介護現場で外国人を活用したいけれど制度が複雑でわからない
介護事業所の経営者や管理職から「外国人を採用したいが、どの制度を選べばいいかわからない」という声が増えています。
介護業界で外国人を雇用するには、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4つの制度があり、それぞれ目的・要件・メリットが大きく異なります。
この記事では、2026年現在の最新制度を踏まえ、4つの受け入れ制度を具体的に比較解説します。さらに、あなたの施設に最適な制度の選び方から、受け入れ成功のための実践ステップまでお伝えします。
筆者は福祉経営コンサルティングに10年以上携わり、50以上の事業所で外国人採用支援を行ってきました。現場で得た知見をもとに、実効性の高い情報をお届けします。
外国人採用を成功させたい介護事業者の方は、ぜひ最後までお読みください。
介護業界における外国人受け入れの現状とは?
介護業界における外国人受け入れとは、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能という4つの制度を通じて、海外から人材を採用し介護現場で就労してもらう仕組みです。
2023年時点で介護分野で働く外国人は約4万人を超え、年々増加しています。特に特定技能の在留者数は2024年6月末で36,719人となり、1年間で約14,800人も増加しました。
外国人受け入れが急増している3つの背景
第一に、深刻な人手不足があります。厚生労働省の推計では、2040年までに57万人もの介護職員が不足するとされています。
第二に、介護サービス職の有効求人倍率は3.85倍と全職種平均の約3倍で、日本人だけでは人材確保が困難な状況です。
第三に、2025年4月から特定技能による訪問介護が解禁されるなど、制度の緩和が進んでいます。これにより約4万6000人の外国人が訪問系サービスにも従事可能になりました。
主要3カ国からの受け入れ状況
外国人介護人材の多くは、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国から来日しています。
EPAではこれら3カ国との協定に基づき受け入れが行われ、2023年1月時点で累計3,260人の候補者を受け入れています。特定技能でも東南アジア諸国からの人材が中心です。
外国人受け入れは、介護業界の人手不足解消における現実的な選択肢として定着しつつあります。
外国人を介護現場で雇用する5つのメリット
外国人雇用には、人手不足解消以外にも多くのメリットがあります。実際に受け入れた事業所の声をもとに解説します。
メリット1:慢性的な人手不足を解消できる
日本人だけでは確保困難な人材を、外国人採用によって補えます。
特に若手男性職員の確保が難しい中、外国人には20〜30代の若年層が多く、体力が必要な介護業務での活躍が期待できます。地方部でも条件次第で採用可能な点も大きな利点です。
人員に余裕ができることで、既存職員の残業時間削減や有給取得率向上など、職場環境全体の改善にもつながります。
メリット2:制度選択によって長期雇用が実現する
在留資格「介護」では、本人が希望する限り永続的に就労してもらえます。
EPAでも介護福祉士国家試験に合格すれば在留期間の制限がなくなり、長期雇用が可能です。特定技能や技能実習も介護福祉士資格を取得すれば在留資格「介護」へ移行できます。
外国人は母国での準備や渡航費用をかけて来日するため、日本人より早期退職しにくく、定着率が高い傾向があります。
メリット3:若手職員として職場に活気が生まれる
外国人職員の多くは20〜30代で、学習意欲やモチベーションが高い傾向があります。
彼らの前向きな姿勢が職場全体に良い影響を与え、既存の日本人職員の刺激にもなります。シフトの柔軟性も高く、夜勤や休日勤務への対応力も期待できます。
メリット4:異文化交流で利用者の楽しみが増える
外国人職員がいることで、利用者は異文化に触れる機会が得られます。
母国の歌や料理をレクリエーションに取り入れたり、民族衣装を紹介したりすることで、利用者の生活に新たな刺激と楽しみが加わります。日本人職員も他国の文化や生活習慣を学べます。
メリット5:国際貢献につながる
技能実習制度は、日本の介護技術を母国に持ち帰り、自国の介護サービス向上に役立てることを目的としています。
自施設で学んだ知識や技術が海外の高齢者ケアに活かされることで、間接的な国際貢献が実現します。これは事業所の社会的意義を高める要素にもなります。
これら5つのメリットは、適切な受け入れ体制を整えることで最大化できます。
4つの在留資格制度を徹底比較|選び方のポイント
外国人を介護現場で雇用するには、自施設の状況に合った制度を選ぶことが成功の鍵です。4つの制度を詳しく比較します。
制度1:EPA(経済連携協定)
EPAはインドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国との協定に基づく制度で、2008年から始まった最も歴史のある仕組みです。
メリット:
母国で看護師資格を持つなど基礎知識があり、訪日前に6ヶ月以上の日本語研修を受けた人材を採用できます。公的機関が管理するため初めての受け入れでも安心です。
デメリット:
入国4年目に介護福祉士試験に合格しなければ帰国となるため、試験対策の教育負担が大きくなります。受け入れ可能な施設が限定されており、採用のハードルが高い点も課題です。
制度2:在留資格「介護」
日本の介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士資格を取得した外国人が対象の制度です。
メリット:
日本人と同等の資格・知識を持つため即戦力として期待できます。訪問介護を含むすべての介護サービスに従事可能で、在留期間の更新に制限がありません。
デメリット:
優秀な人材のため採用競争が激しく、人材紹介会社を通すと高額な紹介料がかかります。養成校卒業者の絶対数が少ないため、採用難易度が最も高い制度です。
制度3:技能実習
開発途上国への技能移転を目的とした制度で、2017年に介護職種が追加されました。
メリット:
技能実習2号まで修了すれば、無試験で特定技能1号に移行でき、合わせて最長10年の雇用が想定できます。
デメリット:
一人での夜勤ができず、常に指導員が必要です。受け入れ人数に制限があり、最初の8ヶ月は介護報酬上算定されません。継続には実技・学科試験への合格が必要で、住居手配などの生活支援も事業所の負担となります。
制度4:特定技能
人手不足解消を目的に2019年に創設された、最も採用しやすい制度です。
メリット:
2024年6月末で36,719人と人材の母数が多く、採用しやすいのが最大の特徴です。一人での夜勤が可能で、技能実習と違い同法人内での転籍もできます。転職も認められているため、中途採用市場からの獲得も可能です。
デメリット:
介護福祉士試験に合格しなければ5年で帰国となります。技能実習同様、生活支援などの継続的サポートが必要で、自社で行うか登録支援機関への委託が必要です。
施設の状況に応じて最適な制度を選び、複数制度の組み合わせも検討しましょう。
外国人受け入れを成功させる5ステップ
外国人の受け入れは計画的に進めることが重要です。以下のステップで確実に実行しましょう。
ステップ1:自施設の状況分析と制度選定(所要時間:2週間)
まず、現在の職員数・配置基準・採用緊急度を整理します。
即戦力が必要なら在留資格「介護」、長期育成を前提にするなら技能実習やEPA、バランス重視なら特定技能を選びます。受け入れ可能人数の上限も確認しましょう。
特定技能の場合、常勤職員数までしか受け入れできない制限があるため、計画的な採用が必要です。
ステップ2:受け入れ体制の整備(所要時間:1〜2ヶ月)
住居の確保、日本語学習支援体制、生活サポート担当者の配置を行います。
既存職員への説明会を開き、外国人受け入れの目的と協力体制を共有しましょう。マニュアルの多言語化やルビ振り、写真付き手順書の作成も効果的です。
受け入れ担当者を決め、困ったときの相談窓口を明確にすることで、外国人職員の不安を軽減できます。
ステップ3:採用活動と選考(所要時間:1〜3ヶ月)
人材紹介会社や監理団体を通じて候補者を募集します。
面接では日本語能力だけでなく、介護への意欲や人柄を重視しましょう。オンライン面接を活用すれば、海外にいる候補者とも効率的に選考できます。
複数名同時採用することで、母国語で相談し合える環境を作ると定着率が向上します。
ステップ4:在留資格申請と入国準備(所要時間:2〜4ヶ月)
在留資格認定証明書の申請に必要な書類を準備します。
申請書類は制度ごとに異なり、不備があると再申請で時期が遅れるため、行政書士や支援機関のサポートを受けることをおすすめします。入国後の生活オリエンテーション資料も事前に準備しましょう。
ステップ5:受け入れ後のフォローアップ(継続的)
入国後は定期面談を実施し、業務・生活両面の悩みを聞き取ります。
日本語学習の進捗確認や、資格取得に向けた学習支援も行いましょう。月1回の多国籍交流会や、母国の祝日を職場で祝うなど、文化を尊重する姿勢が定着につながります。
各ステップを丁寧に進めることで、受け入れ後のトラブルを最小化できます。
外国人受け入れで失敗しない3つのコツと注意点
外国人受け入れには特有の課題があります。失敗を避けるためのコツを紹介します。
コツ1:コミュニケーション支援を徹底する
日本語能力は基準を満たしていても、専門用語や方言、利用者の話す言葉は理解困難な場合があります。
ゆっくり明瞭に話す、重要事項は文書で渡す、理解度を確認しながら進めるなど、工夫が必要です。翻訳アプリの活用や、図解・写真を多用した業務マニュアルも有効です。
実際に一緒に働くと想定よりコミュニケーションが取れるケースも多いため、まずは試してみる姿勢が大切です。
コツ2:段階的な業務割り当てを行う
最初から日本人と同じ業務を任せるのではなく、できる範囲から徐々に拡大します。
入国直後の数ヶ月は、身体介助中心の業務から始め、記録業務や電話対応は日本語能力の向上に合わせて任せましょう。できる仕事に限りがある間は、他職員の負担が増えますが、長期的には業務軽減につながります。
コツ3:文化・習慣の違いを尊重する
宗教上の食事制限や礼拝時間の確保など、文化的配慮が必要です。
事前に本人から要望を聞き取り、可能な範囲で対応する姿勢を示しましょう。日本人職員にも異文化理解研修を実施し、双方が歩み寄る環境を作ることが重要です。
注意点1:制度の複雑さを甘く見ない
在留資格ごとに要件・手続き・義務が異なり、専門知識が必要です。
自施設だけで対応しようとせず、行政書士・監理団体・登録支援機関などの専門家を活用しましょう。定期的な報告義務や更新手続きを怠ると、最悪の場合、在留資格取り消しのリスクもあります。
注意点2:受け入れコストを事前に把握する
紹介料・住居費・渡航費・生活支援費など、初期費用が100万円以上かかるケースもあります。
制度ごとに費用構造が異なるため、事前に見積もりを取り、予算を確保しましょう。補助金や助成金の活用も検討すべきです。
注意点3:帰国リスクを想定した人員計画を立てる
技能実習や特定技能では、一定期間後の帰国や、より良い条件の施設への転職が起こりえます。
一度に大量採用せず、計画的に受け入れ時期をずらすことで、全員が同時期に帰国・転職するリスクを回避できます。在留資格「介護」への移行支援を行い、長期定着を促す取り組みも有効です。
これらのコツと注意点を押さえることで、受け入れ成功率が大きく高まります。
よくある質問(FAQ)
Q1:外国人を採用したいが、どの制度が自施設に合っているかわかりません。
即戦力が必要で長期雇用したいなら在留資格「介護」、育成前提で計画的に受け入れるならEPAか技能実習、バランス重視で採用しやすさを求めるなら特定技能がおすすめです。自施設の受け入れ体制や緊急度に応じて選びましょう。専門家への相談も有効です。
Q2:日本語が不十分な外国人でも利用者とコミュニケーションが取れますか?
制度ごとに日本語能力の基準が設定されており、基本的な会話は可能です。ただし専門用語や方言は理解困難な場合があるため、ゆっくり明瞭に話す、ジェスチャーを使う、図解を活用するなどの工夫が必要です。実際に働き始めると、想定より円滑にコミュニケーションが取れるケースも多くあります。
Q3:外国人を受け入れるための初期費用はどのくらいかかりますか?
制度や支援内容によって異なりますが、紹介料・渡航費・住居準備・生活支援費などで1人あたり50万〜150万円程度が目安です。特定技能や技能実習では登録支援機関への委託費用も発生します。自治体の補助金や助成金を活用できる場合もあるため、事前に調査しましょう。
Q4:外国人職員が途中で帰国したり転職したりするリスクはありますか?
技能実習は一定期間後の帰国が前提で、特定技能も5年が上限です(介護福祉士取得で在留資格変更可能)。また、より良い条件を求めて転職するケースもあります。長期定着を促すには、資格取得支援・キャリアパス明示・働きやすい環境整備が重要です。複数名を時期をずらして採用するリスク分散も有効です。
Q5:既存の日本人職員が外国人受け入れに反対しています。どう説得すればいいですか?
まず、人手不足解消により職員全体の負担が減ることを丁寧に説明しましょう。外国人受け入れは日本人の雇用を奪うのではなく、チーム全体の働きやすさ向上につながることを強調します。受け入れ前の研修で不安を解消し、サポート体制を明確にすることで、協力を得やすくなります。
まとめ:外国人受け入れで介護現場の未来を切り開く
介護業界の外国人受け入れには、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4制度があり、自施設の状況に応じた選択が成功の鍵です。
人手不足解消・長期雇用・若手人材確保という3つのメリットを最大化するには、受け入れ体制の整備と継続的な支援が不可欠です。
コミュニケーション支援・段階的業務割り当て・文化尊重の3つのコツを実践し、制度理解・コスト把握・リスク管理の3つの注意点を押さえることで、受け入れは成功します。
まずは今日、自施設に最適な制度を検討し、専門家への相談から始めてみませんか?外国人受け入れは、あなたの施設と介護業界の未来を変える一歩になります。

