成の自動化
職員の希望や資格、勤務条件を考慮して自動でシフトを作成するシステムです。作成時間が従来の8時間から1時間に短縮されます。
北海道の施設では、自動作成システム導入により、管理者の負担が大幅に軽減されました。法定休日や連続勤務の制限も自動でチェックされるため、労務管理のミスも防げます。
変更が生じた際も、条件を満たす代替案が即座に提示されます。
6. オンライン面会システム
タブレットやパソコンを使い、遠方の家族とビデオ通話で面会するシステムです。コロナ禍以降、多くの施設で定着しています。
青森県の施設では、月に1回のオンライン面会を実施し、家族の満足度が向上しました。利用者の表情や様子を直接確認できるため、家族の安心感につながっています。
録画機能を使えば、後日家族が様子を確認することも可能です。
7. 介護計画書の自動生成
アセスメント情報をもとに、AIが介護計画書の原案を作成するシステムです。作成時間が約50%削減されます。
茨城県の施設では、タブレットで入力した情報から計画書が自動生成され、ケアマネジャーの業務効率が向上しました。過去のデータと照合して最適なケア内容を提案する機能もあり、計画の質も向上しています。
最終確認は人が行うため、個別性のあるケアも実現できます。
ICT活用を成功させる3ステップの実践手順
ステップ1: 現状分析と目標設定(所要時間2週間/難易度★☆☆)
まず、施設内のどの業務に時間がかかっているかを洗い出します。1週間かけて職員にアンケートを実施し、記録業務、申し送り、シフト作成など、負担の大きい業務を特定しましょう。
次に、具体的な数値目標を設定します。「記録時間を30%削減」「夜間の巡回回数を半減」など、測定可能な指標を決めることが重要です。茨城県のある施設では、「月間残業時間20時間削減」を目標に掲げ、達成しています。
つまずきポイントは、職員の意見がバラバラで優先順位が決まらないことです。この場合、管理者が「今年度は記録業務に集中」など、明確に方向性を示すことで解決できます。
ステップ2: 適切なツール選定と小規模導入(所要時間1ヶ月/難易度★★☆)
目標に合わせて、記録システム、見守り機器、チャットツールなど、適切なICTツールを選びます。複数のサービスを比較検討し、無料トライアルを活用しましょう。
選定のポイントは、操作性、サポート体制、既存システムとの連携性の3点です。長崎県の施設では、操作が簡単で電話サポートが充実しているツールを選び、高齢の職員でもスムーズに使えるようになりました。
まずは1つのフロアや1つの業務から試験導入します。全館一斉導入は混乱を招くため、成功体験を積み重ねることが大切です。
つまずきポイントは、高機能すぎて使いこなせないことです。最初はシンプルな機能から始め、慣れてから拡張していくアプローチが効果的です。
ステップ3: 全体展開と効果測定(所要時間3ヶ月/難易度★★★)
試験導入で効果を確認したら、施設全体に展開します。導入前に全職員向けの研修を2回実施し、操作方法だけでなく「なぜ導入するのか」という目的も共有しましょう。
青森県の施設では、若手職員を「ICTサポーター」に任命し、困っている職員を即座にサポートする体制を整えました。この結果、導入後1ヶ月での定着率が90%を超えています。
月に1回、効果測定を行い、記録時間の推移や残業時間の変化をグラフで可視化します。数値で効果が見えると、職員のモチベーションも向上します。
つまずきポイントは、一部の職員が従来のやり方に固執することです。この場合、無理に変更を強要せず、ICT活用で楽になった職員の声を共有することで、自然と移行が進みます。
ICT活用を定着させる3つのコツと注意点
コツ1: 職員の不安を事前に解消する
「機械は苦手」「覚えられない」という不安を持つ職員は多いです。導入前に個別面談を実施し、不安を聞き取りましょう。
北海道の施設では、操作マニュアルを大きな文字と図解で作成し、各フロアに配置しました。さらに、困ったときにすぐ聞ける「ICT相談窓口」を設置し、心理的ハードルを下げています。
年齢や経験に関わらず、誰でも使えるツール選びが成功の鍵です。
コツ2: 段階的に導入範囲を広げる
一度に全機能を使おうとすると、職員が混乱します。最初の1ヶ月は記録機能のみ、2ヶ月目から情報共有機能を追加、というように段階的に進めましょう。
鹿児島県の施設では、3ヶ月かけて徐々に機能を拡張し、最終的に7つの機能を活用できるようになりました。焦らず着実に進めることが、長期的な定着につながります。
コツ3: 費用対効果を定期的に検証する
導入後は、投資額に見合った効果が出ているかを定期的に確認します。残業代の削減額、事故件数の減少、職員満足度の向上など、複数の指標で評価しましょう。
長崎県の施設では、月次で効果を検証し、導入3ヶ月後には残業代削減により、システム利用料の80%を回収できています。
注意点1: セキュリティ対策を徹底する
利用者の個人情報を扱うため、パスワード管理、端末の持ち出しルール、データのバックアップなど、セキュリティ対策は必須です。
茨城県の施設では、端末に自動ロック機能を設定し、定期的にパスワードを変更しています。万が一の情報漏洩に備え、損害保険にも加入しています。
注意点2: 補助金申請のタイミングを逃さない
国や自治体は、ICT導入に対する補助金制度を用意しています。申請期限や要件を事前に確認し、計画的に準備しましょう。
2026年現在、厚生労働省の「ICT導入支援事業」では、最大100万円の補助が受けられます。申請には事業計画書が必要なため、2ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。
注意点3: 利用者・家族への説明を丁寧に行う
見守りカメラなど、利用者のプライバシーに関わる機器を導入する際は、事前に十分な説明と同意が必要です。
青森県の施設では、導入前に家族説明会を開催し、機器の目的や録画データの管理方法を詳しく説明しました。不安の声には個別に対応し、信頼関係を築いています。
よくある質問(FAQ)
Q1: 小規模施設でもICT活用はできますか?
できます。利用者20名以下の小規模施設でも、タブレット3台とクラウド型の記録システムで月20時間の業務削減を実現した例があります。
まずは記録業務のデジタル化から始め、効果を確認してから他の機能を追加していく方法が効果的です。初期投資を抑えたい場合、月額制のサービスを選べば、数万円から導入可能です。
Q2: 職員が高齢で機械に不慣れですが大丈夫でしょうか?
大丈夫です。60代の職員でも2週間の練習で使えるようになった事例が多数あります。ポイントは、直感的に操作できるシンプルなツールを選ぶこと、そして若手職員がサポート役になる体制を作ることです。操作マニュアルは文字を大きくし、図や写真を多用すると理解しやすくなります。
Q3: 導入費用はどのくらいかかりますか?
規模や導入するシステムによりますが、30名規模の施設で初期費用50万円、月額5万円程度が目安です。ただし、国の補助金を活用すれば初期費用の75%が補助される場合があります。また、業務効率化による残業代削減で、多くの施設が1年以内に投資を回収しています。
Q4: ICT導入で介護の質は本当に上がるのでしょうか?
上がります。記録や申し送りの時間が削減されることで、利用者との対話時間が1日あたり平均30分増えたという報告があります。
また、見守りシステムにより事故が減り、排泄予測機器で個別対応が可能になるなど、ケアの質そのものも向上します。データの蓄積により、利用者の状態変化にも早期に気づけます。
Q5: 失敗しないためには何に気をつけるべきですか?
最も重要なのは、職員全員で目的を共有することです。「なぜICTを導入するのか」を明確にし、全職員が納得してから進めましょう。また、いきなり全機能を使おうとせず、1つずつ段階的に導入することが成功の秘訣です。導入後も定期的に職員の声を聞き、使いにくい点は改善していく姿勢が大切です。
まとめ: 今日から始めるICT活用の第一歩
介護現場のICT活用は、記録業務の効率化、見守りによる安全確保、情報共有の円滑化により、人手不足を補いながらケアの質を高める有効な手段です。
成功のポイントは、現状分析から始め、小規模導入で効果を確認し、段階的に全体展開することです。職員の不安に寄り添い、補助金を活用すれば、小規模施設でも無理なく導入できます。
まずは施設内で時間のかかっている業務を1週間かけて洗い出し、優先的に改善すべき課題を特定してください。その上で、無料トライアルを活用して自施設に合ったツールを見つけましょう。あなたの施設でも、明日から具体的なICT活用の一歩を踏み出せます。

