介護現場のICT化を進めたいが、導入費用の負担が心配という悩みはありませんか?
介護ICT助成金は、タブレットや介護ソフトなどの導入費用を最大750万円まで補助する制度です。
本記事では、助成金の概要から具体的な申請手順、よくある失敗例と対策まで、現場で役立つ情報を網羅的にお届けします。筆者は複数の事業所でICT導入支援に携わってきた経験から、実践的なアドバイスを提供します。
申請から受給までの流れを理解することで、スムーズなICT化を実現できます。
介護ICT助成金とは?基礎知識を理解する
介護ICT助成金(正式名称:介護テクノロジー導入支援事業)は、地域医療介護総合確保基金を財源とし、各都道府県が運営する補助制度です。介護記録・情報共有・請求業務を一気通貫で行えるシステム導入を支援します。
この制度は2026年1月現在、全47都道府県で実施されており、年間5,000以上の事業所が活用しています。従来の「介護ロボット導入支援」と「ICT導入支援」が統合され、より使いやすくなりました。
具体的には、介護ソフトやタブレット端末、Wi-Fiルーターなどのネットワーク機器の購入・リース費用が対象となります。たとえば、10人規模の施設が介護ソフトとタブレット10台を導入する場合、総額200万円のうち150万円(補助率3/4の場合)が支給される計算です。
補助金は後払い方式で、機器導入と支払い完了後に申請し、審査を経て交付されます。そのため、一時的な資金準備が必要な点は理解しておきましょう。
助成金の3つのメリット
1つ目
業務効率化による人件費削減です。ICT導入により、記録作業時間が平均で1日1人あたり30分から1時間短縮されるデータがあります。月間換算では職員1人あたり10〜20時間の削減となり、その分を直接的な介護ケアに充てられます。
紙の記録からデジタル化することで、情報検索時間も大幅に短縮されます。過去のケア記録を探す作業が数秒で完了し、申し送り業務もスムーズになります。
2つ目
高額な初期投資の負担軽減です。通常、事業所全体でICTシステムを導入すると100万円から300万円の初期費用が必要です。助成金を活用すれば、補助率1/2の場合で50万円〜150万円、補助率3/4なら75万円〜225万円の支援を受けられます。
小規模事業所でも、タブレット数台と基本的な介護ソフトなら50万円程度から導入可能です。助成金で実質負担を12.5万円〜25万円に抑えられるため、経営への影響を最小限にできます。
3つ目
職員の働きやすさ向上と定着率アップです。ICT化により残業時間が減少し、ワークライフバランスが改善されます。実際に導入事業所では、職員満足度が平均15〜20%向上したという調査結果があります。
また、若い世代の職員にとって、デジタルツールを活用できる環境は職場選びの重要な要素です。ICT環境の整備は採用力強化にもつながり、人材確保の面でも効果を発揮します。
助成金申請の5ステップ実践手順
ステップ1
申請資格の確認です(所要時間:30分)。
まず、自事業所が対象となるか確認しましょう。基本的に介護保険法に基づく全サービス事業所が対象ですが、都道府県により細かい要件が異なります。所在地の都道府県ホームページで最新の交付要綱を確認します。
申請時期は都道府県ごとに年1〜3回設定されており、募集期間を逃すと次回まで待つ必要があります。つまずきポイントとして、募集開始時期を見逃すケースが多いため、前年度のスケジュールを参考に、都道府県からのメール配信や公式サイトを定期的にチェックしましょう。
ステップ2
セキュリティ対策の自己宣言です(所要時間:1時間)。
情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」で、一つ星または二つ星の宣言が必須です。公式サイトから登録し、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言します。
一つ星は基本的な対策(ウイルス対策ソフト導入、パスワード管理など5項目)を、二つ星はより高度な対策を実施することの宣言です。宣言完了後、IPAから届くメールを申請時に提出します。難易度は中程度で、初めての場合は項目の理解に時間がかかりますが、多くの事業所では一つ星で十分です。
ステップ3
導入計画の作成です(所要時間:3〜5時間)。
どのような機器・ソフトをいつまでに導入するか、具体的な計画を立てます。業者から見積もりを取得し、導入機器のリストと金額を明記します。計画書には、業務のどの部分が効率化されるか、文書量をどれだけ削減できるかを記載します。
文書量半減を達成できる計画なら、補助率が1/2から3/4に拡充される可能性があります。つまずきポイントとして、抽象的な記載では審査が通りません。「記録時間が○分短縮」「○種類の帳票を電子化」など、数値を含む具体的な内容を盛り込みましょう。
ステップ4
事前エントリーまたは交付申請です(所要時間:2〜4時間)。
都道府県により、事前エントリー制度がある場合とない場合があります。エントリー制の場合、まず簡易的な申請を行い、選定されてから本申請に進みます。
必要書類は、交付申請書、導入計画書、見積書、SECURITY ACTIONの宣言完了メール、事業所の指定証の写しなどです。自治体の様式に従って記入し、期限内に郵送または電子申請します。難易度は高めで、書類の種類が多く、記入漏れや添付忘れが発生しやすいため、チェックリストを作成して複数人で確認することをお勧めします。
ステップ5
機器導入と実績報告です(所要時間:1日〜)。
交付決定通知を受け取った後に、機器の発注・納品・支払いを行います。交付決定前に契約すると補助対象外となるため、必ず順序を守りましょう。導入完了後、実績報告書を提出します。
契約書、納品書、領収書などの証明書類と、実際に導入した機器の写真や設置状況を報告します。つまずきポイントとして、交付決定から機器導入までの期限が短い場合があります(3ヶ月程度)。事前に業者と納期を調整し、スケジュールに余裕を持たせましょう。補助金の振込は実績報告の審査後、通常1〜2ヶ月後となります。
また、導入後2年間は効果報告の義務があるため、導入前後のデータを記録しておくことが重要です。
申請時の3つの注意点とコツ
注意点1
予算超過による不採択リスクです。
多くの都道府県で申請総額が予算を上回り、抽選や優先順位による選定が行われています。初めて申請する事業所や、特定の研修を受講した事業所が優先される傾向があります。
対策として、事前のセミナーや説明会に参加すると優先度が上がる自治体が多いため、積極的に参加しましょう。また、申請期間の初日に提出することで、順位による選定で有利になる場合があります。
注意点2
補助対象外の費用項目です。
タブレットの付属品(カバー、保護フィルム、タッチペン)、通信費、メンテナンス費用(一部を除く)、保険料、既存機器の廃棄費用などは補助対象外です。また、他の補助金(IT導入補助金など)と重複して受給することはできません。
どちらか一方を選択する必要があります。対策として、見積書作成時に業者と綿密に確認し、補助対象となる費用と対象外の費用を明確に分けて記載してもらいましょう。不明な点は都道府県の担当窓口に事前相談することをお勧めします。
注意点3
導入後の効果報告義務です。
交付を受けた事業所は、2年間(一部3年間)にわたり導入効果を報告する義務があります。
収支改善があった場合は職員への還元も求められます。また、厚生労働省の科学的介護情報システム(LIFE)への情報提供協力や、他事業所からの問い合わせ対応(個人情報除く)も要件となっています。
対策として、導入前の業務時間、残業時間、記録作業時間などをあらかじめ測定・記録しておきましょう。導入後の変化を定量的に示せるデータがあれば、報告作業がスムーズになります。
よくある質問(FAQ)
Q1:既に導入済みのシステムを更新する場合も対象になりますか?
A:はい、対象となります。ただし、令和7年度からは「更新」も補助対象として明記されました。既存システムの機能拡張や最新版への入れ替えも申請可能ですが、単なる保守契約の更新は対象外です。更新の必要性を計画書で明確に説明しましょう。
Q2:小規模事業所でも申請できますか?最低規模の制限はありますか?
A:規模による制限は基本的にありません。訪問介護事業所や居宅介護支援事業所など小規模な事業所も対象です。むしろ、職員数が少ない事業所向けに一律250万円の上限が設定されており、人数に応じた計算式より有利になる場合もあります。
Q3:補助率3/4を受けるための条件は何ですか?
A:主な条件は、第三者による業務改善支援を受けること、文書量半減を含む生産性向上計画を策定することです。都道府県により細かい要件が異なりますが、多くの自治体が無料の訪問相談事業を実施しているため、これを活用すれば要件を満たせます。詳細は所在地の都道府県に確認しましょう。
Q4:申請から交付までどのくらいの期間がかかりますか?
A:申請後の選定・審査に1〜2ヶ月、交付決定から機器導入・支払いまでに2〜3ヶ月、実績報告の審査に1〜2ヶ月かかるため、トータルで6〜8ヶ月程度を見込んでください。年度末近くに申請すると年度内完了が難しい場合があるため、早めの申請をお勧めします。
Q5:介護ソフトだけでなく、タブレット端末のみの申請も可能ですか?
A:可能です。ただし、タブレットのみを申請する場合、既に「一連の業務(記録・共有・請求)を一気通貫で行える介護ソフト」を導入済みであることを証明する必要があります。証明書類として、現在使用中の介護ソフトの契約書や機能説明資料の提出が求められます。
まとめ
介護ICT助成金は、タブレットや介護ソフト導入費用を最大750万円まで補助し、業務効率化と職員の働きやすさ向上を実現する制度です。
申請には、SECURITY ACTION宣言、具体的な導入計画の作成、所定の書類提出が必要で、交付決定後の機器導入と2年間の効果報告が義務付けられています。予算超過による選定、補助対象外費用の確認、導入前データの記録が成功のポイントです。
所在地の都道府県ホームページで最新情報を確認し、早めの準備を始めましょう。ICT化は介護現場の未来への投資です。本記事の手順を参考に、ぜひチャレンジしてみてください。

